第三話:嵐を呼ぶ少年
「聞いて下さいよ! さっき異常な電波を検知したので出処を探って調べてみたら、調査部からだったんですよ〜! 調査部にちょっと調べさせて欲しいって丁寧にお願いしたのに、アイツらなんて言ったと思います? こちらはそちらのように自由になる時間が無いのでお相手出来ませんって言ったんですよ!? 信じられます? 異常な電波垂れ流して興味を引いたのはそっちなのに!!」
入ってくるなり、マシンガンのように止まらないトークが始まってしまった。
カグヤの存在には気がついていないようだ。
チラリとクゥを見れば、未だに思考の海に沈んでいる。どう見ても、話を聞いているようにはみえない。
「こっちだって暇な訳じゃないのに、わざわざ調べに行ってあげたのに! あんな言い方しなくてもいいと思いませんか!? あんな意味不明な怪電波飛んでたら気になっちゃって仕事どころじゃ無くなっちゃいますよね! 調べに行きたくなっちゃいますよ!! それなのに、こちらはすでに調べていただけるように手配済みですのでお引き取り下さいなんて!! 酷すぎますよ────!! ボクが調べたかった!!!!!」
大絶叫と共に、最後に思いっきり本音が飛び出した。
そして、その大声にようやくクゥの意識がこちらを向いた。
「アレ、シャチ君。いつ来たんですか?」
クゥののんびりとした声に思わず苦笑が浮かぶ。シャチ君と呼ばれた少年のテンションとの落差が激しい。
「ボスぅぅ〜〜〜! 僕の話聞いてなかったんですか────!?」
「うん、別のことが気になってて」
クゥがハッキリバッサリ言い切った。
オブラートに包む気はさらさらなかったようだ。
たぶん、この少年はいつもこの高いテンションでマシンガントークを披露しているのだろう。そして、それにクゥは慣れているので適当にあしらっているのかもしれない。
「シャチ君、今は来客中なんだ。その話はまた後でね」
クゥにそう言われ、初めてカグヤの存在を認識したらしいシャチ君。
一瞬にして顔を真っ赤に染め、勢い良く頭を下げた。
「も、申し訳ございません! 出直してきます────!!」
来た時と同じように凄い勢いで出て行ってしまった。
まるで嵐のような人物だ。
「それでね、カグヤ」
出ていってしまったシャチを見送った後、カグヤへと向き直る。その顔は真剣そのもの。
先程からテンションの落差が激し過ぎる。
「ザウルスなんだけど、預からせてもらってもいいかな?」
「⋯いいけど、そんなに重症なの?」
カグヤの言葉に、クゥは首を振る。
「理由が分からないから、危ないんだよ」
声のトークを一段落とし、クゥがカグヤの目を真っ直ぐ見つめて言い切った。
いつものほほんとしているクゥからは想像が出来ない。だからこそ、それが相当ヤバい事象なのだとカグヤもやっと理解した。
神妙に頷く。
「じゃあ、これは預かるね」
クゥはカグヤを安心させるようにいつものにこやかな笑顔に戻ると、カグヤの頭をポンポンと撫でてから立ち上がる。
それはまるで先生が聞き分けのいい生徒を褒めるみたいな感じで、ちょっとだけくすぐったく感じた。
ヒスイやキリュウとはまた違う感覚だった。
「中のデータは移したから、しばらくこれを使ってくれる?」
そう言ってクゥに渡されたのは、色違いのザウルスだった。
カグヤのザウルスは特注で白色にしてもらっている。今受け取ったのは、黒いザウルスだ。
「ありがとう、クゥ」
照れ笑いとともにお礼を告げれば、クゥも嬉しそうに笑ってくれる。
その時────。
「カグヤ────?」
遠くから聞こえて来たのは、ヒスイの声だった。
その声に顔を見合せたカグヤとクゥは、二人して笑い合う。
「じゃあ、行ってくるよ。またね、クゥ」
「行ってらっしゃい、カグヤ」
シャチ君のマシンガントークは、書いててすごく楽しかったです〜!




