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永遠の翼 〜変えられない運命に、祝福を〜  作者: 咲良 柚葉
第三章【永遠の翼〜夜を蝕む都〜】

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第二話:月の加護

突如黒い影が音もなく膨らんだ。

膨張した影が地を這うように広がっていく。


「────っ」


反射的に、カグヤは後方へ跳ぶ。

元々いた場所が、黒く侵されていく。


「よい判断だ」


冷静な声。声と同時に、影に向かって札が飛んだ。

黒い影に触れた瞬間。


空気が弾けるような音が響く。

続けざまに晴明が札を放つと、それを避けるように黒い影が後退した。


「⋯へぇ」


カグヤは口元に笑みを浮かべる。

晴明は、思ったよりも動きが俊敏だった。戦い慣れているともいえる。



ぶわっと、影が膨らむ。


だが、先ほどのようにすぐに攻めてはこない。

学習したというよりは、何かを嫌がっているようにも見える。



いつの間にか、辺りは明るさを取り戻しつつあった。

カグヤは無言で空を見上げる。

雲の切れ間から、青白い光がすこしだけ漏れていた。


(⋯これが影だとするなら────)


いつの間にか掲げたカグヤの手には、二対の扇子が握られていた。

右手の扇子を顔の横に掲げて、ゆっくりと開く。

扇面の白金に、青い繊細な模様が美しい。


「────“照らして、月華”」


カグヤの声に応えるように、扇の要から下がる透明な玉飾りが青白く輝いた。

それに伴い、扇面が淡い光を帯びる姿は、まるで月のよう────。


一瞬で、影との距離を詰める。

左下から、扇子を撫でるように振り上げた。



夜の闇に、火花が舞散る。

影が、弾いた。


続けて、左下の扇子は閉じたまま左上から袈裟斬りのように振り下ろす。

だが空を斬ったように、まるで手応えがない。


「⋯⋯なるほど」


カグヤは、得られた事実に口元を緩める。

右手の扇子は、淡く闇を照らしている。左に光はない。


閉じていた左手の扇子を開くと、シャランと涼しげな音が響いた。


「“月華”」


名を呼べば、光の無かった左手の扇子が輝きを帯びる。

二対の扇子を構え直し、影に相対する。


そのとき、月が姿を現した────。

構えた扇子に月の光が降り注ぎ、輝きを増す。


(⋯⋯見えた)


光に照らされて、一瞬だけ見えた暗い塊。

────核。


カグヤはそれを確認すると────音もなく相手に肉薄する。動きに合わせて裾が揺れた。


軽やかに舞いながら、交互に攻撃を繰り出すと、空気が弾けて火花が散る。

徐々にそのスピードを上げていくと、影が徐々に削れ始めた。

やがて、カグヤの連撃に影の動きが止まった。


その瞬間を見逃さず、月の加護を受けた扇子を胸の前でクロスさせると、思いっきり影に向かって引き抜く。

手応えがあった。

だが────浅い。


「ほう」


晴明の関心したような声。

追撃をしようとしたが、影が避けるように引いた。

と思った瞬間────。


「────っ!」


引いたと見せかけて、カグヤの死角から攻撃してきた。反射的に身体を捻って避け、影から距離を取る。


カグヤが引いたのをみて、影は溶けるように姿を消した。まるで最初からいなかったかのように。


「深追いはするな」

「しないよ」


得体がしれないものを追いかけても、事態が好転することはほぼ無いに等しい。

そして、逆に危うくすることは多かった。


「さて、あれについて教えてくれるんですよね?」


カグヤは扇子を消し、晴明を振り返る。


問答無用で戦いに巻き込んだのだ、ちゃんと説明してもらうまで許すつもりは無い。


晴明は戦える陰陽師ですよね〜。

書いてて楽しかったです!

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