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元オッサンの眷属使い  作者: 烏賊紳士
第三章 新しい関係ともふもふ生活
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第四十五旅 想定内ではない事は幾らでも

 長らくお待たせしました。年が変わってしまいました。

 明けましておめでとうございます。

 近くの同業が閉店してしまい客が増えてもバイトの補充もしてくれない所で働いているもので、時間が取れずなかなか書けませんでした。

 ストレスか中身も書いて書き直してばかりで少なくとも4000~5000文字くらい消えたし。

「おっしゃー!オラオラオラァ!まだまだだぜ、おっさん!」


「はいはい。いいからここから出ようってんだから、もっと頑張りな。」


「こっちはどうですか。……今迄とは違いますよっ!まだまだ行きます!」


 子供達との最初の模擬戦から既に三ヶ月が経ち、先ずは全ての基礎である体力と魔力量を増やせるだけ増やして、そして上手く使えなければ意味は無いので魔力操作を徹底的に鍛え上げた。

 喋る、怒鳴ると余計な事をしながらでも、死力を尽くすよう言って全力で戦っても、最低で一時間は持つよう継戦能力が上がり、修練も次の段階に進む事にしたが色々面倒な事が起こり始めたのは予想外、というかそういう事もあるかとは思ってはいたけど、予想よりも全然早かった。

 うちの家族に加える形で実戦は行ってきたが、そろそろ見守りのいない経験も積ませないと、と思って明日からは三人の子供達と実務のルーンとミナの二人と踊り子のルティアの合計六人で無作為に二組作り、サポートでセルと運動不足気味のイルメラの二人かシーラを付けて色々行かせるつもりだった、んだが。


 子供達が此処から出て自分達だけでやりたいとか言い出した。

 三対一でかなり手加減したシーラや、余りやる気のない半分寝ながらのイーリス、何だかんだでちゃんとする事もあるオルガからも誘導してもらったり流れを作ってもらったりしてなら一本取れたりはしていたが、基本的に厳しい割合の多い俺やレティが見ていないうちにちょっと調子に乗ってしまっていただろう事は一人は見て分かるほどで。

 残りの二人はそこまでではなさそうだが、二人共デュークが本気で言い出す時は反対する気がない様で、自分達でフォローすれば何とかなるんじゃないかとでも思っているんだろう。


 現実問題として始めからそう上手くいくとは限らない訳だが、若い世代の暴走時にまともであろうが無かろうが大人の言う事を聞いてくれるかと言ったら、まあ無理だろう。

 いちいち伸びた鼻を叩き折るのも面倒だし、思い通りにいかない事ぐらいは予想していたので、自由にさせてまた助けが欲しいとなったら手を出すくらいで丁度いいだろう。

 自分から手を出す大人が自分の都合で手や口を出して、助けるつもりであったとしても間違えてしまう事もままあるしね。


 って事で切りを付けて最後の修練を行っている所だが、思っていたより進んでいない様でちょっと不安がムクムクと出てきた。

 大丈夫だろうか。

 ……こういう時の大人の不安は大概が無駄なモノになりがちだし、ハルトに忠告しておけば良い時に止めるなり思い出させるなりしてくれるだろうと思いたい。


 バランスがどうなるかと思ったが結局はロザが運良く魔法職に適性があって(本当は中距離戦闘の出来る鞭や投擲術にも適正はあった)、色々落ち着いてから確認したところ性格的にも後衛向きだったので、最低限の体力魔力は付けた後一定の威力を出し続けられるよう修練中だったんだ、けどね。

 今はレティに見てもらってるけど、一番安全な相手なんだがこっちに信用がないのか優しすぎるのか……って、違う、か。

 いつも通り下を向きがちで変わらないと思っていたけど、ヤバい……どう考えても思考が足りなかった。


 俺も変わらないと思っているって事は、レティ相手もそうだろうけど、レティの主の俺相手も多分ビビってるよねロザ。

 最初から下を向きやすく、話し方も誰と話してても途切れ途切れなのは今も変わらないし、シーラ達から問題提起も無かったしで放っておいたんだが、それが悪かったか。

 俺達にだけそうなんじゃあ一々個々の修練中に確認している訳もなく、当然シーラ達も分からんだろうし、レティの正体を見知った人がどこまで信用するか、なんてそれぞれだって事をもうちょっと考えとくべきだったか。


「……ま、だ。」


「ロザ。慣れない喋りより集中しなさい。威力がばらついているわよ。意味のある威力の増減以外は無駄にしている魔力が有る事になるのだから、先ずは条件反射で一定の威力が出せる様にならないと。威力を上げるも下げるも変化応用もそれからよ。」


「……うん。」


 俺が近接戦闘の模擬戦をやっている横では、レティが自分の前面に並べた魔法職に対してその全ての攻撃魔法を打ち落とし、かき消し、上に吹き飛ばしと他に影響無い様対処しつつそれぞれに助言していた。

 ただ、新人にはまだ助言のみで優しいが、シーラとイーリス、オルガ、真夜に関してはちょっとでも魔力操作の甘い魔法を放とうものなら結構酷いお仕置きが待っていた。

 さっきから偶に<ドン!!><ドゥン!>「痛っ!」と衝撃音と悲鳴がよく聞こえるのだが、気になって見てみると見本なんだろうがとんでもない事をしていた。


 先に基本を確認しておくと、魔法は自分の周り1~2m部分に、若しくは手の先など指定しやすい所に自分の魔力を放出して、そこで火なり水なりを発生させる訳で、全ての魔法は自分の近くから発生させるのが常識だ。

 俺も調子で増減するけど10m前後位なら出来なくもないがそこまで精密にはまだ狙えないし、放出した魔力をまた取り込む事は出来ないので遠ければ遠いほど消費する魔力量は増えるしで、遠隔発動は使われない(使えない)技術として有名なくらいだ。

 だからこそ最初の頃から魔力操作を鍛え上げ少しずつ射程を伸ばしたんだが、普通に2~30m位離れた場所に直接発動しているのは、さすが竜王。


 レティは20m以上離れたシーラ、イーリス、オルガの三人の目の前に行き成り風の球を出して強烈な衝撃を当てたり、手抜きを見抜くと足元から強烈な小型の竜巻を発生させて1.5m位で上下左右かき回して背中から落とすって結構酷いお仕置きをしていた。

 真夜は元からなのかそういう調整が一番上手く、レティの指示をほぼ間違える事なく、それどころか意図的にお仕置き中などを狙って不意を突いたりすらしているようだが。


「なかなか良いタイミングですよ。」


「いえ、今のままでは不意は付けないと分かりました。……ふむ、やはり私にも遠隔発動が必要ですか。」


「聞こえていますよ、真夜。しかし、厳しい様ですが、あなた達魔物には難しいですよ。」


「何故でしょうかレティ。」


 気が短い奴なら突っかかるなりケンカ腰になりそうな内容だが、真夜の特性なのか性格なのかただ何故って感じだ。

 因みに、模擬戦中な上更に目の前に喧しいのが居て聞こえ難い筈なのに、何故はっきりと聞こえているかというとレティの便利風魔法だ。

 俺の記憶からちょこちょこやっている様だけど、声や音が空気の振動だと知って幾つか生み出した中の一つだ。


 音を大体百メートル圏内視認できる場所であれば好きな場所に飛ばす事が出来て、俺が必要な情報だと思ったらある程度集中していない時だけ狙って送ってきてくれる。

 今も俺がそっちを気にしているのを気付いて、即座に音を流してくれた。


「そうですね。まあ、貴女なら良いですか。」


「??なぜ「なら」なのでしょう?」


「色々後始末が面倒なのですよ。この手の質問の場合、理由が高確率でどうしようもないモノだった時や、それ以前に元から理不尽だった時、数少ない自分でストレスを処理できる者と、多くの周りのせい自分以外のせいにする者に分かれると私は思っています。その多くの自分以外のせいにする愚か者の中には、少数ですが本当に愚かな事に実力行使に出る者もいますから。しかし、貴女はこの場に居る中で最もそんな感情から遠い、といいますか……今の貴女にその感情が在るかも分からないですからね。」


「なるほど。まあ、無い訳ではないですが、アルジ以外に関してはどうでもいいのが本心ですね。」


 本当に興味が無いのだろうが、遠くに見てもどうでもよさそうと言うか……元から感情を出すタイプではないのに無表情の中にもどうでもいい感じが分かるくらいだ。


「ならば教えてあげましょう。あなた達モンスターは、人などよりも余程密接に魔力と繋がっているのですよ。極端な例ですが魔力が特別に濃い場所に住む種族が居て、その種は魔力で生命活動を行うモノで逆に外に魔法として発現出来なかったはずです。通常はそこまでではないにしても、基本的に魔法を使うモンスターは本能で使う自分の強化か、通常通り撃ち出す魔法を使うかってところですね。」


「ほー、そうなのですね。確かに使おうにも欠片も体から離れませんね。」


「例外も居て、その種族の特性に置いて使える魔法に限っては別、な事もありますが。」


 ちらっと見ると魔力を離そうとしている様だが、体の周りを滞留しているだけだな。

 こっちもデュークにしろハルトにしろ育てるのが難しいというのが分かっただけでも収穫で、得意不得意とやりたい事は一致しないってよく分かった。

 デュークは体の使い方や力のバランスから叩き潰す斧の方が適正有りそうなのに大剣ならともかく剣を使いたがり、ハルトはフォローを考えすぎて使い慣れた剣を使えばいいのに槍を主武器に使っていて、結果的に前衛の攻撃力が足りない状況によくなっている。


 と言うか、受けだけと分かっている俺相手に攻撃力が足りないって判断されちゃあ駄目だろう。

 ロザも魔力量は何とかギリ及第まで増えたけど、魔力操作も戦闘での精神的な安定もまだまだで、継戦能力は有れど同格の相手とやるにはまだ早い感じだな。

 ……ま、不安だらけだけど此処での生活はすぐに死なない様にっていう俺の好意以外ではない訳で、出て行きたいって言ってるのに留め置く理由もないし、しょうがない。


「デューク、ハルト。これが最後の模擬戦なんだ。たらたら続けてもしょうがないし、全力でかかってこいっ!最後に一撃だけでも当ててみろ。」


「……そうだな。」


 剣を納めて深呼吸をしたデュークは、気合を入れる為に大きな音を立てて両手で顔を挟んで叩いた。

 物語でシーンを際立たせるためにかよくやるけど、実際に気合を入れるのに一々やるとはちょっと吃驚。

 ……さて、どこまで成長したか見れるかな。


「うしっ!やるかっ!」


 超やる気に満ちた目をハルトに向けているが、ハルトは行き成りそこまで盛り上がっていない様に見える。

 が、これまでを見ていれば分かる。

 持っている槍に目を落としているが、目の色が違うしあれ多分もう戦略を考えているじゃなかろうか。


「……あれを……こう……デュークの……。」


 ブツブツ言いながらデュークに近づくと耳元で何か話し出した。

 あそこまでせんでも聞き耳立てたりはしないが、横での修練を分かりやすく意図的に見といてやろう。

 他は普通なんだが、真夜とレティの間だけ別のやりあいがあるようで面白くて集中して見ていたら、気が付いたらお話は終わったようだった。


「気を使わせてゴメンな、オッサン。」


「有難うございます。本当に全力でやれば、数合斬りあえればってところでしょうか。準備は万端、仕上げを御覧じろって事で……行きます!!」


 いつも通り突っ込んでくるデュークに陰に隠れるハルト、と先ずぱっと見はいつものまま、か。

 普段なら軽くなら寸止め、きつめで石突きか剣の腹で叩くくらいだが、今回は何時ものままなら何時もより強めに制圧してやろうと思うが、さてどうかな。

 俺は今の所は結局主武器として使っているのは槍なので、逆さに構えて先ずは待ち。


 何時もより鋭く斬りかかってきたデュークに、今までより巧妙に隠れて体を見せないまま避けた方向に片手突きを放つハルト。

 ちょっと嬉しくなりながらもハルトの槍を意図的にデュークに当たるよう弾くと、ハルトの予想に嵌まったのか既にその場には居なかった。

 これまであまり選ばなかった選択肢を意図的に選んでいるようで、反対に移動しながら挟み撃ちの形に持っていこうって感じか。


 確かにこういう回数を重ねる修練相手の場合、裏をかくだけで一苦労で、ってそろそろだな。

 何時もなら完全に挟み撃ちにする事に拘るので逆に分かりやすく対処も簡単なんだが、ここ最近やってこないと思っていたので裏をかく機会を窺っていたんじゃなかろうか。

 丁度良いので今回狙ったんだろうが、これこそ逆に甘いというか……分かり易いな。


「どらぁっ!!ハルト!」


「おう!はぁっ!!」


 前からデュークが逆袈裟に、左後ろからはハルトが腰だめに構えた槍を右薙……?

 いや、逆だ!

 見え難いより俺が避け難い方を選び、前から右上からの斬り下ろし後ろから左からの槍の薙ぎ払いで、通常なら弾くなり防ぐなりしないと。


 タイミングは読みやすかったが方向を見誤ったせいで余裕が余り無いが、最後だし受けてやろうか上を見せてやろうか、さてどうするか。

 今の俺の速度であれば、少し早く動くだけで右下に転がって避ける事も出来るけれども、そう長く悩む時間も無いし、調子に乗らせすぎるのはまずいし今回は上を見せようか。


「ふんっ!」<ガッ!ガン!>


 一息吐いて、持っている槍を体に添わせる様回転させてデュークの剣を下から弾き、ハルトの槍を上から地に叩き付けた。

 かなり強く弾いた為、デュークは数メートル後ろに吹っ飛びハルトは槍を持っていられず手放し膝をついたまま痺れた手を見つめていた。


「おしっ!これでお仕舞い。」


 ここでの経験で少しは生存率が上がってくれればいいけど、出た後の責任は持てんし……後は頑張れ。




 夏のある日ここからデューク達が出て行く日になった。

 結局はそこまで強くはしてやれなかったが、ハルトに注意はしたし後は自分で頑張ってもらうとして、横で晴れ晴れとしているデュークにはちょっとイラっとするな。

 デュークが腰に下げた剣と、ハルトの背に負われた槍はイルメラ作の物で、下手なのに狙われないよう背伸びすれば持てる中級者レベルの物にしてもらった。


 が、まだ此処での稼ぎが無いので餞別でくれてやった剣と槍なんだが、余り高くなった鼻が折れていないようだし、返してもらおうかな(邪笑)。

 防具もイルメラは居るが今有る物は逆に良い物ばかりで阿呆を呼び寄せそうだったので、手っ取り早く近くの町であるカルカーンで初心者にはちょっと良い位の革鎧を買って来て着ているんだが、基礎能力が違うので武器無くてもいいんじゃね?

 とまあ俺が小っちゃい事を考えている横で最後の挨拶が終わろうとしていた。


「「「ありがとうございました。」」」


「本当に助かったよ、おっさん。姉さん達も。王都であのまま裏路地で死なずに済んだのもそうだし、此処での生活もな。」


「……ありがと。」


「貴方達が何故生き急ぐのかは分かりませんが、あまり無理はしない事ですよ。何時も助けが入るとは限りませんからね。」


 俺からの言葉は余り真面目に聞いている様子もなかったのに、レティの言葉には、って言うのも野暮か。

 まあ、一応弟子一号な訳だしそのまま送り出してやろう。

 すでに後ろを向いているハルトとロザ、最後までこっちを見ていたデュークに最後の言葉を送ってやる。


「じゃあな。」


「ああ。」


 本当だったら町や村から街道や平原に向かっていく絵とかが良いんだろうけれど、この村が在るのは森の奥なので鬱蒼とした森に進んで行く三人は不吉にも見えるが、しようがないか。

 ……一応分かり易く北へ向かえば街道に出るし、この森から出るだけの実力は本来ある筈だが、実戦が足りないのはちょっと不安。

 斜め後ろで控えている真夜に目線を送ると、一瞬出て行った彼らの方を見て少し溜息をつき森に向かって俺に聞こえない音で何か伝えると、二体のかなり大きな虫が森の入り口に現れた。



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