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永遠の翼 〜変えられない運命に、祝福を〜  作者: 咲良 柚葉
第二章【三国志編】

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第十二話:勝利の風

風が吹き抜ける。

それだけで、曹操は全てを理解した。


「申し上げます! 東南の風により、火が一気に拡大! 収集がつきません!!」


その報告を聞いても、驚くほど心は静かだった。

あの祈祷師の言葉が蘇る。


────風が吹けば、曹操様が負けます。


まさに、その通りになった。

そして風が吹いてから、祈祷師の姿が一切見えない。つまり、祈祷師の身に何かが起こり、風が復活したのだろう。


天幕から、外をみる。

東南からの風に煽られ、炎は勢いを増していく。

船から船へ、舐めるように炎が広がる。まるで、生きているかのように────。

船と船を繋いでいたが為に、船団には逃げ場がない。


「────退け」


静かに、そう告げた。



××××××××××



遠くで、炎が上がる。

続けざまに、色々な場所で火柱が立った。

曹操軍の船が燃えているのだろう。

周瑜率いる連合軍が、曹操軍に向かっていくのが見えた。


曹操軍は、すでに撤退の準備をしているのだろうか。


「⋯⋯⋯」


この火攻めで、曹操軍は相当大きな痛手を負うことになる。

だが無駄に戦おうとせず、撤退の判断が早かったために救われた命も多かっただろう。

そう考えれば、曹操という男は優れた指揮官だったのかもしれない。


これからも、戦は続いていく。場所を変え、国を変えて────。

その構図を考えたのは、今隣で同じく曹操軍の船団が燃えている光景を眺めている人物────諸葛亮孔明。


今回の侵入者との戦いにおいて、この男の知略がなければ、ここまで上手くいったかどうか怪しいモノだ。


「カグヤ」

「⋯なに?」


隣にいた孔明が、不意にこちらを向いた。

真っ直ぐにカグヤの目を見つめる。

そして、フッと優しげに細められる。それは、出会ってから初めてみる表情だった。


「此度は、ご尽力いただき感謝致します」


そういって、両の手を重ねて深々と頭を下げて膝を折った。

この時代のお辞儀────拱手。

そこに込められた思いが、伝わってきた。


「それを言ったら、こちらもだよ。孔明のお陰で助かりました。感謝致します」


カグヤも孔明に習って、謝意を返す。

胸の前で両手を重ねて膝を折り、頭を下げる。それはまるで、踊りの振りのように優雅だった。


「カグヤの舞、とても素敵でした」

「⋯⋯ありがとう、上手くいって良かったよ」


孔明は、社交辞令を決して言わない。

何故なら、そんな事をしても意味が無いと考えているからだ。

だからこそ、この言葉を素直に受け取れた。


「オレからも礼を言うよ」


そこに響いたのは、ヒスイの声。

のんびりと歩いてくる姿に、一体いつ戻ってきたのだろうか。


「ヒスイとカグヤがいなければ、この戦いは長期化していたでしょう」

「こちらも、短時間で解決出来て嬉しいよ」


孔明の力を借りなければ、もう少し時間がかかったのは言うまでもない。

監史者の考え方とは少し外れるが、臨機応変に対処しなければ任務を完了出来ないのだ。


「そろそろオレたちは行くよ」

「出来れば、もう少し話を聞きたいですが⋯仕方ないですね」


孔明の質問攻めには合いたくないので、さっさと撤退しよう。

孔明たちの記憶は、カグヤたちがこの世界を去れば消える。

だが、もしかしたらこの男は微かに残ったピースから、答えに辿り着くかもしれない。


そんな事を考えていたヒスイは、先ほどの元監史者だった女の言葉を思い出した。


(────裏切り者、か⋯)


無意識に、カグヤへと視線を向ける。


「どうしたの?」


カグヤが気づき、ヒスイの方を見上げる。

キョトンとした顔が、とても幼い。こんなところは出会った頃から、まるで変わらなかった。


「何でもないよ」

「そう?」

「あぁ────帰ろう」


これから帰る先がもしも敵だらけだとしても、ヒスイはカグヤを守り抜く。

光る魔法陣に立ちながら、ヒスイは密かにそう誓った。

何があっても、必ず守ると────。


二人の消えた場所に、風が吹き抜ける。


それは、勝利を告げる風か。

それとも、これから訪れる戦乱の前触れか。


遠く燃え盛る炎は、まだ消えそうにない────。


赤壁の戦いは好きな話なので、書けて楽しかったです〜!

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