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永遠の翼 〜変えられない運命に、祝福を〜  作者: 咲良 柚葉
第三章【永遠の翼〜夜を蝕む都〜】

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第九話:困惑の視線

甲高い音が、静かだった屋敷中に響き渡る。


風を纏っての一撃は、どうやら効いたようだ。

ただ、致命傷にはならない。

影が膨張してカグヤの一撃を包み込むように受け止めた。


()()()()()受け止められるのは百も承知していたカグヤは、切り付けた後にわざわざ手首を捻ってから風で作った剣を引き抜く。すると、螺旋を描く風の刃が、まとわりついた影を大きく抉った。


(手応えあり、だね)


風の刃の攻撃は、有効。そう結論付けた。


抉られたことに怒ったのか、今度は影の方から攻撃してきた。

触手のように伸びた影を巧みに使って攻撃してくるのを、カグヤは右手の開かれた扇子で影の攻撃を防ぐ。

基本は払い、時々受け流す。

まるで一つの踊りのように軽やかに、右手だけで器用に捌く。


一向に攻撃が当たらない影は、まるで頭に血が上ったように力任せの攻撃へと傾倒していく。

どれだけ戦いに慣れた相手でも、焦れることはある。

その隙を、カグヤは逃さない。


「“舞え、風雅”」


カグヤの声に応えるように、風がひときわ強く、影に向かって吹きつける。

一瞬だけ、影の動きが鈍った。


「────はっ!」


剣を槍のように持ち替えて、カグヤは影へと真っ直ぐ突っ込む。もちろん風の力も乗せて。

影を串刺しにする直前、カグヤは先程とは逆に、抉るように手首を捻りながら影へと突き刺した。


「見事だ」


晴明の落ち着いた声が響いた瞬間────。

影が弾け飛んだ。

といっても、全てが消し飛んだのではない。


「⋯⋯白?」


影の色が変わった。

今までは、どす黒いほどの禍々しい色だったが、今はその色が薄れている。

その見た目は、影ではなく、靄のような感じだろうか。


困惑するカグヤの肩に、晴明が手を置いた。

振り仰げば、晴明がカグヤの目を見て静かに頷く。

言葉はない。

だが何となく晴明の言いたいことは理解出来た。


カグヤは、無言で風の剣を翻す。

すると、刃が霧散し、いつも通りの扇子に戻った。

それを確認してから扇子を仕舞う。


それを見届けた晴明が、今度は影だったモノに視線を向ける。


「気は──済んだか?」


晴明が、影に問う。

その声に反応するように、影が一度大きく揺らめいた。影がむくむくと膨れながら大きくなっていく。


そして────人の姿を成した。

カグヤには、それを人と呼んでいいかは分からない。

でも、怖い感じも嫌な感じもしなかった。


()()()はすでに、憑き物が落ちたように落ち着いている。

攻撃してくることはないだろう。


惟光(これみつ)


晴明が呼んだのは、多分名前だ。

影だったモノが生前の姿を取り戻した、ということなのだろうか。


『晴明』


惟光と呼ばれたモノが、喋った。

いや、頭に響いたと言った方がより正確だろう。


『────⋯姫は⋯⋯?』


────姫。


それは、行方知れずの姫のことだろう。

影は、怪異の一部。

ということはつまり────。


「まだだ」

『────⋯⋯そうか』


晴明の言葉に、惟光は落胆したのだろう。

だが、続く晴明の言葉にカグヤと惟光は同時に晴明へと視線を向けることになる。全く違う意味合いで。


「だが、この者がいれば何とかなるだろう」


晴明と、そして惟光の視線を受け、カグヤは眉を寄せる。

何を望まれているのか分からない。


やはり、晴明は言葉が足りない。

足りな過ぎる────。


今回は長くなりそうです⋯。

もう少しお付き合い頂けると嬉しいです!

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