第二十三旅 もふっと癒され、久し振りに面倒な者に会いました
川へと向かうレティシアを見送り、先ずコボルドの皆に元の仕事に戻って貰った。
残された3匹は選ばれなくて良かったのか、ガリオンの後ろにまで来て欠伸しながら丸まって寝転がっていた。
寝る前に名前だけでも付けてやろうと思い、順番に雌のオルトロスにリンデ、剣牙狼にリーリヤ、雄のガルムにテオと名付けた。
次は従魔の2体とコミュニケーションを取ろうと向きを変えると、中央の頭の上にフィニを乗せたガリオンが頭を下げて俺の匂いを嗅いでいた。
「おうっ!?・・吃驚さすなよ。」
「・・ホゥ」
「「「グルゥ」」」
明らかに呆れた空気を出しているフィニを置いといて、ちょっとすまなさそうなガリオンを真ん中から右左と頭を撫でてやると気持ち良さそうに眼を細めていた。
「グルルゥ」「グルゥ」「グルルルゥ」
既に何回か洗っては櫛で梳いてやって結構手触りが良くなって来た毛をモフモフしていると、トンッと頭に衝撃があった。
放っとかれて拗ねたフィニが頭に強めに乗って来たのは直ぐに分かったが、思ったより拗ねていたらしくちょっと爪が立っててちくちくと刺さって痛い。
仕方ないのでフィニを頭から降ろしつつ、ガリオンに身振りで伏せさせお腹にもふっともたれかかって座った。
「ほれほれ、気持ち良いか?」
お腹に抱えて頭やお腹を撫でていると気の抜けた声がお腹から聞こえて来た。
「ホ~~~~~~~ゥ」
向こうからキャッキャとレティやオルガ達の声が聞こえる。
ガリオンと違う感触を味わいながらフィニを撫でつつボーっとして・・いたら、何だかだんだんと・・眠気に襲われて・・・きた・・・・・Zzz
・・・
・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・・・
気が付いたら眠っていた様で、周りの音も聞こえ・・?
意識は起きている筈なのに周りの音が聞こえてこないんだが。
何故かかなりだるくて目を開けようとするのも面倒というよく分からない状態だが、嫌な予感もするので気合を入れて目を開けてみる。
思い切ってパッと目を開けると・・・見覚えのある白い部屋だった。
気持ちを落ち着かせながらゆっくり周りを見回してみると、部屋の真ん中で大の字になっていた様だ。
「やあ、久し振りだね、ユウ君。」
部屋を見た時からそんな気がしていたが、聞き覚えのある声が脳内に響き次の瞬間目の前にアルムが現れた。
見た目は変わらず黒目黒髪のポニーテールで綺麗だが、以前と違って何だか雰囲気が重い気がする。
「うん、変わらない様だね。なんだかんだ言っても落ち着いた部分を持っているのはとても良い事だよ。私の雰囲気なんて普通は見ても分からないはずなんだけどね。まあ、いいや。ちゃっちゃと必要な用事を済ませようか。」
今回は何故か急いでる様に見えるのは気のせいかね。
急かされるように気が付いたら有った真っ白な椅子に勧められて座り、アルムと対面で話し始めた。
「ん~、どうだろね。・・ごめんね、もっとゆっくり選ばせてあげたかったんだけど。早速本題いくよ。メニューオープン。」
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スキル
槍術極 剣術7 棒術9 接近武器術3 弓術2 体術8 四属性魔法極
光魔法極 闇魔法4 氷魔法5 雷魔法7 空間魔法3 回復魔法9
身体強化魔法9 テイム8 眷属強化 スキル習熟強化 万能感知
思考速度強化9 魔力増大極 魔力精密操作極 魔力消費軽減 魔道具職人
異世界言語 健康体 オートマップ 本質解析(指定解析)
固有スキル
眷属化 眷属内通信 空間強制拡大
譲渡スキル
竜魔法 物質化魔法5 魔力干渉1 干渉無効化 竜の威圧 威圧2 鼓舞
魔力眼
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アルムが言った瞬間、俺の目の前にいつかのメニューに似た物が出て来た。
「さて、そこには今君が覚えているスキルが載っているんだが、これから君にはそこの中から選んで貰う事になる。」
「?何を選べと?」
言い難いのか一瞬空いた間に言葉を挟んで、嫌な予感を感じながら聞いてみた。
「端的に言うと、サービス分かな。まあ、君がこんなにスキルを増やしているとは思って無かったからね。そこまで影響はないと思うけど。」
「???・・どういうこっちゃ?」
急いでる感じなのになかなか話が進まないので、ついざっくばらんな突っ込みをしてしまった。
「ん~、要するにこの一年がお試し期間だったって事だよ。特に君はスキル習熟を持っていたから気付かなかったとは思うけど、通常は君の4分の1以下なんだよスキル習得の確率って。ただ、異世界の常識にどっぷりだった人達に行き成り全くの別世界で暮らせって言っても無理があるとも当然思う訳で。最初に言わないし鑑定でも分からない事だけど、実はこの一年間私の祝福を持ってて基本能力として生命力を強化されて死に難くなってたり、スキルも習得し易くなっているのよ。」
アルムが調子良く説明していると、自分の言葉が不可思議と言うかよく分からないといった感じになっていた。
「・・・のよ?何か最近この姿に引っ張られてる気がするわ・・ね。まあ良いわ。そんな訳で、幾つか本来この世界で生きている者が受けている制約を受けてもらうわよ。一気に説明するから最後まで黙って聞いてね。」
「一つは属性ね。今キミは属性魔法を11個覚えていて、地水火風の基礎の四属性に氷、雷、光、闇、空間、回復、自身強化となっているわ。まず魔法が使える人自体少ない上に、使える属性は普通1つ2つ、才能が有ると言われる者でも3つ程度、天才呼ばれても5つが良い所なのよ。何故か君の場合その制限が全くないのだけれど、そこの制限が一つ。」
「二つ目は魔法以外のスキルね。これは数に制限がある訳では無いけれど、鑑定を持っていたなら分かるでしょう。高レベル冒険者と言われる人達とすら全く所持スキルが違う、と。本当だったらこれは何レベル分引くって話なんだけど・・・どうしようかな。今迄の経験上、良くて君の半分位のスキル数にレベルも半分以下だったから、5レベル分、10レベル分引くよって話になったんだけど・・・。君の場合スキル習熟強化が更に有るから数が多いしレベルも高いしで少し減らしただけじゃ、この一年よりも多少時間は掛かれどすぐに戻りそうだし。」
「って事で、悪いんだけど今あるスキルを魔法から2つ、他は余程頑張ったと分かるし少なめにこちらも2つね。更に普通の人と同じ様に覚えられない物がある様にする為に、これから覚えるであろう物を幾つか元から消させてもらうわ。」
多少身に覚えはあったものの、流石にスキル自体を消されるとあっては無理とは思いつつ一応突っ込んでみた。
「マジでか?あんだけ苦労して覚えてレベルも上げたってのに・・・って言っても確かにスキルの上がり様に関しては不思議に思った事が無いではないんだよな。・・・マジでか~。なんかこう、元の才能から無くすって事はどう頑張っても覚えられないって事だろう?」
「そうよ、元から無いからね。ま、本来それが普通なのよ。ただ、スキル補正がないだけで訓練した事自体が無くなる訳では無いし、やる事に意味が無いなんて事は無いわよ。属性魔法に関しては火種とかの生活魔法程度、要するに一般人と同じレベルであれば使えるしね。」
一応フォローのつもりなんだろうが無くなる補正分がどれだけか分からんし、今無くなる状況で言われても信じようがないが。
「まあ、そう考えるのも分かるから後から一つプレゼントもして上げるわ。これは私の独断で、他の人にあげた事はほとんど無い物よ?期待はしといて。・・で、魔法系統から2つ、他から2つ選んでくれる?」
「むぅ、この状況でどう言おうと、ごねたりしても意味は無いか。・・・・・<ふぅ~~>期待はしとくよ、ちょっと待ってな・・・・・。」
溜め息をつきつつもう面倒だったので言葉遣いは気にせず、サラッと思考を読まれていた事は無視した。
仕方ないので大人しく考えるが、いつも使う物がほぼ決まっている魔法系統はともかく、それ以外でくくって2つは悩むな。
アルムが出したメニューを見ながら悩んでいる時にチラッと横を見ると、さっきまで何か急いでいそうだったアルムが何も言わずに待ってくれていた。
「そういえば、譲渡された物や固有の物を選んでもいいのか?・・いや固有の物は選ばんけども。」
「んー・・一つなら良いわよ。本当は駄目なんだけどね。」
「おう、ありがと・・って言うのも微妙だな。・・よし、決めた。まず魔法から2つ、火魔法と風魔法だな。火魔法は周りへの影響とかで大体の状況で使いづらいし、レティが居れば風魔法は任せられるからな。魔法以外からは・・昔からやって見たくて本当はこれからだったんだが弓術と、こちらは丁度良くつい先日重なった威圧だな。」
「オッケー、分かったわ。今言ったスキルと、これからのスキル化する可能性が有る才能を幾つか消させてもらうわね。・・・んっ。」
言ったとたんスッと俺に近づいて来たと思ったら、いきなりアルムにキスされていた。
レティ達に協力して貰って女性に慣れてきたとはいえいきなりな上、人外の綺麗さと言うか何と言うか・・駄目だ思考がまとまらん。
しかも目の前にあるのは綺麗だけど無表情な?・・さっきから思ってたけどなんか感情がちょっと出てきてる気がするな。
気の所為で無ければ目の前にあるアルムの綺麗な顔がほんのちょっと微かに赤いしな。
「んむっ・ちゅ・・・何故にこんな事を?」
「ん?・・サービス?最初の眷属相手にいちゃいちゃしてたじゃない、このくらいでわたわたしないの。何故か私も分からないけど、最近になって感情が芽生え始めちゃったから物は試しと言う事でもあるのよ。スキル消去のついでにね。」
「いや、物は試して・・。」
「ま、別に接触しなくてもスキルの消去は出来たんだけど。」
「ぅおいっ!」
つい真っ先に突っ込んじゃったけど、以前は多少フランクな感じではあったがこんな風に冗談を飛ばす様には見えなかった。
何か神様的存在と言うか、力有る存在のアルムにも変わる切っ掛けでもあったんだろうか。
「消した可能性は何かは教えてあげられないけれど、代わりと言っては何だけど最初に言った様に私から新たにスキルをあげるわ。あと、鑑定って言うか今は解析ね。あれを普段から使う怖さは知っているみたいだし、面白い効果を持っている封印ってスキルをあげるわ。その時々で使わないスキルを封印する事で、二種の力の内一つを別途得る事が出来るのよ。勘強化か、1秒以内の近未来予知の内一つを選べるんだけど、3つ封印すると1レベル分になるわね。なのでどちらもわずかに上がるだけだけれど、そのわずかで生死が分かれる可能性も有るのは理解出来るでしょ。・・・役に立つと思うわよ?」
最後には何かお茶目にウインクしてきたが、何か段々人っぽくなってきたというか更に女性っぽくなってきたというか。
僅かにぎこちない気もするが。
改めて自分を解析してみたら、もう新しいスキルになっていた。
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スキル
槍術極 剣術7 棒術9 接近武器術3 体術8 水魔法極 土魔法極 光魔法極
闇魔法4 氷魔法5 雷魔法7 空間魔法3 回復魔法9 身体強化魔法9 テイム8
眷属強化 スキル習熟強化 万能感知 思考速度強化9 魔力増大極 魔力精密操作極
魔力消費軽減 魔道具職人 異世界言語 健康体 オートマップ 本質解析(指定解析)
固有スキル
眷属化 眷属内通信 空間強制拡大
譲渡スキル
竜魔法 物質化魔法5 魔力干渉1 干渉無効化 竜の威圧 鼓舞 魔力眼
祝福スキル
封印
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試しに戦闘時を想定して封印してみると、幾つか問題が有って最終的にちょっと変わった感じになった。
解析を封印したので先に出していて忘れていたメニューを見てみると、言っていた通り勘強化を覚えていた。
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スキル
槍術極 剣術7 棒術9 接近武器術3 体術8 水魔法極 土魔法極 光魔法極
闇魔法4 氷魔法5 雷魔法7 空間魔法3 回復魔法9 身体強化魔法9 テイム8
眷属強化 スキル習熟強化 万能感知 思考速度強化9 魔力増大極 魔力精密操作極
魔力消費軽減 異世界言語 健康体
固有スキル
眷属化 眷属内通信 空間強制拡大
譲渡スキル
竜魔法 物質化魔法5 魔力干渉1 干渉無効化 竜の威圧 鼓舞 魔力眼
祝福スキル
封印(魔道具職人 オートマップ 本質解析(指定解析)) 勘強化1
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今戦闘に関係ないスキルを抜くとこれが限界臭いけど、結構きついな。
試して分かった事だが、常時必要な眷属関係や魔力関係、他にも固有スキルや譲渡スキルは封印できない様だ。
確かに勘働きなのかよく分からんが、何となくって感じでの理論的でない判断が思考内に何時もより強く主張している。
「最後に、此処では大丈夫だけど元の世界ではスキルを封印すると一月は戻らないから気を付けてね。・・確認してるところ悪いけれど、そろそろ終わりにするわよ?この空間を作るだけでもまあまあ力を使うんだから。」
慣れない感情に少しだけ戸惑っている様にも見えるが、それがほんの僅か楽しい様にも見える。
もう終わりと言うので最後にもうちょっと揺らしてみようかと勘が働き、普段では絶対、確実にしない行動を無意識で選択していた。
「おう、分かった。じゃ・・・んむっ。」
話しながらさっきのアルムと同じ様にフッと立ち上がり、自分も何か考える前にそのままキスをした。
「んっ!?」
危害は加えようも無いのは分かっているんだろうが、俺の行動に何も反応せずそのままキスを受け止まってしまっていた。
キスしたのは良いが別にそこからどうこう思っていた訳では無かったので、アルムの反応が無い事を良い事にそのままゆっくり堪能する事にした。
ここに来てからドンドン感情が芽生えて来たアルムは、元の能面的な綺麗な顔にお茶目な感じが加わってかなり魅力的になっていて・・今気付いたけどちょっと惚れたかも。
「ん・・・ちゅっ・・さて、このまま幸せを堪能していても良いが、時間の進みがどうなっているのか分からんし、そろそろ戻して貰っていいか?」
「ん・・あっ・・・。ん?ふむ、そうね・・・こんな事をしてくれたキミはどうしてあげようか。さっきはキミの事情を知っていたからのサービスだったし私からした事だったけど、私に対して不敬だとして何らかの罰を与えてあげ・」
喋っている最中だったが、わざとらしい演技になって来たアルムを遮る為に口元を手で押さえてあげると、大人しくこちらの様子を見ていた。
「うん、分かっててやってるだろアルム。そもそも不敬だなんだは人が言っている事であって他の生物に当てはまるかは当然分からないし。自分が偉いと勘違いしている馬鹿か、敬って貰いたい能力無し以外あまり不敬なんて言葉は使わんだろ。・・・ああ、他にも逆に有能な主で良いと言っているのに家臣が威厳付けに言い出したりもあるか。自分に能力が無く自信が無い者ほど地位や血統に拘って不敬だ~とか言ってると俺は思っているし、ある程度歴史の有る貴族や王族なんてのはその傾向が強い気がするね。いつも生まれた者に能力が有る訳が無いし、能力が高くても低くても教育が上手くいくかも分からないしな。稀に当てはまらない天才や屑が出て来る事も当然で、どっちでも改革だーとか言い出したり偉いんだから何やっても良いと言い出したりとかの勘違いによって大惨事になる可能性が高いんじゃなかろうか、多分。」
「・・ま、そうね。私も色々世界を覗いていたけど、下手に第二とか第三王子とかに天才が居ると上から疎まれて早い内に殺され残った周りの人間と内乱的なモノになった事もあったわ。他にも何を思ったのか、逆に周りの人間を殺したり凌辱したりして殺さないで心を折って操ろうとして失敗し、本格的に敵に回しクーデターになったりは普通にあるものね。極稀に後継者がまあまあ有能で、自分より有能な弟をきちんと使って敵に回さない様立ち回り、より国を繁栄させるなんて事も無いではないけれど。大体は周りに碌なの居なくて自分の為だけに唆すから、万に一つより確率は低いわね。」
アルムがそんな風に思っているとは思っていなかったが、実際不敬なんて思って無かった様でそのまま別の話に乗ってくれた。
だが、流れでとっさに振った話が微妙な物語ではよく見る内容だったけど、アルムにここでも同じと保証されるとちょっとウンザリだった。
傍目に分かるほど消沈していると、キスの後そのまま目の前に居たアルムが俺の頭を抱え込み撫でて来た。
「!?」
どう考えてもアルムがしてくる事とは思えないからか、さっきキスされた時より吃驚した。
何かアルムに近いというか、より心配されてる気がするというか。
初めて会った時思わず確認した大きな胸に埋もれてまた幸せに浸っていると、慰めと仕方ないよねって言う感じの言葉がきた。
「ちょっと拗れているけど割と素直なキミは、あんまりそういう権謀術数渦巻く世界は理解出来ないだろうけど、全く関わらないのは無理なのも分かるわよね。私があげた祝福を上手く使って直ぐに死なない様に皆と一緒に頑張ってね。・・早い内に政治に通じた仲間を得るのが良いと思うわ。そうね、探すのも大変だろうし一つ助言をあげる。今現在王都のある奴隷商に一人、隣国ヘーリワーン王国から流れて来たある貴族の領内の内政を取り仕切っていた一族の令嬢が居るわ。早い内にもう少しお金を作って行ってみると良いわね。一週間以内がリミットで、早ければより状況は良くなると思うわよ。」
頭の上から聞こえる助言を大人しく聞いていると、更に驚きの言葉が掛けられていく。
「・・・・・ん~、感情が芽生え始めた今、一緒に居る相手だからか分からないけど、な~んかそのまま返すのが惜しい気がしてきちゃった。」
「いやいや、何故にそうなる?って言うか俺がここに居るのもアルムが付いてくるのも無理だろ?」
「ま、基本はそうなのよ?ただ・・ねぇ?」
一旦胸から離されて目の前に顔が来たら、やけに艶っぽく悪戯っ子の顔をしていた。
・・いた気がしたが、目の前に顔が有るので気が付いたが顔の端々がほんのちょっと引き攣っている様なので、この顔は無理して作っているみたいだった。
流石についさっき得たばかりの感情のすべてをいきなり理解は出来ないのか、見た目から頑張っている様だ。
「うん、まあ無理せんで良いから。うちの仲間にも感情を表に出さないのが居るし、薄い感情を読み取るのはもう慣れてるから気にしないでくれ。」
「ああ、彼女ね。確かアラクネの真夜っていったわね。そういえば、彼女も面白い存在よね。あの世界でもレベルが上がって経験を得て進化する者はいるけど、外部からの魔力で進化する者なんてテイムされてる者でもほぼ居ないのよ?って話がズレたわね。・・さて、どうしようかしら。」
悩んでる様な悩んでいない様な微妙に困った感じで、でもどうするか決まっている様な気もするしこっちからどう言えばいいのやら。
「ふふっ。ゴメンね、ユウ君。ちょっと迷っていたけど、決めたわ。久し振りに現世に干渉してやろうじゃないの。まあ、分体での行動になるのは仕方ないわね。安全を考えると千分の一位力を分ければいいかな。状況を整えるのに少し時間が掛かるから、これを持って行ってくれる?」
「これは?」
何も持っていなかった手を握って開くと、シンプルな赤い石の綺麗なイヤリングが出て来た。
前世の記憶だと赤い宝石はルビーとかガーネットだったと思うが、この世界だとどうなんかね。
こうパッと出した以上、そう希少な物では無いのだろうけど。
「私がそっちに行く事が出来る様になったらそれで声を掛けるから。一度私が声を掛けるまではただのイヤリングだけど、色が青に変わって私に直接声を掛けられるようになるわ。ただ、こっちと向こうの世界の時間の進み方も少し違うし、今言った通り別の事情でも時間が掛かるのよ。大体・・2,3年後になると思うわ。」
「結構時間が掛かるんだな。何か事情があるんだろうに、良いのか?」
「良いのよ。偶には私達にもひまつ・・・面白い事が無いとね。」
行き成り芽生えた女性としての感情に振り回されてるのか、さっきからちょいちょい内心ダダ漏れって言うか享楽的って言うか。
力有る者らしいし先に確認しといた方が良いんかなぁ。
イヤリングを付けつつ少し考え事をしていると、見抜いているのか普通に考えを呼んだのかこっちを面白そうに見ていた。
「大丈夫よ。落ち着いて顧みると、確かにさっきまで少しはしゃいでいた事は否めないけどね。元から人族の思考を持っている、人から認知されてる神と一緒にしないでもらえる?」
「先んじてそう言ってくれると助かるけどな。」
苦笑気味に微笑むと、アルムは晴れ晴れと微笑みながら別れを告げて来た。
「じゃ、まあ用事は終わっているし、そろそろ一旦お別れね。」
「そうか。・・じゃあ、楽しみに待ってるよ。かなり先の話だが。」
「そこは突っ込まないでほしいのだけど。じゃあ、またね。」
またと言われた瞬間周りがゆっくり暗くなっていき、同じタイミングで意識が落ちた。
次回3月25日0時投稿予定




