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元オッサンの眷属使い  作者: 烏賊紳士
第三章 新しい関係ともふもふ生活
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第四十一旅 最初は現実逃避するよね

大変お待たせしました。

今回やっぱり基本読む方が好きだとよく分かりました。

四百話位の二作品を最初から読んでいました。

気長に次回を待っていただけると。

 まずどれくらい手加減するか確認する様に棍で上下に分けて突いていく。

 ちょっとでものけぞったり僅かにでも重心がズレた様に見えた瞬間、一番避け難い筈の胸元と腹部を棍のしなりを使って何処を狙っているか分からない様にしつつ、連続で強めに突いてみた。

 バレバレだったからだろうが最初の一撃から木刀に一瞬で軽く払われ、三撃目には手から棍が吹き飛びそうな一撃を受け、六撃目には手が痺れて続けて突けない程の一撃で下がらざるを得なくなってしまった。


「これからが本番だ。よく見ておけよ。」


 まあ分かっていた事だが、実力者にぱっと見でスキが見えた時は、基本誘導かそもそもその程度問題無い程実力に差があるかくらいしかないって事だ。

 まだほぼ動いていないレティに、今度は膝下から足元を集中して突いていく。

 完全に見えなくなっては意味が無いので、シーラ達やセルは勿論ルティア達や子供達にも一応見える速度で二人共戦っている筈なのに、戦闘経験の差は本来無い筈なのに全く当たる気がしない。


 一応間を測ってそのまま木刀では斬りかかれない所から、体の中心から端までフェイントを含めて数十突いては払い、打ち下ろし、振り上げていくがかすりもしない。

 自分の回避を考えると、この一年、一、二の時間と色んな執念を含めて鍛えた槍術で(もう一つは魔力制御だ)、今の実力でもう半歩でも近付けば、レティの六割位で斬りかかられたらもう避けられないだろう。

 因みに今の距離でも八割で斬りかかられたらもう無理だが。


 やはり連綿と繋がって来た竜族の記憶の中には人型での戦闘経験もあったのだろうが、本人の資質のあってかドンドン強くなっていって、その強くなる速度が速すぎて全く追いつけないってどうなのよ。

 一応この集団の中では二番目に強い筈の(何だったらこの短時間で結構強くなれたしチート持ちと言って良いんじゃないかと思う)俺でも、半分くらいの手加減でほぼ互角って、この世界の本当の強者ってどんだけ何だか。

 手加減しているので出来ている余裕でちょっとズレた事を考えていると、俯瞰で見ていたレティが一瞬笑ったと思ったら……嫌な予感が全力を要求した瞬間いきなり俺の全力を少し超える速度で斬りかかって来た。


「どわっ!とっ、はっ!」


 本当はもうちょっと時間を掛けてから速度を上げていくつもりだったんだけど、戦闘に集中しない俺が気にくわなかったんだろうレティから強制的に速度を上げられてしまった。

 しかも、本気でやっても少しずつ手が足りなくなっていくって……結構ヤバい。

 少しずつ少しずつ、二刀の木刀に反撃もままならないまま追い詰められていく。


 剣と棍が当たる木の音だけが響く中、左右からの斬り払いも含めた二刀の斬撃に左右の移動も抑えられ少しずつ後ずさって行くしかなかった。

 ただ、森の近くまでは模擬戦の意味を考えると下がれないので、棍の真ん中辺りを持ち小さく両端を動かす事で何とか止まってレティの攻撃を捌く。

 が、時間を稼ぐのが精一杯で、結局最後には棍を弾き飛ばされ降参する事になった。


「……降参。」


 両手を上げて降参を示すが……やっぱり悔しいな。


いさぎよくてよろしい。で……ご主人様。模擬戦とは言え途中で考え事とはどういうつもりですか?」


「うっ!?やっぱりバレてたか。」


「そりゃバレますよ。どれだけ相手していると思っているんですか?しかも従魔としての繋がりも有って、更に分かり易いのですから。」


「いや。ただ、竜族とは言えレティが強すぎるなぁ、と。追いつけんなぁと考えてただけだよ。」


「ん~。そんな情けない事を言わないで下さい。ご主人様には出来れば私を超えていただきたいのですから。私は時間は掛かれど早くて数年、遅くとも十年有れば互角までは来れるんじゃないかと思っていますよ。後、家の人間ではイーリスはかなりの才能が有りますからある程度まで、シーラとオルガもそれぞれ得意な物に関しては多少はいけると思いますよ?」


「(俺以外ざっくり過ぎる気がするが?)うん、まあそうだと良いけどな。……さて、大丈夫か、な?」


 森から聞こえる音以外何も聞こえないので周りをざっと見てみると、完全に止まってしまった子供達、口をパクパクさせているルティア、その後ろで服を掴んだままプルプル震えているミナ、今迄はまだ落ち着いている様見えたルーンも一見普通に見えるが視線が揺れまくりであからさまに動揺が見て取れた。

 ただ、丁度良いと取れない事も無い……事にして新人達が固まったまま今度は魔法を見せようとレティに目線を送ると、嬉しい事に同じ事を考えていたのか頷きながら魔力を高めていた。


「じゃあ、そのまま見とけよ。多少現実逃避していてもいいが、理解しようとはしとく様にな。」


 またさっきと同じ所で、今度は少し離れて対峙した。

 俺の得意魔法を考えればレティが攻めで俺が受けになるけれど、実力差を考えれば俺は当然本気でやらないと悲しい結果になりかねん。

 今はほとんどしない魔法名を唱える事もしつつ、より硬くより柔軟にイメージを魔力を練っていく。


『遮壁』


 先ずは見物人の前に森に影響が出無い様に特殊な形の丈夫な空間障壁を張る。

 流れた攻撃がいくだけなら全て上に流してくれるだろう。

 自分の前に改めて張った障壁には、見た目分かり易い様に薄っすら白っぽい感じにしておいた。


「よし!来いっ!」


 言ったとたん風の砲弾がタイミングをずらしつつ十単位で飛んで来た。

 連続で障壁に当たってドドドンと凄まじい音がしているが、レティの顔を見ると……無表情を装っているがちょっと嬉しそうに見える。

 風系統の魔法は基本どれも見づらいが、風の砲弾の中に混ぜていた細く貫通力を上げた弾や、見えにくい風の刃を障壁を補強して防いだからだろう。


 けれど、俺から見ればこういう状況ではよくあるフェイントな気がするし、この状況でも油断しない様にって事だろうが、レティ相手だと何時こんな感じで試されるかは分からんから当然っちゃあ当然。

 風弾を順調に防いでいるとだんだん周りに風が渦巻き始め、丁度障壁を覆う形で竜巻が発生した。

 風魔法で始めから風を動かしそのまま流れる様に竜巻を作るって……ハッキリ言ってもうちょっと手加減が欲しい。


 さっきよりも圧力を増した風弾と風刃を受け止めつつ、異物を混ぜられ端から削り取られていく様調整された竜巻に締め上げられ、最初に張った障壁が限界近くなって来た。

 順次魔力を送り修復してはいるがレティの魔力量にはかなわんし、ただ防御しているだけじゃ周りの見物人に俺の実力は分からないだろう。

 時間を稼ぐ意味も無いから、ちょっと攻めに出てみますか。


 先ずは障壁に魔力を更に注ぎ込み内側から拡大させ、これから放たれようとしているレティの風魔法を弾き出した。

 一瞬空いた空間に今度は俺がバスケットボールほどの火球をずらっと十数個並べ、レティに向かって着弾のタイミングと進路をバラバラになる様放った。

 大体二秒ほどで上下左右前後ずらしてレティの正面に着弾する様しておいたが、かなり近い所まで達しても何もしようとしていない様に見えた……が。


 ぱっと見で危ない様に見えるが、魔力の練られかたが常人とも、言いたくはないが鍛え上げた筈の俺よりも全く違うので、間に合わないなんてありえないと次の魔法を用意していくが、見ている方は分からん様で横から「キャッ!」とか「危ない!」とか悲鳴やら何やら飛んで来た。

 長くやってもきついし、最後に派手に一発やって終わるとしようか。

 レティ相手だといつの間にか魔力にしろ体力にしろすごい勢いでガリガリ減っていくから、普段は意識してはいたんだが周りの事とか考えていたからか気が付いたら回復していたはずの魔力がもう半分近くまで減っていたし。


 ちょっとは魔力を込めて撃った火球だったんだが、ふいっと手を振ったと思ったらレティの前にだけ烈風が吹き荒れ一瞬で掻き消されてしまった。

 ちょっと気落ちしていると、レティから更に練り上げた魔力が吹き上げていた。

 俺が思っていた事と同じ事を考えていると分かったので、最後の一撃の為俺も魔力を練り上げた。


 頭上に残り魔力の半分を込めた巨大な火球を練り上げると、レティも頭上に轟々と唸りをあげる巨大な風球を浮かせていた。

 頷きながら、同時に魔法を撃つ。

 中間地点でぶつかり合う魔法が徐々に周りに影響し始めた。


 火と風だからか球は徐々に削れている様にも見えるが、周りには熱と風が荒れ狂い出しかなりの高温の熱風が吹いていた。

 魔力を完全に制御してあるので周りの木々に火は付かないだろうが、水分が蒸発したりで良い影響は無いだろうし、薄く障壁を出し周りに行かない様にだけして上昇気流に任せる。

 このデモンストレーションはこれで終わるので見物の方を見ると、顎が外れそうなほどアホ面しているのも居ればまとまって震えているのも居た。


 後でちゃんとフォローもしてやらんとそのまま怖がられて終わりそうな気もするし、引き延ばしても良い事無さそうなんでもうサッと終わらせますか。

 互角にぶつかり合っていた魔法の魔力供給を絶つと、ほぼ同じ魔力を注がれた魔法だったのでそのまま削り合って消えて行った。

 多分もう少し魔力が合わさっていたら状況次第で火炎旋風も使えそうかと思いたい所だが、今のを見れば実際のところは無理だと分かる。


 一人で最初からきちんと火と風の魔力を練って合わせれば使えない事も無いとは思うけど、自分と相手の使う魔力量、居場所の空気や浮遊魔力の状況など把握しなければいけない事が多くて別の魔法と合わせてなんて無理があり過ぎだな。

 さっきの状況は魔力自体はほぼ同じだったし、多少噛み合った所で上昇気流も出始めてはいたけど、自然発生の火でも風でも無く攻撃魔法としてのモノだったし、それが合わさってしまうなら属性系統の攻撃魔法はかなり色々面倒な事になるんじゃなかろうか。

 と、とりとめなく考えながらレティと並んで皆の所に歩いていくと、子供達はそのままボーっとしていたままだったが、大人達はちょっと引いた様で一歩下がっていた。


「さて、今のを見てどうだった?……ルーン、ミナ、ルティア。」


 落ち着いた後もう一回聞くつもりだが、色々混乱したままの感想も面白くなりそうなので即聞いてみた。


「……あ~、えっと……。」


 ルーンは割と冷静の様に見えるが、逆に落ち着かないと頭の回転が止まっている様に見える。

 あー、うー、えー、と意味不明な呻きがとまらん様だ。


「……。」


 ミナとルティア二人共黙ったままの可能性も多少なりとも考えたが、ミナが後ろからルティアの貫頭衣の裾をくいくいっと引っ張ると、予想通り瞬間的に頭に血が上ったのか首から上を真っ赤にしたルティアが突っ込んで来た。


「ちょ‥‥ちょ、ちょちょっっと待ってよ!?あんたたち今なにゃやったのよ?!意味がまっ‥‥たく分かんないんだけど?‥‥最初のも後のもどういう事よっ!?」


 途中普通に噛んでたけど興奮で全く気付いてないな。

 突っ込んできた上に更に興奮して襟をつかんできたりしそうなので、一旦少し落ち着かせる為に両肩に手を置いてこれ以上近付かない様押し止めてみた。

 ラッキースケベ系統だと何もしないで胸を押し付けられ、にやけて殴られてとかなんだろうけれど。


「落ち着け、ルティア。」


 こういう状況の時は行動にしろ感情にしろ先走った部分を止めれば何とかなるかと思うんだが‥‥どうかな。


「はっ……あっ、ご、ごめんなさい。それらしいことは言ってたし、突っかかる事じゃないわね。」


 今回は早くに昇った血が下がってくれたが、ルティアはちょっと熱しやすいのを何とかせんと色んな意味で危険だな。

 今ももう少しで胸を押し付けられそうだったことから男女での危険もそうだし、一応指導はするけど戦闘面での不安もある。

 猪武者はとかく死に易く、援護が無ければ基本的に戦闘時にはカモだしな。


 万が一位まずいないと思うが、想定外の化け物まで育つ奴が居ないでは無いとは思うけれども、ね。

 ‥‥まあそれは実際の修練時に考えればいいか。

 ほんじゃ、まあめんどいけど、説明か。


「うん、すぐに落ち着いてくれたのは良い事だ。まあ、見て分かったと思うがここは普通じゃあない。なので幾らか説明しておいた方がいい事があってな。一旦皆集まってくれ。」


 途中から皆に聞かせる様に声を張って全員を集めて説明を始める。

 長い様で短かったこの一年で理解出来た前世からこの世界での今世の事を。


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