第三十二旅 少し予定を早めました
色々身内にあったのですがやっと落ち着きまして、何とか一話書き終わりました。
締め切りが有る訳では無いですが、毎週とか毎月とか予定通り書いている作者さんは凄いですね。
ちょっと高いがそこまで美味くない昼飯をとっとと食べて、もう一つの目的を果たす為に予めオルガに聞いておいた王都の北西側に在るスラムへと向かった。
競売は四時からという事であまり余裕が無いから、ちょっと裏道を使いつつ走れる所は走っていく。
さっきの競売会場は王都の南側に在り、スラムは北西側に在るので、ちょっと焦りつつ移動して多分普通に歩くと三十分は掛かるであろう距離を十分程で手前まで行く事が出来た。
スラムが近くなるにつれて人も店も荒れているというか、掃除も修理や補修も余りしていないだろう店舗、客を見るにしては険しい顔をしていて目線が落ち着かない店主、此処からは見えないが気配を探るとそこここの店の周りに隙を窺っているらしい小さいのが居るのが分かる。
こういう所に行けば居るとは思っていたが、スラムから少し離れた店の幾つかに二人から五人くらいが固まっているのを見ると、それぞれが違うグループなのかもしくは囮なりの集団戦法か、とも思うがどうかな。
更に奥へと感知を広げてみると、店舗とかに居る人は置いといて幾つかの表に近い(立場じゃなく場所的に)組織の集団や、人が住んでいない様な所に不自然に集まっている余り動かない子供達が幾つか、目立つのはそんな所か。
大体目星がついた時点でレティ達の方を向くと、俺が気配感知に集中しているのが分かっているからか逆に自分の気配を薄めながら何か言うのを待ってくれていた様だ。
「すまん、待たせたな。」
「いえ、何か用事があって来たと言っていましたし、確認したい事は確認出来たのですか?」
「ああ。細かく説明していなかったが、此処で未来の人材を確保しようと思っていてな。……かっこいい様言ったが、このままじゃここらのガキ共は悪けりゃ飢えで死ぬかかっぱらいや盗みを失敗して簡単に処刑というか私刑で殺されるか辺りだろ。良いのが居たら拾っていこうと思ってな。良くても闇ギルド拾われて良い様に使われるか、そこらのチンピラの捨て駒か肉の壁になるのが関の山って感じだろうし。」
「そうですね。私が主に会った時の闇ギルドの冒険者は、確かウィッツのスラムで数十人拾われた中で何とか最後に残ったパーティですよ。あの頃の記憶は今では結構曖昧で何時の事かは覚えて無いですが、何回目かに会った時にそんな事を言ってましたから。……確か。」
むーんと唸りながら記憶から絞り出してくれたが、最近の生活が楽しくて昔の記憶がかなりうろ覚えになっていると自信無さげにしていた。
「ふむ、なるほど。ま、今回は実際に闇系のギルドに連れていかれる前に横から掻っ攫おうとしている訳だ。一番に王都で探すのは、数も多いだろうしどう考えても全員連れていけない事から、選ぶのに良心の呵責に苛まれる事が少ないかな、ということだな。ちょっとせこい気もするが、ストレスは少しでも少ない方が良いからね。今回連れていく事は出来んが、予め良さげなのを見繕って援助してやる……ん~~……あ~、何とか連れてった方が良いか。折角選んでも、次来た時に無理やり連れていかれたよ、とか聞くのは嫌だしな。本当は空間魔法で長距離移動が出来る様になってから直接来る気で、今回は下見のつもりだったんだが。」
「奴隷化して無理やり連れていく事は出来ますが、ただでさえささくれ立っている子供を無理矢理奴隷にして敵視されると、物語上のチョロいキャラは兎も角色々と取り戻すのは時間を掛ければ無理ではありませんがかなり面倒です。物語ですと長期に渡って世話をされると恩を感じてなんてなりますが、現実問題として全員そうなるとは限りませんからね。此処に居る孤児たちがちょっと説得したからと付いて来てくれるはずも無いですし……どうしましょうか。」
「そうなんだよな…… ……どうすっか。思い付きだとなかなか良い案が出ないな。早めに人材が増えるのは色々と助かるし、何か無いか?」
見慣れない赤い髪で黒い肌のオルガと頭を突き合わせて考えているが……今回連れて行くのは今思い付いた事だしなかなか良い案が出てこないな。
因みにレティは横で薄っすらと微笑みながら気配を消し佇んでいた。
人族の細かい事は分からないんだろう、こういう状況になるとよく同じ対応をしている気がするな。
「何か事件なり都合よく起きて助けたりしたら別だと思いますが……。後、探し出せればですが、多分今現在もかなり飢えている、より幼い子供が隠れてまとまっている所が幾つか在ると思いますので、そういう所に居る子供達は水と食糧で付いてくるとは思いますけれど……。数人なら私達に付いて来させることは出来ると思いますが、やはり王都を出る場合は移動手段も考えませんと、帰り全部レティシア様に飛んで貰う事になってしまいますよ。」
「う~~~ん。そうなんだよな。それじゃ修行にならないし、帰りも森の中を帰るつもりだったんだがなぁ。シーラ達を長く待たせるのもなんだし、遅くなっても今日中に帰れれば良かったんだけれど……。あ~あ、ホントだったらそろそろこんな事もあろうかとって言う為に、だけではないけど、近い内にイルメラに馬車を作れる知り合いなりが居ないか聞こうと思っていたんだがな。」
「ああ、だからここ最近モンスターの素材を多めに換金してるんですね。今回の事だけにしてはやけに多いと思ってたんですよ。」
「まあ、そのおかげで今回多少余裕を持ってオークションに参加できるし、それはそれで良かった」
うだうだと悩むばかりでいい案も出なかったので、結局は仕方なくレティに頼る事にした。
どう考えてもレティがチートっぽいので、頼りすぎると皆の成長が思っていたより進んでいない、なんて事だ~とか言って苦戦したりする羽目になるから余り選びたくは無かったんだが、仕方ない。
拾える人材は早い内に拾っておきたいし、使える者なら尚更闇系統の盗賊や暗殺とかのギルドに持って行かれる前に見つけたい。
孤児たちを連れて王都を出るのは何も問題は無い様で、よく空間鞄を買うのもケチる冒険者が早い内に奴隷や孤児から安く買って荷物持ちとしてパーティに加えて扱き使う、なんて話がよくあるらしい。
魔の森に接している町だと損耗率が高すぎて皆やっていないので今まで知らなかったが、王都からどう連れ出すかを考えていたらオルガにそこは大丈夫と苦笑半分で教えてくれた。
始めから聞いておけばよかったと思いはしたが、本当なら一旦帰って空間魔法で長距離の移動が出来る様になったらの予定だったし、しょうがない。
「それじゃ、どのがきんちょを連れていくか考えながら探してみるか。」
気配感知で個々の気配をより分かる様集中して探っていく。
勘を働かせると何となく分かるが、期待値というか面白そうという感じの気配が幾つか在る。
近くにもちょっと遠くにも在るが、さてどうしようか。
近い気配は面白そうというより信頼出来そうというか、真面目そうというか。
遠い方は面白そうな気はするが不安な感じも多少あって、俺が手綱を締められるかどうかが微妙な感じなんだよな、多分。
まあ、どっちもそれ以外に複数人が一緒に居る様だから、抑える役とか逆に背中を押す役が一緒に居るだろうけども。
最初だし多いと見切れない可能性が出るだろうから、二人から多くて四、五人ってところかな。
運動が得意なら俺とレティ達で鍛えて、勉強が得意ならこれから買う奴隷に見させればいいだろう。
俺が見ても良いけれど家庭教師の経験は無いし、よく物語上前世との知識レベルの差が出るが、実際に自分で使える知識か向いている事かって事は余り気にされないのは不思議だったな、今思えば。
んー……よしっ! 決めた。
一番気になる訳では無いが、選択肢の中で気配から感じる生命力が低く一番死にそうなのを選ぶ事にした。
他のは今後生きて会える可能性がありそうだが、こいつらは……多分無理。
俺の少ない良心を加味すればこれが最善だろ。
正義の味方では無いしなる気も無いので、状況次第では他人は見捨てる気満々だが。
……バレない様にできそうなら助けるのも吝かではないけど。
「よし、決まった。とっとと確保してオークション会場に向かおう。」
「誰にしたんですか?私の感知が届く所に居ます?」
「ん?オルガの今の感知範囲が正確に分からんから何とも言えんが、ちょっと無理かな。確か、正確に分かる感知範囲は30m位だったろ。」
「今はまあまあ伸びまして、何とか40mはイケます。ただ、それじゃ足りないですよね?」
「そだな。測れないから正確な距離は微妙だが、60~70m位離れてるかな。弱った気配からして三人の子供が半死半生な感じなんで、早く行こうか。」
「はいはい。レティシア様も何時までも気配を薄くしていないで行きましょう。」
そのままシレっと後ろに付いてこようとしているレティに対して中々強めにオルガが突っ込んでいたのはいいんだが、ちょっと行き成り馴れ馴れし過ぎやしないか?
と、少し心配していたら、表向き表情を変えていない様に見えるレティだったが、実際はちょっとイラッとしている事が繋がっているパスから俺に伝わって来た。
言いながら前を向いていたオルガに、薄くしていた気配を更に消し黙ったまま一瞬で後ろに移動したと思ったら、ガッと頭を捕まえていた。
じわじわと力をくわえ始めたのかオルガが「レ、レティシア様? 」「ちょっ」「あ痛たた」と喚くが、横から見ていると少しずつオルガの体が浮き上がっていくのが見えた。
「なかなか言う様になったじゃないですかオルガ。良い傾向です。ただ、次からはもう少し考えて喋る様にする事ですね。関係性は行き成り自分に良い様に変わったりはしませんよ?」
「す、すみませんでした~!?」
横でお笑いをやっているが、レティがやり過ぎるとは思えないし放っておこう。
色々と考え事をし過ぎた様で、太陽の場所を確認すると三時前位であまり時間に余裕が無い様だ。
程々で終わらせて急いで子供達の方へと向かうと、十歳に満たないであろう三人の子供が俺達が来ても動く事も出来ずに倒れ伏していた。
中の年長だろう一人の男の子が敵意を込めた視線だけを向けてきたが、顔をこちらに向けるのが精一杯の様で体を起こすことも出来なていなかった。
横に居るもう少し小さいのは男女一人ずつで、全員かなり痩せ細っている。
気配で感じていたより猶予は無い様だが、これなら助ける事を交換条件に出来るだろう。
「俺の声が聞こえるか?」
「……!」
うん、声を掛けただけで更に睨みつけて来たし、確実に聞こえてはいる様だ。
「さて、お前に選択肢をやろう。……もうそこの二人は限界の様なので、お前が選べ。このまま更に痩せ細りそう遠くない内に餓死するか、俺達に付いてくるか。」
行き成り舐められない様悪役チックに聞いてみると、基本睨みつけたままだが限界が近いとは分かっていて考えているのか目線がちょいちょい泳いでいた。
その様子にちょっと面白くなりつつ待っていると、オルガと遊んだ後追いついて来たレティが俺が不慣れな対応をしているのを見て不思議に思ったのか、子供に聞かれない様パスで話しかけて来た。
『ご主人様、何してるんですか?』
『ん? 終わったのか。ああ、最初から甘い顔を見せると、子供には舐められる可能性があるからな。最初からある程度成長するまでは厳しく、成長が見えてくれば多少は甘い顔もしてやるか、とな。』
パスでレティに答えつつ後ろから来るオルガを見ると、頭を押さえてちょっとふらつきながらこちらに来ていた。
「いった~。痛いですよ、レティシア様。もう少し手加減してくれてもいいじゃないですか。」
「大丈夫か?オルガ。」
「あっはい、主。大丈夫です。……で、様子はどうです?」
「今判断を待っている所だ。」
言いながらもう一度目をやると、まだ迷っているのか右に左に目を泳がせていた。
横に寝たままの仲間を不安な目で見た後、覚悟を決めたんだろうが強い目でこっちを見てしゃがれ声で喋り出した。
「ぐっ……ごほっ、げほっ。ほ、ほかにえらぶみちはない、か。と、とうぞくぎるどにひろわれるよりは、ま、ましとおもおう。おま、おまえらぼうけんしゃにみえるし、お、おれたちをにもつもちでつかうつもりだろ。」
「ああ、冒険者が良くそういう事をしている事は知っているが、どうだろうな。今の状況を考えて、自分で判断しな。もう少しは待ってやる。」
「むっ……ぐふっ、ごほっ。」
いちいちむせたり咳き込んだりするのが面倒になって来たので、ボックスから熱中症対策用の少しの塩と蜂蜜を入れた果実水の入った水筒を出して飲ませてやる事にした。
「一々咳き込まれるのも面倒だ。ほれ、飲みな。果実水だ。」
蓋を開けて水魔法で操り三人の口元にゴルフボール大に丸めて近づけ飲むよう促してやると、限界だった二人とも一瞬戸惑った様だが直ぐに吸い付いた。
「んっ!? んぐっ!」
<じゅっ、ごく>「うま……。」
行き成り大量に飲ませると命の危険もあるかと思い、少量を与え様子を見る。
まだ話せていた子供は不信感満点の視線を向けていたが、この状況で俺が毒を盛ったりする必要が無い事は理解しているのか二人を止めたりはしなかった。
ただ、素直に飲まずこっちの様子をうかがっていたが、覚悟を決めたのか目の前に浮いている水球にかぶりついた。
「……ふん! あむっ! っ?!? 美味っ!?」
「ん゛っ! あ゛っ! あ~、……あの~」
三人とも余程美味しかったのか時間を掛けて味わって飲んでいたので、オークション時間が迫って来ていたが多少時間を気に掛けつつ待ってやっていた。
少し経つと奥に居た一番声を上げていなかった女の子が声を掛けて来たが、久しぶりに声を出したのか喉を鳴らした後喋った声はまだ少ししゃがれた感じだった。
「もう少しこの美味しい水もらっても良いですか?」
もう一人の男の子もまだ喋りづらいのか声を出してはいなかったが、かなり物欲しそうな目を向けていた。
もう一度、今度はもう少し多めに浮かしてやりながら選択を強いた子供の様子を見ていると、俺から果実水を貰って喜んでいる二人を見て不機嫌な顔で話しかけて来た。
「オッサン、これだけは聞かせろ。」
昔から外見はそれこそオッサンっぽかったので気にしなかった(自分で思うに高校辺りから外見に変化は無かった)が、一瞬レティから殺気が出そうになったので身振りだけで止め話を促した。
「なんだ?」
「俺達を売るつもりではないんだろうな。」
三人とも今の外見は悪くなく将来有望に見えはするが、このこの質問で王都でどういう状況に居るかはよく分かった。
俺が考えていた用途以外に多分貴族の趣味の捌け口やもっと言えない様な事なんかもあるんだろう。
「ああ、違うな。」
意図的に口数を減らし返事をすると、嘘では無いと分かったのか決心がついた様だった。
まあ、その為にちょっと甘い行動を取った訳だし、時間も実はあまり無いしで本当に良かった。
「……よしっ! 頼む、俺達を此処から連れ出してくれ。」
時間も余り無いし串焼きの肉を食わせ果実水を飲ませ少しの食休みを取り、多少マシにしてからまたオークション会場に向か事にした。
出来れば一月以内に二話は書きたいです。頑張ります。




