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元オッサンの眷属使い  作者: 烏賊紳士
第二章 仲間を増やしつつ修行中です
18/55

第十四旅 初めてちゃんとした奴隷商に行きました

 夜に今度はイルメラの今後について話す事に。

 話を聞くのは俺だけで聞く事にして、残りの四人には溜まっていた解体を頼む事にした。

 家の外で数十体のモンスターを出し、アルに指揮させて解体の勉強会をおこなう。


 家で話を聞くと数年から十数年置きに町を移動して来たイルメラは、いつもの事だし別の町へと行っても良いが、面白そうだしこのまま此処に居たいと言って来た。


「いや、そうは言っても此処に鍛冶の為の設備なんか無いし、どうすんの?一から作るとなるとかなり時間も掛かるし、人族の街から何か買って来たりもしないといけないんじゃないか?」


「うむ、実はそれは何とかなるのじゃ。ふっ、当然じゃが、お主達だけが特殊では無いのでな。昔の知り合いの儂から見ても変わりモンじゃった男から、たまたま出来てしまったが目指している物とは違うからやると貰った物が有るんじゃ。そやつは魔道具士での・・まあ小成功失敗どっちもあったんじゃが、入り口の制限の少ない空間鞄を作ろうとしておっての。その中で失敗作としては一番良いもんをくれたんじゃ。容量自体も結構な物ぞ。」


「ああ・・じゃあ来た時に持って来てた鞄に何か鍛冶の物が入っていたのか。」


「分解出来る様作って貰った炉と金床は持って来ておるからの。当時持っていた金をほぼつぎ込んだ物じゃが、その分出来は良いぞ。魔道具となっておって自動修復も効果は弱いが付いておる。魔力接合と言う物も付いておるが、それのおかげで予め使う時間によって決められた魔力を注げば、使っている最中にくっつけた部分から壊れたりは無いのじゃ。今迄も、何も問題は無いのう。」


 やけに楽しそうに言っているが、幾つか考えなければいけない事が有るのに気付いているんだろうか。


「仕事場が何とかなるのは分かったが、後は材料はどうするんだ?自分で掘って来る事は出来ないし、俺等が買って来るのか?モンスターの素材だけで作るのは難しいだ・・ろ?・・・いや、出来なくは無いのか?甲殻やら皮やらは有るし、デカいのの牙や爪が有れば武器も出来るか。」


 俺の言葉を聞いて頷いているイルメラと、更に一緒に問題を解決していく。


「そんな感じじゃな。どうしても必要なら、お主達に依頼して王都周りの町や鉱山町のオルジュから買って来てもらえばいいじゃろ。当分は今ある分で持つじゃろうしの。実際にやり取りする時じゃが、お主との物は現物で良かろう。素材を多めに貰い加工してやって、残った分を加工料として貰えば問題は無いじゃろ。後は、今まで居った街全てで問題が起きた訳では無いからの。・・・そうなる前に逃げただけじゃが。カルカーンやもっと離れたルーシャーまで行けば儂の客だった者もおるし、現金収入も何とかなるじゃろ。稼げる額を考えれば出来れば王都へ行きたい所じゃが、話で聞くにかなり貴族共が腐っておるらしいからの。」


「ああ。一々自分から面倒を起こしには行かない方が良いな。」


 二人して顔を嫌そうにしかめ、王都には余程の事が無い限り近付くのすら止そうと決めた。


「まあ、後はイルメラも自衛の為に、もう少し強くなっておいた方が良いんじゃないか?セルファースが付いてくれているし、此処にいる間は俺かレティも居るだろうし気にする必要は無いが、また別の街へと行く時には俺達はいない訳だからな。」


「そうじゃのう。ハンマーは扱い慣れておるんじゃが、戦闘となると余り自信は無いのじゃ。流石に面白そうって理由でお主の眷属になる気は今の所無いしの。」


 結果、修行は俺達に混ざる事になり、眷属化は俺達と行動を共にするのは面白そうではあるがもう少し俺達に付き合ってから考えると。

 オルガの様に追い込まれていた訳では無いし、そりゃそうだろ、と突っ込み、結論が出たので今日はもう休む事に。


 解体も今日の所は終わらせようと外に出てみると、そんなに時間は無かったがかなり有ったモンスターの山が三分の二位になっていた。

 横に捌いた素材を置く為に置いておいた板に山の様になっていて、一応出しておいた樽には幾つか血が入っている様だ。

 表面には入っている血が何のモンスターか書いてある。


 すぐ食肉として食べるし売れる他に使い道が無いと知っているボアや、そも使い道がほぼ無いゴブリン等血が使えないと分かっているモノ以外は余り血抜きはしていない。

 分からないモノも有り何か使えるかと思っていたが、やはりミノタウロスと修行中に魔の森で狩っていたコカトリス、意外だったのはあまり強くは無かったレッドオーガとポイズンスネークの樽が有った。


「おーい、アル、ここら辺の血は何か使える物なのか?」


「はいです。ただ錬金術や薬術の方の話なので、僕は何が出来るかは知らないです。素材の知識はオルガさんの方が有るみたいです。僕達はそこまで人族で扱われている物を知りませんですから。」


「そうですね、私も騎士学舎の時の知識が有るだけですので、実は必要だったと言う物が有る可能性は有ります。遠くない内に錬金術師か薬術師を身内に出来れば助かるのではないかと思います。使わないままは勿体無いですしね。」


「まあ、俺がボックスに持っておくから問題は無いけどな。ただ、確かに俺達だけだと武具に使う素材はイルメラがいる内は頼めばいいが、その後やっぱり別の場所に行くとなったら困るし勧誘も考えておいた方が良いか。俺達の特殊性を考えると、基本は眷属化した者か奴隷のみだし。直接勧誘して眷属化してから連れてくるか、もしくは奴隷を買って来て育てるか、か。探せばいるかもしれないが、丁度、先日奴隷になりました錬金術師です、なんてそう無いだろうしな。」


「そうですね。後日にでも、手分けして探してみるのも悪くは無いと思いますよご主人様。」


「王国内ですと、カルカーンには魔道具師が多いですし、ガニア山の南にあるオルジュという町は鉱山も近く腕の良い鍛冶師を探すには良いかと。錬金術は王都が一番ですが、まあ行き難いですし錬金術士に関してはカルカーンにも居ますし、薬術は魔の森に近いロイトに何人か有名なのが居た筈です。」


 これからの予定を詰めつつ、皆で家へと入りそれぞれの部屋へと散って行く。


 普段は一階の客間にイルメラとセルファースを泊めて、真夜は一階の吹き抜けに自分で俺が教えたハンモックを魔糸で作って揺れている。

 アルも同じ吹き抜けに小さい部屋を作り丸まって寝ているが、たまに俺やレティの部屋に連れていかれ抱き枕として一緒に寝ている。


 俺とレティとオルガは一部屋ずつ二階に自分の部屋を持ち、レティは俺から離れるのを嫌がったので隣の部屋で、という事になりそれなら私は反対側を、とオルガは俺の部屋を挟んでレティの反対の部屋となった。

 レティは大体一月に一度、一日眠るサイクルなので、寝ない時は俺が買っていたモンスター図鑑を読んだり、俺から流れて来た細切れの前世の知識を纏めてみたりしているとの事だった。

 今の所レティが寝る必要のある時は、非常事態の時以外俺が結界を張り最初は一緒に寝てやらないといけない。

 まだ生まれてから約三カ月、二回しか睡眠を取っていないし、しかも普通の竜の様に他に誰もいない所で寝ている訳では無い中、完全に信用出来るのはまだ俺だけなんだろう。

 今日は危険は無いだろうとガルーダ布団に入り、女性に慣れる為に協力して貰っているレティに膝枕をお願いしてそのまま眠りに付いた。




 朝になり良い気分で起きると、変わらず頭の下が柔らかい。


「おはようございます、ご主人様。」


 ニコニコと笑顔のレティに挨拶されるとちょっと気恥しいが、俺も上機嫌で挨拶を返す。


「おはよう、レティ。いい感じで寝られたし、今後もレティに膝枕か添い寝でも頼むか。」


 良い機嫌に押されて普段だと言わないであろう事を言ってしまった。

 ただ、よく物語で言っていたけど、確かに人の温もりは良かった。

 特製のガルーダの羽毛布団は変わらず最高の寝心地だし、この上にレティに添い寝を頼めば更に心理的にも休める事請け合いだな。

 お願い出来るかは置いといて、だが。


「ご主人様が望まれるのであれば、私に否やは有りません。ご主人様の喜びが私の喜びですから。勘違いされない様言っておきますと、恩が有るから無理にとかでは無いですからね。そもそもご主人様は私達眷属の行動に制限をほぼ掛けていないですから、おべっかでも嘘でも無いですよ。」


 竜のままだと無かったであろう感情の動きが分かり易いほど出ていて、俺の方が照れてしまいそうだ。


「そうだな。俺が掛けた制限は、戦闘時に奥の手以外は常に全て使って全力で戦え、という事くらいだな。様子を見る必要は無いし、相手の手を出させる事もない。知らないで終われれば、何も問題は無いんだ。まあ、呪いの類の能力を持っている相手とかだったら、後々問題が出そうだし生け捕りも有るとは思うが。何だったら奥の手も自分の判断で使っていいとも言っているしな。」


 起きて一階へと移動すると、もうアルも真夜も起きている様でホールには誰も居なかった。

 サーチに意識を持って行くと、外で何かしている様だった。


「おはようございますです、ご主人様。」


「おはようございマス、アルジ。」


 昨日予め買って渡しておいた従魔の印を二人共胸に下げていて、魔力を極少量吸収して近い人からの注目を集める様調整されていると聞いていたが確かに見て分かり易い。

 今は竈で作り朝飯の準備をしている様だ。

 薪は周りに山ほどあるし、基礎の物なのか発火の魔道具は期限無しの物でもそこそこ安かったので、買ってアルに渡してある。

 当分の間料理はアルが主にやっていく事になるだろうし、俺やレティに何時も火を付けて貰うのはアルも頼みにくいだろう。


 別れて行動する事も有るし、レティや真夜にもある程度料理は覚えて欲しいが、修行も有るので程々にだな。

 自分も前世では一人暮らしだったし料理は出来ない事は無いけど、典型的な男の料理になってしまうので見た目微妙味もそこそこレベル以上にはならなかったので出来ればお願いしたい。


「今日はアッシュボアと野菜のヤギ乳煮込みと、ご主人様が買っていたご飯です。後、レティ様用のレッドオーガのステーキなのです。」


アルが作った料理は見た目も綺麗で食欲をそそるので、とっとと俺が教えた言葉で朝飯を食べ始める。


「「「「「「いただきます!」」」」」」


「美味い。」


「流石はアルですね。」


「普段こんなに美味い物出て無かったぞ、あのケチ貴族め。」


「そのママ生でしか食べた事ないカラ、ウマいナ。とても。」


「おおっ。美味いのう。」


<コクコク>


 流石にもうレティにオーガのスキルが付く事は無いだろうが、スキル以外にも生命力が足されたりも有るらしいので俺達が食えないモンスターの肉も食べている。

 色々狩っているのでレティの強化はまだまだ出来るが、元々かなり強いのに更に強化されれば結構早い内に他の竜王に迫れるのではなかろうか。

 だからといって別にケンカを売りに行ったりはしないけど。

 出来れば俺もそこまで辿り着きたい所だが、最近レベルの上がり方がゆっくりになって来ている気がして困っているんだよね。

 環境を変えた方が良いのかと考えてはいるんだけど、やっと拠点は出来たし戻りやすくする為に空間魔法を3に上げて転移で戻れる様にしてからにしたいし。


「さて、皆大体食べたみたいなんで今日これからの行動だが、魔の森へ行く事にする。オルガの実戦訓練を基軸に、皆の底上げをしたいと思う。村の防衛も有るので、この訓練時は今の所俺かレティが村に残る。今日はレティを残し、俺とオルガ、真夜で向かうから。眷属強化もあるし、早い内にある程度強くはなれるだろ。そう簡単に追いつかれるつもりは無いけどな。」


 全員で順番に入れ替わりながら修行をし、町に入れる面子は依頼を受けランクを上げ、村でアルやイルメラに素材を渡し武器や防具を作って貰ったりと忙しく過ごしていく。

 戦闘要員としては一番弱かったオルガでもかなり強くなってきて、1人でレベル50~70のオーガクラスなら狩れるようにはなっていた。

 途中で元の目的を果たすためにウィッツで奴隷も買って来て人手も増やしたし、色々出来る事が増えたのは良い事だろう。

 ただ、二人買って来たんだけど、二人共に何か事情がありそうだった。








 修行の日々の中、とある日にレティとウィッツで奴隷を買って来た。


 ギルドで聞いた奴隷商へ向かうと、結構小奇麗な店舗があった。

 公式な商売な訳だし、ギルドの紹介の店が裏通りに面しているということも無かった。

 まあ、ヤバ目の奴隷を扱っている様な所は裏通りどころか、スラム近くとかに店舗が有ったりするんだろうが。

 気にせず店に入って行く。


「いらっしゃいませ。店主のライマーと申します。お求めの奴隷の条件をお聞きしてもよろしいですか?」


 始めてくる所だし舐められない様ちょっとぶっきらぼうに、ちょっと緊張しながらではあるがストレートに聞いてみる。


「狩人や探索者の能力を持つ物を探しているんだが良いのは居るか?」


「直接戦闘能力ではなくてよろしいので?」


「構わない。これから育てるつもりなので、多少幼くてもいい。」


「かしこまりました。能力、年齢、種族によってピンキリになりますが、安くて2万からスキル次第で15万ソル位になるかと思われますが、予算はどのくらいをご予定で?」


「んー、最大の15万ソルでも買えるので、後は見てからだな。」


「なるほど。では、こちらの部屋でお待ち下さい。」


 と実際に10万ソルほど入っている袋を見せると、ひと声掛けて裏へと消えていった。

 部屋の中央にある椅子に座って待っていると、5人の男女を連れたライマーが戻って来た。


「こちらで確認した限りで、ご要望のスキル持ちか適正のある種族を連れてきました。」


 それぞれの情報が書かれた紙を渡し、一旦横に控えた。

 紙を見る振りしつつ、鑑定していく。

 ____________________________

 テオ 人族 男性 23歳

 狩人(奴隷) レベル18

 スキル

 弓術2 罠術1


 フランク グラスランナー族 男性 15歳

 探索者(奴隷) レベル20

 スキル

 短剣術2 罠術3 気配感知1


 アグネス 人族 女性 14歳

 狩人(奴隷) レベル11

 スキル

 弓術1 身体能力強化1 気配感知1 


 シーラ エルフ族 女性 132歳

 狩人(奴隷) レベル23

 スキル

 弓術3 木魔法2 身体能力強化1 気配感知1 薬学


 リネーア 猫人族 女性 13歳

 探索者(奴隷) レベル13

 スキル

 細剣術2 身体能力強化1 危険感知1 罠発見1

 ____________________________


 このメンツだと、シーラかリネーアの二択かな。

 他がいる様なので続けて確認していくことにする。

 5人を戻し奧に声をかけると次も5人が入ってきたので、ざっと見た上で目にかなった者だけ鑑定結果をちゃんと見る事にする。

 ____________________________

 マルタ 人族 女性 16歳

 狩人(奴隷) レベル18

 スキル

 弓術2 危険感知1 罠発見1


 イーリス【偽装中】 人族【狐人族】 女性 14歳【70歳】

 狩人(【英雄の卵】 奴隷) レベル10

 スキル

 弓術1【4】 身体能力強化2【4】 【幻術5】(剣術5 盾術4 火魔法5 水魔法3

 風魔法3 魔力増大3 魔力精密操作3 魔力干渉4 気配感知3 危険感知3 魔力感知3

 軍指揮4 威圧4 馬術5 交渉術3 罠無効化)

 ____________________________


 二組目によく解らないのがいるんだがどうしようかと思ったので、目を付けたと思われない様それぞれに話を聞いてみる。

 すると皆「何々できる。」と言う中、英雄の卵となっているのだけ「何故呼ばれたかわからない。」となんか投げやりに答えられた。

 そのまま奴隷商に居ても扱いは悪くなるだけだろうし、実際売れなきゃ困るんだろうが偽装に気付いた人に買って欲しいのかね。


「ふーむ。イーリスと言ったか。他に何か出来る事は無いのか?」


「!?・・希望に沿う物は、何も無い。」


「そうか。では、ライマーさん他はまだいるか?」


「ご要望に沿う者は、この者たちで全員ですね。いかがしますか?」


「そうだな・・。シーラはいくらだ?」


「珍しいエルフ族でスキルもまあ良い物を覚えておりますし、彼女はまだ処女ですので・・15万ソルでいかがでしょう。」


「処女かどうかは置いといて、やはりエルフはそこそこするな。そうすると、色々と条件に足りないがイーリスはどうだ?」


「スキルが足りないですが、一応身体能力強化も有るので成長を見込むのならと連れてきました。態度も教育はしたものの変わらなかったので、選ばれるとは思いませんでしたが。そうですね・・・3万ソルでどうでしょう?」


 エルフで処女のシーラは多分スキル関係なくかなり高かったが、イーリスは色々隠しているからだろうかなり安く買えた。


「よし。ではシーラとイーリス2人で18万ソルだな。決定だ。宜しく頼む。」


「かしこまりました。では奴隷紋を書きますので、少々お待ち下さい。」


 奧に声をかけると何か特殊な妙な気配のするインク壺と魔法陣の描かれた紙、紋様がびっしり刻まれた細めの首輪をを持ってきた。

 鑑定してみると、

 ____________________________

 魔法陣のインク

 魔晶石を漬けて魔力を染み込ませたインク

 儀式魔法の為の魔法陣を書くために使われる。


 奴隷紋の写し紙

 簡易魔法陣をうつせる紙

 陣をうつす場所に乗せ上から魔法陣のインクで塗り潰すと魔法陣をうつせる

 用途の決まった魔法陣を書く手間を省く為作られた


 奴隷の首輪

 奴隷紋と同じ血を付けた時効力を発揮する。

 主人を確定し決められた誓約を課す。

 ____________________________


 それぞれの手の甲に紙を乗せ、特殊なインクを使い魔法陣をうつす。

 終わるとそれぞれ首輪を付けこちらを促した。


「では、この手の甲の魔法陣に血を付けて下さい。」


 ナイフを出し、指先を少し切り血を出す。

 二人の手の甲に血を付けると、一瞬だけ魔力が反応して光り首輪と繋がった。


「これで奴隷契約は終了です。うちでは、契約内容は基本通り決められた物になります。こちらに記載してありますので後程確認して下さい。ありがとうございました。」


 契約書らしき物を渡され、2人の奴隷と店を出た。

 少し店から離れてから、これからについて話す為場所を移動する事にした。


「さて、先ず色々話さなくてはいけない事が有るので、一旦連れと合流して宿に向かおう。細かい話はそれからだ。それから、口調に関しては無理はしないでいいぞ。余りぞんざいになったら注意するが、基本気にしなくていい。」


「かしこまりました。ご主人様。」


 イーリスは何も言わず、しかしコクコクと頷きながら付いて来た。


「んー、まあいい。行くぞ。」


 2人を連れレティと一緒に、説明は後と一旦渡り鳥の宿り木亭へ向かった。


 女将のハンナに2人部屋を取って貰い2人を部屋に連れていくと、当然机一つに椅子二つしかないのでいきなり奴隷をベッドに座らすとか勘違い一択になりそうなのでベッドに座る。

 レティは、俺の横で立っている様だ。

 すると、シーラとイーリスは部屋の入り口横で直立不動で立っていた。


「2人とも、許可するのでそっちの椅子に座ってくれ。」


「しかし、私達は奴隷としてご主人様に買われました。その私達がその様なこ・・」


「ああ、ちょっと待て。シーラ、イーリス、先にそこを訂正して置くべきだな。」


「そうですねご主人様。この世界では、やはり奴隷の扱いはほぼ物と同じです。そもそも相談されたりすらほぼあり得ないと言って良いでしょう。戦闘用奴隷とかだと例外もありますが。彼女達を今後近くでお使いになるのなら、きちんと話して理解させる必要があると思われます。」


「そうだなレティ。ふむ、どこから話すか。・・・最初から順次行けばいいか。まず2人とも、異世界からの転生者や召喚者って知っているか?」


 2人顔を合わせて、イーリスは首を振りシーラが答えた。


「聞いた事は有ります。良い意味でも悪い意味でも名を残した人は色々居たらしいですが、何人かは覚えが有ります。良い影響を与えた者は確かダイゴ・ヤマウチは商会を立ち上げて紙の質を上げ、調味料の発見と合わせて流通を確立したりですね。他にはカロニーネ・ベーケという女性が今迄とは違う植物繊維を発見して、服飾で革命を起こしました。」


「悪い影響を与えた者は貴族になった後、本性を表し重税を掛け民を虐げ結果処刑されたキョウコ・サワヤマ。一娼婦から権力者にすり寄り一領地が地獄の様相を呈し、最後には国軍に鎮圧されたシドニー・デファン。最初から盗賊となり一つの町を乗っ取り、これも最後には国軍に討伐されたユッシ・ヘイデンスタムという所でしょうか。」


「後、名だけ知っているのはレイナ・ミカワという女性が、遠くの国に勇者として召喚された事が有ると聞いたことがあります。」


「そうか。で、これを聞いた事で理由で解ると思うが、俺も転生者だ。解りやす過ぎるし、目立つつもりは無いので基本的に性は名乗るつもりは無い。まだ、この世界に来て三カ月くらいかな。そして、俺はお前達を虐げるつもりはないが、使えないやる気の無い奴を養ってやるつもりもない。」


「お前達を買った理由は、俺がこの世界で生きて行く為に、周りの事を、この世界の事を多角的に知る為だ。そして、俺も異世界人らしくこの世界の人とは違う部分が有るので、そこを理解し俺の味方になって行動してもらう為だな。」


「味方ですか?奴隷をお買いになられたのですから、何も考えずついて来いと命令した方が簡単ではないのですか?」


「元からこの世界にいたのならそれもいいんだろうが、俺はそれをやるつもりはない。そもそも自分から働く気が無い者では、100%その為には働けないだろう?飯の為、折檻されない為だけでは必死にはなるだろうが、そこに効率を考える余裕は無いし、出せて40%から60%位だろ多分。命令されたからではなく、何かの、何者かの為にという時に、より力が出せるんだと思うが。」


「それは理想・・・、現実はそう上手くは・・いかないと思う。」


 一から説明して納得させようとしていたら、今まで聞いているだけだったイーリスからボソッと反論が来た。


「ああ、言いたい事は解るがそこはもう問題ではないんだよイーリス。と言うより、現実として出来る様になるだろうと多少だが目途が立ったからお前達を買ったわけだ。俺とレティの個々の能力、金もある程度稼いだし、既に仲間も予定外だったが増えた。サポートや情報収集を頼む仲間が出来れば、油断さえしなければ貴族程度では既に問題にならないだろう。しかも、シーラ、イーリス2人には今後の成長次第だが、これから集める配下の纏め役として働いて貰う事も考えている。余り次々増やすつもりは無いが。色々覚えてもらった後、今度は部下を育てる事もして貰うかもしれないから。」


 吃驚している2人に先ずは細かい自己紹介を行う。


「さて、そういうわけで将来の幹部候補の二人にはちゃんと自己紹介しよう。俺が転生して来た異世界人のユウ・カツキだ。で、横の女性が俺の相棒のレティシアだが、彼女は疾風竜が女性に変化した姿だ。」


「・・・はい?サラッとご主人様は何をおっしゃっているんですか?種族名付きの竜って言ったら数少ないモンスターランク10オーバーの災害種とも場所によっては聖獣とも呼ばれる存在ですよ?その中でも世界で10体に満たない数しか確認されてない属性竜の一体がここに居ると?」


「・・そうなるな。まあ、落ち着けシーラ。依頼の最中に、ガルーダが巣から盗んで来ただろう卵を助けただけだ。そうしたらその後、俺の魔力を吸収して生まれたのがレティだったってだけでな。」


「私としてはとても助かりましたが、運の無いガルーダでしたね。(まあ、産まれたばかりの私で倒せなかったとは思いませんので、結局は運が無かったのでしょう。)せっかくドラゴンの巣から卵を盗ってきて食べることが出来れば、かなりの強化が出来ただろうし、もしかしたら変異種などに進化出来たかも知れなかったのに。」


「そうだな。まあそんな訳でレティがここに居るんだ。それで、自己紹介は先ずはシーラからだな。」


 しれっと話を戻し、続きを促す。


「えーっと・・・。そんな感じで流されましても・・。はぁ、解りました。私には何も驚くようなことは無いですが。エルフ族のシーラと申します。弓使いで、木魔法も使えます。多少ですが薬学も修めています。周囲の警戒も出来ますので、宜しくお願いします。」


 改めてシーラを見ると、今の俺より大きいくらいの身長で180ちょっと位で物語でよく聞く所謂エルフの体形って感じのまな板では無かった。

 顔も当然のようにと言っては何だが、整った綺麗な顔に少しきつく見える茶色の瞳に、エメラルドグリーンの髪のショートカットの美女だ。

 体付きはスレンダーではあるが胸はCカップ以上在りそうだし、本当に綺麗な美乳のモデルさんとかだとこんなスタイルだろうと思う。

 見た事は当然無いから多分だけど。


「ああ、これからよろしく。で、また驚くことになるだろうが、どこまで聞けばいいのか、どこまで知っているのかどうなんだろね。・・・そろそろ幻術を解けイーリス。」


「!?・・・はい、ユウ様。狐人族のイーリス・・です。」


 言いつつ諦めた様で、魔力が拡散し幻術が解けた。

 レティやシーラと同年代の成人の姿が不意に消えて、俺より少し幼いくらいの女の子に狐耳がピョコンと立っている。

 表向きの年齢に合った体付きに見えるが、実際の年齢は俺の4倍はいっているので種族特徴で年の取り方が違うんだろう。


「イーリス、自分が何が出来るか教えてくれ。その答え次第で、ちょっと今後の予定が変わるかも知れない。」


「・・?弓、身体強化、後、幻術。・・・奴隷商の所で見たよりは出来・・ます。攻撃魔法では無いし最初から種族は誤魔化して・・・おいたので奴隷にされた後・・・も幻術は使えたので、下手なのに売られない様・・・少し能力を低くして・・いました。後、獣人は奴隷であっても・・更に人より下に見られて使い潰されることも・・多くあるので、人に見せても・・いました。」


「あまり喋るのは得意ではなさそうなのを頑張ってくれているのは解る。なのでさっきも言ったが、無理して敬語使わんでいいぞ。」


「わかった・・ありがとうユウ様。ただ、もう・・・言う事ない。よろしく。」


「そうなのか。あそこの奴隷商にある鑑定の魔道具は余り良い物じゃないみたいだな。イーリスの幻術も見抜けなかったわけだし。細かい俺の能力は言って無かったが、その一つに俺は人の能力の鑑定が出来るんだよ。それで見ると、イーリスは英雄の卵らしい。封じられているのか、何か覚醒するための条件が有るのか、剣術から魔法から特殊なスキルまで卵状態を脱すればいいのか、他の方法なのか分からんが獲得できる様だ。」


「そうなんだ・・。頑張ってみる。・・ユウ様。」


「おう。それでだ、2人には先ずこれから俺達と共に修行してもらう。冒険者として対人も含め様々な状況の経験を積む。魔法の修行も行い応用や新しい魔法の開発、基礎魔力を増やす事も並行し、何者にも、貴族や王族、その他諸々に邪魔されない実力を付けるのが目的だ。今後更に数人増やして、育成しつつ情報の収集も始める。ただ、始めの内は冒険者ランクはあまり上げないで4位にするつもりだ。状況次第ではあるがな。」


「解りました。」


「・・解った。」


「・・・私でいいんですか?お二人ともそうですし、イーリスと比べても、ずいぶん普通なんですが・・・。」


 ちょっと申し訳なさそうに、情けなさそうにシーラが言って来た。


「?・・・ああ。二人の状況を見るとそうも思うか。さっきも言ったが、隠れた能力もあった訳だがこれから時間をかけてきっちり成長してもらうからいいんだよ。そこにシーラだけどうだとかは無いよ。と言うかそこが気になるなら、俺がきちんと付きっ切りで色々覚えてもらう事にするか。そんな事を考える余裕が無い様にしてあげよう。」


 フッフッフ、とちょっと悪役チックに笑ってやる。


「えっ!?・・・・ふぅ、わかりました。ご主人様に買われた身な訳ですし。イーリス同様成長を買われている様であると思っておきましょう。改めて、氏族名含め自己紹介を。ワタクシの名はシーラ・ドゥアルテと申します、主様。よろしくお願いいたします。」


「氏族名を伝える事に何か意味はあるのか?」


「はい。相手の何かしらのモノを認めた事になります。この場においては私が貴方を主と認め、これから尽くさせていただく、と言う事になります。」


「そうか、シーラもよろしく頼む。では、2人に質問だが料理は出来るか?」


「はい、一応ではありますが。ある程度の解体から、焼く煮る位ですね。」


「・・・・ごめんなさい。出来ない・・。」


「いや、今はまだって事だろう?全員で持ち回りで料理して貰うから。料理が出来る仲間が別の場所に居るので、時間が空いた時に料理を教えてもらってくれ。野営時とか、美味い料理を期待しているぞ?後、解体もやって貰うので、これもレティと一緒に頑張ってくれ。」


「「分かりました。」」「分かった。頑張る。」


 話しが終わり、やっと落ち着いて二人の外見を見る余裕が出来た。

 シーラ、イーリス共に多少痩せている印象は有るが、奴隷時から着ている丈夫な実用のみの服の上から見るに体形はほぼそのままだろう。


 シーラはさっきも見たが身長180cm近くでエメラルドグリーンの髪を真っ直ぐ腰辺りまで伸ばし、スタイルはメリハリのあるタイプでは無く全体的に細身である。

 髪の和色は若緑色かな、多分。


 イーリスはまだ成長途中なのか身長は160cmちょっとって位だが、獣人族の特徴なのか末端に行くほど獣に近く、肘膝辺りから先は形は人の手足ではあるが茶色かクリーム色の狐の様だ。

 この辺りの色はあまり詳しくは無かったが、確か支子色くちなしいろって和色はそんな色だった気がする。

 二人共に邪魔にならない様服はゆったりした長袖にズボンであるが、ゆったりした服でも隠せない程にイーリスは胸の部分が盛り上がっているのが分かった。


 目線を持って行かれつつも最初から無理を言う気もないし、先ずは外で新しい服をレティと買いに行って貰った。


 その後、今迄修行ばかりで完全に聞き忘れていたが思い出したので三人に聞いたところ、この世界にも四季があるのは体感で分かっていたが、今は夏で八月の終わりとの事だった。

 一年は十二ヶ月で前世と変わらず、一月が三十日で三百六十日で一年になる。

 この辺りはこの王国でも北の方にあるので冬にはかなり寒くなり雪も場所によっては二m位まで積もるらしい。

 冬には町の外に出る事もほぼ出来なくなるので、その前にある程度お金を貯めて置く必要が有ると。

 それぞれの季節にのみ稀に出てくるモンスターもいて、より高く買い取って貰えると専門に狙うパーティもいるみたいだ。


 と、情報収集も出来て人手も増えたので、イーリスとシーラの修行がある程度進んだら他の町にも行ったり観光したりもやっと出来るだろう。


 こんな感じで新人も増えたので、また皆での血と汗の修行の日々が始まった。

 当然昔のスポ根じゃないので、休憩も休養日も入れるが。


次回12月16日0時投稿予定

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