第二十七旅 オルガ・マルククセラとの一日 前編
遅くなってすみませんでした。
なかなか全快とはいかずまだ当分不安定な投稿になりそうです。
もういい年だからなのでしょうか、数日で治らなくなってきました。
ちょっと長くボーっとしていたが昼になる前には正気に戻れたので、もう少しだけとレティと世間話をしながらのんびりしていた。
ここ最近のコボ達の状況や、シーラが隠密しようとして枝が折れ2mちょっとの所から落ちて怪我した事、オルガが雨の中での訓練中に滑って思いっきり転んで泥まみれになった事など、それぞれが居ない時にあった事を楽しく話している内に一つ忘れていた事を思い出した。
「そうだ!基本皆一緒に居るからすっかり忘れていたが、それぞれにお小遣いというか生活費というか。全く渡してなかったな。」
「はい?・・と言われましても。それこそ基本皆一緒ですから食べ歩きとかくらいでしかそもそもお金使いませんし、横にご主人様が居て払ってくれるので私達が使う必要が無いですよ。しかも今現在の優先順位はどんな状況でも対応できる強さを得ることで、町で買い物したりしている暇は皆ないでしょう。他にお金を使う事自体あまり無いですしね。」
確かにそもそも街に余り居ないし、必要が有って買う物がある時は大体買ってるし、かまわないのか。
「・・良いのか?・・ま、今の所はこれで良いのかね。」
「はい、問題無いです。もう少し時間が経って余裕が出来たら考えればいいのでは?」
「そうだ「おはよー。」な。」
「おはようです。」
外に聞き覚えのある声が聞こえて来てから二人で準備してリビングに降りていくと、アルが今日はオルガと一緒に昼ご飯を作っていた。
オルガも多少は腕が上がって来たらしく、アルに任され一品作っていた。
良い香りがし出してしばらくすると、ドン!ドドン!!と大皿に乗った美味そうな料理が順次並べられていった。
アルの作った料理はどれも美味そうで、皆が好きなのでよく選ばれる焼き肉と、大根的な物の汁物と、山菜と野菜のサラダのおかず類に、通常パンもご飯も両方あるが、今の所は俺の我儘で基本ご飯にしている。
そこに今日はオルガが作った四品目のおかずが並んだ。
最初に習うのは自分の好きな物が基本なので、焼き肉が有って更にステーキなのはどうかと思ったがそこは突っ込まなかった。
この世界に来てからは運動、というか修行を常に続けて来たので、前世から食べる量は多くある程度大食いではあったが、更に二倍近く食べる様になっているから何も問題が無い為だ。
俺の食事量は置いといて、他の面子と比べて肉を焼く事ばかりに集中していたオルガは肉の焼き方に関してのみアルに近い腕になっている。
今回のアッシュボアのステーキもちょっと胡椒を強めに効かしたピリッとした感じで、焼き方も俺の好みは伝えてあるのでミディアムレアで野趣溢れる感じですっげ~美味かった。
皆でアルのお昼ご飯に舌鼓を打ち、オルガの付け合わせの品に厳しい指摘をしていた。
皆基本的にアルのご飯を食べているので舌が肥えて来たらしく、火の通りや蒸し方、調味料の量まで話し合っていた。
俺にはそこまで細かくは分からんし気にしないので、個々の好みを中心にやるよう助言した後はのんびり食後の満足感に浸りながら昨日の夜の事を思い出しボーっとしていた。
皆が食べ終わると他に皆が出かける準備を始める中、今日の相手であるオルガが俺の前に進み出て来た。
「主、今日は私なんですが、せっかくですので、今迄経験の無いアルス大森林での自由戦闘を行いたいのですが、如何でしょうか?」
「?良いのか?確かに普段とは違うが、どっちかというとちょっと辛い位だと思うんだが。」
「はい、昨日ですねレティ様以外で相談しまして。戦力的にご主人様達にまだ全く追いつけていませんので少しでも追いつく為にも機会は逃さない様にしようと。・・・アルは別ですが。」
「そりゃ、アルは俺等と仕事が違うしな。ただ、まだ行った事が無く普段の状況も分からん所での自由戦闘は結構きついと思うぞ?周りのモンスターの分布も分からんし、状況次第ではすぐに助けに言ってやれるとも限らんが。大丈夫か?」
流石に心配して言ってみると、ちょっと呆れたように言い返されてしまった。
「主。心配してくれるのは嬉しいですが、私は今でも心は騎士なのです。やはり守りたい人より弱いというのは、今は仕方がないとしてもそのままで居る事は騎士の誇りが許しません。追い越すのは主を見ているとちょっと無理かと思いますが、だからと言ってサボって良い理由にはならないですから。」
「そう考えているのは良い事だ。・・・いや、本当にお前なんであんなのの所に居たんだよ?周りのお陰で今成長しているのも分かるが、きちんと鍛えていたら本当ならもうちょっとは良い所に仕官できたんじゃないか?」
気付いた事に突っ込んでみたら、この頃外で鍛え続けてちょっと色黒になったオルガが少し暗くなりながら理由を教えてくれた。
「・・え~っとですね。先ず言っておきたいのですが、一応私は子爵家の子女です。本来でしたら他の貴族家との繋がりを得るために嫁に出されるのが普通なのです。簡単に手短に言いますと実家でそこまでまともに鍛えられた訳では無いのですよ。同じ状況でも親の貴族の支援を貰っている女性も居ましたが、騎士学校には12歳から入るのですがその頃にはマルククセラ子爵家では家の役に立たないとほぼ居ない者として扱われていました。・・結果私はほぼ援助を受ける事無く学校に放り込まれるわけですが。」
「そして本題ですが、先ず王都とグラッデンの二都市に騎士学校が有ります。王都内のフォート上級騎士学校を卒業したんですが、この学校が酷い物でした。騎士爵以上の貴族の子弟のみが入る貴族用の騎士学校だったんですが、公爵や侯爵などの子弟は選民思想に染まった者ばかりだし、騎子爵や準男爵の子弟は侯爵以上の子弟の周りに集まってばかりで・・・ほぼ半数は騎士になるより上位の貴族とのつながりを得る為か、使える配下を探し早くに手を付ける為に来ている様な者でした。」
「実際に軍で使える者も居ないと話にならないので、一番現実的で話も通しやすい伯爵、子爵、男爵あたりの実力ある子弟を貴族達の遊び場と化している所から分け、軍の幹部候補として選抜した者達だけのクラスを作り軍を維持している様でした。上位貴族の為の名誉職的な物は有るようでしたが。・・ただ私は子爵の娘でしたので男尊女卑である貴族社会の選抜クラスには選ばれようも無く、伯爵や子爵の子弟の選抜に選ばれない様な無能に妾にしてやろうか、とか、そう言わないまでも近衛で使ってやろうかと胸や足を見ながら言われたりしてまして。そういった所にだけは行くまいと多少鍛えはしましたがライバルが居た訳でも無いですし、結局はスカウト待ちな中級下級貴族の中でも結局中ぐらいの実力でしたので。」
聞いてるだけで嫌になる事だが、重要な事と我慢して話を聞く。
二人して微妙な顔をしながら話しているのがどうかと思ったが、大人しく聞いている。
「教師も・・・いえ、これは蛇足ですね。まあ、そんな感じで子爵の娘とは言え四女でしたので、そこまで貴族階級に染まっていなかった私はまあ面倒な事になりましたよ。そこまで人数の多くない女性同士でも色々ありましたし。メレディスっていう傲慢な伯爵家の次女に目を付けられたリ、同じ子爵家の三女にドニーズって子が居まして、色々有る事無い事噂を撒かれました。何故かこっちの事を敵対視してくる侯爵家の四女のアイタナに色々吹き込んで煽って来るしと楽しい?四年間でしたが、何かを出来たとか成長したとか思った事はほぼ無いですね。」
喋るだけテンション下がっていくオルガに何も言えず、そのまま大人しくしている。
「・・・・結論としては卒業時に上から見たらあまり良い生徒ではなかった為、つながりも無く、騎士学校に入った子爵家の四女には当然戻る場所も無く、偶々目に付いたであろう所に行くしかなかった、と言う訳です。結局、自分で実感していますが四年もの時間余り成長せずにいた私を拾って貰ったのは、余計なお世したが感謝もしていないわけではないです。今迄の停滞を覆す事が出来る主に会えましたからね。」
最後に少し俺にとって嬉しい情報もあったけど、この国は中枢はホント酷い事になってんな。
なんだかんだ言っても多少は能力の有る者を使う意識もあるんだろうけど。
事前情報が有るので一回は行くけど、その後は出来るだけ行かない様にするのは今までと変わらないか。
話しの最後でちょっとは上がったテンションで、オルガの希望したアルス大森林にそのまま向かう。
ガニア山東のフィノイ村の横をばれない様にすり抜けてオルガはほぼ全力で俺は五割で駆ける事二時間、ダンニト川を越えアルス大森林の奥に辿り着いた。
今迄と違う環境でちょっと緊張してたけど、アルス大森林はレニの森よりランクが1~2強い程度のモンスターばかりだった。
ゴブリンは変わらず居るが、アッシュやスティールボアではなくアースやジャイアントボアだったり、通常攻撃が主のウルフ系統で無く火を吹いたりしてくるローグ系統が居たりとちょっと強くなっている。
オルガの修行で来ているので、俺が陰から襲うのは勿論、モンスターを誘導してみたり真夜に作って貰った魔力糸で罠を作ってみたりと、休む時間を与えない様追い込んでみた。
あまり時間が無かったので短時間で集中して気を抜く間もない様色々やった結果、戻る時間の夕方になる前にオルガがへばってしまった。
今迄余りやっていなかった事なので、ちょっかい出していた俺も結構疲れたが。
実際アルス大森林に着いたのは2時くらいだったと思うが4時くらいには集中力も切れてふらついていたので帰る前に一旦休憩する事にした。
「ふぅ~~。お疲れ様です。なかなか厳しい気の抜けない数時間でした。・・ああいう全く油断の出来ない状況も経験では必要ですね。何時も何時も必ず主が助けてくれる訳では無いでしょうし。今日は主が居ると分かっての修行でしたが、たまには主の居ない修行時に内緒で色々してみるのもいいかもです。」
来た時のテンションの低さが嘘の様に今回の修行の感想を言って来たが、確かに何か理由が有って俺が居ない中で面倒に巻き込まれる事が無いとは言えない。
今後考えるに値するアイディアだが・・・一々俺がやるには面倒だし、帰ってからレティに相談してみよう。
「ふむ、そうだな。ちょっと考えてみるよ。・・けど、良いのか?多分、基本修行時に限る事になると思うが更にきつくなるぞ?」
「はい?はい、何も問題無いですよ?やっと自分が強くなっているのを実感出来る様になったのに、自分がきついから嫌だとは言いませんよ。しかも、傍にもっと強い人が居る状況で。(その上それが惚れた相手なのに言えませんて。)」
「ん?何か言ったか?」
「いーえ、何も。」
誤魔化されつつ普通に世間話をしていると、オルガは疲れが出て来たのか目を半分ほど瞑り頭がふらふらと舟を漕いでいた。
そのまま休憩中にいい感じに寝てしまったオルガを起こさない様背負い、仕方ないので戻りながら俺の持久力強化の修行とする事にした。
いきなり理不尽な超長距離からのサーチ外攻撃が有るとは思えないが、そのもしかしたらが有って怪我なんかしたくないので自分の周りに結界を張り、背中のオルガを揺らさない様気を付けながら速足程度で進んで行く。
革鎧を着ているので残念ながら背中が柔らかい物を感じはしないが、耳元で寝息が聞こえると夜を待たずに悪戯したくなる。
基礎能力向上の為身体能力強化を使っていないので、実は結構つらくそんな余裕はまったく無いが。
暗くなる前に帰りたいと思うんだが、今の速度だとかなり厳しいんだよな。
後一時間位で暗くなりそうなのに中間地点のフィノイにまですら辿り着け無さそうだったので、諦めて身体能力強化を五割ほどで発動する。
オルガを背負い直して走り出し、今迄は傷付けない様木々を避けて進んでいたが速度を安定させる為結界を前に出し森の木々を弾いて行く。
山側からフィノイを通り過ぎ順調に速度を上げていると、背負ったオルガが身じろぎしたのかもぞもぞと動いている様だ。
時間が無いのでそのまま無視して進み、周りの木々もオレンジに染まる夕暮れの中暗くなる直前には何とか村に着く事が出来た。
「おーい。起きてるだろ?オルガ。降ろすぞ?」
降ろそうと手の力を抜こうとしたらギュッと首に腕を回され降ろせなくなってしまった。
首元に顔を伏せたまま力を抜いてくれないのでそのまま話を聞いてみる。
「どうかしたのか?何か言ってくれないと分からんぞ?で、出来れば先ず降りて欲しいんだが。」
「・・・・・ありがとうございます。」
「ん?運んで来た事か。別に、「いえ!違います!」い・・い?」
強めに遮られたが、何が違うんだろうかと思っていたらゆっくりと話し出した。
「本当にありがとうございます。貴方が私を拾ってくれなかったら、そう遠くない内にあの阿呆共の何かしらの犯罪に加担させられていたでしょう。それだけじゃない。拾って貰った後も・・・まあ、格好は騎士ではなくなってしまいましたが、何年も停滞していた私が剣も盾もより扱える様になり実感出来るほど強くなれました。」
大体言い終わったのかやっと降りてくれたと思ったら、俺の前に立ち凛とした表情で正面を向き片膝をついた。
「まだ貴方に全然追いつけてはいませんが、横に立てる様一所懸命頑張ります。主の為の剣となり盾となれる様精進いたしますので、これからも宜しくお願い致します。」
騎士の決意表明の様だ。
実際一々表に出る気が無いし、結婚式を直ぐに挙げる訳にもいかないしでみんなそれぞれの言葉で宣誓しているのだろう。
「まあ、その内イルメラに頼んでちゃんと騎士鎧を作って貰うから、すまないがそこは我慢してくれ。」
ちょっと大げさに済まなさそうにしてやると、慌てて取り繕い始めた。
「って、いえいえ、こんな綺麗で頑丈な服も着れて良い革鎧を貰って・・・?」
早口で喋っている途中で可愛くて笑いだしてしまった俺に、不思議そうな顔を向けるオルガ。
ハッと気が付いた顔をすると、眉間にしわが寄り始めて会った頃の顔になってしまった。
「あ~る~じ~っ!!何か私だけ扱いが違いませんかっ!?レティ様はともかく、真夜もシーラもイーリスももうちょっと可愛がって貰ってる気がするんですが!気の所為でしょうかっ!?」
「うん、気の所為じゃないな。・・って、ああ、そんなショックな顔をするなよ。別に無碍にしている訳では無いんだから。」
説明無しでからかい過ぎた様で、ちょっと涙目で恨めし気に見られてしまった。
「うーん、どう説明するかな。・・・要するにオルガが一番、こう、軽く話せるというか、素で居られるというか。」
「どういう事でしょう?」
「ま、レティは産まれた時から一緒に居るしそういう意味でも近いが、それでもオルガが一番って事だな。真夜もシーラもそうだが、俺が主人というか上の立場として先ず接しているんだよ。この二人は、真夜は俺が創りあげたという自覚が有り、シーラは奴隷として買って来たと理解しているから、当然向こうもそう接してくるわけで。イーリスは懐いてくれてはいるが、一緒に昼寝するには良いというか。助けたとはいえオルガが一番軽口も叩きやすいし、普通に接しやすいんだな。ちゃんとやり過ぎたら突っ込んでくれるし。」
「・・・なるほど、確かにそういう意味では私が一番ですか。レティ様は今後は分かりませんがまだ人の細かい機微みたいな物は理解出来ていない様ですし、主の言う通り真夜達三人は下の者として全部受け入れるでしょう。ていうか、暗くなってきましたしそろそろ家でご飯にしましょう。」
大分暗くなり始めている中家の外でずっと話していたのだが、オルガに促され中に入った。




