第十九旅 テンプレって事は実際に高確率で起こるって事だと分かりました
今回はシーラとイーリスに更に経験を積ませる為、俺とレティが補助でウィッツに来ていた。
ギルドへ向かいつつ、まだ昼前だったので出店で皆で飯を食いながら移動していく。
最近はビッグバイパーの唐揚げや、オークの醤油?っぽい煮込みが美味く、よく多めに買ってボックスにしまってある。
ビッグバイパーはランク3超の魔獣で、基本2~4m位なんだが年経ると7m以上まで成長する事のある名前の通りデカい蛇だ。
割と保存が効きまあまあ美味い素材として中堅冒険者に人気だが、若い内は隠密に長け気付かない間に咬まれ毒を打ち込まれ、年経ると直接絞殺される、と反撃にあう事もしばしばだ。
今日もいつものオヤジから土産含め60個、今ある分と追加でも揚げてもらって一個一個が大きめの唐揚げを買い込んで、よく食うのが拠点にも居るのでボックスに40個しまって置く。
男性が店主だとレティ達に買ってもらうとちょいちょいおまけを貰ったりするので、こういう時買うのは女性陣に任せている。
こういう時は、イーリスがとても上手い、と言うか可愛い。
低い身長を逆手に取り下から見上げ上目遣いをすると結構な勝率になる。
そのままギルドへ行くと、近くに来ただけで酔っぱらいらしき連中の大声が聞こえて来た。
「はーはっはっ!!なーに言ってんだお前?好きな時にやりゃ良いだろうが!俺達が遠慮なんかする必要なんてないだろ?」
「そんなこと言っても、なかなかタイミングが難しいんだよっ!」
「お前がビビってるだけだろうが、ロジー。もたもたして手遅れになっても知らねえぞ。」
何か言い争っている雰囲気でも無かったがどうせろくでも無い事だろうと、ギルドに入り直ぐに面倒の可能性も考え酒場を見ないですぐに依頼表の方へ行く。
基本レティやシ-ラと相談しつつ、年上ではあるが人換算なら年下だしと開き直ってイーリスを可愛がりつつ依頼を確認していると、気が付くとさっき迄うるさかった連中が静かになってこちらを見ていた。
結局絡まれそうな気はするが、いちいち離れて時間潰してから又来るのも面倒だしテンプレに成るなら成れと開き直って放っておく事にした。
「?どうかしましたか、ご主人様。」
「いや、何でも無い、気にするな。確認を続けよう。」
「いや、気にしろよこのガキ。何だかここ最近、調子乗ってるらしいな。奴隷を買ったり羽振りも良いようだし、俺達が良い様に使ってやるからそこの奴隷を貰ってやろ・・。」
危機感の無いボケが因縁を付けながら、油断しまくりで近くまで寄ってきた。
そこの奴隷を貰ってと言った辺りで、受付け辺りに気付かれない様ボックスからあまり使っていなかった解体用の短剣を出し何も言わず首に突き付けてやる。
さすがに此処で刺す気は全く無いが。
「・・何か言ったか?」
「うっ、このガキ・・」
因縁付けて来た男が呻いていると、その後ろから肩を抑える様に一緒に騒いでいた男が出て来た。
「まあ、ちょっと待ちな坊主。うちのが迷惑かけたのかもしれないが、そんな物を出したら駄目だろう?ギルドにゃ黙っててやるか・・ら・・・」
最初の声の掛け方でどうなるか分かっているので、一々やり取りするのが面倒で始めから喧嘩を買うつもりで対応してやる。
喋り出した直後にボックスに短剣をしまい、何の話だと言わんばかりに肩をすくめてからかってやる。
「あぁん?本当にかなり調子に乗っているみたいだな。俺達ランク5パーティの獣の牙に、喧嘩を売る気か?」
「喧嘩自体はそっちが売って来たと思うが?そうだな、お前ら程度で俺達の相手が出来ると思っているなら、正式に売ってやるよ?」
どう考えても喧嘩を売って来た獣の牙の一人が俺が受けてやると、ニヤッと笑ってまるで気が変わらない内にと言っているかの様に喚きながら直ぐに移動を始めた。
「おおっ!!良い度胸してんじゃねえか!訓練場にこいや。存分に痛めつけてやるよ。おらっ、行くぞロジー、マーカー。」
「ああ、リガ。お前ら、口の利き方から教育してやるよ。早めにどう謝るか考えて置くんだな。」
「あ?本当にやんのかよ。ったく、面倒くせえな。はいはい、行くよー。」
「じゃ、俺達も行くか。」
買取所へ行く道から曲がり、そのまま裏の訓練場へ出て行った3人を追う振りして一応カウンターで手が空いていたアニーさんに確認した。
「アニーさん。ギルドからは別に何も干渉は無いよね。殺さなければ大丈夫かな?」
「はい。そのままここで暴れたりしていたら、依頼の強制等と言う形でペナルティが有ったかもしれませんが。冒険者同士の訓練という名目なら、殺さなければよほど凄惨な事にならない限り何も。」
「ありがとう。こっちは手加減しとくよ。」
「へ?ユウさん達はランク3でしたよね?彼等にも色々と問題はありますが、なんでそんなに余裕なんですか?」
喋り易く笑顔が多いアニーさんの、ちょっと呆けた顔が見れて喜びながら軽く説明してあげる。
「まあ、色々あってね。俺等も俺等で頑張ってるし、あんな感じで明らかに停滞しているレベルなら問題無いよ。」
「アニーさん、よろしいですか?えーっと獣の牙でしたっけ?彼ら、本当にランク5なんですか?どう見ても!どんなに良く見ても!!ランク4程度にしか見えませんでしたが?」
シーラから見た感じも雑魚っぽかったらしく、かなり驚いた感じで行き成り前に出て直接アニーさんに聞いていた。
「そうですよ、シーラさん。ただまあ、彼らのランクはちょっとズルをした感じなんで、実際の強さは良くてそんな所だと思いますよ。彼らは強者にへりくだるので、人によっては可愛がったりしますから。煽てに弱い上位ランクのパーティに連れて行ってもらってポイントを稼いでいたりしましたので。」
「良いのか?その情報、本来個々に漏らしてはいけないんじゃないか?」
「大丈夫です。彼ら、職員にも同業にも嫌われていますので、上に報告する人なんていませんよ。そんな事して上げたランクを緊急の依頼を受けたりせずに、新人さんに絡んだりナンパに使ったりするだけなんです。ランク5の俺達の言う事が聞けないのかってね。私達も、いちいちナンパされたり酔っ払って絡んで来られたり、非常に面倒なんで少々痛い目見せてやって欲しいくらいです。」
ちょっと話に熱が入り過ぎた様で、話の中心だったリガが我慢出来ずに急かしに来た。
「おらっ!!なに時間稼ぎなんて無意味な事してんだよ。助けなんか来ないんだから、早く来いや!冒険者同士の事については、ギルドは非干渉なんだからよ。」
「(自分に良い様に都合よく記憶しているみたいだが、別に完全に非干渉ではないし状況次第で助けには来るだろうと思うが)すぐ行くよ。じゃあ、行くぞ皆。」
「「「はい。」」」
「ご主人様。」「主様。」「ユウ様。」
気にしていなかったが、何故か皆俺の呼び方が違うな。
物語では主呼びを自分はそんなんじゃないと言って気にする人が多いが、この状況でどう呼ばれるか分かっているので俺はいちいち気にするつもりは無いしどうでもいいが。
前に話で聞いていたがギルドの建物の奥に広いスペースが有って、魔道具で結界が張ってあって結構暴れられるらしい。
他の人に実力を見せる気が無かった俺は今まで使ったことは無かったが、入ってみると当然だが使っている冒険者も多少居るみたいだ。
先に来ていた獣の牙の連中が場所を確保していた様なので、最近はあまり使わない様にしている鑑定を使いつつ向かう。
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リガ 人族 33歳 男性
戦士 レベル46
スキル
斧術3 腕力強化 危険感知1 愚者
ロジー 人族 31歳 男性
シーフ レベル43
スキル
短剣術3 気配感知2 愚者
マーカー 人族 33歳 男性
魔法士 レベル48
スキル
火魔法2 土魔法2 回復魔法1 お調子者
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確認してみたら、思っていたよりひどい結果が見えた。
てゆーか、スキルに愚者とかお調子者ってなんでやねん。
吃驚して似非関西弁で突っ込んでしまったが、レベルはちょっと高いけどランクには見合わないしスキル自体も低いしで、早い内から人にくっついて楽する事を覚えたろくでなしみたいだ。
ただスキル構成で考えると、マーカーが意図してやったのかと思う。
他の2人はそんなことを考える脳みそはなさそうだ、愚者だしね。
で、ある程度は順調にいったのでランクの高い中途半端に強いクズになったと。
「来てやったわけだが、なにをするんだ?」
「ああん?ランク3になったばかりの新人が、そんな事が言えるのもここまでだ。そこまで大口を叩くんだし、強いんだろう、坊主?賭けをしようじゃあないか。」
「賭け?そっちは何を賭けるんだ?で、俺達に何を賭けさせたいんだ?」
後ろのロジーとマーカーがニヤニヤ笑いながらこっちを、と言うより分かり易く後ろにいる女性陣を見ていた。
「ああ、そうだな。こっちはお前じゃ一生手に入れられないだろう魔法の品をやるよ。その代わり、お前はそこの奴隷の2人を寄こせ。俺達に一方的に負けた後じゃ恥ずかしくて主人なんて言えないだろうし、奴隷商へ行って書類を書いて譲渡の手続きするだけだ。簡単だろ?」
少しは考えているみたいだが、マーカーの筋書きかね。
「ふむ、その魔法の品とは何だ?本当にこの2人を賭けるに相応しい物なのか?」
「あぁん?そもそも、この腕輪は魔道具じゃないんだよ。迷宮で見つけた魔法具ってもんだ。いつ誰が作ったか分からない、本当に人が作った物かさえ鑑定を使える奴でも分からん迷宮で見つかった物だ。か~な~り貴重な物で魔法具と呼ばれる物の効果は当然それぞれ違うが、これは魔力を一流の魔法士でも十人で込めて一回では一杯にならない位魔力を貯めて置く事が出来るって魔法具だ。魔法士なら金さえ有れば百万ソル出しても買いたい物だろう。ハッキリ言って奴隷2人くらいじゃ釣り合わないからな。・・・そうだな、更に有り金全部置いていくか、そこの女も置いていけよ。本当はお強いってんなら少しは稼いでんだろ?」
何時もそんな感じで説明しているのか、此処はやけに流暢に説明し出したマーカーはニヤニヤと挑発交じりに賭ける物を増やしてきやがった。
「大人しく聞いてやっていたら又調子に乗っている様だが、<ガチャッ!>これでいいな?最低でも三十万ソル入っているはずだ。これが今の俺達の全財産だが、お前ら程度に負ける訳ないからな。全部出してやるよ。」
挑発しながら下の地面に落としてやると、金に目が眩んでこっちの挑発の言葉を聞いていなかった三人がふらふらとこっちに来そうだったので、少し離れた場所にいた先に鍛錬していた冒険者に確認して貰った。
「ちょっと待て、何触ろうとしてんだよ。・・そこの綺麗な先輩冒険者のお姉さん。確認して貰っていいか?面倒なら大体で構わないから頼んでいいかな。」
「あん?世辞なんかは要らないよ。先ず、あたしの名前はレベッカだ。分かったから、ちょっと待ってな。」
機嫌悪そうに確認を始めたお姉さんだが、横顔が少し照れている様でもあった。
ショートの赤い髪にレザーアーマーのパンツスタイルで、最低限の防具だけ装備したスピード重視の軽戦士みたいだ。
最初の適性自体はあまりなかったのか、回避術を覚えるまで結構斬られたのか、目立つ傷が顔腕足問わず傷跡が残っている。
ギルドに来ている時に何回か見ていた顔だったが、接したことだし鑑定してみる。
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レベッカ 人族 女性 20歳
戦士 レベル48
スキル
槍術4 先読み術3 思考速度強化1 限定動物会話(犬)
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思ったより良い物をお持ちで、しかも見たことない物もあった。
もうちょっと早く接しとけばよかったかなと思ったけど、これから機会が有ったらでいいかと思い直した。
「おら、そこの間抜けども。こいつかなり謙遜しているみたいだぞ?30万ソルって言ってたけど、40万以上は入っているよ。正確には・・・41万8千ソルだね。」
「本当か?・・レベッカ。」
「これなら金で良いんじゃねえか?」
「いや、せっかく自分で自分の首を絞める様な事を言ってやがるんだし、搾り取っちまって構わねえよ。あれだけ有れば半年は何もしなくても楽に遊んで暮らせるぜ。あんなガキに俺達が負ける訳ねえし。」
マーカーだけは何故こんな大金を俺が持っているのかちょっと不審に思ったかもしれないが、金に惑わされた2人の愚者が居て通常の思考は出来ないだろうし、もう止まらんだろう。
その為の金な訳だが、ビックリしてレベッカに間抜け呼ばわりされた事に気付いていない様だ。
興奮して喋っているので、集まって内緒話しているつもりらしいが全部こっちに丸聞こえだった。
「ありがとう。レベッカさん。」
「確かユウとか言ったね。礼は良いが、冒険者同士では基本さん付けなんかいらないよ。かなりのベテランとか二つ名持ちとかには付けた方が良いと思うがね。・・・後、あいつらダンジョンで偶々手に入れたあの魔法具を使ってよくこう言う事してんだよ。出来れば一泡吹かせてやってくれ。この賭け試合は応援してるよ。じゃ。」
後半は小さい声で俺に注意してくれたレベッカが離れて行くのを見送る。
・・・・・うん、引き締まったいい尻だ。
「そっちが満足したならそろそろやるか?どういう条件でやるんだ?」
一応、面倒な事にならない様隠れて監視していたギルド職員に仲立ちを頼み、続きを促がす。
「じゃあ、全てを失う覚悟は出来たか?そっちの2人と、俺達3人で模擬戦だ。」
「分かった。まあ、そんな感じだろう。レティは参加するからここに居て貰う。じゃあ、金と賭けの対象の2人は何もできない様預けるんだが・・えーっと名前良いか?」
「やっとか。私はギルド職員のハーリーだ。後、獣の牙の賭けた物も預かるぞ。」
「ちっ!分かってるよ。ほら、これだ。」
渡している物を偽物かも知れないので鑑定して置く。
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魔力庫
528年前に魔法具士のマルテ・ホンドに創られた魔法具
今の技術で作る事は基本出来ない
一流の魔法士100人分くらいの魔力を貯めて置く事が出来る
儀式魔法の簡略や戦術級魔法の一人での運用など膨大な量の魔力が必要な時使われていた
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今迄の対応から見て結局は本物を出してないと思っていたので、ちょっと吃驚した。
ただ、どういう物かは間違っているみたいで、聞きかじっただけみたいだった。
負ける事を考えていない危機感の足りない連中だと分かり、今までこんなやり方が通用していたのが不思議だ。
「数回での対戦で勝敗で決める。それぞれどう戦うかはその時決めてくれ。その上でルール変更が必要ならそっちで相談してくれ。」
ハーリーも面倒臭いのかちょっと投げやりだ。
「こっちは、俺から行く。一対一で勝負だ!出て来なくそガキ。現実を教えてやるよ。」
向こうはちょっと3人で話した後、リガが出て来た。
「喜べ、獣の牙リーダーの俺が相手してやるよ、ガキ。一週間くらい一人でベッドで泣いてな。」
「ふぅ、どうでもいいので早くやろう。とっとと終わらせてやるよ。」
もうなんか面倒になり投げ遣りに対応しつつ、向こうの武器を確認すると刃引きした剣を使うみたいなので、自分の練習相手に丁度良いかと主武器の槍ではなくこっちも刃引きした剣を使う事にする。
「ユウ対リガ・・始め!」
リガはこっちを侮ったままなのか、多少鋭いレベルの斬撃をあまりフェイントとか入れず避けられる事も考えていない感じで斬りかかって来た。
練習代わりにこっちが受け、止め、払って、避けていると、そのたびちょいちょい体勢を崩していた。
こいつはかなりサボっていたらしく、槍ほど習熟していない剣の練習になればと反撃せずにやっていたが、明らかに手加減したレティに相手して貰った方がまだ良い経験を積めそうだった。
ちょっと馬鹿らしくなって来たので、一人目だしそろそろ終わらせる事にしてどう料理するか考える。
こいつらから漏れ聞こえていた話からすると、一番こっちの女性陣に拘っていたのはロジーで他の2人は新人潰しと今迄良い稼ぎになったからって感じか。
警戒されるのも面倒なんで最初のこいつは早めに、しかし実力はあまり出さず倒す事にする。
「おらおらっ!防戦一方だがさっきまでの勢いはどうしたよ?小僧。」
一通り避けた後、まだ始まって3分位で早くも息を切らし始めた。
体力を消耗させる為にちょっと頑張って七割躱して三割受けていたが、いくら何でも早すぎて吃驚だ。
「おいおい、いくら何でも息切らすの早くないか?」
既に最初のスピードを維持出来ていない剣を勢いよく弾き、意図的に軽く胸部を防具の上を叩いてやる。
「ぐはっ!?中々スピードは有る様だな。だが、そんな斬撃じゃ俺は倒せないぜ。」
予定通り更に力を込めて切り込んで来たので、更に単調になった攻撃を振りかぶった瞬間、今度は腹部を革鎧の上から今度は突きぬく。
結構いいモンスターの皮を使っているのは見れば分かったので、多少傷つけてやった。
ほぼ鈍器な剣なので切れたりはしないが、突いてやれば衝撃は奥に通りやすいのでかなり強めに突いてやると呻いて蹲った。
「うがっ!?ぐぅ・・・。」
隙だらけになったので首筋に剣を突き付けハーリーを見ると、ちょっと吃驚したのかボーっとした後ハッと気を取り直し裁定をしてくれた。
「・・勝者、ユウ!」
「リガッ!?」
「・・・。」
1人はただやられた事に吃驚しているだけだが、もう1人は何か訝しげに此方を睨んでいる。
2人ともリガに近寄り意図的にこっちに聞こえない位の小声をかけている様だ。
聞こえてるけど。
「リガ・・大丈夫か?喋れるか?」
「ごほっ・・・痛ぅ。・・どうした・・マーカー?」
「奴の強さはどうだった?何かおかしい所は無かったか?」
「いってえな、くそっ。あん?いや・・ちょいちょい舐めた事言ってやがったし、今思えば挑発して力任せにさせるのが目的だったんじゃねえか?」
一応リガの事を信用しているのか、ほぼ引き出せていない力量の情報を聞いて納得していた。
「そのレベルか・・。ロジー、次は一緒に最初から本気でやるぞ。2対2だ。」
「???おう、分かった。」
「奴は実力が敵わないと分かっていたから、こっちの実力を出させない様にしたんだろう。おいっ!ガキ。残りは2対2で勝負を付けようじゃねえか。そっちの彼女は魔法士だろ?俺もそっちの彼女も魔法士で、大怪我させてもいいなら別だがこういう勝負に向いていないからな。」
「じゃあ、勝負は前衛がやられたらほぼ負けって事か?後衛は衝撃波か、物理の氷や土の槍位か。まあ、そこら辺は使う魔法次第か。」
「そうだな、後は大怪我しない程度だな。じゃあ、後はこの2対2で決着だな。3戦とか4戦じゃなくていいんだな?」
ギルド職員のハーリーが最後に注意してくれて、重ねて決着の確認をした。
「ああ、それで良い。じゃあ、やるか。早くリガを退けてくれないか?」
「ああ、問題無い。始めるか。」
リガに肩を貸し端に避けながら、勝ちを確信したのかやけに余裕のニヤニヤ顔でマーカーが言ってきた。
「よし、じゃあ始めるぞ。2対2での勝負で、相手を殺さない様にな。では・・・始めっ!」
俺が前衛で、レティを後衛に置き様子を見てみると向こうも一旦様子を見ている様だった。
2人でまず身体強化を使い、あまり良い訓練にならなさそうなので即終わらせる為レティに念話で話す。
『さっきのリガの様子を見てわかったが、俺達が少し本気を出せば何をやられたか分からないまま倒せるだろ。まだ発展途上の俺達でも、2割3割くらいで十分だ。』
『分かりましたご主人様。即、終わらせましょう。私はマーカーでよろしいですか?合図をお願いします。』
向こうを見ると攻めあぐねていると見たのか、ロジーは戦闘態勢は崩していなかったがにやにやして結局は油断していた。
マーカーは魔力を集中しているのは解るし、ロジーに注意していたのを見ていたので少しはこっちを侮っていないのかもしれないが、元々努力するタイプではないのか魔力を集中するのも遅いし、量も全然少ないしでは碌な事は出来ないだろう。
『我が前に立ち塞がる愚か者に猛り狂う炎の鉄槌を!ファイアーボール!?』
朗々と呪文を唱えているのを聞きながら機会を窺う。
ただ、詠唱が長いはとろいは魔力の集中は悪いはでちょっと驚いていたので、動くのがギリギリになってしまった。
『よし、3,2,1、GO!』
マーカーの周りに炎の弾が浮かび始め発射しようとした次の瞬間、それぞれの前に2人が居た。
ロジーもマーカーも全くついて来れて無く、視線が向こうを向いたままなのがなんだかアホらしくなって来た。
ちょっと今までと違う感じでイラッとしたので、本当はトラウマでも出来る位どついてやろうと思っていたんだが強めに一撃するだけで済ましてやることにした。
場所の関係上俺の方が早かったのでロジーは袈裟懸けに斬られ、ていうか地面に叩きつけられ、後ろにいるマーカーを見ると驚愕の表情でこっちを見ていた。
その次の瞬間レティが横に現れたが、視線はこっちに来ていてレティに気づいていないのは明白だった。
レティももう相手しているのも微妙だったのか、魔法は使わず持っていた魔法士用の杖で頭を引っ叩いていた。
賭けは結局二戦全勝勝ち星三つで終わり、こんなモノかと一瞬呆けたが気を取り直し獣の牙改め負け犬どもを見てみる。
悔しそうにしてこっちを睨んでいる獣の牙のリガを見返しつつ、ハーリーから賭けた金と賭けられた腕輪を貰い、今回は被害者的な感じでほぼ黙っていたシーラとイーリスの2人を魔力パスで声を掛けながら連れて行く。
『すまんな。賭けの景品みたいな扱いして。』
『いえ。主様がああいう手合いに少し苛立っているのは知っていましたから。』
『・・・偶にはストレスの発散も大事。』
「お前らそんな事していいと思ってんのか?俺達にはランク6パーティの巨人の力の人達が後ろに付いてんだぞ?」
シーラとイーリス相手にほっこりしていると、また愚者が喚き出した。
「何言ってんだ?その話が仮に本当だとしても、今から出て来てお前らの味方をするのは無理が有ると思うが。今まではそんな事をしてても、負けなかったから何も言わなかっただけじゃないのか?」
「うっ!?うるせぇ!その魔法具は彼らが俺達に信頼の証と譲ってくれた物なんだ。易々と渡せるかよ!『邪魔者を薙ぎ払え!こいつらを焼き尽くせっ!ファイアーボール!!』」
既に気付いていたのか、倒れていたマーカーが半身起こしつつ火魔法をおそらく全力で使ってきた。
とは言っても、結局はレベル自体多少高くても火魔法レベル2程度ではちょっと大きな火球を3つも出したら一杯一杯みたいだ。
詠唱もいい加減で全然集中していないので、やけくそのとっさの物にしてはまあまあの威力かも知れないが、狙いも甘いしスピードもあまり無いしで自棄になっただけだな。
直径30cm位の火球が俺とレティ、ハーリーに飛んできた。
当事者と見ていたギルド職員を片付ければ、後の連中は黙らせられるとでも思ってんのかね。
流石に今迄こんな事やってた上、負けた後じゃ誰も話は聞かんだろうに。
話に出て来た巨人の力もこの状態で連中の味方をすると、高ランク冒険者であっても最低でも数ヶ月の強制依頼やランク低下とかのペナルティになりかねんだろうし。
そもそも連中がやってたことを知っているのかそれでも味方するのか、来ない以上分からんが。
長々と加速された思考で考えていたら、火球がもう5m位の所まで近づいていた。
ハーリーはギリギリで躱すつもりなのか、足に力を貯めている様で機会を窺いながらこっちにも注意してくれた。
「お前らも早く避けろ!」
面倒なので、一言。
「レティ。」
「かしこまりました。ご主人様。」
次の瞬間レティが無詠唱で使った魔法が発動し、3つの火球に横から細い竜巻が抜けて行った。
一瞬で掻き消された火球を呆然と見ているマーカーを放って置き、ハーリーに告げる。
「職員に対する攻撃だった訳で。下手したら死んでもいいって魔法だったろ、あれ。ギルドに対する反逆罪とかになるんじゃないのか?」
「っ!!そうだな。助けられはしたたが、攻撃した事実が消えたりはしない。おいっ!獣の牙の連中を捕まえろ!!オルジュにあるガル二ム鉱山送りだ。」
忠告してやると入り口に待機していた別の職員にハーリーが獣の牙全員捕らえろと指示を出していた。
「マジでか?俺達はそこまでやってねえぞ。いきなり切れたマーカーだけじゃねえのか!?」
「ていうか何言ってやがる、リガ。このまま残っててもあの人たちに合わす顔も無いのに、何もしないお前らの方がおかしいんだよ。」
「だからってギルド職員に攻撃するなんて、無理が有るだろ!」
「ふぅ。・・何言ってんだ?リガ!ロジー!お前等もマーカーが攻撃して来た時、フォローしようと剣を抜きながらこっちの行動を窺っていたろう。彼女の魔法で驚いて止まったようだが、あそこまであからさまじゃお前らも当然同罪だ。」
言い争っている内に、ギルド職員でも戦闘系の人達が出て来た。
元冒険者も多いギルド職員で、ここウィッツの職員はいざ出動するとかなり強い人が多い。
以前聞いたが受付に居たララも実は元冒険者で、ランク4レベル65迄行った猛者で結婚を機に引退したらしい。
が、実力が落ちない様していたのか、いつの間にかロジーの後ろを取って捻り上げていた。
「もう言い争っても遅いから。早く3人に魔封の手錠を付けて。」
この手錠の素材である魔鋼は俺がしくじった魔剣の作り方で作られている物で、基本的に高い魔力が漂っている鉱山で見つかる物らしく、後は魔器師と言う魔法の武器を作る人達の最初の練習で鋼に魔力を込めた結果出来上がるらしい。
結局火属性を込めた剣は魔鋼化はしたが魔法の武器とはならず、一応強くはなったのは確認は出来たが望んだ物とはならず時間の無駄となった。
ホントに、先に知りたかった。
物理魔法共に高い防御力を持つ鋼で、こういう時の手錠とか牢屋でも大人しくしない様な時使われる。
しかも、この手錠は魔道具として作られ魔力を乱す効果を持ち、付けたままでは余程魔法に優れた者でも発動すらしない優れ物だ。
「俺達はもう行ってもいいのか?」
「構わないわよ。ほぼ全部ハーリーが見てて、一々事情を聴く必要も無いし。今迄はもっと人の居ない所とか状況を考えてやってたんだろうけど。貴方達が順調に強くなって行くのを見て、カモにするんなら猶予は無いとの焦りも加わり、しかも綺麗な女性も増えてじゃ我慢できなかったのね。これでやっと連中もお終いって訳。」
ちょっと嬉しそうに話していたララさんがちょっと微妙な顔で忠告してくれた。
「貴方達冒険寄りの冒険者にはこの国では基本こちらから接触する事は無いけど、他の国だと戦力の確保に冒険者から騎士に引き上げたりとか貴族からの勧誘も有るから、さっきの実力を見ると他の国に行くつもりが有るならちょっと気を付けた方が良いわよ?先輩からのちょっとした忠告。・・じゃ、ホントにお疲れさまでした。」
「ども。忠告有難う御座います。」
許可も得たので戻って依頼を見る事に。
連れられて行く奴等はもう気にしないで、とっととギルドの受付に戻った。
------------ シーラ ------------
私が主様に買われてもう数ヵ月が経ちました。
エルフとして人族より長く生きて来た中、物語の中の登場人物の様に実力的に遠く及ばないと思わせる者も見た事は有りますが、実際関わる事になるとは思っていませんでした。
今さっき、また目の前で通常有り得ない事が起こりました。
ランク3の冒険者が、ランク5の冒険者相手に無傷で勝ってしまったのです。
通常普通に活動している冒険者ですと、ランクが2も違えば最低でもレベルが15、最大で50近く違う筈の相手に、です。
ただ、主様達と修行しているとランクで相手を見る事の無駄がよく分かります。
今の我々を見る人が見れば一目瞭然ですが、ランク2と3でレベルは既に100近くからレティ様に至っては200を超えてしまっていますし。
他にも火焔の剣のメンバーもランクとレベルは大体合っているかもしれないけれど、多分ではありますが主様とレティシア様を除いた4人ではレベルはこちらが仮に10高くとも最低でも互角程度でしょう。
まだ数カ月程度の実戦経験では本当の実力者相手では多少のレベル差は覆されてしまいます。
しかし、主様はその本物の実力者相手でも自分以外での対応を可能にしたいとお考えになっていると思われます。
まだまだ修行を厳しくしていくと仰っていましたし、休んでいる時以外はそれが本気と分かります。
まだ私には余り無いのですが、休憩中に主様が甘えて来てくれると女性として少し安心する事も有りますが。
奴隷となってしまった時貞操は諦めましたが、私を扱った奴隷商はそこも商品価値だと分かっていたのか、元から多少の教育を受けているのを確認した後は奴隷としては、ではありますが丁寧に扱われました。
よって、これまでの行動、修行の様子を見てすでに私が認めた主様であれば、抱かれる事も吝かではありません。
主様の成人を待って行動開始と言われていますので、その際きちんと相手をして貰いましょう。
これからどう主様が行動するのか、どう様々な事に判断を下すのか先がとても楽しみです。
いざという時置いて行かれない様、主様に必死な事がバレない様に死に物狂いで頑張りましょう。
次回1月20日0時投稿予定




