第一話:過保護な大人たち
仕事が終わり、いつものようにザウルスで帰還した瞬間。妙な音がした──ような気がした。
耳障りなソレは、ほんの一瞬。静かな空間でなければ、聴き逃していただろう。
「────?」
「どうした、カグヤ?」
ザウルスを見て首を傾げたカグヤに、ヒスイが問いかける。だが、カグヤの視線はザウルスから動かない。
カグヤの視線の先、カチカチと点滅するザウルス。今までに無い挙動だったが、画面はすぐにいつも通りに戻った。
「⋯ザウルス?」
〈────はい、何でしょうか〉
カグヤの呼び掛けに、ザウルスは何事も無かったかのように応じてくれた。それに一先ず安堵する。
そして誤作動に関しては、特に異常は認識出来ないとの解答。
「特に問題なさそう、行こう」
そう告げるカグヤだが、ヒスイの表情は晴れない。
難しい顔で眉間に皺が寄っている。
ヒスイは心配症だ。カグヤに関することなら尚更。それは過保護とも言う。
「大丈夫だよ!」
安心させるようにそう告げ、未だに渋るヒスイを引きづりつつ、キリュウの元へと転移する。今回はすでに許可をもらっているのでスムーズだ。毎回これでいい気がする。
「────ザウルスの調子が悪い?」
終わったと思っていた話はまだ終わっていなかったらしい。ヒスイは諦めが悪い事をすっかり失念していた。
普段はどちらかと言えばのんびりしているのに、こういう時の行動の速さは何なんだろう。
任務報告をするよりも早く、ヒスイによってキリュウに報告されてしまった。
先程のヒスイと同じく難しい表情になるキリュウに向かって、カグヤは慌てて声をかける。
「すぐに回復しましたし、ザウルスにも異常なしと言われました────」
問題ありません、と続けようとしたカグヤの声は音になる事はなかった。向けられた鋭い視線に言葉が止まる。
「今すぐ開発部に行ってこい」
「でも────」
低く紡がれた言葉には、有無を言わせぬ迫力があった。気圧されつつも、言葉を紡ごうとしたが。
「この後の任務に支障が出たら困るだろう」
「⋯⋯⋯⋯はい」
キリュウの至極真っ当な正論に、反論を封じられる。大人しく従う以外の選択肢は用意されていなかった。
「報告したら行くから、先に行ってろ」
ヒスイにトドメを刺され、大人しく頷く。二人分の圧力では、従うしかない。
今回はこの後すぐにもう一つ任務が入っている。キリュウに報告を終えたら一度調査部に向かう予定だった。だが、その前に開発部に向かうことが確定してしまった。
「迷うなよ」
「迷わないよ!」
そう言ったが、あそこはある意味で迷宮に近い。
迷うことはないだろうが、埋もれることはありそうだった。
二人に背を向けて歩き出しながら、気づかれないようにため息を吐く。
(過保護が増えた⋯)
げんなりしつつ、開発部に向けてトボトボと歩き出す。
ちょっとTRUSTの日常を書いてみようと思います〜。
5話くらいの予定です。
少しだけ、お付き合いいただけると嬉しいです!




