寄り道四回目 初めての緊急依頼です 1
どうしようか迷いましたが、寄り道の話は設定や説明回か、週一のメインの話を上げた後にちょっとした話を足す時とかに使おうかと思います
主人公が主じゃ無い回はそれぞれ別の旅路として書くと思います
過ごしやすくなって来たある春の日に、また依頼を受けにウィッツへと向かう事にした。
今日はオルガ達に村の防衛を任せてレティとアルを連れて行くが、今回は初めて町にアルを連れて行くので幾つか前準備をしている。
最優先で従魔証を確認し、次に真夜の糸で作った服だけでは防御力は十分でも冒険者として不自然なので、そう見えない様作って貰ったレッドベアの革鎧をアルが服の上に、アースボアの革鎧を俺がチェインメイルの上につけた。
レティは普段からメイド服で何か鎧の様な物を上から来ていたらおかしいので、真夜の糸で上着としてローブを作り着てもらった。
「おしっ!準備は出来たか?」
「はいです!」
「準備は万端です。」
気合の入ったアルと、いつも通りのレティを連れて先ずはウィッツへと出発した。
アルも四つ足で走ると結構スピードが出る様になったので、これも修行と俺とレティは横を並走していく。
レニの森は浅い所はモンスターも居るが基本は猪や鹿等の普通の獣が多く、一々狩ると時間が掛かるので何も居ない辺りにアルの進行方向を誘導しながら進むと、いつもより時間が掛かって3時間ほどで森を抜けウィッツ近くに出る事が出来た。
油断して他の冒険者に自分達の情報を漏らす気は無いから、そこからは街道をゆっくり歩いて行った。
お昼近いからか街道に結構人が通っていて、馬車に乗っている商人や、馬で移動している冒険者や騎士、自分達と同じ様に歩いて移動している冒険者パーティが今見える範囲には居る様だ。
のんびり歩いていると急いだ騎馬が横を通って行ったが、見た所かなり切羽詰まっていた気がする。
「ご主人様、お気付きのようですが今通って行った者は早馬として緊急事態を伝えに来たものかと。」
「そうだな。ある程度大きい町のギルドには緊急連絡用の魔道具が在ったはずだから、近くの村からの早馬だろ多分。」
「あのお馬さんの汗のかき具合や息遣いから嗅ぐと、四、五時間くらい駆け続けたのではないかと思いますです。良いお馬さんでしたし、ここからだとオウマからかビーレアからの早馬ではないでしょうかです。」
「んー、まぁ、そんなとこだろ。確か、何かあったんならウィッツで冒険者ギルドから緊急招集の鐘が鳴るだろうし、それまでは普通に買い食いしながらギルドに向かってればいい。どっちにしろギルドには行く訳だしな。」
「そうですです。僕、人族の町へは初めて行きますですし、とても楽しみです。」
昼時で余り並んでいなかったのでサッとウィッツに入り、依頼を受けにウィッツの冒険者ギルドへと向かった。
冒険者ギルドへと向かい歩いていると、何時もの屋台が集まっている辺りから良い匂いが漂って来た。
「ん~、良い匂いだな。レティ、アル、また色々買って行くか?」
「そうですね・・・何か何時もの香りと違うモノもあるようですし、買っていきますか。アルはどうですか?」
「<スン スン>これは、僕の知らない香辛料を使っているですね。下味との組み合わせも気になるですし、僕も食べたいです。」
幾つかある屋台の中で始めて見る結構デカい串焼き肉の屋台にレティとアル二人がひかれているので一旦寄る事にした。
「よう、おっちゃん。ちょっと来ていない内に何台か屋台が増えたみたいだが、始めて見る屋台だし最近出したんか?」
「おう、ぃらっしゃい!そうだよ、うちはまだ6日目だな。で、買うのか?冬限定で発生するアイスバードの串焼き、大中小あるぞ。」
冒険者でも通じそうな厳ついおっさんが一個10cmくらいのシュラスコかっていう大きさの焼き鳥を鉄串に刺して焼いていた。
隠れて見えなかったが他にも大体の見た感じだが、中と小なのだろう約8cmと2cmの物も有る様だ。
2cmの物は前世で言う普通の焼き鳥だな。
「じゃあおっちゃん、先ずは小三つくれ。」
「そうですね、先ず実際に食べてみましょうか。」
「あいよっ!ちょっと待ってな。」
一旦横に置いて休ませていたのか少し焼き色のついた焼き鳥を改めてたれに付け、三本焼き台に乗せてジュージューと焼き始めた。
食欲をそそる音を立てている屋台の前で待っていると、さっきの嫌な予感が当たった様だった。
<カーーン カーーン>
『冒険者ギルドのギルドマスター、アロイスだ。ランク3以上の冒険者の緊急召集を行う。既に依頼を受けている者、怪我等で行動できない者以外の冒険者は一時間以内にギルド二階の応接室まで至急来てくれ。』
多分魔道具で拡声器みたいな物が在るんだろう、微かな魔力に乗って街の三か所からギルドマスターの声が聞こえて来た。
「お客さん、出来たよ。」
「おっ、ありがと。ちょっと用事が出来たんで、また来るよ。」
さっき焼いて貰った焼き鳥が焼けたので貰って代金を払ったら、仕方ないのですぐにギルドに向かった。
時間には多少だが余裕はありそうだったので向かいはしたが、落としたりしても何だしゆっくり食べながら向かう事にした。
「うん、結構美味いな。スパイスなのか少しピリッと辛いし・・・アイスバードの肉も肉汁が溢れてきていい感じに噛み応えも有って美味い。・・これ以上細かい事は言えんが。(バラエティ番組のリポーターじゃないし別に良いだろ。・・って誰に言い訳してんだか。)」
「はい、美味しいですね。最初にご主人様に作って貰った時もアル達の所でも驚きましたが、やはり生肉とは違いますね。」
「そりゃそうだろ。」
「何となくですが使っている香草や下味の付け方も分かりましたです。知らない物や手に入らない物は無かったので、帰ったら頑張ってみますです。」
三人で話しながらギルドに向かっていると、横の道やギルドの向こうから4人から6人の冒険者パーティが数組ギルドに向かって歩いていた。
見た事のあるランク4の銀狼やランク5の大地の盾が居るので、今日は実はあまり依頼を受けているのが少なかったのかとも思ったが、何か分からん緊急依頼だし安全であるに越した事はないから気にしない事にした。
一応俺もレティもランク3には既になってはいるが、今日はシーラ達を連れてきていないので1パーティと言うには微妙だし、行くかどうか自体悩み所だったが。
ギルドに着き入った後横にズレて様子を見てみると、続々と受付嬢に声を掛け二階へと上がっていった。
一応何が起こったか確認だけでもしようと思い空いてるか受付を見ると、マリアさんが一旦並んでるのを捌き終わった様だったので聞きに行ってみた。
「どーも、マリアさん。何があったか聞いて大丈夫かな?」
「はい、大丈夫ですよ。ユウさん達は確か緊急依頼は初めてでしたね。」
「ああ。まだ経験は無いな。」
「先程ビーレアからの早馬で届いた情報によりますと、ウィッツとビーレアの間、魔の森の浅い所にゴブリン種が大量発生して村を形成し出したらしく、ウィッツのギルドで対応して欲しいとの事でして。この国では普段から魔の森でのこういう大量発生には近い大きい町に依頼を出す訳ですが、オウマは魔の森が近く実力者は居ますがそこまでの規模だとあくまで村ですし冒険者が足りないでしょう。イベルックは規模、数はともかくうちと比べてちょっと遠いですから。」
「なるほど。それで、報酬とかはどうなるのかって聞いていいのかな?」
「細かい事以外なら良いですよ。勿論言えない事もありますが。大体の緊急依頼には基礎報酬が有ります。ゴブリンの大量発生でも金貨一枚が基礎報酬となり、そこにランクごとに追加報酬が足される事になります。大体そんな感じなんですが・・・ユウさん達アマツミカボシも参加するんですか?と言いますか、さっきから気になってはいましたが、テイマーだったんですね。コボルドは可愛くはありますし細かい作業とかは兎も角、戦力としてはどうなんでしょう?」
確かに村のコボルド達を見ると戦力としては不安なのは分かるが、うちのアルも一緒に見られては困る。
ちょっと不安げ、というか不審げなマリアさんに確信をもって断言してやる。
「大丈夫だよ、マリアさん。アルはきちんと俺達の修行に付いて来ているから。当然既に俺たちにまじって実戦は経験してるし、一対一でレッドボアやアウルベアを狩った事もある。何も問題無いよ。」
「マジですか?こんな可愛いのに。」
ちょっと身を乗り出してきたマリアさんをレティがそっと止めた。
「あ、すみません。レティシアさん。・・はぁ~、頑張ってますねユウさん、レティシアさん。当然貴方達はもっと強いという事ですものね。最近のなりたての冒険者に見習って欲しいですよ、本当に。」
「まあ、愚痴は聞かなかった事にして置くので、これから参加してきますね。」
「すみません、お願いします。見ていたので分かると思いますが、そちらの階段から上がって右の部屋になります。」
俺達が話している間にも2パーティが二階へと上がっていった。
始めて来た所で緊張していたのか空気を読んでいたのか大人しかったアルを連れ、二階の応接室へ入ると中の冒険者の数人がこちらをチラッと見た。
他の冒険者は集中している戦士や、知り合いと喋っている多分情報のやり取りをしている狩人と、ナンパしているのか術士系の女の子にへらへらと話しかけている軽戦士と各々好きな様に待っている様だ。
前世の学校の教室くらいの部屋に、中央に長方形の机があって周りのソファーに多分リーダーか頭脳担当が座っている様だ。
ランクの低いパーティはその更に周りにいる様なので、壁際に寄っていると早めに来ていて奥に居た深緑の狩人のランドニーが話しかけて来た。
「おう!久し振りだな。ユウ、レティシア。って言うか始めて見るのが居るが、テイムしたのか?」
「おう!一月ぶりくらいか、ランドニー。まあ、色々あってな。テイムしたコボルドでアルっていうんだ。小型の従魔だから連れているが、こんなに可愛いのにまあいい腕だぞ。ちゃんと最低の自衛は勿論、細かい事は教えんが他にも色々出来るしな。」
「えっ?コボルドだろ?細かい作業はともかく、戦闘にも参加するのか?」
かなり吃驚した顔でルコットが聞いて来たが、アルが自分から一歩前に出て胸を張って喋り出した。
「あまり侮らないでほしいのです。確かにご主人様達には及びませんですが、今の僕でもゴブリンやオークくらいなら楽勝なのです。」
可愛く胸を張っているアルに周りのみんなでほっこりしていると、ふとランドニーの持っている弓が目に入った。
「おお、何か今まで持ってなかった新しい良い弓持ってるじゃないか。買ったのか?」
一目見て分かる質の良さそうな弓を持っているので聞いてみると、嬉しそうに自慢して来た。
「おっ、分かるか?護衛でカルカーンに行った時に見つけたんだよ。質が良くてあまり出回らない事で有名な、あのイルメラ師作の物なんだぜ。かなり懐が寂しくなっちゃったけどな。」
「ほ~、イルメラ・・師作の。そんなに有名なのか?」
聞いた瞬間深緑の狩人の三人中二人が凄い顔で詰め寄って来た。
「はぁ?お前知らねえのか?」
ディモンドが言って来たと思ったら、ランドニーも続けて突っ込んで来た。
「ユウよ、お前も戦闘職だろ?いい鍛冶師や魔器師はちゃんと知っといた方が良いと思うぞ。イルメラ師って言ったら有名どころは幾つかあるが、南に在るヘーリワーン王国で大将軍の地位に居るトロイ・エイリー子爵が持つ大剣マルシェラが有名だな。数少ない冒険者じゃないのに二つ名持ちなのも、この剣を持っているからだ。城壁のトロイって言ったら他の国にも名が知れている有名人だぜ。普段から魔力を込めて置き地に刺すと、数分程度で城壁クラスの土壁を直線で最大100m立てる事が出来るらしい。」
場所が場所なので出来るだけ小さい声で突っ込むって面倒な事をされていたら、時間になったのか入り口から多少優男風ではあるがかなり強いであろう男が一人入って来た。
「おう!皆集まってるな。知っている者も居るだろうが、俺がギルドマスターのアロイスだ。」
急いで居るのか座る前から自己紹介をはじめ、話しながら空いていた奥のソファに座った。
「さて、もう聞いた者も居るだろうが、魔の森でゴブリンが大量発生した。斥候から聞いた所によると既に森の浅い所に拠点を作り出している様で、最低でもジェネラル、もしくはより上位のキングかロードが率いているのは確実だろう。そして、今日の朝発見時の規模で最低三百、どんどん森から溢れてきてたようなのでもう五百超にはなっているだろう。・・・ここまでは良いか?」
状況は分かり易い感じになってる様なので、後は行く人選とどれだけ早く行けるかって所だろう。
時間を掛ければ掛けるだけ周りに散っていき、特に女性の被害が増えるだろう。
ギルマスのアロイスも当然分かっているからだろう、とっとと話を纏めて切り上げて出発したい様だ。
「今ここにランク6が2つ、ランク5が1つ、ランク4が5つ、ランク3が7つパーティが居る。ランク3に成りたての奴も混じっていないし、十分人数も実力も足りるだろう。時間を掛けたくないし、知った顔も知らない顔も居るだろうが時間が無い、自己紹介は後だ。知りたい奴が居たら向かっている時にでも同じ馬車に乗ってそれぞれで聞いてくれ。」
「ギルドからの強制依頼なので、今ここに居る以上参加の意思有りとして皆参加してもらうぞ。報酬は緊急依頼の最低報酬で金貨1枚、あとそれぞれランクに応じて報酬を出す。状況次第ではさらに危険手当も出すから死なねえ程度に頑張ってくれ。」
「その上でギルドからまとめる人員として戦闘系職員のマルスと、もしもの時の為に戦闘も出来状況次第でフォローも出来るララと、後方で物資を管理するのと女性のフォロー用にルチアとヴィッキーを派遣するから。現場ではマルスの、女性の対応に関してはララ達に聞いてくれ。ある程度は指示に従う様に。移動用にうちから馬車を4台貸し出すから、準備を済ませて30分後に東の出口に集合。直ぐに出発するぞ!・・では、解散。」
「「「「「おう!!!」」」」」
皆すぐに準備の為か一気にギルドから出て行った。




