俺たちのガトーショコラ。
みんなが帰り支度をしている中、陽菜と手分けしてケーキスタンドに残っていたスイーツをそれぞれの家の分に分けて箱に詰めた。
「まあ。お持ち帰りさせてくれるの?」
「うん。せっかくだから家でみんなで食べてね。ばあちゃん。」
陽菜が箱に詰めながらばあちゃんと話している。じいちゃんもその様子を笑顔で見ている。みんなが楽しんでくれたみたいで良かった。
「俺、そんなに食わないけど、見ているだけでも楽しかったぞ。」
清おじさんが言った。スイーツは笑顔の素。見るだけでも楽しんでもらえたなら本望だ。
「今日はありがとうございました。」
一人ひとりに頭を下げ、さきほど箱に詰めたスイーツとお持ち帰りにと注文をもらった分、そしてガトーショコラの入った紙袋を手渡す。
「まあ、ありがとう。ずいぶんたくさんみたいだけど…。こちらの包みは何かしら?」
紙袋の中のガトーショコラの箱に気づいた大叔母さんが目をクリっとさせて微笑んだ。
「お察しのアレです。」
「うれしいわ~。看板商品ですものね。」
その言葉にみんなが笑顔で頷く。
「ありがとうございます。母のガトーショコラを超えるのが目標です。」
「美穂子さんの、おいしかったものね。でも、貴方たちのだって負けてないわよ。」
大叔母さんの言葉は本当にありがたいが、お袋のガトーショコラは俺の目標である。美味しかったことももちろんだが、思い出のたくさんつまった味だから。
「貴方たちは、お母さんのガトーショコラの一番のファンだったものね。」
「はい。」
お袋のガトーショコラは身内や知人友人の間でも評判で、俺としても自慢だった。俺たちが一番のファンだったと自負しているが、ここにいるみんなもファンの一人だ。もちろん、俺たちの次にね。
「美穂子さんは幸せね。こうしてずっと目標にしてもらえて。」
「自慢の母でしたから!」
「子供の頃、クソババアなんて言ってた奴のセリフとは思えねえな!」
親父が口をはさむとみんなが声をあげて笑った。
「じゃあ、頼んだぞ。イチゴショートを買占めに来るからな。」
「俺のツリーも頼んだぞ。いつでもいいからな。」
車に乗り込んだ幹太おじさんが運転席の窓を開けて言うと、後部座席の窓を開けてじいちゃんが言った。どうしてもツリーと呼ぶじいちゃんに苦笑してしまう。
そして俺たちが手を振るなか、みんなを乗せた車が小さくなっていった。
「良い二次会になってよかったね。お兄ちゃん。」
「だな。喜んでもらえてよかった。きなこアラモードも全員が完食だったぞ。知ってたか?」
「もちろん。一番気になっていたもの。」
ガランとした喫茶コーナーを片付けながらこんな会話をしていた俺たち。数日後に思いがけない場所に“ツリー”を配達に行くことになろうとは、予想もしていなかった。




