第三十五旅 戦闘開始そして……モフモフ
長らくお待たせしました。
何とか普通の生活に戻り、書き始める事が出来ました。色々違和感があったりするので、のんびりと書いていきたいと思います。
ガリオンの元を目指して転移し始めてから既に五分位が経ったが、幾つかの問題は兎も角ある程度順調に進んではいた。
念の為に移動前にパスでフィニに連絡はしといたが間に合うかね。
基本俺と遊んでる時以外はよくガニア山やアルス大森林に居る事が多いので、マップで見たらそう遠くなかったから呼んだけれど。
……ただ、多少慣れたとはいえまだこんな長距離長時間の転移の練習はやっていなかったので、ハッキリ言ってちょっと酔って来た。
マップで大体の転移経路を出してはいたんだが、転移位置が少しずつ右にずれている様だ。
転移のずれで予想と違う景色が少しずつ混ざる事で酔い始めていると思われるので、一旦休憩を挟む為に空中に障壁を足場で出す事にして広めに三m四方程度の足場を出した。
「おっとと!っと。」
前に進もうとしたままの思考と止まった体が一瞬混乱して体勢を崩いかけたが、広めに足場を作って置いたので助かった。
胡坐を掻いて休みつつガリオンの邪魔をしない様繋がった魔力等で様子を感じていると、気の所為かさっきより少しではあるが余裕がある感じだ。
とは言っても追い詰められている事に変わりは無いだろうし、半分ちょっとは進んでいるのでそろそろ行きますか。
「うしっ!」
更に気合を入れて数分でガリオン達が居る手前100m位まで森の上を転移して行き、もう一度足場を出して落ち着いてから直接見える地面を確認、30cm上に転移した。
ザッと音を立て着地してすぐにマップと合わせて戦闘の気配を探ってみる。
重量級のガリオンが戦闘中な筈なのに、音も気配も余りしていないのはもしかして……かね。
マップを確認しつつガリオンの後ろから近づいて行くと、今日一緒に行動しているヴィクトールとイースが伏せたガリオンの後ろに居て心配そうにクーンクーンと鳴いていた。
匂いで気付いたのか、かなり遠かったがチラッとガリオンの頭の内一つがこちらを見た後視線を送った方向を見てみると、見た感じ軽戦士や斥候系統の冒険者くさいオッサンが一人で見えない何かと戦っている様だった。
「何だってんだよ!?うっぜえな!邪魔すんじゃねえよっ!ぃてっ!?」
予想通りフィニが先に飛んで来ていた様で、余り攻撃手段を持たないからだろうがチマチマと風魔法で邪魔をしたり無音で背後から爪で引っかいたりと時間を稼いでいてくれていた。
そのまま邪魔をしていればなんかしら喋ってくれそうな気もすれど、万が一フィニに何か有っても困るし俺に対してもあんな感じで情報を喚いてくれる事を期待してとっとと出ますか。
フィニに牽制しながら引いて貰い歩いてガリオンの横から出て行くと、あからさまに気が立ったままがなり立てて来た。
「あ~~?なんだテメェ?今の邪魔もテメェかぁ!?俺の獲物を横取りしようってか?!」
「獲物……なのか?」
従魔証が見えない訳も無いだろうにぬけぬけと言い放つ男に、イラつきながら端的に聞くと悪びれもせずフラフラと歩きながら喋り出した。
「そうだよっ!そこまで弱らせたのは俺なんだ。当~然俺の獲物だろ?ここ最近王都でも流れてこないケルベロスの素材なんか持って帰れたら二、三ヶ月は余裕で遊んで暮らせるだろがよ!せっかく面倒な任務の途中で良い小遣い稼ぎが出来そうだったっつうのに、なーんか余計面倒な事になってんな。クソがっ!」
「……面倒だったらとっととその任務にでも行ったらどうだ?」
「あ゛!?言葉遣いを知らねえ小僧だな。……まあいい、お前はそいつらと一緒にそのままこの森に捨てていってやるよ!」
俺の不意を撃つ為にだろうが意図的に身振りを大きくし喋りながら少しずつ近づいて来ていた男が、怒鳴った瞬間に腰の後ろに横に差してあった小剣を抜きつつ此方に駆け出した。
一息で届く所まで近づいたつもりなのだろうが此方はもう行動を読んでいたので、油断を誘う為意図的に持っていなかった槍を一歩後ろに下がりつつ背から足に隠す様ボックスから出して刃を下に持ち、突っ込んで来た男が届かなかったもう一歩を踏み出した瞬間槍を振り上げた。
「うおわっ!?」
まだ人を殺した事が無かったのでイマイチ気が乗らず中途半端に斬り上げたせいか、せっかく不意を打ったのにも拘らず左腕を深めに斬り裂くに止まってしまった。
「痛ってーな!ああ!?お前武器持ってなかっただろーが?!チッ!あ~~面倒だ!面倒だ!!こんな所でこんなんと会うなんて……運がねえってか!?あ~、そうかアイテムボックス持ちか。」
斬られた瞬間後ろに大きく飛び、こっちがすぐに追わない事が分かったのかいきなり喋り出した。
こんな森に任務で来ているくせに余り隠密系に向いてないのか、喋りながらフラフラと動き状況をまとめている様だ。
この手のオッサンはどっちかというと任務達成率は勿論、生存能力での起用くさい気がするな。
実際に油断すると逃げられる事になりそうだし、一々物語の伏線を残す為に逃がす気は無いので一割強残っている魔力を体調に影響がない様半分ほど流して周りに障壁を張り、逃げ道を塞いでやった。
「状況把握を待ってやる気は無いよ!」
本当だったら、今の俺の魔力が少なくとも四分の一でも残っていたら身も蓋もない方法で生かすも殺すも自由だったが、しょうがないので最低限逃げない様障壁を張り終わった瞬間に槍で突きかかった。
一応殺すつもりで突きかかったが、何だかんだで覚悟が決まっていないからかもう一本取り出し二刀で防御に回ったオッサンに、上中下と振り分けて十数回は突いたが何とか捌かれてしまった。
もう問答はする気は無かったので一旦離れ一息ついて気を取り直す気だったが、向こうは一息つかせる気は無い様で離れた瞬間一緒について来て二刀で斬りかかって来た。
<ガッ!ガガッ!ガン!ガガガッ!!>
さっきまでの様ないい加減と言うか粗暴と言うか要するにチンピラ臭は無くなり、無言で二刀を対角線など常に違う方向から猛烈に襲い掛かって来た。
しかし俺はしっかり斬撃を見切りつつ、近づけない様槍先で捌きながら別の事を考えていた。
実は未だに人相手にはレティ達以外とは戦った事が殆んどないんだが、こんな危険な所での活動をしている裏仕事もしていそうなオッサン相手にして理解出来てしまった事に、はっきり言って驚いていた。
レティの二刀と修練しているから違いがはっきり分かるが、アルス大森林の中層に居る事と条件次第ではケルベロスを追い詰めることが出来る事を考えるにある程度強いのは分かるが、俺達の中では速度はかなり遅いと言っていいレベルだ。
一対一での戦闘なら、もしかすると接近戦が苦手なシーラがオッサンよりちょっと弱い位かも、って感じか。
当然後衛だからって近付かれたら終わりなんて育て方はしていないので、そこらの戦士に負ける事は無いとは思うが言ってみればその程度。
最初は気にする余裕も無かったので考えてもいなかったが、この実力ならガリオンの傷を見て察するに最初にヴィクトールかイースを狙われて足を負傷したのだろう。
戦闘能力は兎も角隠密系統の能力や状況把握に秀でていて、庇う動きからガリオンの思考を理解して自分に攻撃が向かない様チクチクヴィクトールとイースを狙っていたんじゃなかろうか。
でなければ今のガリオンがこの程度のオッサンに追い詰められる訳が無いしな。
まあ、要するにヴィクトールとイースの実力だと、二頭でまとめて掛かってもどちらかがやられる可能性がある、とガリオンは判断したので、俺に救援を求めつつ時間を稼いだ、と。
ヴィクトールかイースがやられるかは俺が見ても微妙な所だが、実際に何か有ったら後が怖いし後で存分に褒めてやろう。
色々考える事が出来るのも此奴の接近戦能力の低さを物語っている訳で、俺の覚悟の足り無い腑抜けた突きは受けられる様だが、ある程度本気で突けば魔力で強化せずとも受ける事は出来ないだろう、多分。
他にも色々手は在るが、それを使うまでも無いのは今迄の戦いで分かっている。
<ガガガッ!!><ガン!>
「ふぅ……。」
受けながら覚悟を決めて息を吐き、連撃が続かなくなった瞬間剣で防御しつつ下がろうとした一瞬、腹に隙が出来た所を槍に障壁を筒状に薄く纏わせ全力で突いた。
「ふっ!!」
「なっ?!」
一応見えなかった訳では無い様だが、今までと全く違う速度の突きに思っていたより男の反応は遅かった。
剣で払いに来ると思ったので弾くか流す事が出来る様障壁を張っておいたが、全く意味が無かった。
嫌な感触が手に残り、槍がオッサンの腹を貫いて背から出ていた。
「ごはっ!……ぐふっ、これで終わりとか……マジか……よ。」
直ぐに勢い良く槍を抜くとブシュッと血が噴き出したが、反射でか自分で腹を抑えながら仰向けに倒れていった。
手に残った感触も本当に嫌だが、目の前で自分の攻撃で死にゆく人を見るのはもっと嫌だと思うのは人として当然なのか、前世の教育の賜物なのか……さて。
殺す事については仕方ないとしても、そのまま死なれても事情が分からないしせめて所属とか聞く為に少し治してやろうかと思った所で重要な事を思い出した。
……少し治すほどの魔力も無いな、今。
残っている魔力はガリオンを治す為に使う分にも足りない位だし、無理だな。
仕方ないので死ぬ前に何か言ってくれたら、と声を掛ける事にした。
「オッサン、オッサン。<バサッ>まだ喋れるか?」
離れていたフィニが俺への合図か邪魔にならない様にだろうが、一瞬間を開けた辺りで音を立て頭の上に着地した。
今は構ってやる暇が無いのでそのまま続けて話す事にする。
「?!ぐふっ!?ごほっ……いまさら……何か……用……か?」
「出来れば聞きたい事があるだけだ。時間に余裕があるわけで無し率直に聞くが、オッサンの所属と任務はなんだ?」
「ふ、ふ……途中で、気付い、たが……やは、り、ごはっ!……ウェルニア伯、爵関係者で……は無いの……だな。」
「従魔が襲われていたからキレただけだ。」
「そう……か。…………俺は、王都の……ユーリ・バーブナ侯爵の……密偵、ロガ……だ。何時もの……貴族の、内輪揉、め……」
「あっ!」
かくっと全身の力が抜けた様になった密偵のロガは、確認するともう息をしていなかった。
最初のチンピラ臭さは無くなり最後に落ち着いた雰囲気になった理由は分からんが、この手の裏仕事をしている人間の場合死に際だから正直になったなんて考えない方が良いだろう。
俺がウェルニア伯爵とかの関係者とか間違っても思ってないだろうし、所属のバーブナ侯爵ってのもどうかなと思うし。
色々考える事があったとはいえ、人を殺した事に思っていたより衝撃が無い事に衝撃を受ければいいのか
、少しだけでも衝撃があった事を喜べばいいのか、はてさて。
深く考えるとケロッといってしまいそうな気もするので、次の行動に移ろう。
というか少しだがとっとと治してやらんと、オッサンとの戦闘が終わって気が抜けたのかガリオンがベタッと伏せて浅い息をし出しているからな。
「おーし、そのままだ。」
既にボロボロのガリオンの減った体力を更に減らす訳にはいかないので、残り少ない魔力を練り上げ効率的に治す為に先ずは何処が傷が深いか調べていく。
「がう」「ぐぅ」「きゅ~ん」
慎重にゆっくりと確認していくと、後ろ脚の左腿に一番深い傷が有り、他には二頭を庇っていたのだろうが右側の側面に斬り傷が十以上有った。
他にも有りはするが、今治した方が良いのは先ず傷の深い腿で、後は出来る所まで側面を治していこう。
しかし、マップで見るとレティは余り無理してスピードを上げていない様でまだ一時間は掛かりそうなので、今動けなくなるのは困るし腿の傷だけ先ずは治そう。
魔力を使い過ぎると下手すると気絶してしまうからな。
今迄魔力の操作と増量の為に結構無理をしてきたので、大体どのくらい使えばどうなるかは分かる。
九割五分使うとめまいや頭痛が起こったり、気持ち悪くなったりもする。
九割八分まで行くとどの症状でも立っていられなくなり、九割九分超えた辺りで気絶……になると思う。
大体その辺りで記憶が無いのでハッキリはしないが。
健康体のスキルは持っているが、この状態異常には何故か関係ないらしく常に何かしら起こり、俺は今の所基本九割頭痛、一割弱めまいが起こり、数回気持ち悪くなった。
今魔力は一割も残っていないので、回復魔法の中でも体力を使わせない最上級のは無理。
なので、ガリオンの体力を使って自己治癒力を上げ、最低限痛みはしない様に魔法をかけていく。
「ここを治せば動き易くなるだろうし、頑張れガリオン。」
「「「グルゥ……。」」」
ゆっくり丁寧に痛まない様に回復させていくと思ったより魔力消費が多く、ほぼ一番深い傷は治せたが今迄の経験上そろそろ何かしらの状態異常起こりそうだ。
腿の傷を治しきり胴体側面の傷を治し始めて直ぐに、まあまあ酷い頭痛が起き始めた。
仕方なく少しだけ自己治癒力を高めた所で回復魔法を止め、レティ達が到着するのを待つ事にした。
「すまんな、ガリオン。最低限足は治せたし、残りは明日だ。此処で気絶する訳にいかんしな。」
「ガウ」
伏せているガリオンがちょっと動いて傷ついている反対の胴体を表にして頭で指してきた。
パスで何となく分かるが、こっちで休め、と言ってる気がする。
確かにこっち側は全くと言って良い程傷ついていないので、後一時間位でレティ達が着くだろうし休む事にした。
「分かったよ。……フィニ、ヴィクトール、イース。周囲の確認は頼んだぞ。<ぼふっ>」
流石に続けてあんなのと出会うとは思えないし、気付いたら頭の上に居なかったフィニを含めた三頭に任せて久し振りにモフる事にした。
ガリオンにもたれて休みながらちょっと硬めのモフモフの毛に埋もれていると、色々とストレスが掛かっていたからか眠くなって来たのはしょうがないだろ。
この状況でどうかとは思うが。
俺のサーチに何も引っかからないし、ここは従魔に任せて寝ちゃっても良いだろ、多分。
と、いう事で、お休みなさ~い……Zzz




