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永遠の翼 〜変えられない運命に、祝福を〜  作者: 咲良 柚葉
第三章【永遠の翼〜夜を蝕む都〜】

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第七話:沈黙の邸

屋敷の中は静かだった。

いや、静か過ぎるとも言える。これだけの大きさの屋敷ならば、人の気配があって当然だ。それなのに、ここには人の気配がまるでない。

外見は立派だが、すでに命の灯火が消えている。


「⋯⋯」


空気が、重い。

風の精霊が、居心地の悪さを訴えてくる。カグヤもそれを感じ取っていた。

湿った重苦しい空気がまとわりつく。呼吸する度に重い空気が肺を圧迫して息苦しい。


「荒れたな」


晴明がポツリと呟いた。

彼はこの屋敷の事を、元々知っていたのだろう。

晴明に問いかけようとした瞬間────。


「!」


突如、空気が揺れた。

そして、身構えるカグヤの前に牛車が現れる。音もなく、ごく当たり前に其れは出て来た。

側面には、花を円状にした紋様。そして、傷の位置が一緒だ。

間違いなく、追っていた牛車だった。


出てきてから暫し待ったが、何の変化もない。

誰も乗っていないような静けさが不気味だ。


警戒しながら一歩牛車に近づいた瞬間、牛車の影が蠢いた。


「────っ!」


反射的に体を反転して避ける。晴明も難なく避けていた。やはり、この男は文官ではなく間違いなく武闘派だ。


改めて牛車の方向を見れば、牛車とカグヤたちの間に、あの黒い影が音もなく現れた。


「⋯やはり、現れたか」


晴明の小さな呟き。

風が届けてくれなければ、きっと聞き逃していただろう。


「ねぇ、コレは祓えるの?」


カグヤの言葉に、晴明は無言で首を振る。


「祓うには、足りぬ」


“何が”とは、教えてくれなかった。

無言になった晴明から視線を逸らし、影を見つめる。

 

今はまだ、祓えない。


今はということは、何らかの条件が揃えば祓えるのだろうか。


「コレだけでは祓えないってことか」


カグヤの呟きに、晴明がピクリと反応する。

否定の言葉はない。カグヤの考えは正しいということだ。


つまり、この影のようなモノには片割れないし、足りない部分がある。


たしかに、初めて晴明に会った時、彼はこう言った。

『これが怪異の一部だ』と。


怪異の一部だけでは、祓えない。

謎は多いが、怪異の全てを制圧し、解明する必要があるという事だろう。


「────とりあえず、コイツを何とかしないとね」


そう告げたカグヤの手には、扇子が握られていた。


「“風雅”」


カグヤの周りで騒いでいた風の精霊が、呼び声に呼応するように扇子の周りに集まる。

要の先の玉飾りが、薄緑色に輝いた。


月の精霊は効いた。

では、他の精霊ではどうなのか。


(何が効くのか、検証といこうか)


影を見つめ、カグヤの口元が不敵な笑みを形作る。


遅くなりました⋯。

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