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永遠の翼 〜変えられない運命に、祝福を〜  作者: 咲良 柚葉
第三章【永遠の翼〜夜を蝕む都〜】

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第四話:契りの盃

「さて、あれについて教えてくれるんですよね?」


カグヤは一歩距離を取り、膝を立てて座る。

お行儀が悪いとか言われそうだが、この体勢なら何があってもすぐに対応出来る。

晴明は、未だに何を考えているか読み切れないのだ。備えておいて損は無いだろう。


「そう構えるな」


整った顔に柔和な笑み。優しい態度。普通ならばそれに騙されるのかもしれない。

だが、そのどれもがカグヤには嘘くさく映る。演技にしか見えなかった。

やはり、この男は得体がしれない。


「酒でもどうだ?」

「⋯要らない」


差し出される酒器を一瞥するが、即座に拒否。

今は、飲んでいる場合では無い。


「そうか」


晴明は楽しげに笑う。

完全に向こうのペースなのが悔しいが、仕方ない。


「⋯あれは、影ではない」


唐突に喋り出した晴明の目が、スっと細まる。

それだけで、纏う雰囲気が変わった。


「⋯⋯なら、何?」

「“なり損ねたもの”だ」


意味は、分からない。

だが、はぐらかされている訳ではないことは理解できた。

晴明の目は、少しも笑っていない。


「都全体に“呪”がかけられている」

「⋯」

「厄介な類のな」


そう言って、酒を煽る。

すぐにそばに控えた式神が、空いた酒器にお酒を注ぐ。


「本来あるべき流れが、止められているのだ」


それは、常ならば止まる事のない流れ。

つまり夜が明けないのは────。


「誰かが、止めている?」


カグヤの問いに、晴明は答えない。

酒器の中の酒に注がれていた視線が、空へと向いた。


「人の念は、時に形を持つ」


空を見つめる瞳には、特に何の感情も見て取れない。その声もまた、平坦だ。

カグヤには晴明の目が、ここではない別の場所を見ているように見えた。


「その思いが強ければ、強いほど────歪む」

「⋯怨霊になるってこと?」

「いや、そう単純ではない」


晴明の視線が、初めて揺れる。


「これは⋯もう少し複雑だ」

「⋯⋯⋯」


晴明は今回の怪異について、どこまで掴んでいるのだろうか。

口ぶりからして、知らない訳ではない。だが、全てを知っている訳でもない────そんな感じだ。

そして、こちらに全ての手の内を晒してはくれないだろう。


カグヤが警戒しているように、晴明もまた、カグヤを警戒している。


「⋯情報、助かったよ」


分からない事は多い。

だが糸口は、見つけられた気がする。

 

「これから、どうする?」


立ち上がったカグヤに、晴明は座ったまま問いかける。


「探すよ、元凶を」


地道に調べていく以外に、道はない。いつも、やっていたことだ。

ただ今回は、少しだけハードモードというだけ。


「ならば、手を組まないか?」

「────え?」


カグヤは、晴明を振り返る。

未だに座ったまま、晴明はカグヤを真っ直ぐ見上げていた。目が合う。

暫しの沈黙。


「────わたしは、高いよ?」


カグヤは、ニヤリと笑った。

 

「問題ない」


晴明も、笑っている。


カグヤはもう一度座り込む。今度は、足を崩して。

そして、先ほどと同じように晴明から差し出される平たい盃。


「契りだ」


いちいち言葉が重い。

カグヤは、差し出された盃を見つめる。盃には、月明かりが煌めいていた。

それから、ゆっくりと受け取った。


「宜しく頼む」

「こちらこそ」


短い言葉。でも、それで十分だった。

二人は互いに視線を交わす。

一瞬の間。


晴明は何の躊躇もなく一口で飲み干し、カグヤも一瞬の躊躇の後、一気に飲み干す。

案の定、その酒は喉が焼けるほど熱かった。


濡れ縁の二人に、月の明かりが優しく降り注ぐ。


カグヤと晴明が契りを交わすシーンは、何気にお気に入りです〜。

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