第二十九旅 王都への道
久々ですみません。
オルガと今日の事を予め話している時に帰ってきたレティ達は、コボ達と少し話していたのかそれから10分くらいで家の前に着いた。
「「「「ただいま帰りました。」」」」
「ご主人様。」「アルジ。」「主様。」「ユウ様。」
「ただいまです、ご主人様。」
既に着替えていたのでそのままオルガを連れて迎えに行くと、ちょっと埃と土に汚れたアル、真夜、シーラ、イーリスと、昨日出た時とほぼ変わらない姿でレティが挨拶しながら家に入って来た所だった。
「おう、お帰り。」
「お帰りなさい、皆。」
「帰って直ぐで悪いがちょっと話が有るので広間で話そう。で、アルはちょっと早いが昼飯を頼む。」
「は~いです。力が付く物を手早く作って来るです。」
アルが台所に小走りに行くのを見送り、広間のテーブルに真夜以外がつくのを確認し話し始めた。
ちなみに真夜を確認しないのは、もうテーブルの横に待機しているからだな。
「さ、て「ご主人様、あまり時間は取りませんので先に私達の報告から良いでしょうか。ちょっと想定外の事が有りまして。」・・うん?そうなのか?・・別に良いけど、ぱっと見何か危険があった訳じゃなさそうだし、短めにな。」
気付かなかったが怪我が無いか見てみるが、違った様で新しい傷跡も無い様だったからレティに手早く話す様頼んだ。
「はい。と言っても、今回は私ではなくてシーラなのですが。」
「ん?そうなのか?」
「はい。」
「だったら最初からシーラが言ってくれればいいのに。」
言ってから気付いたが、いまだに奴隷だった頃の様に遠慮しいなシーラにはまだ無理だったか、と訂正しようとしたが、ちょっと遅かった。
「すみません、主様。折角気にせず話せと言ってくれていますのに。」
「いや、今迄何年もやっていた事をいきなり変えるのは、人によっては元からの資質もあるだろうし難しいだろう。・・まあいきなり変えられるのも居るのでまったく気にするなとも言い難いが。」
チラッと横でペタッと机にへたっているイーリスを見ながら仕方ないと言ってやる。
周りのレティやオルガもしょうがないなぁって感じで見やっているし、元から注意したりする気は無いのでそのまま放っておいて、話を進める為にシーラに向き直った。
「あっ、はい。今日ここに帰ってくる前、魔の森の浅い所から奥に進んだ、そろそろもう少し強いモンスターが出る辺りでの事です。私は見た事は無い者達でしたが、場所柄ウィッツの冒険者であろう五人組のパーティが居たのです。が、数体の熊系魔獣に森の奥からかなりのスピードで追われていました。」
「ふんふん。で?」
「そこでですね、一回同じ様な所に遭遇した時の主様の言葉を思い出したわけです。そういう場合はバレない様助ければいい、と。」
「なるほど。(確かにそんな感じの事を言ったな。一々助けては恩に着られてだと面倒だったからしょうがなかったし。)」
「で、以前やった時と同じように離れた場所から狙撃しようと、森の中だったので今の限界距離より近い400m程度の位置から先頭の熊を狙い撃ちしたのです。実はちょっと狙った所と当たった所がズレたのですが、結果は悪くなく転んで後続を引っ掛けてくれました。・・そこからが問題でして。」
ふぅ、と漏らす溜め息が何か心配事が有るのを物語っていた。
「非常に都合の悪い事に、冒険者の中に私の持っている望遠眼の劣化版らしきモノを持っている者が居た様ででして。向こうからはギリギリだった様でかなり目を凝らしていましたが、一瞬でしたが確実に目が合ってしまったのです。多分バレはしていないと思いましたが、一応早めに報告をしておいた方が良いかと思いまして。」
「・・そうか。ま、大丈夫だろ。まだ当分はウィッツに戻る気は無いし、一々その状態の時一瞬だけ見た相手を探す様な物好きはいない・・と思う。」
「そうですね。確かに私はウィッツで買われましたが、実際に街で活動は余りしていませんでしたし大丈夫でしょう。」
多分問題無いだろうと一応の結論が出た所で、最初に伝えるつもりだった話を始める事にした。
「で、だ。最初の話に戻すぞ。」
「「はい。」」「はーい。」
レティとシーラははっきりと、イーリスはちょっと間延びした感じで返事しながら体を起こした。
最初からこちらに集中している真夜と、先に話を聞いているオルガは返事もしなかったが。
「特にシーラにはすまないと思うが、今日明日は予定変更で王都へ向かうから。」
「??何もなく意地悪とかでそう言い出す主様では無いのは知っていますから、それは問題無・・ああ、少し前に言っていた王都に居る人材を買いに、ですか。」
「そうそう。流石にもう行かんと、時間掛け過ぎるとヤバいらしいし。他にも考えている事が有るんで、今日の夕方までには王都に着きたいと思ってはいる。時間的にあまり余裕は無いが、奥の手を使えば逆にもうちょっと時間は有る、かもしれんが。」
今の所はまだ頼るつもりは無かったが、レティを見つつ頼る事を含めて話すと微笑みながら頷いてくれた。
「ユウ様・・王都に行くって事は・・・僕は留守番?」
少し寂しそうにイーリスが予定を聞いて来た。
「・・そうだな。幾つか王都の情報を聞いたが、獣人にしろエルフにしろ純粋な人以外はほぼ奴隷しか居ないらしいからな。」
「むー・・そっか。しょうがない・・ね。」
「すまんな。そのうち別の国の王都には行ける様するから我慢してくれ。シーラもな。」
「はーい。」「はい。」
「そんな訳で、先ず飯を食ってからすぐに俺、レティ、オルガで王都へと向かう。・・・アルが作ってるご飯はもう少し掛かりそうだし、準備が必要なら・・?いらんか。」
「そうですね。私の空間鞄には昨日今日の獲物が入っていますので後でお渡ししますが、皆の鞄にも非常時用として分けて入れてありますのでそれも余り無いです。」
「私は荷物が増える様な事はしていませんので。魔道具も普段から持っていますし。」
「そう言えば、ご主人様。今回商いに精通した人材を買いに行くとの事でしたが、御自分でやるつもりは無いのですか?こちらで色々やっていた転生者では調味料の流通で儲けた者や、回復薬を作るのに必要な薬草を大量に栽培し普段一般の商人とは関わらない神殿から契約を取りぼろ儲けした者、武具に関しての特殊なスキルでもあったのか国相手に大量の武器防具を流す死の商人になった者まで居ましたが。」
「いや、やる訳無いだろ。そもそも商売のイロハも知らんし、交渉術も無いから。と言うかそういう連中と交渉する気が無いし。」
根本からやる気が無いというと、レティは不思議そうに首を傾げていた。
「ああ、多少は俺の記憶を持っているから、物語でよく転生者や転移者が商売やってるのを知っているからか。・・ん~、ちゅうてもなぁ、って変な言葉になっちゃったけど。そう言われても、あれどう考えても無理があるだろ。暴力が良くないとかって綺麗事がまかり通っている所ならともかく、大体は相手が暴力を含めた交渉をするからって主人公の力で更に理不尽に無理を通しているのが多いし。どう考えても主人公みんなが宥め賺し脅す交渉術を持っている訳無いだろ。更に言えば、そもそも魔法や魔道具が有って、実際に商人や一般人に何が出来るかとかも全然違う訳で。何十年かけて様々な手を増やし、かなりの時間を掛けて伝手を広げて結果そうなっていたとかならともかく、どう考えても来て直ぐにやる様な事じゃないな。無理!」
「なるほど。だからこれから買う奴隷にそれを任せる訳ですね。」
「そういう事だ。ま、商売以外にも色々交渉して貰う事になるだろうし、有能な者の情報は非常に助かったのよ。出所はどうでもいいし、アルムが言っていた以上無能って事は無いだろ。」
結局何も問題無かったので、その後多少ゆっくりアルの作ったご飯を食べた。
ゴロゴロと大きめに切ったサイコロ状の肉をサンチュ的な野菜で包んでピリ辛のソースをかけるもので、バリッシャクッと食感も良い上ご飯と一緒に食べるにも良く、今日乗るつもりのガリオンには少々悪いがかなり食ってしまった。
ガリオンならあまり関係は無いとは思うが。
皆が食べ終わるのを待ち、王都に向かう三人でそれぞれの騎獣に乗って出発した。
当然俺はガリオンに、レティはヘルハウンドのヴィクトールに、オルガは魔氷狼のイースに乗って森の中を疾走していく。
村の防衛をしている間もずっと森で走り回っていたからか、結構なスピードで木々を避けながら進めていた。
思っていたよりスピードが出ていて何とか多少余裕を持って間に合いそうだったので、行程の七割ほどを長距離移動の修行がてら進み、王都一つ手前の町であるウルビーノを過ぎた辺りまで行くつもりだ。
今俺達が居るグラーデ王国の南にはキュクロ大山脈が有り、丁度中央付近に時間は掛かるが通る事の出来る低い山が有る。
そこと西の端に南の国とつながっている道が有り大体が山が国境となっているんだが、王都フォートレウスは中央の道の国境の町から馬車で三日の所にある。
キュクロ大山脈中央より僅かに西の所からほぼ真北に向かってガニア山横を流れているミゼーリ川が有るので、良い所まで行ったら川を渡らないといけないが、そこはレティに頼むつもりだ。
ちなみに本当だったら俺も竜魔法によって飛行魔法も使える筈なのだが、いまだに浮くくらいが精一杯なのは情けない限りだ。
自分の情けない所は置いて置き、ちゃんと頑張って成果を出した物を仕込む為に俺の肩には真夜の眷属の中で新顔の一匹である隠密蜘蛛が乗っている。
いつの間にか屋内で巣を張っている蜘蛛で、普段から掃除をしていてほぼ密閉されいる様な所にも何故かいるので付いた名らしい。
やりたい事を伝えたら真夜が二日かけて探してきてくれた眷属だ。
5cm位の体長で何とかブツを仕込めたので、バレ難い様王都のスラム辺りに置いときたいと思っている。
普通に監視にも使えるし、状況次第では裏の情報を得る事も出来るだろう。
昼になるかって辺りで出発して一時間が経った辺りで山を少し登り出した。
本来王都に真っ直ぐ向かうには南西にガニア山を突っ切っていかねばならず、しかし山の浅い所にいる会ったら突っ込まれそうな冒険者や、ある程度以上登ると居る一々狩っていくと面倒なモンスターにも会いたくない。
ので、冒険者に遭い難い様森の浅いを避け、逆に強めのモンスターを避けて山をあまり登らず、山の中腹手前辺りを遠回りして進んでいった。
ガニア山に入るとあまり登っていかないにしてもレニの森より強いモンスターも出ては来るが、時間に余裕を残したいので一々止まらずにレティに頼んで発見次第狩っていく事にした。
『レティ、これから出てくるモンスターに関して処分は任せた。狩った獲物は後ろから俺が拾っていくから、一撃で首を飛ばすなり出来れば原型をとどめる様適当にやっちゃってくれ。』
『分かりました。お任せください。』
オルガにパスで指示しつつ一瞬ガリオンにスピードを落とさせ、レティに先頭に出てもらった。
森の中での気配を探るのに慣れた騎獣達がある程度避けていた(まあまあ広い索敵範囲を持っていたので任せていた)が、多少強い魔獣が縄張りに入って来た俺達を排除しようと近づいて来ていた。
最初に来たのは偶々進路近くに居たのか移動スピードの遅い待ち伏せ系の蛙の魔獣で、確か湖近くの森に良く居るランク3か4のスナイプフロッグだった。
個体に寄るが体長は1m超えで、20mから30m伸びる舌で森の茂みの陰から一気に獲物を引き寄せ丸呑みにするらしい。
と、情報を思い出しつつ見ていたら、次の瞬間フロッグの首が飛んでいた。
『ご主人様、お願いします。』
『おっ!?おう。』
別の事を考えていたので慌てて魔力を伸ばし、多少離れててもしまえる様になったボックスにしまう。
因みに、想像力が足りないのか他に原因があるのかボックスにしまえるのは5m以内くらいで、それ以上離れると同じようにしても反応は無かった。
残念。
そのままレティにモンスターの排除をして貰い後ろで掃除をしながら順調に進んでいると、俺の後ろからついて来ていたオルガからパスがつながったのが分かった。
『主、主。ちょっと良いですか?』
『どした?』
『私も参戦して良いですか?イースと機動戦の修行はしましたので、この機会に試したいのですが。』
『ん~、そうだな。・・・移動がメインだったからスピード優先でレティに頼んでいた訳なんだが。あまり変わらない速度で殲滅出来るか?』
『・・・正面は私がやるので、側面をレティシア様にフォローをお願いして良いですか?』
『<ぷっ>正直で結構。まあ、いろいろ経験は必要だし、実戦の経験を足せるならそれに越した事は無いか。』
パスのチャンネルを二人に合わせ、三人での同時会話に変える。
『レティ、ちょっといいか?』
『?何かありましたか?』
『オルガが参加したがってるので、フォローしてやってくれ。手の届きやすい正面をオルガに任せ、側面から来るのを頼む。』
『お願いしまーす。』
『ああ、そう言えばイースに乗って騎獣での戦闘の訓練をシーラとしていましたね。・・良いですよ。』
『おっ、良いで『ただし!』すか???・・なんでしょう。』
オルガの声が一瞬喜んだが、即落とされた。
『まあ、そう落ち込まないの。時間が掛かっても困りますし、難しい事を言う気は無いですから。』
俺は拾うだけなのでボックスにしまう為に魔力を伸ばす以外に余り集中する事も無くしゃべり続けられるが、レティシアは普通にオルガとパスで喋りながらスパスパッとそう多くはないが結構な勢いで飛び出してくるモンスターの首を飛ばしていく。
最初に蛙、次に熊、狼が群れで来て6、考えている間に木々の上から猿が襲い掛かって来た。
襲って来た猿に向く事も無く、しかも吹っ飛ぶ方向を考えてか後ろから風の刃で首を飛ばすレティ。
器用に俺の方に分割された獲物の猿が飛んで来たのでそのままボックスにしまい、レティに何か考えが有る様なので余計な事を言わずに話を聞く事にした。
『今は出発して二時間ってところですね。予定通りに進めば後三~四時間位、夕方前位で目的地の王都前の町であるウルビーノ近くのミゼーリ川の反対の岸に着く筈です。本来王都は川の東側にあるので渡る必要は無いのですが、私達は今カルカーンが本拠になっている筈なので川より東から行くと不審この上ないですから。』
『って話がズレましたね。まあ、簡単な話です。貴女が前に出ればどうしても多少遅くなるでしょう。日が落ちる前に目的地に着ければ、ご褒美として私が単独で魔の森の奥で狩り、とっておきとしてご主人様に保管をお願いしているルビーリザードの肉を分けてあげましょう。』
『へ?ルビーリザードって言ったら強さではなく発見が難しいが為にランクが5っていう希少種でしたよね。余程下手に料理しない限り塩胡椒のみで極上の味に仕上がる為、料理人殺しと呼ばれる事も有るとか。大体私達と一緒に居たレティシア様がいつの間に狩ったんですか?』
かなり吃驚したのか息継ぎを間に挟まず疑問と質問が来た。
『細かい事は今夜にでも宿で教えてあげますよ。で、どうしますか?オルガ。』
『・・ご褒美だけでは無いと思うけれど、間に合えばいいだけですもんね。』
『<くす>そういう事です。』
『ふぅ~・・・おしっ!行きます!!』
オルガは一声気合を入れ、勢い込んでイースの背を叩きスピードを上げて前に出た。
さて、間に合えばそれでいいが、間に合わなかった場合にレティが何を考えているのやら。
その為に邪魔する気は無いし、ゆっくり獲物をしまいながら見ていよう。




