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元オッサンの眷属使い  作者: 烏賊紳士
第三章 新しい関係ともふもふ生活
41/55

第三十三旅 福利厚生は必要です。

 目の前で食休みしている連れていく子供三人を見ていたが、移動の前に忘れていた自己紹介だけはしておく事にした。


「そろそろ動くが、その前に自己紹介だけしとこう。先ず俺達はランク4冒険者、パーティ名アマツミカボシで、五人基本メンバーが居る。ここに居るのはその内の三人だが。で、俺がリーダーのユウだ。」


「私が副リーダーで魔法士のレティシアです。」


「騎士のオルガ。」


 今迄決めていなかった筈だったが、ちゃっかり副リーダーを名乗ったレティを横目で見ると、シレっと前を向いて何か問題でも?って感じを出していた。

 まあ、元々そんな感じだったし問題は無かったのでそのまま流して待っていると、チラチラ三人で目線を合わせていた。

 結局は健康状態は兎も角話せるだけ他よりマシだった俺が話していた10歳くらいの男の子から名乗り出した。


「……デューク。」


「ロザよ。」


「リーンハルト……フラーケです。」


 気の強そうなの、真面目そうなのときてそのまま終わるかと思ったが、俺の考えがかなり甘かった。

 最後の一人に面倒事の予感がする。

 先の二人も知らなかった様で、かなり吃驚している様だ。


「ん~? もしかしなくとも、元貴族?」


「……やっぱり気になりますよね。そうです、フラーケ男爵家の五男です。先祖代々双子は縁起が悪いという理由で産まれてから八年間ずっと六男のノルベルトと幽閉されていました。優秀な方だけ男爵家の子と認めてやる、と言われ産まれてからずっと勉強と修行を繰り返していまして。三ヵ月程前に試練を受けまして、僕がスラムに捨てられたわけです。」


 何だかすらすらと平坦に喋っているが、感情を抑えたりしている様に見えないって事は、あれだ。

 あ~、貴族的な考えであの地位は自分の物だとか言って家に戻って復讐を、とかのモノは無い様だし、まとも(庶民寄り)な感覚を持っているって事だろう、多分。

 ただ、今の状況があっても未練の感情が全く見えないのはそれだけひどい扱いだったのか、それとも扱い関係なく元から貴族に興味がないのか、さて。


「あまり未練や恨み的な物が見えんが、貴族に興味は無いのか? 五男とは言え王都の貴族なんだろ? この国なら勝っていればある程度の権力は振るえるだろうし、関係強化だろうが良い所に婿入り出来るかもしれんだろうに。」


「いえ、全く興味が有りませんので。……僕に付いた教育係がなかなか特徴的と言いますか、どちらかと言えば貴族じゃなくなってから役に立つ事を教え込まれましたし。産まれた時から付いていましたから僕とノルベルトのどっちが良いとか選びようも無いですし、意図的では無いと思うんですけど。やけに外向きと言いますか、今思えば変な人でした。」


「変なのをか? その状況だと貴族の教育係な訳だろ? 逆に内向きのプライドをくすぐって傲慢に仕上げるタイプを付けそうだが。」


「僕もそう思います。相手のノルベルトにはそんな感じの教育係が付いていたようですので、同じように育って接戦になっても面倒だったのかも知れません。双子ですから同じ様に育てれば出来上がりも似た物になる可能性が、と考えたのかも知れません。フラーケ男爵家に近しい貴族には何人か会った事はありますが、この派閥はこの国に多く居る傲慢なだけの無能な貴族では無いと見ました。実力は勿論必要なので最初から完全に割り切って違う教育を施し、運も当然必要と教師を思想で選別せずに選んだ可能性も無いでは無いと思います。」


「ふむ……なるほど。そうだな。どちらにしろ貴族に馴染めない場合お前と同じ選択をするだろうし、五男六男では別に両方出奔しても大した問題じゃないか。」


「で、渡りに船と負けたは良かったのですが、ほぼ何も無しでスラムに放り出されたのは予想外でした。この袋に入る少々の食料と銀貨五枚で放り出され、途中で一人でやっていたデュークに出会い協力する事になりました。僕が前衛で、言い難いですがいろいろ盗って逃げ、デュークに投石で援護して貰い暮らしていました。」


 前世のリュック程度の布袋を出しながら、子供に似合わない溜め息をついて話を続けた。


「倒れた後の事はうろ覚えですが、確か先週くらいの事だと思います。青あざとか軽い切り傷とかで顔以外に結構怪我をしていたロザが、強面こわもてのおっさんに連れられてスラムの奥の方に向かっていました。捨てられになのか闇ギルドに売られに行くところなのかは分かりませんが、そのまま放って置く気にはなりませんでしたので二人で助けたは良かったんですが……。元冒険者だったのか結構強くてですね、助ける際に僕達も怪我をしてしまい、色々足りなくなって動く事も出来なくなって、という感じですね。」


 途中から横の二人と目線を合わせながら喋っていたが、何もおかしい所が無かったのか頷いていた。

 レティはあまり興味が無かったのだろうが、途中から俺の後ろに回って目を伏せ静かに佇んでいる様に見せて実は寝ている様だ。

 パスを寝ている相手に使った事は無いので今まで気づかなかったが、『レティ』とつないで呼びかけてみると寝息がパスに入っているのか『スースー』と言葉ではなく息遣いが聞こえて来た。


 <ポコッ>とレティの頭をはたき、心配されない様隠していたんだろうがかなり強く縛ってあった怪我の一番酷いデュークの足を見てやろうと近付くと、なにか勘違いしたのか嫌な顔をしつつ後ろに下がろうとした。

 何を考えているのかすぐに分かったので、一歩早く踏み込み頭をちょっと強めにはたいてやった。


「あいたっ!?」


「アホな事を考えてるんじゃないよ。一応血の巡りを考えてたまに緩めて血を流していた様だが、無理し過ぎると使えなくなるか下手すると切断とか、良くてもマヒが残ったりしても知らんぞ。あまり時間は無いから完全には治せないけど、せめて歩ける様にはしないと誰かに背負って貰う事になるぞ。」


「えっ? 回復魔法使えるんですか? って言うか、見た感じ軽戦士系統に見えるんだけど。」


 さっきまでただ一人ちゃんと敬語を使っていたリーンハルトだったが、かなり驚いた様でタメ語とごっちゃになっていた。

 元々余程阿呆な事を言わない限り気にする性質ではないから別にいいけど。

 特にリーンハルトはちゃんと敬語を使う気がある様だし、貴族の教育を受けているって事で当然だろうが今の所は一番見どころは有りそうな気はする。


 実力では俺の勘はデュークを一番と押しているが、一つ間違うと敵に回る事も有りそうでどう育てるか微妙だ。

 ロザは……状況次第ではあると思うが、面白い事になりそうな気がちょっとだけする。

 リーンハルトは礼儀も含め、実力的にも一番まともというか正当な成長をしそうな気がする。


「ま、色々あるんで細かい説明は帰ってからな。」


 三人の深めの傷だけ問題無い程度に治してからオークション会場に向かうと、主目的の所はもう入場し始めている様だった。

 飲み食いさせて多少マシになったとはいえ、まだ少し衰弱している子供三人連れて無理に急ぐ訳にもいかず、結局開始ギリギリに会場に入る事になってしまった。

 しかも、別に買いたい物も出てしまったので、外で子供と待つレティ、元の目的の経理の女性、隠形樹と小さいとはいえ商会の経営にかかわった男性、と三か所に分かれなければならなくなってしまった。


 レティには悪いが貴族街の外壁近くで待って居れば、余程のアホじゃ無ければ一々ちょっかいをかけては来ないだろう……多分。

 この国では貴族との面倒になる可能性が僅かにでもあると思えるこの外壁近くで騒動は起こさないだろ、貴族の関係者とか他国の者か、何も考えてないチンピラやそれに近い冒険者じゃない限りは。

 フラグじゃ無ければいいな~、と思いながらオルガに経理の女性のオークションを任せ、俺は勘が囁いたので隠形樹と経営の女性の出る所へと向かった。


「じゃ、任せた。」


 レティ目当てのアホが近付いてきたら、出来れば範囲を絞って欲しいとは言ったが威圧していいと言って置いたので、下手なのが出ても戻って来た時に周りに気絶したのが転がっているだけだろ。

 うだうだ心配事を考えながらレティを置いてオルガと二手に分かれオークションに参加してきた。

 この時の為かなり貯めて置いた上、別の要件で貯めて置いた分も持って来たので何とか足りたが、気になったとはいえ買い過ぎた。


 予定通りに経営の奴隷とレティが見つけた隠形樹の枝は手に入って良かったが、俺と後で聞くとオルガも同じ様に共に一つ欲望に負けて別に買ってしまっていた。

 俺は最後まで……本当に悩んだんだが、もう一人奴隷を増やしてしまった。

 思っていたより金額を吊り上げられたりも無く、ある程度の余裕はあったので何とかなって良かったが。


 オルガは人ではなくまた面白グッズに走った様で、そう高いモノでは無いと言ってはいたがほぼ渡したお金を使い切りまあまあ特殊な物を買っていた。

 話を聞くと、驚く事に前に冒険者とのいざこざで貰った魔力庫と同じ魔法具との事だった。

 ただ……かなりの趣味人というか変人が作ったらしく物が物だったので値段が安かったのは良かったが、流石に夜の床様に遮音壁発生装置とは吃驚した。


 とはいえ俺は残りの金額ほぼすべて使わなければならず、しかももう一度金額を上げられたらこっちにもう余裕が無い状況で何とか競り落とす事が出来たし、オルガも物が物だけに政治や商人に近い人が居たら無理だったろう。

 そして、俺が何故彼女を競り落としたかというと、職業が舞い手だったからだ。

 まあ、福利厚生じゃあないが、アジトでの楽しみというか嫁たちとのスキンシップ以外にもストレス発散は必要だと思ったからだ。


 余り気にしていないつもりでいるが、気にして無いつもりでいつの間にか溜まっていたストレスによって禿げたりは嫌だし、物や人に当たったりはしたくないからな。

 何か無いか考えてはいたが、候補は歌か踊りかくらいしか此処では思いつかなかったんだよ。

 本も無いではないが当然前世程数も無いし、紙自体は結構上質な物も有るのにどうやっているのかは知らないが印刷技術もそんなに高い訳じゃ無いのだろう、出回っているのは基本中古で綺麗な物自体少なかった。

 大体はかすれていたりが多く、ページが無いのは余り無かったが破れた物を補修してあったりはよく有ったし、値段は高いくせに集中して読みにくい物ばかりで今の所は諦めるしかなかった。


 なので、この状況は幸いと競り落としたわけだが……。

 女性だし、パスで聞いた方が良かった気はする。

 基本は何だかんだ言ってそう簡単にこの世界に馴染めないだろうと予測できる俺のストレス発散なので良いとは思うが、こういう時に自分の事だと相談しないのはまずい気もする。


 会場の入り口より少し離れた受け渡しをする場所で簡単に自己紹介をし金を支払い、いつも通りの奴隷契約をして二人を連れて外へと出て行くと片方から強めに声を掛けられた。


「さて、あんたに買われた訳だけど、命令される前に先に言わせてもらうわ。」


「ん?いいよ?なんだ?」


 見るからに気の強そうな顔をしている踊り子のが、元々ほぼ命令する気の無い俺に焦った感じで話しかけて来た。

 元から言葉遣いをほぼ気にして無い俺の返事に、もうちょっと嫌な顔をされたり止められたりすると思っていたのだろう不思議な顔をしつつ宣言した。


「?? まあいいわ。あんたが何でアタシを買ったのか知らないしどうでもいいけど、そう簡単に心を許すと思わないでよね。命令されれば拒否できる立場じゃないのは分かっているけど、嫌な物は嫌と言うわよアタシは。」


「ん?うん、うん。それで良いよ。……ああ、無理矢理エロい事をされると思っているのか?」


 こういう時に言われる事を考えて理解出来た事を直接言ってやると、真っ赤な顔でキャンキャン吠えて来た。

 横で五月蠅そうに微妙な顔をしている女性は一旦置いといて、そのまま聞いているとこれまでいろいろあったのか愚痴も混ざって来た。


「くぅ~~、何よ! 何か余裕見せているけど男なんてみんな同じよ! 多少マシなのが居ない訳じゃ無いけど、アタシに言い寄って来るのは下心丸出しのばかばっかよ!! こんなもん取れるもんなら取っちゃいたいわよ! 横を通っても、仕事で踊っても、九割胸ばっか見やがって……せめて踊ってる時くらい踊りを見やがれってんだチクショー……。」


「あ~、そうだな。それは見るな、うん。」


 多分レティより大きい胸を自分で持ち上げ喚いた後ゆっくり萎んでしまったので、まずは合流した後色々説明しようと二人を連れて皆が居るであろう集合場所のレティ達の所に向かった。


 ……


 レティの待っている場所に近づくと、きゃいきゃいと騒がしい女性の話し声が聞こえて来た。


「えっ!? もう結婚してるの? 貴女も?」


 既に事情を少し説明しているのかかなり吃驚した声が前の女性陣から届いた。

 出来ればこっちが来てから説明したかったが、予め決めとくのを忘れてたし、先にパスで連絡すんのもそういえば忘れてた。


「おう、待たせたか?」


「いえ、私達も先程来たばかりです。って、おかしくないですか? 一人多いですよね。」


 分かり切っていた事だが、二人で来る筈が三人になっているので当然速攻突っ込まれた。

 ……分かっていたから良いけど。


「うん。ちょっと思う事があって一人増やした。そこも併せて後から紹介するから、一旦全員集合。<パンッ!>」


 まだ俺達にも慣れていないのに更に始めて見る相手が居るからだろうが、オルガの後ろに居るレティの後ろで子供達は三人共固まっていた。

 短い間に多少なりとも慣れたのか待っている間に何かは起こっていないはずだが、レティには少しは気を許したようで動いたと思ったら順番に陰からちょっと顔を出しては此方を窺っている。

 見ていて面白くは有ったが何時までもそのままでは困るので、早く紹介を終わらせて王都を出るなりの行動を起こした方が良いだろう。


 面倒に巻き込まれない様レティには貴族街の壁の前に居て貰ったわけだが、それとは別にとても目立つレティ自身への注目はどうしようもない。

 そこに俺達が来た時から遠くに見える警備の兵がこちらを気にしているのは、長く貴族街の外壁に集まっていれば当然だろう。

 人数結構増えたしな。


「このまま此処で話していると、貴族街の警備に声を掛けられそうだし先ずは移動だ。」


 皆で先ずは外へ移動する事にした。

 オークションでまあまあ時間を使っていた様で、まだそんなに暗くなってはいないものの既に太陽が落ち始めていた。

 これ以上後に外に出るとなると、冒険者はそういった時間に出没する魔物を狩る為に外に出る事も有るとはいえ、門衛に怪しまれる可能性が増えるだろう。


 今日中に家に向かう為にももう出ないといかんと、多少なりとも聞きたい事がある様子の新しい奴隷達と子供達を連れて色々話す前にとっとと城門に向かった。

 何だかんだと目立っているのは分かっているので、怪しまれない為入って来た城門では無く反対側の城門から出て、ある程度離れた所から森に入りレティに飛んでもらうつもりだった。

 つもりだった、と言ったのは、問題無く外に出て森に入ろうとした時に、今まで聞いた事が無い緊迫した声でパスがつながったからだ。


『ガウ!!』『グルルルル。』


 帰したはずのガリオンから何かヤバいといった感じのパスがつながった。

 今迄従魔にした後そのまま森で修行をさせた時も一回も無かった救援要請が来た瞬間、レティに後を任せて身体強化全開で森に飛び込んで行った。


いい年なのでちょこちょこ体調悪かったりしていたのですが、この度とても言い難い病気になりまして一月に一回更新出来ればいいと思って貰えたら助かります。


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