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元オッサンの眷属使い  作者: 烏賊紳士
第三章 新しい関係ともふもふ生活
44/55

第三十六旅 モフモフしてから色々混乱。

 かなり疲れていたからか比較的弱い魔物の多いアルス大森林とは言え、ほとんど安全を確保していないのにスムーズに寝てしまった。

 本当だったら寝る前に最低で数分でも良いから安全確認をした後、フィニ達に任せればよかったんだけれども。

 魔力枯渇で気絶するほどではなかったが、もう限界だったし仕方ない。


 定期的に洗ったり梳いたりしてやっとモフモフになったガリオンの毛に埋もれながらだと普段なら本当に気持ち良く寝れるんだが、やはり場所に無理があるし血の匂いもするしで、寝てはいるが半分起きている様な感じだ。

 ふわふわ取り留めのない事を考えたり夢か妄想か判別の付かない状態のまま一時間ちょっと経った頃、バサッと頭上で羽音がして何かが着地したと同時に頭が軽く揺らされる。


「ホゥ」


「おう……あふ、おはよう、フィニ。」


 かなり暗くなってきている事を確認しつつ挨拶をしながらマップを確認すると、レティ達がもうすぐ着く様だった。

 まだ立つ気にならなかったので、ガリオンの体から上体を起こしフィニを促して俺の前に降りて貰いゆっくりと撫でてやる。

 さっきオッサンと絡んでいた時には当然姿を消していたが、今は俺の目の前に綺麗な羽を見せてくれていて目にも優しいしふれている羽もふわっふわで気持ち良い。


 まだ生まれてから余り時間のたっていなかったフィニは、テイムしてから数ヶ月で体色や色々なモノが安定し、今では女郎花おみなえしって感じ(分かり易い表現だとクリーム色が近い)の一色の羽にクリックリの緑の目で最近胸元に出来た2cm程のこれも緑の宝石が煌めいている。

 俺が羽を撫でているのを気持ち良さそうにしていたが、ふいっと梟特有のクリっとした動きで頭だけ後ろを向いたので目線で追ってみると、すぐの所にヴィクトールとイースが近寄って来ていた。

 どうしたのかと様子を見ていると、自分達も撫でてと言いたいのか手元に頭を摺り寄せてくるので二頭もそれぞれ撫でてやる。


 二頭とも気持ち良さそうにしているんだが、直接の従魔じゃないし俺以外は余り梳いたりはしていないので、ちょっとチクチクするのは仕方ない……とは言いたくないし、今度から皆にもちゃんと梳いて貰おう。

 モフモフの良さを理解しているのは俺に隠れて休憩中のガリオンにちょこちょこ触っていたイルメラしか今の所居ないし、もうちょっと皆にふきょ……違う、おすすめしよう。


『ご主人様。お楽しみのところ申し訳ありませんが、もう到着しますよ。』


 結局ガリオンも含めて四頭を褒めつつ撫でまくっていたら、レティがパスで到着を知らせて来た。

 パスで何となく分かった方向を見ると、五m程の緑の風船っぽい何かに包まれたレティ達が俺達から少し離れた広く空いた所に降りて来ていた。

 よく見てみると緑の斑模様になっている風船は、多分そのまま空に浮かんでいるだけだと怖かったであろう誰かの為に、レティが風魔法で葉っぱを使って風船状に周りを覆い目隠しをしてやったのだろう。


 俺が一緒に居れば空間魔法で幾らでも目隠しは出来たしシーラだったら木魔法で覆ってやれたんだろうけど、レティの能力だと今は他に方法が無いか。

 チート系の物語だと、よく光学迷彩や超音波振動などの科学系統のモノが何の基礎知識も無く中途半端な断片の知識だけで何となく使えたりする。

 するんだけど、今の所幾つか何とか思い出せた光の屈折や目の錯覚を起こすモノを見せた上で説明してみたが、元から多少(少々?)は知っている俺も、レティも使える様にはなっていないしこの世界では無理な物は無理って感じだな。


 今の所は、だけど。

 まあ俺だけの場合は結界にカモフラージュ的な迷彩っぽくして何とか誤魔化して、イーリスが居れば幻術をお願いすればいい。

 ただ、今考えたんだがレティ達を此処に下ろす必要無いよね。


 今の状況で俺にガリオン達まで含め全員で飛ぶと、流石にレティでも魔力の消費量が半端ない事になるだろう。

 ならば更に何か面倒に巻き込まれるって事も流石に無いと思うし、俺とガリオン達だけで走って帰ればいい。

 何も無ければ本当は俺は最初からレティに乗せて貰い、ガリオン達は森で遊んでから帰って来てもらう予定だったんだが。


『おーい、レティ。』


『はい?何ですか?もう少しで着きますよ?』


『ああ、その事だが、悪いけどそのまま村に向かってくれるか?』


『?……ああ、なるほど。ご主人様達だけで走って村へと向かうおつもりですか。』


『そうそう、流石にもう何もないとは思うから。こいつらを遊ばすつもりだった訳だし、ちょっと遊びながら村に向かうよ。こいつらまで一緒だと、流石にお前も魔力の消費量がかなり多かろ?』


『そうですね。まあ、問題有るかと問われれば、今の私ならば全く問題有りませんが。』


 いくらレティでも、と思い聞いてみると、シレッと言われちょっと吃驚した。

 以前確認した時には魔力増大を持っていなかったので竜王とは言えそこまで魔力差があると思っていなかったんだが、今の言葉を聞くと俺の増大しているはずの魔力よりかなり魔力が多い様だ。


『……うん、一年頑張って多少は追いついたと思っていたけど、やっぱりまだまだだな。当然レティも成長してる訳だし、甘かったか。』


『まあ、それはそうです。ご主人様が色々な意味で強化されやすい異世界人とは言え、流石にこの世界で最強種の一角である属性竜王の私がもう追いつかれていたらおかしいでしょう。って、ああ、それがご主人様の知識に在るチートと言うモノですか。』


『結構……かなり努力はしたしそこまで意味無く強くなった訳じゃ無いと言いたいが、まあ多少チートと言えるか。……あれ(アルム)が言ってたけどこの一年の成長率はかなり強化されていたって話だし、きちんと努力をすればそれだけ強くなれた訳で‥‥まあ、ちゃんと鍛えていればチートも自力もどっちもあったとなるのか、な。俺的にチートの定義は、最強のだと最低限の事を聞くかステータスを見ただけで大体理解して殆んどの事が出来るとか、次点だと他の事は脳みそ働かないのに見ただけであ~分かったと言ってスキルや魔法の事を完全に理解出来る、とかな。……ん~、言い過ぎか。』


『それより知識チートの方が余程酷いしな。そもそも俺が初めからやり直す事を最初から考えていなかった理由がそこで、当たり前の事だと思うんだけど赤ちゃんからやり直してどれだけ覚えていられると思っているんだか。普通に歩ける様になるまででも何年もかかるってのに、それまでずっと前世の事を忘れない様に頭の中だけで思い出しては焼き直しとやったとして、写真記憶とかだか記憶を忘れる事が出来ないスキル持ちでも無ければ‥‥結局出来る訳が無い。更に知識チートの場合、転移にしろ転生にしろ現実の世界が普通のファンタジーより更に原始的と言うか、町があるだけまし程度の文化しかない世界で町にはごろつきが多くて……結局、学生や普通の社会人程度の知識内容でも流石主人公って感じになるし、周りに見た感じいい人ばかりで知識チートを無責任にばらまいて時間が経って実際に問題が出る前に話自体が終わりがち……』


『ご主人様ー。パスを繋いだまま悩まれましても私達も空中に止まったままですし、早く指示をお願いします。』


 レティ達の居る方を見てみると15m位の木々の間にぷかぷかと浮かんだまま止まっていた。

 取り留めも無い独り事を延々つぶやくのが長い独り身で癖になっていたんだが、早い内に突っ込まず待ってくれていたのか。


『すまん、すまん。先に村に行って休んでてくれ。ちょっと従魔との親睦を深めてから帰るよ。考えたい事も有るし、ここんとこ余り遊んでやっていなかった気がするし。』


『ふむ、分かりました。もう夜ですし、あまり時間を掛けない様お願いします。』


 そう言えば、レティ達を待っている間に完全に日が落ちていた。

 アルス大森林の浅い所を通って帰ればガリオン達が居れば危険もないし、って言うか、本来であれば俺達が全員で村に帰って来た辺りでガリオン達が一杯走り回って満足して帰って来るって予定だったんだが。

 まあ、予定外は何時でも何処でも起こるって事を思い出させてくれたし、何処にでも駆け付けられる様早く空間転移を自由に出来る様頑張ろう。


 また逸れた思考を戻してパスをオルガにもつないで、着いた後の最低限の説明等を任せる事にしよう。


『おう。で、オルガも聞いてくれ。』


『はいはい、何ですか主。』


『俺はガリオン達とゆっくり帰るから、先に俺達の最低限の説明をしておいてくれ。あと、今日はガリオン達も家で食わすから、多めに飯の準備をしてくれ。』


『はい。』『はーい。』


『よろしく。』


 基本的に従魔の飯は自分達で獲らせていたが、たまに皆で揃って宴をしていた。

 皆で食べる時以外でも焼いて欲しかったら持ってくれば焼いてやっていたので、俺の従魔のガリオン、イーリスの騎狼ディナ、まだ主の居ないリーリヤの三頭は頻繁に獲物を持ってくるので生肉より焼いた肉が良いんだろう。

 他の従魔達もたまに持ってくる事も有るけれど、そこまで気に入っている訳では無い様だ。


 今回も家の前で宴にしようと思って先に帰らせた訳で、準備は任せた。

 皆で食べると言っておいたし、家に溜めてあるオーク肉やボア肉だけでなくもうちょっと良い肉を出してくれるだろう。

 一番良い肉は俺のボックスに入っているが。


 ドドドドッと轟音を上げながら森の中を走っていくガリオンの背中で帰るまでに新人に話す事を考えようと思っていたが、落ち着いたからだろうがさっきのおっさんの顔が思考の中にチラついて仕方ない。

 初めて人を殺した訳で、おっさんの顔がチラつくたびに胃の内容物が、こうググッと上に押されて喉元に上がって来そうになるのは当然だと思うが何とかならんだろうか。

 この世界に来て一年経つしその内こういう事になるとは思っていたが、予め考えていようが相応の覚悟があったはずだろうが実際に事が起きた時にどうなるかは分からんという事だろう。


 前世から人がそれぞれ持つ自分勝手なご都合主義は知っていたし、人の命にかかわる事も含んでいる筈の重要な政治での答弁とかも基本自分達の都合優先なのは理解していたが、実際の人の価値はいろいろと難しいな。

 実際そんな現実にいるご都合主義に塗れた腐った政治家や官僚がどうなろうと気にしない自信は有ったが、この世界の場合そもそもそんな分かり易い関係性のある人間が居ないので、盗賊とかでない限り初対面の人間相手にそこまで割り切って考えれない、か。

 ……そう言えば、この世界にもう一年いるがこういう物語でやられ役の盗賊に会っていないな。


 って、きちんと考えてみれば当たり前か。

 魔の森に近い町には冒険者も衛兵も通常の町より質も高く、量も多いからな。

 今大体居るカルカーンも魔の森からの防波堤の役割も持つ町で、かなりレベルの高い冒険者も居たし。


 色々考えている間に落ち着けた気がする。

 後は帰りながらガリオン達をかまってやろう。

 ガリオンとフィニ以外は実は俺の従魔じゃないんだが、何かもっと接した方がいい気がするからな。


 今度は真夜の眷属とも遊ぶ事にしよう。

 気が付いたらかなりの数が眷属になっていたし、これから遠距離転移をする時の目の代わりを出来ればして貰う気なんで来週にでも時間を取るか。

 まだまだやる事があると理解出来たし、結局俺だけはまだまだ村に引きこもる事になりそうだ。


 あ~やだやだ。

 一年じゃ全然足りなかったって事か。

 ……ま、先ずは帰って説明だな。


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