第三十七旅 まだまだ準備が足りなかった。(いろいろな意味で)
大変お待たせしました。
もうそろそろ投稿できるかと思ていた矢先、好きな作家さんの新書が超久し振りに出てキリの良い所からですが十数冊読んでいたら、気が付いたら一月近く経っていました。
次からは書ききって投稿してから読みたいと思います。
村へと向かうガリオンの背で、さっきの後始末で不備が無かったかを最初から確認してみる。
レティ達を見送り多少なりともささくれ立った感情を落ち着ける為に存分にガリオン達をもふった後、落ち着いて周りを見ると見たくない現実が少し離れた場所に在るのを思い出したんだったな、確か。
で、敵とはなったがまだそこまで人をぞんざいに扱う気にはなれなかったので、一応って言うと結局ぞんざいな気はすれど一応ちゃんと弔ってやろうと大きめの墓穴を掘ろうと思ったが、めんど……うん、誤魔化すのはやめてハッキリ言うと、面倒なのでガリオンに頼んだんだ。
機密とかの書類系統が有っても後々面倒しかないし、下手に良さげだからと装備類を持って行こうものなら同じく後の面倒にしかならないだろうし、残した家族とか居たら悪いけれど身ぐるみ剥がすのは諦めて、最後に穴に寝かせて埋めてやったわけだ。
ただ、火葬はしなかった。
アンデッド化の事を考えると土葬より火葬をした方がいいのは理解しているが、モンスターは必ずしも火を恐れないどころか惹かれて来るのも居るし、此処で更にもう一戦する気は無かったからな。
ん~、で……終わりで問題無かったかな。
書類は有れば誰かの弱みを握れた可能性はあるが、あの手の密偵がそもそもそんなもの持ってるなんてそれこそご都合主義ってモノだろうし、後から気にするだけ無駄って事だ。
無駄な考えは置いといて、ガリオン達三頭に乗り換えつつ時々フィニを撫でながら、のんびり走って村に帰りついた。
「あ、おかえりなさいユウ様。」
「おかえり~。」「り~。」
「おう、ただいま。」
コボ達に挨拶をしながら家に着くと、もう入り口の広間にある大机に並んで新人達にこの場所の説明をしているようだった。
「あっ!……ユウ様。」
レティが説明している後ろで新人をチラチラ確認していたイーリスが、俺に気付いて小走りに近寄って来た。
……寄って来たのは良いんだけど、加速してないかなイーリス。
そのまま突っ込んで来るかと一瞬思い体に(特に腹の辺りに)力が入ったが、一歩手前で急停止してからぽふっと抱き着いて来た。
「おかえりなさ~い。」
挨拶しながらすんすんと胸元の匂いを嗅いでいるイーリスの頭をワシワシと撫でてやる。
イーリスの毛並みはかなりモフモフで、ショートにしないともわっと言う感じで熱が溜まってかなり熱くなりやすく、夏毛冬毛と季節で生え変わる様だがどっちかというと毛の量が多めで夏に弱いらしい。
かなり北に在るこの国はすごしやすいと言っていたが、今後南に行く時は気を付ける様にしとこう。
後、皆大体俺の元に来た事情(奴隷落ちや貴族に追われて等)が落ち着いた辺りで帰りたくはないかと実は聞いているんだが、昔の住んでいた所に帰りたいとか皆言わないのは何かそこに問題でもあるのか、さて。
まあ、結局ハーレムになった俺が言うのかって話だけども。
今回拾って来た子供達は兎も角、奴隷として買って来たルーン達三人は一旦の帰郷位は別だがやって貰う仕事を考えればそうそう開放は出来ないので、そこは諦めてもらうしかないな。
と、考え事をしつつ、気持ち良かったので今度はゆっくり味わいながら撫でていると、シーラが心配そうに近寄って来た。
「主様、アルにレティシア様からパスが来ていましたけど、何か有ったんですか?大丈夫でしたか?」
「ん?先にレティ達が戻っているんだし、少しでも聞いていないのか?」
「いえ、聞こうとしたんですが。先に新人に説明するからもう少ししたら主様が帰って来るので待っていなさい、と言われてしまっては無理も言えませんから。オルガは細かい事は分からない様でしたし、無事であるとは言っていましたのでもう少し待とう、と。」
「そうか。心配をかけたのはすまなかったが、パスで何を聞かれたんだ?」
「それがアルもよく分からない事だったそうで、何か起きていないかと大まかに聞かれただけですね。今日狩りに行っていた私達がお風呂に入っている時だったので、それを伝えたら少し遅くなるからご飯は先にとの事だった様です。」
家に入って直ぐの所で話していたのでシーラの向こうにレティ達が見えていたが、話しながら聞いていたんだろうがご飯の事を言った時にピクッと反応していた。
俺がさっき別れる時にレティに頼んでいた事を伝え忘れたんだろうが、今思えばパスを使えば俺から指示できたかね……。
ん~~、より具合が悪くなっても困ったし、無理があるか。
今日は色々問題が起こって俺も現状確認を怠っていた気がするし、俺も含めて注意喚起をすれば今回はもう良いだろ。
もう飯は食っちゃったわけだし、歓迎の宴や此処の細かい説明は明日でいいんだが、一応、確認。
「ん?ご飯は先にって言ってたのか?後から何か言っていなかったか?」
「いえ、何も。心配ではありましたが、レティシア様から大丈夫と言われていたのでもう頂きました。今アルは帰って来たご主人様達の夕ご飯を作っていますよ。……何か問題有りましたか?」
うーん、今迄たまに思ってはいたけど、シーラはもうちょっと砕けらんないかな。
元から基本はかなり丁寧なんだろうとは思うけど……ただ、元から誰にでも丁寧に喋る人も居るし、無理を言う事ではないかね。
出来ればって位でそこまで気になってる訳じゃなし。
「あ~、いや問題ないない。ちょっと明日以降のスケジュールを練り直さんといかん事を思い出しただけだ。ざっくりとした説明は今レティ達がやっているけど、先ずは長期的な計画を含めた細かい説明だな。更にシーラ達との事も考えなきゃいけないし、前世からの事で何を伝えるか伝えないかとか考える事が山ほどあるから。言った様に今すぐの問題がある訳じゃ無いけど……やる事が多すぎて頭から煙吹きそうだよ。」
俺にも問題があったので今回は不問にすると言外に伝えつつちょっと弱音を吐いてそのままシーラの胸元にポフッと顔を突っ込む。
「まあ、そこを何とかする為に信頼出来る者を増やしたのでしょう?最初のレティ様は特別として、屑貴族の配下だったオルガ、奴隷だった私とイーリス、危機を救ったアルと真夜、直接の配下になってはいないけれどアルやオルガと同じイルメラとセルファース、多少は足せる手足が増えたじゃないですか。今の所まだ私達だけですが、今回連れて来た者達がまた一人前になれば育成を手助けする手は更に増えますし、もう少しの辛抱ですよ。……仰っていた期間では間に合いませんが。」
そのままながーくため息を吐いていると、そっと抱きしめながら励まされてしまった。
最後にボソッと突っ込まれたのは故意に聞こえなかった事にしつつ久し振りにシーラの柔らかさを堪能していたら、この世界に来て少し経った頃の事を思い出した。
最初の頃は魔法関係の技術も近接戦闘技術もなかなか上がらず、一旦ぼこぼこにされた後これも修行と自分で回復をして、その後レティシアにも同じように励まされていた事を思い出し、嬉しくなってしまった事は内緒にしとこう。
……恥ずかしいし。
「すぅ~……むぅ。……すぅ、すぅ。」
俺にくっついたままだったイーリスはもうお眠だった様で、気が付いたら抱き着いたまま気持ち良さそうに寝てしまっていた。
こういう状況の時、鈍感系主人公とかだと好意をあからさまに向けられている相手に普通に肩に乗っけたり小脇に抱えたりって感じになるんだろうけれど、一年頑張って鍛えてあるしやっぱりちょっとは気障な事もやりたいと思うのは悪い事じゃないと思うし、所謂お姫様抱っこで抱き上げてやる。
前世の場合こんなオッサン顔が主人公では、現実に行動しようとした瞬間ギャー!とかイヤーッ!!とか色々叫ばれるんだろうか。
ほにゃらら専とかの特殊な趣味の持ち主じゃない限り、普段の扱いからしてかなり違うのが普通だったし。
好みの相手で緊張するとかならともかく、世間一般での美醜によってその行動を取った場合今思えばそれも区別じゃなく差別じゃね?って気もするが、まあそこら辺の事は都合良く個々の判断って事で曖昧に判断してた感じだったかなと思わんではない。
まあオッサン顔の俺としては普通に対応して貰えれば文句は無かったが。
シーラから離れイーリスをお姫様抱っこしつつ、もう俺も寝に部屋に戻る事にした。
思っていたより精神的に疲労が溜まっていたんだろうが、イーリスの体温が良い感じにリラックスできたからか既にちょっと眠いし。
シーラにレティへの伝言をお願いして、後を任せて寝よ。
「シーラ、後は任せた。さっき言っていた仲間が増えた祝いで村のみんなで宴をするのでレティ達と準備宜しく。地下の食料半分までなら出して良いから。ちょっとは運動してからの方が飯も美味いだろうから、午前に修練してこれからここでやる事の説明、それから宴だ。」
「はい、準備をして置きます。レティ様から規定通りの手加減して貰っていたとはいえ、全員が一本取れた祝いを先々月やって以来ですね。」
「そうだな。従魔含めて全員だと消費量も半端ないし、そう頻繁には出来ないからな。……ああ、後新人達は二人で一部屋で、子供達は大部屋に寝かせてやってくれ。」
「分かりました。」
何時もは少しは手伝う下拵え等の前準備を今日は完全に任せ、イーリスを抱いたまま寝室へ。
移動しつつ考えていたが、なんだかんだ言ってもう少しは悩んだり罪悪感があったりがあると思っていたが、逆にあまりにも影響が無い事にショックを受けそうだ。
が、基本気にする必要が無いと思った事は記憶から大体消せるので、気にしない方針で行こうと思う。
先にベッドにイーリスを寝かせてやると、ちょっと探す感じで手をさまよわせた後「うー」と不満そうに唸りながら丸まってしまった。
部屋着に着替え横に寝るとちょこっと服をつまんで来たので抱き枕代わりに抱きかかえてやると、また胸元の匂いをふんふんと嗅いで「むふー」と満足そうな鼻息をつきつつまた寝入った様だ。
俺もイーリスの髪の日向の匂いを嗅ぎつつ、今日の面倒を思い出す事無く眠りについた。




