第十旅 いっぱいもふもふでした
後片付けが終わったのでアルを抱き上げ光魔法で指向性の高い明かりを点け、レティと共に俺の身体強化三割の合わせたスピードで森に入って行った。
二回目だし一回目よりスピードは少し早いがアルは静かにしていた。
予めアルに聞いた限りでは、レッドベアを狩った辺りから南にアルが必死で走って一時間位との事だったので、先ずはオートで作られたマップを思い浮かべつつ狩った場所へと向かった。
「少し離れた辺りに何体かモンスターが居ますが、放って置きますか?」
気になったのかレティが聞いて来た。
「急いでいるし、問題有るかは帰りに考えよう。」
「はい、では急ぎましょう。」
一度緩めたスピードをまた上げつつ、アルと出会った場所を通り過ぎる辺りでサーチを広げ周りを確認しながら進んで行く。
アルに予め聞いた話からすると、出会った辺りから大体南方向からアルが必死で走って一時間以上かかったと言う事なのでもうすぐ敵の気配も分かるだろう。
アルを追って来たのは長手猿の亜種だったが、群れだったとなると他にも希少種とかいるかもしれない。
今の俺とレティならそう苦戦する事も無いだろうけど、まだ空間魔法の障壁はそれ程練習していないのでアルを離せないしいつも通り出来ればいいが、量が多いと面倒だ。
ゆっくり目に進み、三十分位経った頃サーチに色々入りだしたので光魔法を消し、暗闇に目を慣らしてから更にゆっくり近づいて行く。
アルに聞いた村の位置辺りには長手猿が十数匹集まっている様だ。
アルには言い難いがやはり逃げ切れなかったコボルドは何匹かいた様で、周囲に何体か動かないコボルドがいた。
猿共は祝勝会なのか、多分ボアを食いながらキーキー騒いでいた。
村跡には他に誰も居なさそうなのでレティに一網打尽にして貰う事にしてお願いする。
『レティ。早く狩って終わらせよう。いつもの頼む。』
『畏まりました、ご主人様。』
抱いているアルが不思議そうな顔をしている気がするが置いておいて、村がぎりぎり見える辺りでレティの霧の息が村を覆っていくのを見ていた。
五分と経たずに村に居る猿が全員倒れ伏していた。
レティの麻痺の息でぴくぴくしている猿を横目に村へと入ると、まあ酷い有様だった。
晩飯として食っていたであろうボアがある中、ただ遊ばれ傷だらけで放置されているコボルドやゴブリンが散らばっていた。
周りに響かない様魔力を通し、アルに呼び掛けた。
『アル、俺の声が聞こえるか?』
『!?はいです。』
くすぐったいので胸元でキョロキョロするのはやめてほしい。
『こんな状況だが、助かったのはどれくらいいそうだ?』
『えーっとです・・。』
俺の腕から降りて村を見ているアルからちょっと離れ、レティと二人で周りに注意を払う。
『レティ、今俺がアルに話しかけたのは分かったか?』
『はい。ただ、ご主人様意図的に魔力を絞りましたね。何となく話しているだろうことは分かりましたが、何を話しているかは分かりませんでした。』
『ふむ、それならちゃんと気にすれば、周りからの盗み聞きを心配する事も無いか。』
レティに出来ないならほぼみんな無理だろ。
話している内にアルが近くに戻っていた。
そこは魔物だからなのか弱肉強食という言葉をを知っている訳では無いだろうけど、あまり悲しんだりは無い様だ。
『ご主人様、今ここで死んでいる者は五人みたいです。森で狩られてしまった者が居るとしても多くても二十はいかないと思いますです。村には五十いかない位だったはずですので、最低でも半分以上は生きているのではないかと思いますです。』
『そうか、全滅なんて事になって無くて良かった。来た意味も有ったって事だな。これで猿共を狩っておけば、勝手に戻って来てまた村を作ったりするのか?それとも別の場所に緊急の集合場所が有ったりするのか?』
『はいです。森を更に東南に向かうと川の向こうにちょっとした空き地が有るです。そこは誰のテリトリーでも無かったはずですので避難地として決めておいたです。助かった皆はそこに居ると思いますですよ。』
『よし、せっかく来たんだし確認出来る所までは追いかけよう。もうちょっとだし。』
とっとと移動するために麻痺したままだった猿共に止めを刺してボックスにしまった。
やる事が終わった後、またアルを抱っこしてレティに目配せをして走り出す。
ここらのモンスターは猿が狩ってしまったのか割と遠くにいるオーガ臭いのが居るのと、まだ行った事の無いフォアン村の近くに何種類かのゴブリンがいる様だ。
今は忙しいのでそっちは放っておき、目標に向かいレティと走って行く。
川に出る少し前位から、その向こうに小さい気配がぞろぞろと在るのが分かった。
『おっ。アル、結構居るみたいだぞ。』
『居ましたか、それは良かったです。ご主人様、会いに行っても良いです?僕はこの群れの中では一応三番目位だったので任されたお役目が有って、後任を誰にするか伝えておきたいのです。特に、解体は僕が一番でしたので目星を付けている者が居るです。』
『ま、その為に来たんだし。それじゃ、行って来るか。』
まだ竜魔法による飛行が出来ないので、レティにアルと一緒に飛行魔法で川を渡らせて貰った。
渡って50mも行かないあたりで木々がまばらに生えて空き地の様になっている場所が有って、コボルドが遠くから見た感じ30数匹が色々と作業中でちっちゃい家を作ったり柵を作ったりしている。
俺達が近づいて行くと、端に居て柵を作っていたコボルドが大慌てで中へと駆け込んで行った。
仕方ないので更に警戒されない様そこから余り近付かず待っていると、10体ほどのコボが(面倒なのでコボルドを略してコボ)槍っぽい物を持って走ってきた。
先頭に居るちょっと大きいかなってコボが聞いて来た。
「貴方達は此処に何をしに来たんでしょうか?長手猿に追われて此処に村を作っている最中なのです。邪魔はしないで貰いたいのですが。」
半数位は勘で分かったのか既にプルプル震えている有様だった。
また、俺には言葉が分かるんだが、異世界言語を持っているからなのか、直接意思を伝えているからなのかよく分からん。
『レティ、こいつは何語で喋ってるんだ?』
『人族の言葉ですね。来た時にご主人様が一番前に居たので、戦士の中で人族の言葉が分かるのを連れて来たのでは?』
『そんな所か。アル、前に出て説明宜しく。・・ああ、後お前もこれからは人族の言葉で頼む。』
何時前に出ようか俺の顔をチラチラ見ていたアルに魔力での通話で頼んだ。
ふむ・・これからはこの通話を魔力パスと呼称しよう。
『はいです。』「皆、僕です、解体の長です。戦士の皆もちょっと待ってです。」
「ん?おおっ!解体の長ですか。無事だったんですね。人族を二人も連れてどうしたんですか?」
「こちらの男性に助けて貰ったんです。とても強い人で、色々考えた結果仕える事にしましてテイムしていただきましたです。なので、まあ戻らなければ勝手に後釜を選んでくれるとは思いましたですが、ご主人様のご厚意でここまで一緒に来てもらいましたです。」
「そうなのですか。それはおめでとうございます。まだ皆此処に着いたばかりで、もしかしたらあの猿がここまで来やしないかと不安に思いながら仮の住まいのつもりで作業中なんです。当てが有るなら言ってくれれば連れて来ますが。」
「もうあの猿の事は気にしないで良いです。助けていただいた後に村の跡地に居た猿共は一網打尽にされましたです。ご主人様のアイテムボックスに入ってるです。では、解体の茶白を呼んで下さいです。あ、後、僕はご主人様に名前を頂きまして、今後はアルと呼んで下さいです。」
ちょっと胸を張って嬉しそうに仲間に報告をしていた。
「おお、それはおめでとう。では今呼んで来るのでちょっと待っていてくれますか、アル。」
「はいです。」
後ろに居た黒白のコボに連絡を頼み、またアルと話し出した。
「先程、襲ってきた猿を一網打尽にしたと言っていましたが、全部なのですか?」
「まだ別の場所に偵察に行ったりしたのが居なければ全部かと思いますです。思いっきり戦勝会の途中みたいでしたですから。多分リーダーだった猿も狩って有りますです。ご主人様、村跡に居た一番でっかいのを出していただけませんかです?」
「ん?ああ、ちょっと待ってくれ。」
アイテムボックス内にある長手猿を鑑定しながら確認しているとそれらしいモノが有った。
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長手猿 魔獣 レベル58
スキル
右腕強化 指揮
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俺が倒した剛長手猿以外では此奴がリーダーかと思う。
ボックスからドサッと出してやるとコボ全員がビクッっと一歩後ろに下がってしまった。
「多分これだな。」
一応比較できるように横にもう一体少し小さい別のも出してやると、二体の猿にわらわらとコボ達が寄って来た。
「ああ、こいつですね。一番後ろでキーキー五月蠅かったのは見えました。この特徴ある白毛と、何故かは知りませんがバランスの悪い左右の腕は他にないと思います。」
「なら多くて数匹残っている位だろうし、その内狩られるだろ。最近こっち側の山の麓の辺りにオーガが多いから、群れが相手でなければオーガが勝つだろうし。」
喋っていると確かに周り茶色に中心が白って感じのコボが、呼びに行った黒白と一緒に走って来た。
「何でしょう?解体の長。お呼びとの事ですが。」
「茶白、僕は主人を得ましたです。今後は君が解体の長として頑張って下さいです。」
「おおっ!?それは、おめでとうございます。まだ解体の腕は及びませんが、頑張らせていただきます。」
「??そっちのコボルド達に一つ聞いていいか?」
警戒で出て来ていたコボ達に気になっていた事を聞いてみる。
「何でしょうか?」
「アルの喋りってコボルド特有のモノでは無いのか?どの文章でも大体は最後にですって付けるの。」
「うっ!?」
「あーそれね。」
「気になるでしょ。」
「何故かは・」
「すみません、ご主人様。出来れば気にしないで欲しいのですが、どうでしょう?」
「いや、どうでしょうも何も今普通に・・・。その微妙な感じは結構無理すればって事か?」
「付けない事も出来無いではないです。ですが、かなり気にして喋り続けないといけませんので、出来れば普通に喋りたいのです。」
物凄く真面目に返されたが、別に嫌だからって理由で聞いたのではないので説明する。
「嫌で聞いた訳じゃないから気にしないで良いんだよ、アル。ただ、丁度他のコボルド達が居て何か理由が有れば聞きたいな、と思っただけなのよ。」
「そうなのです?たまに無意識でならなかったりは有っても、常には無理と思っていましたのです。良かったのです。」
「すまん、すまん。そう言えば、コボルド達は此処に村を作るのか?」
「はい。今はもう他に候補地は無いので一旦此処に落ち着いて、時間を掛けてまた避難地を含めて探そうと思っています。前回の様にある程度守護を頼める魔物が居たら此処に落ち着けるでしょうし、状況次第ですね。」
ちょっと不安げではあるが何時もの事なのか、あまり戦闘能力の無いコボにしては落ち着いているな。
「ふむ・・・そうだな。一つ提案が有るんだがいいか?」
「聞いてみない事には何とも言えませんが、何でしょうか?」
「ここで村を作るのに協力して守護を行おう。状況次第だが、最低でも数ヵ月であれば請け負おう。代わりに此処に泊まれるような家と、俺達が狩って来た素材を使って良いので色々と作ってほしい。革製の物はアルに頼めばいいのだろうが、他に考えていた靴の予備とかレティにマントとか、今後増やす予定の奴隷にも何か必要だろ、と思うのでどうだろう?素材自体はもう色々あるから。今回の猿も含め変な虎とか亀とか。あ、後ガルーダやレッドオーガの素材も残っているし。」
「何か聞いているとおかしい部分がある気がしますが、貴方達2人だけでそんなに狩ったのですか?人族としてかなりお若いと思いますが。」
「まあ年齢と実力は比例しないって事だな。・・・要するに若いから弱い訳では無いと言う事だ。モンスターだって同じ事だろう?ドラゴンは産まれたばかりでレベルがそこまで高く無くとも、オーガ位なら軽く狩れるだろうし。俺がドラゴンと強さが同じだ、と言っている訳では無いがレティはそうだぞ。」
比例の辺りで理解が追い付いていなさそうだったので、もうちょっと説明しついでにレティに目配せをして元の姿に戻って貰う事にした。
「はい?どういう事でしょう?人族のじょせ・・・。」
人族のじょせ、と言った辺りでレティが魔力に包まれていったのでコボ達が止まってしまった。
だんだん慣れて来たのか五分と掛からずにかなり大きくなっていく。
成長したのかもう高さ三~四mにまで大きくなっていき、予想よりも大きくて俺もちょっとビックリだった。
「???えっ???」
早くも魔力が晴れて行くと、そこには綺麗な空色の鱗を持った竜が居た。
そう言えば生まれた時に見た以来な気がするが、成長したのか竜鱗の色が濃く鮮やかになっていた。
理知的な目で俺の方を向き、どうするかを問いかけていた。
『本当に綺麗になったな。迫力も凄まじいが。さて、じゃあコボ達にサービスしてやるつもりだから、俺が言ったら全力で吼えてくれるか?当分の間のモンスター避けになるだろ。』
『畏まりました、ご主人様。』
コボ達が全員呆然としている中、マシそうな戦士のコボに問いかける。
教えておいたはずなんだが、やはり実際に見るのが初めてのアルも一緒に呆然としていた。
「こういう訳なんだが、どうする?ああ、断ったからっていきなり此処で暴れたりはしないから気にする事は無いし、村長が居るなら相談に行っても良いよ?」
「・・・・・・・はっ!?<ぶるぶるっ!>それでは、少し待っていて貰えますか?」
「ああ、構わない。」
今度は言い付けないで、自分で走っていった。
まだ村長が生きていたのは良かったが、この状況でまだ出てきていないって事は怪我でもしているんだろうか。
状況次第で治してやっても良いけど、まあ、先ずは様子見かな。
『ご主人様、もしかして此処に拠点を置く気ですか?』
『おっ、当たりだよ。せっかくアルがいて縁が出来る訳で、最初の装備を整えるのにも良いしコボルド達なら手先の器用さが有るから、装備以外にも何かアイデアが有れば作って貰えるだろ。』
『頑張りますですよ。基本解体が主でしたですが、ご主人様が言うならまた色々覚えるです。』
『全部出来る必要は無いが、裁縫と言うか手芸と言うのかスキル名は知らんが、革職人から派生出来そうだし頑張ってくれ。』
『はいです。』
『まあ、許可が下りたらだけどな。無理強いするつもりは無いから。』
『我々魔物からすると、其処まで気にする必要は無いと思いますけどね。私は神獣と呼ばれてたりしますが。其処はあくまで呼称がそうなだけで、実際は魔物と何が違うんだと言われれば黙るしかないです。って話が逸れました。要するに魔物は弱肉強食を地でいっている生物ですので、弱い物は強い者に従うものです。余程阿呆な行動を取らない限りは強者に従いますよ。』
『じゃあ、本当にただ許可を取りに行っただけかね。』
やはり取り越し苦労だったようですぐに許可は出たので、村のコボ達に話を通しレティにお願いした。
『ギャオオオオオオォォォォーーーー!!!!』
レティの魔力の籠った咆哮が響き渡った。
念の為に近くの村であるフォアン村には声が届かない様、風の流れと空間魔法で結界を張り森からガニア山方面にのみ響くよう調節した。
これで余程の阿呆以外は此処をレティの縄張りと理解しただろう。
これからはここを拠点に修行も出来るし、俺が狩って来たモンスターで色々作成を頼める。
楽しみにしつつ、今日はアルを抱き枕に熟睡出来た。
翌日、朝に今回この森に来た目的を思い出したので、期限切れになる前にとっとと依頼を果たしに行く。
「俺達はウィッツに依頼達成を知らせに行くから、アルは此処で手伝いながら待っていてくれ。何か有ったら魔力パスで知らせる様に。」
「はいです。お気を付けて、ご主人様。」
「確率は低いと思いますが、もしかしてが有るのは嫌ですので早く行って直ぐに帰って来ましょう。」
「そうだな、今の所街に用は無いし早く戻って来よう。」
時間を節約する為、今回はレティに頼み途中までは空を飛んで行く。
手前で降りても残りを走っていけば夕方前には着けそうだ。
予定通り少し走って多分四時前後にはウィッツに着く事が出来た。
いつもとは入り口が逆なので、まだ数回門を通っただけの知り合い未満の衛兵のミリスにギルドカードを見せて街に入って行く。
ギルドへ向かうともう夕方だからか依頼を果たした冒険者が列を成していた。
「お疲れ様、ユウさん。今回は、ランクアップ試験の・・レッドベア討伐ですね。確認しますので一旦解体場の方に行きましょうか。此処だと邪魔になりますからね。」
今の所依頼失敗をしていないからか、アニーさんは俺の顔を見て上機嫌で解体場へと案内してくれた。
「では此方に出してもらって良いですか?」
体育館程にも広い解体場は今日もにぎわっていて、アニーさんに示された場所にレッドベアを出した。
「はい、此奴ですね。」
三m強の熊をドスンとボックスから出し、確認して貰う。
「おおっ!?中々の大きさです。確かに変異種のようですね。通常名のとおり全身赤か多少胸元に黒い部分が有る位ですが、目撃された通り此奴は胸元の毛が金色で明らかに違います。確かにレッドベア変異種の討伐を確認しました。後は実際に森へ行って確認しますので、明日の夕方位にまたギルドへ来てもらえますか?依頼を受けた時のうちの上司を呼んで貰って下さい。・・・ってそう言えば彼は自己紹介していませんでしたね。副支部長のベルトルドと言います。」
「そう言えばあの人名乗ってませんでしたね。とっとと狩りに行きたくて俺も聞かなかったし。分かりました、明日夕方にベルトルドさんを呼び出せばいいんですね。」
「はい、それでお願いします。で、このレッドベアはどうしますか?こちらで解体して買取しますか?」
「いえ、解体の当ては有りますので持って帰ります。代わりにいつものアッシュボアとかとゴブリンが有るのでそれをお願いします。」
アッシュボアとスティールボアその他の買取で二万五千ソルを受け取り、一旦森のコボ達の元へ帰る事にした。
万が一が有っても嫌だし、アルから緊急の連絡は無いが今日はもう村へと戻る為ギルドから出る。
「ユウさーん。久し振りー。」
出て来た所で武器屋店員のリーンが声をかけて来た。
「偶にはウチで買い物でもしてってよ。最初に鉄剣を買って行ってくれただけだし、そろそろ他に良い武器欲しいんじゃないの~?ほら、レティさんは良いの?空間鞄があるし仕舞う場所に困らないでしょ?」
「んー欲しい物が無いではないけど、多分武器屋に無いんじゃねって思うんだよね。」
「え~、そんな事言わないで何が欲しいのよ。確認しなくちゃ解んないでしょ?」
「まあ、そうだが。ふむ・・じゃあ聞くけど、棍って有るか?要するに木製か鉄製の長い棒なんだが。」
「棍?棒?槍じゃなくて?」
???がリーンの頭の上に視認出来そうなほど頭を捻っている。
「そ、訓練用に欲しいんだよね。他にも使う用途は有るけど。良くしなる木の二m位の棒と、硬めの金属で出来た一m三十cm位の二本の棒の計三本欲しいんだけど有る?」
「いーやー、それは無いなぁ。聞いといてゴメンね?」
「それは構わないけど、どっか紹介してくれないかな?腕利きか変人あたり。」
「ブッ!?腕利きは分かるけど、何で変人なのよ?」
「良い物を作るのが腕利きだろ?それは良いんだけど、やはり面白い物も欲しいし。極一部の人に強烈に必要な物だったりと尖った物を作るなら同業者に押される変人だろ、と思うんだがどうだろ。」
「一応どっちも情報は有るけど、変人の方の紹介は出来ないわよ?腕利きの方は知り合いでもあるから紹介してあげても良いけど、変人さんの方はギルドとかで話したことが有るだけで、ほぼ顔見知り程度だし・・うちの店長なら紹介はともかく場所位は知ってると思うけど?」
「じゃあ、変人さんの方を頼めるかな?って言うか、まだ此処で余り買い物して無いのにこんなにして貰っていいの?」
「まあ、そうね。普段だったらもうちょっとうちに貢献してくれたお客にするサービスかな、と思うけど、いいのよ。ここ最近私の説明をちゃんと聞いてくれる冒険者なんて少なくてね。自分の適性なんかよりカッコつけで選んだり、依頼の途中で狩った魔獣で予想外のお金が入ったからって自分のレベルに合わない武具を買って勘違いして魔の森へと入り行方不明になったりと、説明もしてアドバイスもするんだけどね。・・そういう時の冒険者って人の話なんか聞かないし、何ならまた稼いで色々買い物するよとか言うだけ言ってね。でも、お客が冒険行ったまま帰ってこないってなると少しは責任も感じるわよ。冒険者成り立ての初心者の頃からうちで買い物してくれていた冒険者なら尚更ね。」
やはりその時かなりショックだったのか、今もまた饒舌ではあるがリーンはちょっと暗い顔をしていた。
「そりゃそうか。ま、今の所俺は無理をするつもりは無いから心配はいらないよ。まだまだ自分の腕が足りないのは分かっているから、修行修行の毎日だし。ちょっと覗いた事が有るけど、ギルドの裏に修練場があるんだが特定の冒険者しか使ってないみたいだし、もっと利用すればいいと思うんだけどな。」
リーンも同意な様で、話を聞きながら結構な勢いで肯いている。
「ギルド権限で一定期間高レベル冒険者、ランク5位のパーティに強制依頼を受けさせて、一月・・いや半月かな、位で良いので、そうだな・・場所もそこまで大きくないし一人に付き二~四人、調子に乗りやすいランク3に上がったばかりの奴らを扱いて貰えば、無謀な特攻死も減るんじゃないかと思うけど、どうかな。」
今も常に使い続けているサーチもここ最近あまり範囲が広がらなくなってきて、多分半径1.5km位で安定しちゃったから今の俺の能力ではここが限界みたいだ。
思考加速のレベルが上がり、もっと慣れたらもう少しは範囲も広がるだろうが。
こっちがちょっと考えていたら、多分向こうも俺が言った事を吟味している様だった。
「・・・そうね。依頼料を幾らにするかとか決める事は多いけど、その流れで考えるとそこまでギルド職員が多くない所でも出来るし悪くない提案かもね。ギルド職員にそこまで元冒険者で強い者が多いって訳では無いものね。この魔の森に接している村や町では、有望な新人が調子に乗って森に入り帰ってこないってよくあるわ。・・お客が居なくなっても困るし、その前に一旦物理的に自信を叩き折るのもいいわね。」
「リーン・・リーンさん、悪い顔してるよ。俺がつい、さん付けで呼んじゃう位だよ。」
「はっ!?ごめんごめん。ただ、今の提案は結構良いと思うわよ。うちの店長・・いや、武具ギルドから今度冒険者ギルドに言って貰おうかしら。」
「おう・・。ごめん、リーンそれはちょっと、俺から・・は無理か。知り合いに火焔の剣のメンツが居るのでギルドに言って貰える様頼んどくから、勘弁して貰えないかな?思い付きで言ってたけど、それで武具ギルドからの提案で実際効果あったりしたら、冒険者ギルドのメンツは丸潰れだよ。ちょっと経って何も変更が無かったら、でどうだろ?」
「そうなの?火焔の剣っていったらウィッツの冒険者ギルドでトップ3に入る人達じゃない。大丈夫?・・ま、そうね。特攻する連中の自業自得の面もあるし、一月位は待つわ。冒険者ギルドのメンツも分かるしね。すぐ決められる様な事ではないでしょう、多分。」
話をまとめて今度リーンに腕利きの店の紹介状を貰えるよう話を付け、店長から変人の所在地と名前をを聞き店から出ていった。
もう夕方ではあるが本当はコボ達の元へと戻る気だったが、やる事が増えたので今日は俺一人街に宿を取る事にして念の為レティに戻って貰う。
リーンが紹介してくれる腕利きの鍛冶はもっと実力を上げてから行く事にして、先ずは変人呼ばわりされた方へと行く事にした。
次回11月11日0時投稿予定




