寄り道六回目 初めての緊急依頼です 3
本当はいつも通り0時にあげたかったのですが間に合いませんでした。
何とか書きあがりましたが推敲してませんので誤字脱字は勘弁してください。
遠く鐘の音を聞きながら進んで行くと、魔の森の中から地響きが起こりゴブリン共の集落らしき物の北部を遮断する様に俺達の近くまで2m以上ある土壁が地面から生えてきた。
ほぼ同時に森から汚い叫び声や命令する様な大きな声が聞こえて来て、元から森の外に居る雑兵なのだろう普通のゴブリンがちょっと大きめのゴブリンに叫ばれながら走りまわっていた。
村の体をまだ成してはいないが外に向けて魔の森から運んで来た大木が防壁代わりに並んでたり、かなり適当な代物ではあったが森から出て直ぐの所に十五畳くらいの家、というか倉庫らしき物が一つ有った。
状況を遠くから確認していたが、多分あのぼろっちい倉庫らしき物がキングかロードの家になるのか、獲物をしまっている倉庫なのかどちらかだろう。
やけにボロイが元々此処にあんな物は無かったし、何処かから地面ごと運んで来たのか別の方法があるのか、明らかに人族が作った物の様で建物の体裁は残ってはいる。
今朝までの位置では遠く分からなかったが、攻め込む為にある程度近付いたのでまた気配感知してみると、何かゴブリンでも人でもない気配が多分倉庫の中からする。
「なーんか面倒になりそうな気がすんな。」
ついポロッと心の中が漏れてしまった。
結構小さい声だったと思うんだが、感覚の鋭い2人には聞こえていた様だ。
「何かありましたです?」
「ああ、あれですか。確かに私達だけで関係すると面倒になりそうですが、今回ギルドの依頼として来ていますし何かあればララ達に任せましょう。」
「??レティ様はご主人様と同じ物が見えているのです?」
アルに聞かれてついレティと目を合わせて苦笑いしてしまった。
「同じかは分からんが、似たモノは見てる・・じゃないな、感じてると思うぞ。レティもあれが厄介そうに感じている様だしな。あと・・・ゴブリン共の首領は森の・・。」
「あっ!?森の方からゴブリンが出てきましたです。」
話している最中にも状況は進んでる訳で、森の向こうで轟音が鳴り続けたのちわらわらと森からゴブリンが飛び出してきた。
あまりちゃんとした指揮系統は無さそうだが、ちょいちょい指示っぽい事をして十数匹まとめて行動しているデカいのが居るし油断し過ぎない様した方が良さそうだ。
「そろそろこっちに突っ込んできそうだし、先ずはアルと俺で前衛として頑張るぞ。アルは八割ほどで、レティは一割弱ってところで頼む。」
「「はい!!」」「です。」
他の冒険者達が近付かれる前に多少でも減らそうと、魔法使いが範囲魔法の詠唱をしているのが見えるし隣のは聞こえた。
『我がまりょ・・・意志にしたが・・燃やしつく・・劫火と・・。』
もうゴブリン共が十数mまで近づいてきている状況で、緊張感が無いのか俺はちょっと別の事が気になっていた。
よく物語でこういう詠唱が恥ずか<ドォン!!>しいとか言ってるけど、今迄ちょっと詠唱したり魔法名だけ唱えた「オオオオォォ」りしてきた。
しかし、結局必要だと思ったら全く気にならないし、そもそも前世で中二病と「ぐぎゃっ!?」して言われているのは知ってはいても自分で経験していないので、まったく恥ずかしくはなかったが。
「レティも此処では魔法の行使に詠唱する様にな。」
「はい、分かっています。」『レティシアが命じる、吹き飛びなさい!』
何かかなり端折って<ガキッ!>いるしいい加減な詠唱にしか聞こえないが、元から無詠唱で何も問題無いレティは「どわっ!?」多分魔力による世界への強制力が違うんだろう。
??フッと言葉に乗せたが・・・強制力か。
一々難しい事を考えるのは好きじゃないんだが、この世界で頑張っていくには魔力や魔法については考えた方が良いとも思うし・・・今度頑張ってみるか。
レティが使った風魔法で跳びかかって<ドン!ドドゥン!>来そうだったゴブリンが吹っ飛ばされひっくり返った所をアルが近付き止めを刺した。
今更<ドン!>だが、今回アルが使う武器は槍を選んだ。
こういう多数対少数の場合、少数側の「ぐげぁ!?」前衛は剛力で複数相手に大剣や大斧で無双出来ない限り、間合いを取り易く遠くから順に攻撃出来る槍が良いと思う。
喧しいので騒音はカットしつつ周りを観察してみた。
今の所レティはアルの戦闘経験を優先して魔法を使う様で、基本体勢を崩したり纏めて来ない様一部吹き飛ばしたりで、ちょっと無理が出そうになったら一旦リセットさせる為に爆風で吹っ飛ばしていた。
「さあ、こっちに来るです!僕が相手してやりますですよ!」
イルメラにグリフォンの爪を使って作って貰ったアル用のちょっと短い槍を振り回し、普通のゴブリンを近付く順に突き殺していった。
まだゴブリンのみで上位個体はまだあまり出てきていない様だが、ソルジャーやローグ、リーダー等の一つ上位のは混ざってきていた。
殺していくとそこらに死体が転がり邪魔になっていくので、ある程度溜まって完全に邪魔になる前にレティに吹き飛ばして貰い、ゴブリンの村?の中へ消えて行った。
最初はアルとレティに任せて後ろで見ていたが、レティに数をある程度調整して貰った上で俊敏な動きで頑張っていたアルでも流石にそろそろ俺が出ないと無理が出そうだった。
多少は実戦訓練を行ってきたが、此処までの多対一というのは三十対一とかならともかく相手が居なかったのでやりようがなかった。
アルに怪我をさせる気は無いので横に出て壁の一端を担うと、少し任せ過ぎていたのかちょっとホッとした雰囲気がした。
「すまんな。フォローに入るのがちょっと遅かったか。」
久し振りに衝撃槍を空間鞄から出してるように見せかけてボックスから出し、大きく振り回して一旦ゴブリンを数歩下がらせアルに一息つけさせた。
「ありがとうございますです。もっと頑張りたかったですが、思っていたより体力の消耗が厳しかったのです。」
「アルはまだ実戦経験が少ないからな。しょうがない。」
「そうですよ、アル。これから順次学んで行けばいいのですから、皆で一緒に頑張りましょう。」
横と後ろから二人で励ますと、とてもキラキラした目で見返してきた。
「はいです!頑張りますです!」
「まあ、一旦は少し休むと良い。俺が前に出ておくから。」
『レティ、こっちの援護は少し抑えて良いから、周りでヤバそうな所をフォローしてやってくれ。』
『畏まりました、ご主人様。』
撫でまわしたいのを我慢しつつ一旦アルの前に出て体力回復の時間稼ぎをし、レティに周りの状況を見てもらう。
レティが吹き飛ばしつつ隠れて始末したのも含め多分40~50は既に殺しているが、まだまだ残っているし一応指揮能力が有るのが居るのか半包囲で一斉に十匹が襲い掛かって来た。
「ふんっ!!」
衝撃槍の波動撃で間合いを伸ばし左側から突き殺していきつつ、右側には簡単な風魔法で強めの突風を起こし体勢を崩して時間を稼ぐ。
「こうやって武器術と魔法を併用すると隙を補ったり、接近戦は武器中距離から遠くは魔法と分けて攻撃すればより広範囲を攻撃出来たりするんだ。」
アルに対してそれらしい事を言いつつ、遅れて来た右側のゴブリンを薙ぎ払っていく。
今の所武器は持っていてもそれを防御に使うのが居ないのは、普通のゴブリンだからなんだろうか。
思いっきり振りかぶって来るのばかりで振り下ろす所まで行ったのはほぼ居ないが。
ゴブリン共はこいつら手ごわいと思った様で突撃には躊躇している様だ。
いったん落ち着いたからかレティが報告をして来た。
『ご主人様、周りの冒険者達も順調にゴブリンを狩っていっている様です。今現在討伐数は大体ですが、全体で二百ちょっと位ではないでしょうか。周りを見る余裕のある所は無いようですのでバレてはいないと思いますが、私達が一番狩っている様ですね。』
『・・そうか。討伐数が九割超える位までは余裕も無いだろうし当分バレないだろうから、順次俺達で削っていこう。冒険者に怪我人とかは居るか?』
『私で分かる範囲内に居る冒険者達の中には、何人かは怪我をしている者が居るようです。流石に反対側の森林の騎士達や大地の盾の向こう側は分かりません。特に銀狼と一人は普通のゴブリンに隠れて不意を打って襲い掛かって来たブラックゴブリンに斬られ、闇夜の剣の一人はゴブリンナイトが出て来た様なんですが戦った事が無かったらしく普通のゴブリン相手の様に斬りかかって返り討ちに遭い、それぞれ結構な深手を負っています。』
「マジでか?」
上位個体の相手とはいえゴブリン相手に、しかもランク4の銀狼のメンバーが怪我を、しかも重傷を負わされるとは、吃驚してパスで会話していたのに普通に声に出してしまった。
そろそろじれて来たのか増援で増えるのを待っていたのかゴブリンが襲い掛かって来そうだったので、一旦は周りを後回しにして今度はアルと二人で前衛に出た。
「んじゃ、今度は二人で頑張るか。」
「はいです!」
二人でやる気を出し順次ゴブリンを狩っていき、ついでにアルの戦い方を横目で見ていた。
小柄なのでそれほど膂力は無いが、軽めに作って貰った槍を基本突いて攻撃しつつ間合いを測り、体ごと回転させて振り回し遠心力で威力を増して複数のゴブリンを斬り裂いていた。
レティは周りを注意しつつ見える範囲内だけではあるが、風の砲弾を使い一旦余裕を取り戻せる様時間稼ぎをしてやっていた。
地道に戦い戦闘開始一時間位で雑魚はほぼ削り切れたと思えるところまで来た。
ちゃんと油断せずやれば色違いのブラックゴブリンや上位のゴブリンナイト、ゴブリンリーダーくらいなら無傷で倒せるし、レティに確認を取ったら他の冒険者達もさっき大怪我したの以外は小さい怪我以外していない様だった。
結局気配感知の外に居たのか前情報から更に増えていて明らかに五百以上狩っているのにまだ残党が居るなか、邪魔にならない様ゴブリンの死体は吹き飛ばすか持っている空間鞄にしまい、あまり死体の転がっていない戦場で何故か不自然に空白の時間が出来た。
生き残っていた雑魚兵三十数体が森の近く1ヶ所に集まり平伏したと思ったら、森の中から近衛なのか上位個体だろう二m越えのデカいゴブリン4体に守られた一回り小さいゴブリンらしきモノが出て来た。
もったいぶっているのか、せめて最初から集団で一気にかかって来ればある程度生き残らせる事の出来る可能性は上がったと思うんだが。
余裕が出来たので後ろに下がって集中して気配を探ると、ここに居るゴブリンはあれで最後だと分かった。
「さて、多分撃剣戦士団か森林の騎士が何か対応するんだろうけど。少し様子を見てるか。」
「そうですね。多分ですが人の町がそちらに近いですし、東側に向かうでしょう。何故かああいうモンスターは獲物の場所を本能で理解しますから。」
「効率を考えるならここから包囲を縮めて全員で殲滅するのが一番とは思うが・・・軍ならともかく冒険者には無理な相談だろうなぁ。自分達だけで生き残る事に関しては、皆自信を持っているんだろうが。」
「どうでしょう。緊急依頼で貢献度や報酬はほぼ変わらないし、ゴブリン程度の上位個体なら火焔の剣の人達はそんな判断はしないと思いますが。と言いますか、状況を見ての判断が出来る人達だと思います。」
「あ~、そうだな。イサークは突っ込みたがりそうだが、アリスやマルギットに引っ叩かれて終わりだろ。ここに居る連中の判断力次第だが、普段の行動のツケというか今現在の懐事情にも依りそうなのは微妙だな。」
「ご主人様、僕達はそんな事にはなってませんが、人族は皆そんな感じなのです?実際此処から見てると、半分は実力が足りなさそうなのにやる気に満ちてると言いますですか・・・。」
レティにアルと人族を多少は知っている二人に物凄く不安に感じられているが、此処に居る冒険者にも何組か期待出来そうなのが居たし人族である俺は期待したいんだが。
せめて選抜した何組かの冒険者で攻撃するなりして欲しい所ではあるが、もうゴブリン共は東を向いて今にも襲い掛かる為に駆けだしそうなんだがどうするんだろうか。
一応、戦場では部隊としてそれぞれの方角から攻めているが、それぞれに居る高ランクのパーティに指示権があり現場では中央の撃剣戦士団のリーダーグンナーが出す事になっている筈なんだが。
物語ではもう主人公が焦れて行動を起こしていそうな時間が経ち俺もそうするかと思った時、撃剣戦士団のグンナーがデカい声でやっと指示して来た。
「各方角リーダーのパーティは出てこい!東は森林の騎士で先ず防御主体で迎え撃ち、他のパーティは遠距離で攻撃。大地の盾達は魔力があるなら更に壁を押し出して来い。無理なら銀狼とそのまま俺達と包囲して奴等を殲滅するぞ。」
「任せろ!」「おう!!」「行くぜっ!」
それぞれの方角から気合の入った声が響いて来た。
<ゴゴゴゴゴゴッ>っと轟音を上げて森の外にも土の壁が出て来たと思ったら、ゴブリンの進行方向の土壁の上に何人か顔を出し直ぐに魔法の詠唱を始めた。
他の連中はある程度近付き援護出来る隙を狙うか、高ランク冒険者の戦いを見るつもりの様で皆戦場に集中していた。
俺は一々見てるつもりは無く戦闘の主戦場から外れたちょっと離れた場所にポツンと残っている倉庫らしき物に向かう事にした。
面倒になりそうとは言ったが、だからといって助けられる機会が有るのに助けないなんて事は当然しない・・・ちょっと考えはしたが。
「皆行っちゃったし、しょうがないから助けに行くか。誰かを唆しても良かったんだが、それも面倒だしな。」
「他の冒険者は皆向こうに集中していますし、仕方ないので助けに行きますか。」
「・・・仕方ないのです?」
レティと不安そうなアルを連れて倉庫に向かうと、気配だけだが確信を得た気がする。
ただ、想定外だった事もあり、人じゃ無いモノと人とで二人居る様だ。
人じゃ無いモノの気配が大きすぎて遠くからでは全く分からなかった。
「・・ふう。まあ、危険は無いだろうし、何か用があるなら俺にだろうしな。俺が開けるぞ。」
「致し方ありません、私の勘もそれが良いと言っていますし。大丈夫とは思いますが、それでもお気を付けを。」
一応レティにアルを持っていて貰い、思い切ってドアを開けた。
薄暗い部屋の奥を目を細めて見てみると、球形になっている薄い膜みたいな物に覆われた女性二人がこっちを窺っていた。
多分だがゴブリンに乱暴はされてない前提で俺が入ったけど、服も普通に着ているし大丈夫だろう。
「助けに来たぞ。俺達はウィッツの冒険者でユウだ。後ろに居るのはレティシアと従魔のアルだ。雑魚はほぼ狩り終わっていて、残りのキングと取り巻き共を高ランク冒険者の撃剣戦士団や大地の盾達が戦っている最中だ。あんたらを今の内に逃がして早く援護に行きたいので、不安なら結界張ったままでもいいから移動できるか?」
無理は承知でちょっと強引に移動して貰う事にした。
何かしら犠牲になっている様ならそんな無理を言うつもりは無いけど、何故か結界を張っているであろう女性は一切疲労している様子が無く余裕すらありそうだった。
と、様子を見ながら後の行動を考えつつ移動して貰おうとしていたら、結界を張っていた女性が不意に結界を解き嬉しげにこっちに向かって走って来た。
「おー!あんたがあれか。久し振りにアタシの感知に引っかかった一夫多妻を求める者か。」
「うぇっ!?何でにそんな事を知ってんだ?って言うか行き成り何なんだお前?」
「まあ知らない訳だし、一回は許してあげる。アタシは愛の女神ミルシア。アタシは人の愛の感情によって生まれた神よ。アタシの愛情感知に引っかかった相手に祝福をあげるんだけど・・・なんかあんた・・細かい事は分からないけど色々こんがらがっているわね。」
最初嬉しそうだった愛の女神を名乗ったミルシアという少女は、俺を見ながら首を傾げていた。
こっちとしてもこんがらがってると言われても転生事情以外は分からんし、初対面の相手に神とは言え教えるつもりは無いし。
「まあ、いいわ。ここん所欲望丸出しのろくでなしばっかで結局祝福しない事が多くて、彼女の修行にならなくてこんな所まで来ちゃったのよ。本当は隣の国に彼女の所属してる神殿があるんだけどね。さあ、クラリッサ、とっととやっちゃうわよ。」
ミルシアが勢い込んで後ろを向くと、いまだに最初の場所で丸くなったままプルプルしてる生き物が居た。
燃える様な赤い髪を背中まで伸ばした女性で、見た感じ情熱的と言いますかぱっと見はそうなんだが呼ばれてチラッとこっちを見ると何故か困った様な小動物系の顔をしていた。
「何を言っているんですか、ミルシア様。無理矢理こんな所まで引っ張って来られて、ゴブリンに襲われるし、追っ払う位当然お出来になる筈なのに触れられない様障壁は張ってはくれましたが大人しく付いていくしで、まずは事情を説明してください!」
「そんなに怒らないでよクラリッサ。アタシの勘がそうした方が良いと言っていたんだから、仕方ないじゃない。ちゃんと目的の相手に会えたんだし、安全は確保してたんだから勘弁してよ。」
横で見てると、神官のクラリッサが信仰の対象であるミルシア相手にあまり遠慮がない様に見えるのは何故なんだろうか。
今の所そうは見えないが実は通常の神官ではなく高位の大神官だった、とか。
「まあ、良いです!確かに前回前々回に見る羽目になった欲望で濁った眼をした達磨みたいなのや、見た目はある程度良いのに傲慢が目に見えるほど醜い顔つきになったの迄、嫌な物ばかり見て来ましたから。確かに・・・・・ヘタレそうですしちょっとひねてもいそうですが、大切な者や周りの者に対しての行動を間違えたりはしなさそうです。」
なんだか勝手に話が進んで行くが、結局何がしたいのかこっちに全然わからないので一旦止めて聞いてみる事にした。
「え~っと、話が進んでいるところ悪いが説明を求めてもいいか?」
「ええ、良いわよ。ごめんなさいね、この子が言ってた通りちょっと此処に来るまでに色々あって。興奮しちゃったわね。え~、簡単に言うとね・・ぶっちゃけワタシの勘ね。」
「ミルシア様。簡単すぎですし、ぶっちゃけすぎです。」
「・・・分かってるわよ。もう少し細かく説明するから待ちなさい。ワタシの神官には位を上げる際に幾つかの試練を課していて、この子は神官から大神官補佐への試練としてワタシが見つけた候補者に祝福を授けるって事だったんだけどね。今回に限ってまあ、ろくでも無いのが多くって。」
「??・・って言うか、人が昇進について関わらないんですか?しかも、その祝福って選り好みして良いんですか?」
話の途中だったが、流すともう聞く機会も無い気がしたので気になった所は早めに聞いておく。
「ん?ああ、昇進に関しては仕方ないのよ。人に任せると一時期良くても、結局コネだの賄賂だのでニ、三十年で端から腐っちゃうんだから。まあ、それを本神殿だけとはいえ一々やっているのはワタシとイーシア、マイカンルーフ位だと思うけどね。で、後は祝福の選り好みだっけ。そりゃ、するわよ。・・って、ああ、もしかして内容を知らないのね。」
「?ええ、知らないですが。」
「ん~、ある程度有名だと思うんだけどなぁ。愛の女神の祝福なんだから予想は付くかもだけど、貴方に関係がある部分では、一夫多妻の男性には体力増強と精力増強を、女性には体力増強と妊娠に関して色々楽になる安産って効果が付くわよ。いけ好かないろくでも無い貴族やら豪商の男にそんなもんやったら被害者が増えるだけなのよ。まあ、私が全て確認出来る訳では無いからね、本殿以外ではそこの人次第よ。」
「なるほど。」
神にも当然色々あるんだなと思いながら聞いてると、クラリッサと呼ばれた女性が実はミルシア様の後ろに居たんだが、完全に安心できると思ったのか前に出てきて話を進め始めた。
「それではミルシア様。外ではまだ戦闘中の様ですし、先に祝福だけでもしませんか?」
「そうね。今貴方が一夫多妻を望んでいるのはアタシは知っている。理由は知らん。神様でも分かる事分からん事が有る事を理解しろ。・・・では今からアンタに愛の女神ミルシアからの祝福をあげる。本当は神官だけを送ってアタシがかかわる事はあんまりないのよね。ただ、今回に限ってはアタシがやるので手抜かりは無いわ。ここに居ない者は後・・・四人?最初から五人相手にするとはやるわね、アンタ。」
最初は貴方って言われていた気がしたが、気が付いたらアンタになっていた。
神様相手だし多少蔑ろにされても別に良いんだけど、何か見た感じだけじゃなく何か可愛らしいというか全く気にならんな。
「じゃあ、補佐に付きなさいクラリッサ。」
「はい。ミルシア様。」
補佐に付けと指示を出すミルシア様は威厳があって、さっきの可愛らしさが薄まり綺麗に見える。
『愛の女神ミルシアからの祝福を貴方達に。末永く夫婦でお互いを助け合い、子を作り、共に暮らしていける事を願います。』「人の暮らしには理不尽も有ろうかと思いますが、私が祝福してあげたんだから挫けず頑張りなさい。」
後ろにクラリッサを従わせ、多分人とのつながりが必要なのか足りない訳はない魔力の供給を受け、此処では俺とレティにキラキラと光が舞い降りて来た。
オルガ達にもなっている筈なので混乱しない様にこっちからパスで伝えて置く。
『オルガ聞こえるか?』
『はい、聞こえますよ主。この光の説明ですか?』
やけに落ち着いた声でオルガが返事して来たが、こんな不意の事態に此処まで落ち着いて対処できる奴だっけ?
『まあ、そうだが。何か落ち着いてんな。』
『それはそうですよ。今の私達の外向きの関係性を考えれば、攻撃されたり呪われたりは有り得ませんから。』
『ふむ・・そりゃそうだな。じゃあシーラ達にも伝えてくれ。その光は愛の女神ミルシアに貰った祝福の光だから。後、詳細は今日の夜か明日の昼には帰るとも伝えてくれ。』
『かしこまりました。その様子では危険は無さそうですが、お気を付けて。』
祝福を受けながら連絡していると、ミルシア様からからかう様な感じで声を掛けられてしまった。
「ほぼ終わっているとはいえまだ祝福されているのに、意識を他所に向けるとはいい度胸ね。」
「すみません。行き成り祝福されたであろう皆に連絡していました。」
「<くすっ>まあ良いけどね。その程度の事でいきなり切れる奴もいるから気を付けなさい。・・・さて、外の戦闘も終わりが近いみたいだし、そろそろ行きますか。ああ、アタシはクラリッサと同じ神官のミリアとして扱ってね。一々大仰に神様扱いされたくないのよ。」
「分かりました。・・・分かった。クラリッサとミリアな。西側にギルド職員が別の戦力として控えているからそこに行く事になる。女性の職員も居るのでゆっくりしててくれ。忘れかけてたけど一応ゴブリンの方も確認してくる。」
「分かったわ。」
結局既に終わっていた戦場で、皆解体に励んでいた。
ゴブリンでも魔石は持っているし、上位個体ともなればまあまあ大きい物が取れるので、討伐証明部位の耳を取り魔石を抜き取り、大きい穴を開けた所に放り込んでいた。
最後にまとめて火葬するつもりなんだろう。
「お疲れさん、ユウ。ゴブリンにかまけてぼろいとはいえ家っぽいモノが在るのに放っておいたのは、キングを狩りに行った高ランク以外の皆のミスだったな。」
「おう、ランドニーお疲れさん。皆もお疲れ。」
深緑の狩人に挨拶しつつ、仕舞って置いたゴブリンの取るもん取って穴に放っていく。
皆がゴブリンキングに向かった後の話を聞くと、撃剣戦士団のグンナーがキングを討ち取ったらしい。
最後に穴に油を撒き、火を放り込むとすさまじい勢いで燃え上がった。
やる事を済ませると、怪我が酷い者の居るパーティとクラリッサとミリアを乗せて、先にララがウィッツに帰って行った。
これで最後にやっぱりなんかあったが、初めての緊急依頼は無事に終わる事が出来た。
普段通り金曜0時にも投稿はしてあります。




