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元オッサンの眷属使い  作者: 烏賊紳士
第三章 新しい関係ともふもふ生活
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第三十八旅 宴の前にやり忘れた事をを片付けましょう

待ってくれている方、お待たせしました。



 眠りにつきかけた瞬間、ある事を思い出し飛び起きた。


「やっべ。あいつらの怪我治しきって無かった。」


 魔力が足りなかったとはいえガリオンは最低限治しておいたし基本自己治癒なんで構わないが、子供達も最低限しか治してなかった事を思い出せたのは良かった。

 そのまま放っといても血の匂いに気付いたレティか真夜に起こされるだろうが、特にレティに起こされた場合……後が怖い。

 元から色々と忘れやすい俺の通常の物忘れには寛容だが、この内容だと下手すると明日の宴に参加できなくなるような罰になる恐れがあるからな。


 急いで下に降りるともう説明は終わった様で、新人達だけが机に座ったまま呆然としていた。

 奥からは飯を作ってやってるんだろう音が聞こえて来ていたので、一旦放っておいて少しでも頭の中を整理させているんだろう。

 丁度良かったので驚く三人を無視して手早く傷を確認して端から治していく。


 一番酷かった傷だけはほぼ治してあったので、レティ達が戻ってくる前に移動時間で回復した分の魔力で放っておいても問題無い傷以外を大体治して、今更だが出来るだけ音を消して急いで寝室に逃げた。

 とは言え最初は焦って全く気配も音も消していなかった訳で、レティ達が見逃してくれたってのが現実なのは分かり切っていたが。

 寝室に戻るとまたベッドの上でイーリスが膝を抱えて丸まっていたので、今度こそ抱きかかえて深い眠りへ……Zzz。





 早く寝た所為か明らかに日が昇ったばかりのかなり早い内に目が覚めたので、いつも通り槍を振って体を温め準備をしておくことに。

 無心で動いていたら気になっていた事を勝手に考え出しちゃったが、知識だけは有ったもののこの世界に来て初めて理解した気がするが、実戦に置いて本来訓練なんて物が余り意味は無いんじゃなかろうか。

 皆死に物狂いで生きる為に戦い、血が昇り視野の狭窄も起これば血の匂いや傍に在る人の死で臆病風に吹かれる者も居るだろうし、まあ経験を積めば別だが最初の内は基本的に訓練通りに行く事は少ないと思う。


 その中でも実力を出せる様に様々な実戦訓練を行う訳だろうが、まあ他にも面倒が多くてしょうがない。

 自分が何処の位階に居るかにもよるが、情報をどう伝えるか?陣形は?何処に誰を配置する?兵糧は?始まる前にもう幾らでも考えなければいけない事があるのに、上の位階になれば前準備から後処理までやらなければいけない事が鼠算式に増えるだろうし軍師系統なんてやってられんとしか思えん。

 その上で実戦においては予想外、想定外にも対応しなくてはいけないとか被虐癖にも程が有るって感じだな。


 遠い国では他国に侵略しまくり常に戦争状態の国も幾つかあるそうで、最初からそう言う教育を受けて育てば根本の考え方も違うだろうし、基礎知識も自国に寄せた常識を教えて残り全てを戦争に関しての教育をすれば、どこぞに在った愛国教育万歳の国々の様に諸手を挙げて全員参加させる事も出来るだろう。

 そういう国だと一般人や兵士等戦争に関わっているかどうかを問わず、戦争に特化した戦争税等の通常と違う常識を常識として教えられていくんだろうとは思う。

 その中で戦術や兵站の事を学べば、もう少しは戦争に興味、と言うか出世欲や権力欲を持てたのかね。


 当然俺は一般の日本国民で根本から常識が違うし所謂いわゆるチート持ちでは無いので、行き成りスキルを覚えました、全部理解しました、戦争指揮出来ましたなんてのは無理。

 というか、後から皆に聞いて自分で実感して理解したけれど、本来この世界では俺が来た時の様なポイント制は有り得ない。

 本来はある程度剣術なり身に付いた頃に鑑定時にステータスとして現れるだけの、要するに何が出来るかの表示であって、何も出来ない状態で先にステータスにスキルが有る事がおかしい‥‥らしい。


 ただ、アルムから聞いた話だと最初からチートではないがブーストは掛かっていたらしいし、そこのステータス上の表示だったのかな、とは予想しているが。

 才能が無ければ後付けするよ、位な感じで、後はちゃんと努力すれば元からこの世界に居る冒険者達にも追いつける期間はあげるって事だったんじゃなかろうか。

 体を何の不安も無く動かせるのが嬉しくて楽しくて、鑑定すると不安になっちゃうぐらいな感じで成長出来ちゃったけれど。


 いつも通り槍を振って体を無心で動かしていたが、体力がある程度減ってきたらいつも通り更にやる事を増やす。

 接近戦をしつつ同時に魔法を使うなんて場面も当然出て来るだろうし、続けて槍を振りつつ体の周り一mから二m範囲に一つ、また一つと火球、水球、土球、風球と順番に浮かせ、次は数を増やしていく。

 意識すると失敗し易いので、意識を余り向けないまま自分の周りに浮いている数十の球を適当に時間差で俺に向かって来る様にして、一旦また槍を振る事に集中する。


 実戦を踏まえ不意打ちも意識に入れて周囲十mくらいをサーチしつつ、短時間を想定して仮想敵に手加減した60%状態のレティを据え、本気を出す為槍を中段に構え気合を入れる。


<ドンッ!!>


 強く踏み込んだ足から土煙が上がる。

 基本指導役なので自分からほとんど攻めてこないレティに、突いては払い胴を狙った振りをしつつ槍をしならせ足元を突いてと攻撃を続けるが、イメージ上のレティにも拘らず一発もかすりもしなかった。

 元からこのイメージ戦闘は余り上手くなく無意識に相手の実力を上げ下げしてしまう事はよくあり、その時の俺の精神状態が如実に出るのでたまに確認の為にやる修練方法なんだが……。


 昨日嫌でも理解した、まだまだ遠いレティとの実力差にやる気が出ているんじゃなかろうか、多分。

 自分の事だけれど、自分の事は自分が一番分かるとか物語でも現実でもかなり愚かな人が勘違いして言い出す事を言わない為にも、自分で多少は客観視する為に見つけた訳で。

 周りからの注意も意見も勿論聞くけど何時も聞きたい時に聞けるとは限らないし、どんな事でも複数解決方法があるのは良い事だろう。


 今も益体も無い事を考えつつもちゃんと周りのサーチはしっかりやれているし、あれだけ躱されてもどう当てようか意識下無意識化両方で考えがまだまだ尽きないし、やる気が溢れそうな感じだ。

 無心に槍を振るっていると、順次周りに浮いている属性球がタイミングをずらし襲い掛かって来た。

 自分で出した属性球だったが、半分無意識で出したのでどう動くかはさっぱり分からないので払いを中心に範囲を防御しながら打ち落とし周りにも注意を払う。


 たまになんだが、不意打ちの可能性も有ると言ってシーラが遠距離から矢を撃ってきたり雹を降らせたり、真夜が糸を網状にして後ろから投げてきたりもあった。

 一番厳しいのは当然レティで、完全に気配を消しその時一番意識が向いていない所から結構危ない攻撃をしてくる事がある。

 物質化した弓で弛緩矢を撃たれて、半日歩くのが精一杯になったのは結構前だが……。


 それ以降修練中には自分以外も気にする様になったのは、修練という意味では間違っていないとは思う。

 思うんだけど、あんまり頻繁に襲われると精神的にきついし、ある場所の時だけはやらない様今度言っといた方がいいか。

 今日皆居るし、説明の時にでもついでに言っとこう。


 今回はこれから狩りにも行くし、そこまでの弾幕にはしていなかったので軽く殆んどの球を打ち落としていくと、右斜め後ろ五時方向の森の中から鏃を球状にした矢が、腹、右足、右肩三か所ほぼ同時に飛んで来た。

 この修練中は空間魔法で障壁を使うと全く意味をなさないので、振り向きざま風車の様に槍を回して矢を弾いた瞬間上からの何かを感知した。


「おうっ?!」


 上からの点の攻撃だったので瞬間的に体を捻り何とか避ける事が出来たが、時間差でしかも立体的に攻撃方向を変えるとかシーラも腕を上げたもんだ。

 ただ、当然何時もそのまま終わる事は無く、今度は俺から一定距離を開けて逃げきるかどちらかが一撃入れるかに変わる訳で。

 矢が飛んで来た所にサーチを広げながら向かうと当然もうそこには居なくて、三十mほど離れた木の上の太い枝に乗ったシーラから枝の間の小さく空いた隙間から連続して矢が飛んでくる。


 結局俺にはやれなかったが、シーラは重力に負けて結果曲がるのではなく上下左右自由に矢を曲げて撃てるので、綺麗に森の木々の枝に当てる事が無いのは流石だ。

 森に入りシーラを見つけた時にはほぼ同時に五本が体各所に向かって来ているし、その後ろには俺の機動力を削ぐためか上半身三割膝から下七割って感じで次々矢が放たれている。

 って、本気過ぎないか?


 さすがにこれに当たると鏃が球状とは言えかなり痛いし、身体強化を強めにかけて一旦終わらせようとシーラでは追えない速度で矢をかいくぐり木々を蹴って飛び上がりつつ、後ろから軽く手刀を落とした。


「きゃん!」


 何か思う所があるのか集中し過ぎな感じで周りが全く見えていなかった様で、俺がよくこういう状況だと後ろに回りがちな事にも気づかずにいた。

 そのまま木に片手を突きバランスを整えて方向を変え、シーラの横に着地。

 太めの枝に立ったまま矢を撃っていたシーラは今は頭を押さえてしゃがんでいるので、その横に座って何故こんな事をしたのか話を聞く事にした。


「ほら、シーラも座れ。」


「……むぅ。」


 渋々と言った感じで座ると、拗ねたんだろうが分かり易く横を向いてしまった。

 後頭部しか見えんし。

 何時もの如く考えつつ顎を撫でるが、そもそもこういう経験が無いので良い案が出る訳も無く、さてどうしようか。


 転生系の小説とかだと、話の都合上で笑いかけて頭を撫でれば短期間で更には高確率で惚れられる、とか有ったけれど、現実問題を解決するには役に立たないし。

 更に都合良く、もはや催眠術の様に強制的に認識を変える事が出来るスキルとかも有ったけど、そんなことしたいとも思わんし。

 実は最初のスキル取得時の一覧の中一番下に、悪党になりたければここを開けると良いっていう所が有ったので、もしかしたらそこに色々あったのかもと思わんではないけれど……未だに全く興味の湧かない俺には一切関係ないか。


 見たら選んでいたかもとも思わないし、実際この世界にそんなスキルが有るかも結局のところ分からないが。

 ……気にしていなかったので聞いていなかったが、レティに聞けば分かるかな。

 実は有名な悪党で固有スキルとして持っているとかあるかもしれないし、後で皆に聞いてみるか。


 で、結局は地道にコミュニケーションをとっていくしかない訳で。

 まあ時間を掛けつつ話を聞いてみると、後に回されたのは良いけれど……良いんだけれど丁度良い機会かなって感じらしい。

 普段だと朝の修練ではここまでやらないけど、今回の事はついでに憂さ晴らし、と。


 うん、出来れば行動の前に言って欲しかったと言いたいが、こういう事はそも俺に言っても発散できた可能性は低いと思うし、しょうがないか。


「そういえば、イーリスは居ないのか?」


 俺の意思最優先の真夜は兎も角、もしかしたらイーリスも同じ事か近い事を思っていないかと思って聞いてみたが、肩をすくめてポツリとこぼした。


「……眠いし気にして無いから、だそうです。」


「そうか。……ん~、って言ってもシーラもそこまで気にして無いだろ?最近の挙動とかもおかしく無かったと思うし、何となくだけど。」


 普通に接客で働いていたので、男女共にろくでも無いのも自分勝手なのも自分勝手な奴がまともに見える様なのも居るのは分かっている。

 いるんだが、こういう状況での女性の考えは経験無いし(此処に来るまで付き合った事すらないし)、出来るだけ相手を見て話して想いやって察するしかない訳だ。

 まあ、始まりは色々違うけど最初からって意味ではお見合いもこんな感じだろうし、日本の結婚って制度の(していた訳では無いけれど)外から見ていて色々間違いや勘違いは多少は分かっていたので、その部分を気を付けてやっていくしかない、か。


「まあ、そうですね。不満が無いでは無いですが、今回の事はさっきも言った様にほとんど気にもしていませんでした。ただ、この機会に言わせてもらいますと、他に何も無い訳ではありません。まず、鏃を潰して速度が落ちたとはいえ本気の矢が一つも当たらなかったのが大変不満です。更に後ろに回られた時に気付けなかったのも不満ですし、今回の王都行きも一緒に行けずちょっと発散したかったのも事実です。」


「あ~、なるほど。戦闘に関しては通常の修練から手加減しては意味が無いし、もっと頑張れとしか言えんが。王都行きに関しては万が一を起こさない為にレティと俺、案内にオルガって選択だったから、すまんがこっちもどうしようもないな。」


「はい、どうしようもない事はありますから。ただ、それでも不満は溜まる事がある事を知って貰えれば、それで良いのです。……特に女性は感情で動く事が多いですから、予め知っていただく事が重要かと。理由を理解しているからといっても全てに納得がいっているかは分からない、という事です。」


 聞いていると前世でもよくあった問題で、頭が痛くなりそうだが忘れてはいけない事だ。

 個々それぞれに大切な事、譲れない事、理屈は理解出来ても納得いかない事も有る事、どんなに周りにくだらなく見えても当人には違う価値がある場合があるって事を忘れてはいけない。

 大事な事なんで二回言った。


 が、皆表面上は気にしている、気を付けていると言う人は居るが、本当に気にする事が出来る人って意外に少ないって事はよく知っている。

 前世では皆簡単に事故や面倒事に遭いたくない、遭わせたくもないって言うが、平気で様々なながら行動をしてみたり、自分の行動を軽く見てこれくらいならって言って人に軽い嫌がらせをしてみたりと、ちゃんと考えている人が少なかった。

 社会生活を送る上で最低限必要な事は、余り周りに迷惑をかけない、嫌な事はしない位で、後は普通に法律だったりのルールを守っていればいい筈なんだが、何故かどこの世界にも自分本位で周りは関係ないって人が居る。


 結局俺達に絡んで来たアホ共とかね。

 あれはレティ達に目が眩んであんな所で決闘的な事になったが、本来は隠れて色々やっていたんだろうが。

 話がかなりズレた。


 で、これからも油断なくって言うか、さっき結婚での間違いや勘違いと言ったが、慣れる事が無い様……簡単な事だけ言うと、言わなくても分かるだろうとか、何々だから何々だろうと決めつける事の無い様普段から気を付けようと思う。

 普段から常に普通におこなっておけば習慣化出来るだろ。


「ま、そこは女性に多いとは思うが、結局個人個人の違いもあるだろうし。ちゃんと皆を見つつ考えるよ。どうしたって集団で居たら皆が皆全員納得出来る事なんて少ないだろうからな。」


「おー、その通りですよご主人様。余りそこに考えが及ぶ男性っていないですが、なかなかやりますね。」


 朝の修練場所から帰りつつ話していたが、二人になるとここ最近シーラの俺への対応がぞんざいになってきた気がする。

 ある程度は良い事だが、こっちにも慣れ過ぎない様にしないと駄目かな。

 慣れ合い過ぎも良くないだろうし、その内ちょっと考えようかね。


「おし、朝飯食ってまた鍛えますか。」


「新人が居ますし、気合入れていきましょう。」


 緊張感持って行こう。


最近二千文字くらいからなかなか進まない様になってきて時間が掛かってしょうがないです。

次回はもう少し早く投稿できたらいいと思っております。

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