↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
14/31

第14話 パーティー名

 モモは、『栄華秀英(えいかしゅうえい)』、『一塵不染(いちじんふせん)』といったカッコいい四字熟語のパーティー名を推す。が、『一』とか『華』といった、明らかに誰かを意識している言葉しか挙げていないあたりで狙いが読める。

 この4人の中で一番日本人離れした容姿なのに、一番熟語に明るいのが少し面白い。


 ただ、モモ曰く『栄華秀英』という言葉は「草木の花の総称」という意味らしい。千花に一華、桃と葵。全員植物にまつわる名前だということで、方向性は良いんじゃないかという話にはなった。

 

「あとは、1001本のバラの花束で『永遠にあなたを愛します』って意味らしいですよ」

「へー、ロマンチック!」


 インターネットで調べものをしていた葵がそんなことを言い始め、モモがきゃいきゃいと隣に行って一緒に調べものをはじめる。仲良くなったようでなにより。

 でも、男1人に対して女の子3人のパーティーで愛をモチーフにした名前を付けるのはどうなんだ?

 いや、俺がいなかったら全然、女の子同士でこう、百合の花を咲かせてもらっても良いんですけど。


「せん、いち……あり。『薔薇の花束』とか」

「ばらのはなたば……一華先輩、既に使われているパーティー名らしいです」

「ぬん……」


 いちちゃんが悔しそうな顔をして引き下がる。いちちゃんってそういうロマンチックな話、好きだったのか。

 モモが今調べたのは、攻略者協会の公式サイト。パーティー名で検索すれば、そのパーティーが公開している情報を見ることができる。大抵は構成人数ぐらいしか見ることが出来ないが、このようにパーティー名が被っていないかの確認には使うことができるのだ。

 

「なんちゃらガーデン、みたいなのとかカッコよさそうだけどね」

「あー、シャド——」

「ストップ!版権モノはやめとこう」

「「?」」


 俺が提案すると、モモはすかさず昔のアニメの秘密結社を挙げようとしたので、思わず止めてしまった。

 モモは仲間を見つけたようにキラキラとした目をしている!一方で、葵といちちゃんはなんの話か全く分かっていない。

 まぁ正直俺もそういう話がわかる相手を見つけて、内心テンションは上がっているけども。美少女オタクって実在したんだ……。


「冗談ですよ~、使われてますし」

「あるんだ……元ネタ知ってるのかな」

「さぁ?どうなんでしょう。でも、私たちのパーティーの男女比を考えたら割と良い線だと思うんですけどね」

「否定はしないでおくけど、そういう理由はちょっと解釈が……」

「せん君、なんの話?」

「昔のアニメの話だね」

「……モモちゃんもそういうの詳しいの?」

「えへへ……中学と高校の時は結構嗜んでおりました……」

「……ふーん」


 おっと、いちちゃんがまた不満げにしている。朝もそうだったけど、やっぱり独占欲強めか。

 いちちゃんの意外な一面にはどうしてもほっこりとしてしまう。


「千花兄ぃ、ひいじいちゃんたちのパーティーにあやかるのとか、どう?」

「うーん……俺は嬉しいけど……」

 

「唐金十造のパーティー、『劫火絢爛(ごうかけんらん)』ですよね!魔物を焼き尽くす炎、そしてそれを支える栄華なるパーティーメンバー!混沌の時代、平和を守るためにこの地の魔物を焼き尽くした唐金十造は、その後各地を巡るためにメンバーを集めたんですけど、そのメンバーがまた凄いスキルを持っている人ばかりで!絶望をその大火で焼き尽くす姿はまさに豪華絢爛!そこから名前を付けられたと!個人的に四字熟語を捩って意味を通しつつ命名するのにロマンを感じます!私もそういう名付け……と、か……はい、ごめんなさい。一華先輩は、どう思いますか……?」

 

「私も賛成」


 俺はさっき見たし、いちちゃんも多分慣れているので無反応だが、モモの早口に葵はぽかんと口を開けている。

 モモは恥ずかしそうに座り直す。


「んん、肖(あやか)るとなると、近い四字熟語にしたり……とかですか?風光明媚(ふうこうめいび)みたいな」

「……いや。もしみんなが良いなら……俺としてはそのまま使いたいかも」


 『劫火絢爛』。俺が大好きで、憧れて、何度も話を聞いたじいちゃんのパーティー。

 そのパーティーメンバーの子孫が2人。超レアなスキルを扱えるモモ。そして。


 史上最年少でスキルレベル4に到達した実績を持つ、国内最強とまで噂されるいちちゃん。


「いつかこのパーティー名を継ぎたい、なんてじいちゃんと話したこともあったんだ。このメンバーなら、きっとじいちゃんも認めてくれるから」

「せん君……」

「千花兄ぃ……」

「千花さん……」


 英雄譚に憧れた子供は、祖父のパーティー名を引き継いで新たな英雄になるんだ、なんて夢見ていた。

 まさかそれが現実になる日が来るなんて思っていなかったけど……このメンバーだからこそ、それを現実に出来ると思える。


「……うん。私は、そのまま使う案、良いと思う」

「いちちゃん……ありがとう」

「んーん。なんだか、家族みたいで嬉しい」


 微笑みながらそう言ういちちゃん。毎度、ドキッとするようなことを言ってくれるものだ。

 ついでにモモと葵までいちちゃんに見惚れているのが目に入った。わかるぞ。


「じゃあ、パーティー名は『劫火絢爛』で決定かな?」


 そう聞けば、皆揃って首肯した。

 

「……よかったね、千花兄ぃ」

「ありがとね、葵。提案してくれて」

「ううん……あれ、でも全く同じパーティー名って使えないんじゃないの?」

「原則はそうなんだけど、パーティーリーダーの親族なら申請できるんだ」


 そして、リーダーである唐金十造の親戚はもう俺一人しかいない。

 なので問題なくパーティー名として申請が出来る。

 

「じゃあ、このパーティーのリーダーも千花さんってことになるんですか?」

「いや?俺がパーティーにいれば申請できるから、リーダーが俺である必要はないよ」


 パーティーリーダーは言わばパーティーの顔。いくら俺のスキルが成長して多少は使えるようになったと言っても、今のままではまだ盾にしかなれないカスだ。なんならその盾も葵に出してもらうことになるだろうし。

 どうも、肉壁の千花(センカ)です。


「リーダーはいちちゃんが良いと思うな。スキルもパーティー名にぴったりだし、一番ダンジョンに慣れてるし」

「あ、私も一華先輩がリーダーというのに賛成です」

「……私はせん君の方が良いと思う」

「わ、私も千花兄ぃがリーダーなのが良いかなって」


 おっと?意見が割れたぞ。


「え、俺がリーダー?なんで?」

「だって、千花兄ぃは前『劫火絢爛』のリーダーの孫だし……」

「いや、それはそうだけど……ねぇ?モモは俺が言いたいことわかるでしょ?」

「私は千花さんを下げる意図は一切ないんですけど、一華先輩って超一流のダンジョン攻略者なので……一華先輩を差し置いてリーダーになれるような人材なんて、世界広しと言えど他にはいませんよ」


 それはちょっと過言だと思うけど、まぁ概ね俺の言いたいこと通りだ。実力、経験、ネームバリュー。どれをとっても一流であるならば、他の人がリーダーをする理由がない。

 だが、そんな俺とモモの意見を聞いたいちちゃんは思い切り不満そうにしていた。


「せん君の方が良いと思う」

「えっと……いちちゃんも俺がじいちゃんの孫だから、そう思うの?」

「それもあるけど……」


 いちちゃんは伏し目がちに言葉を続ける。


「せん君は、せん君だから……」

「……?」


 言った後、恥ずかしいことを言ったとばかりに赤くなるいちちゃん。

 しかし俺には何のことだか全然わからない。そんなにリーダーシップあるように見えます?

 当然その言葉の意味を理解できず、葵とモモも頭の上に疑問符を浮かべていた。


「うーん……葵は意見変わらないの?いちちゃんの方が向いてると思うんだけど」

「うん。そんな外聞を気にするより、意思を継ぐっていう意味で千花兄ぃが良いと思う」


 ぐぬぬ……良いことを言ってくれる。

 葵は一度決めたら頑固な部分がある。それはいちちゃんもだから、2人とも相当な理由がないと折れないだろう。

 どうやって納得してもらおう、と考えている間に、いちちゃんがモモの背後に回って抱きしめた。


「モモちゃん……」

「ひゃっ……いちかせんぱい、なんですかぁ……」

「膝枕してあげるから……ね?」

「ふわぁ……」


 いちちゃんに耳元で囁かれ、お茶の間に流せない表情になるモモ。それを確認して、いちちゃんはモモを解放した。

 いちちゃん?


「んんっ……。やっぱり、よく考えたら私も千花さんがリーダーをするのが良いと思います」


 うわぁ……。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。