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第13話 重要な役割

「直接話すのは、はじめまして。せん君の幼馴染の、 咲花(サクハナ) 一華(イチカ)」

「はじめまして、一華先輩の後輩の篝火(カガリビ) 桃(モモ)です」

「は、はじめまして!日向(ヒュウガ) 葵(アオイ)っていいます!」

「……改めまして。唐金(カラカネ) 千花(センカ)です」

 

 大人のお姉さんたちに囲まれ、葵はカチカチに緊張している様子。

 いちちゃんが友人としての幼馴染枠なら、葵はほぼ身内。年齢も離れているし、俺もそれぞれ会うタイミングが異なるので、この2人は初対面となる。

 とはいえ、お互いに名前は知っている。葵はその家柄もあり地元では有名人だし、いちちゃんのことは俺が話をすることもあった。それがなくてもいちちゃんは全国的に有名ではあるが。


「補足すると、葵は家族ぐるみでの付き合いが濃かったから……まぁ妹みたいな感じだね」

「びっくりしたよ、千花兄(せんかに)ぃ。突然家に来てなんて言うから……あれ?千花兄ぃ、半袖……?アレ、やめたの?」

「あー、いや。それも含めて今から話すよ。とりあえず好きなところ座って」


 葵は、俺がスキルで自傷を繰り返していたことを知っている。知られたときは良い顔をしなかったものの、お互いダンジョンを夢見ていたのでなんだかんだ応援はしてくれた。

 とはいえ他の人には隠していたことなので、いちちゃんとモモの方をチラ、と確認しながら腕の事について小声で俺に確認してきたのだ。


「まず葵に報告なんだけど、俺のスキルが成長して回復スキルを自分に【再現】出来るようになった」

「え!千花兄ぃやったじゃん!じゃあ、本格的にダンジョン攻略するってこと?」

「そう。それで、いちちゃんとその後輩のモモと3人でパーティーを組もうって話になってたんだけど……」

「葵ちゃん……でいい?」

「は、はい!ぜひ!」


 いちちゃんが葵を下の名前で呼ぶと、葵は嬉しそうに受け入れた。

 ダウナークールないちちゃんは女性に好かれやすい……というのもあるかもしれないが、実のところ葵はいちちゃんのファンである。モモほどいちちゃんを崇拝している訳ではないが、それでも憧れの女性攻略者が目の前に来て嬉しくない訳がないか。

 

「葵ちゃんが補助スキルを持っているって聞いたけど、本当?」

「はい……まだあまり使ったことがないのでスキルはレベル1ですけど、持ってます」

「どんなスキル?」

「漢字が難しいんですけど……【捨命涯(しゃみょうのみぎわ)】というスキルで、6度まで攻撃を防ぐ効果がある……らしいです。実際に発動しているところは見たことがなくて」

「ふむ」


 顎に手を当て、いちちゃんは考える素振りを見せる。

 葵のスキルは防御系の補助スキルなので、このパーティーにおいては相性が良いと言えるだろう。


「葵ちゃん、もうひとつ聞いていい?」

「は、はい」

「せん君のことはどんなふうに思ってる?」

「どんな……あっ。……お、お兄ちゃんみたいだと思って、ます」

「……わかった。せん君、私は葵ちゃんを入れるのに賛成する」


 いちちゃんのふたつ目の質問については意図がわからなかったが、賛成なのであれば問題ない。

 あれかな、嫌いだったらパーティーに入れないぞ、みたいな。流石に呼べばすぐ来るような妹的立ち位置の子に嫌われているなんてことはないだろう。……多分。年上だから断れないとか、そんなことないよな?


「パーティーを組むなら補助スキルが必須だって話になってね。俺の知ってる人で信頼できるのが葵くらいだから、よければパーティーに入ってくれないかな?」

「私くらい……じゃ、じゃあ……ぜひ!」

「ふふ、よかった。あ、でも葵、攻略者講習は受けてるの?」

「大丈夫!夏休みの前半がっつり使って仮攻略者証まで進んだ!」

「お、懐かしい。早いね」


 仮攻略者証。ダンジョンに関する座学と簡単な実技講習を終えている証明で、教官と一緒ならダンジョンに入ることが出来るようになる。ここまで進んでいるのなら、あとは18歳になればすぐ攻略者証を受け取ることができるだろう。


「でも、誕生日になるまでは一緒にダンジョンに入れない……」

「葵ちゃん、そこは大丈夫」

「え?」

「それまで、パーティーは組めないけど、私が一緒ならダンジョンには入れる。……モモちゃん、鞄出して」

「はい!どうぞ!」


 言うや否や、モモはスキルを使ってウエストポーチを取り出した。

 パーティーに入れるという事は、モモのスキルについても教えるということ。俺は葵を信頼しているので何とも思わないけど、これもいちちゃんなりの信頼の表現方法なんだと思う。

 当然、突如現れたウエストポーチを見て葵は口を開けて固まった。

 その姿を見ていちちゃんは少し満足げに、ポーチの中を漁る。取り出したその手には、金色に輝く攻略者証が握られていた。


「じゃーん」

「え、いちちゃんゴールドなの?すっご……」

「ふふん、だから葵ちゃんはダンジョンに連れていける」


 いちちゃんから手渡された攻略者証を見てみると、その質感からして俺の持っているものと異なる。

 ダンジョン攻略者は、どれだけダンジョンの深層に行ったことがあるかなどの条件により、攻略者証の素材を変えてもらうことができる。

 上からプラチナ、ゴールド、シルバー、スチールとあり、その下に一般攻略者証が位置している。一般攻略者証はプラスチック製のカードにICチップが埋め込まれただけの簡素な作りなため、プラスチック攻略者だなんて揶揄されることもあるくらいだ。

 スチールからシルバーに上がるための条件のひとつに、「ダンジョン教官資格の取得」が存在するため、必然的にそれより上位のゴールド攻略者であるいちちゃんは、教官として葵をダンジョンに連れて行けるのだ。


 俺?言わせるなよ恥ずかしい。


「ま、待ってください。いや、ゴールド攻略者証も凄いんですけど、今どこから鞄を出したんですか!?」

「葵さん、今のが私のスキル、【現喰(うつつぐらい)】の効果です」

「よ、4次元○ケット……!」

「古っ」

「やっぱりそう思いますよね」

「なに?私知らない」


 俺も思ったけど言わなかったのに。

 祖父が幼い時に国民的だったらしいアニメで、モモのスキルみたいなことをできるキャラクターが出てくる。

 もう1世紀近く前の作品なのに、モモは知ってるのか。もしかして結構オタク気質ある?

 

「じいちゃんとかその少し上くらいの世代のアニメに出てくる道具だよ」

「ふぅん?せん君そういうの好きなんだね」

「……まぁ、オタクなのは否定しない」


 友達が少ないと、そういう一人で消費できるコンテンツに傾倒するものなんだよ。

 個人差はあるけど。


「まぁそれは置いといて……葵、モモのスキルについては他言無用でお願い」

「え?こんなすごいスキルなのに、内緒にするの?」

「何かの間違いで裏社会の人に目を付けられたら最悪だからね」

「……あー、確かに。わかった、誰にも言わない」

「葵さんも分かるんですね……」

「はい。家庭の事情で……」


 葵も俺と同じように、そういった昔話を聞いて育っている。知っているのは当然だ。

 あくまで「本当に存在する怖いひとたち」というイメージ程度でしかないけど。


「なにはともあれ、葵もこのパーティーに参加してくれるなら、次の話に進めるね」

「次の話?」

「そう。葵ちゃんも込みで、パーティー名を決めよう」

「わ!パーティー名!楽しそうですね!」


 敬語で話している葵を見るのは新鮮で、少しホッコリしてしまう。大きくなったなぁ……。

 俺が小学生くらいの時には、葵のオムツを変えたりもしていた。それが今では一緒にダンジョンへ行く話をするくらいにまで……うう、少し泣きそうだ。

 それと、敬語で話す葵を見て気付いたが、葵とモモは少し似ている。容姿ではなく、雰囲気というか……いちちゃんと話す時の葵の後輩っぽさは、モモとの共通点と言える。

 いつかはパーティーとして馴染んで、先輩後輩っぽさが取れて皆気軽に接することができるとより良いんだけどな。


「今って、何か候補とか出てるんですか?」

「いや、この話を始めてすぐに葵を呼んだから、まだ……出てないよ」


 モモが小声で「なかったことになった」と呟いたが、聞こえないフリをしておいた。

 いちちゃんラブが強すぎるのよ。

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