ご来店ありがとうございます。
「朝日、来たぞ~。」
店のドアが開くと同時にじいちゃんの聞こえてきた。じいちゃんを先頭にぞろぞろと法事帰りのメンバーが入ってきた。ああ。よく来てくれたね。待っていたよ。
「おお。豪華じゃねえか!」
幹太おじさんの顔がほころんだ。ケーキを見たときのこの笑顔、好きなんだ。よし、最初のつかみは成功だ。しかし、視線はすでにイチゴショートを捉えている。恐るべし、元ケーキ王子。
「今日はご来店ありがとうございます。お席にどうぞ。」
「ナニかしこまってんだよ~。」
俺の言葉に親父が笑い、親父の言葉にみんなが笑った。
笑顔でそれぞれが席につく。俺や陽菜を抱っこしてくれたみんな。膝に乗せてくれたみんな。手をつないで連れ歩いてくれたみんな。
「ばあちゃん、ご無沙汰していてすみません。」
「いいのよ。元気に頑張っているって証拠だもの。」
俺がペコリとお辞儀をすると、ばあちゃんが笑顔で言ってくれた。子供の頃、お袋を怒らせてしまったときにじっくりと話を聞いてから、抱きしめてくれたときの笑顔。シワは増えたけど、変わらないな。よかった。
「親父、じいちゃんのご挨拶、してもらうよな?」
「いや、二時間だし、かしこまらなくていいよ。お前がスタートの声かけをしてくれるか?スタートする前に陽菜も呼んで来てくれるか?」
小さく耳打ちをすると親父が言った。そうだな。せっかくだから最初に陽菜にも顔を出してもらおう。
陽菜を呼ぼうと厨房に足を踏み入れると、陽菜が何やら夢中で作業をしている。
「ちょっと、スタート前に顔を出してくれ。」
「はーい。よし、できた。ねえ。見て。」
「おお。凄いな。それを出すのか?」
大きなトレーに乗っているのはチョコレートのリボンでおめかしした、抹茶のマカロンタワー。金粉とわらび餅の演出が心憎い。
「うん。予定にはなかったけどね。こんなの作れるんだよって見せたくなったの。」
抹茶のマカロンタワーとは珍しい。どちらかというと、こういったものはベリーなどの鮮やかなマカロンで作ることが多いから。抹茶にしたのは、じいちゃんにも食べてもらいたい気持ちそのままなのだろう。
陽菜がマカロンタワーをそっとテーブルに置くと静かな歓声が上がった。
「じいちゃん、ばあちゃん、おじさんもおばさんも、今日はありがとう。」
マカロンを置いた陽菜がペコリとお辞儀をした。そして俺もあいさつをする。
「今日はご来店ありがとうございます。皆さんのおかげで、こうしてこの仕事と店を続けることができています。ゆっくりしていってください。」
俺もお辞儀をした。
「たくさん食べていってね。それから、温かい飲み物のおかわりは声をかけてね。冷たいのはあちらのテーブルに用意してあるから。」
陽菜が声をかけると、たくさんのケーキがケーキスタンドからお皿に移動し、フォークを手にした。それと同時に他のスタッフが大きなティーポットとコーヒーのポットを運んで来て、それぞれのカップに注ぎはじめた。
もちろん、元ケーキ王子はすでにイチゴショートをパクついている。いよいよ、幹太おじさんのジャッジが始まる。ドキドキするぞ。




