バレンタインの思い出。
バレンタインといえば、俺は小学校高学年の頃に初めての彼女ができた。彼女は、なっちゃんと呼ばれていて、ちょっとおてんばな可愛らしい子だった。最近チラリと見かけたが、すっかり大人の美人になっていた。
なっちゃんは、バレンタインの日になると手作りのチョコレートを家まで届けてくれた。ワクワクして箱を開けると、小さなカップに流し込まれたチョコの上にカラフルにアラザンやデコペンで飾られた、シンプルでかわいいチョコがぎっしりと並んでいた。しかし食べてみて、えらく甘くてびっくりしたのを覚えている。お袋が作ったものに比べるとかなり甘かったのだ。後々、それはミルクチョコレートを使ったせいだということが判明した。お袋はこういうときは必ずブラックを使っていたので、その甘さに慣れていたのだ。嬉しかったが、激甘な思い出だ。
そんな風にして本命チョコをもらった年もあるが、陽菜の友チョコのオコボレを期待していた年が大半だった。陽菜がワクワクと作り始めると、俺はソワソワして、リビングで待機していた。縁が少し歪んでしまったクッキーや、デコレーションに失敗したチョコ。カップから生地がはみ出てしまったマフィン。そんなちょっとした失敗作をオコボレとしてもらうのがこの時期の楽しみだった。交友範囲が広いので、交換する相手がかなりたくさんいたらしく、もらう数もすごかったが、作る量もハンパない。そして、失敗作もそれなりの数が出ていたのだ。
「俺の、ある?」
「そんなに失敗しないわよ!」
「もらったやつ、おいしそうだね…。」
「やあよ。私が、もらったんだからね!」
オコボレが待ちきれなくてそんな風に叱られたことも数知れず。俺の分として用意してくれたこともあったが、オコボレをがっつくせいか、そのうちオコボレを盛り合わせた皿が俺の分として陽菜から贈られるようになった。おいしくいただくばかりでホワイトデーにお返しをしなかったので、オコボレ処理班にされてしまったということがわかったのは大人になってからだった。
そうそう。今日はブラウニーを試しに出してみたんだが、目立つ場所においたせいもあってか、サービスパックまで完売した。手頃なのでケーキのついでに買われるお客様がけっこういた。そして、小学生の低学年と思われる女の子が一人、買っていったそうだ。レジで「お母さんのお誕生日プレゼントなの。」と話していたらしい。小学生のお小遣いでも買える価格設定だから、そういう小さなお客様にも良いというのは発見だ。そしてその価格なら数を配りたいお客様が買いやすい価格だ。
流行りとは関係なく見事に完売した。ラッピングも量も価格設定も当たりだったようだ。




