↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
異世界転移したらアシストロボが自我持ち魔導アーマーに進化しました  作者: 街いのしし


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
7/8

第1章 7話 真・異世界交流

リナとギルの的確かつテキパキとした指導と、プロトの学習能力およびトレース能力のおかげで、介人は何もせずともファイヤードラゴンの解体作業は予想以上のスピードで進んだ。


ある程度解体が進んだところで、介人はゴブリンから入手したナイフを使い、食事用に素早く手際よく、赤く輝く肉塊を切り分けていく。


「よし、完了だな。二人とも手伝ってくれて助かったよ。……さて、どうやって焼くかだが」


介人は周囲を見渡し、湖畔に転がっていた大きめの滑らかな岩をいくつか選定し、プロトに指示を出す。

プロトは高熱刃フレイムソードを展開させると、一瞬でその岩を真っ二つに叩き斬り、見事な平らな面を作り出した。


「な、何をしているの……!?」


「サバイバル用の即席の調理用石板だ。石焼きの熱伝導なら均一に火が通る」


プロトはその後も介人の指示通りに手際よく【水魔法】を発動させて切り口の石粉や汚れを洗い流すと、続けて【火魔法】の炎で一気に石板を炙り、煮沸消毒と熱処理を施した。衛生管理と理系的な効率を追求した無駄のない手捌きに、リナとギルは理解が追いつかず、言葉を失って呆然と見守るしかない。


「よし、これで準備完了だ。さあ、遠慮なく腹一杯食べてくれ!」


介人はさばいたばかりの高級食材と思しき肉の塊を、なんの躊躇いもなく熱々の石板の上に乗せようとした。


「ちょっ……! 待ちなさいカイト! あなた正気!?」


リナが悲鳴のような声を上げ、介人の腕を全力で引っ張った。隣のギルも目を丸くして冷や汗を流している。


「ん? なんだ、焼き加減に注文でもあったか?」


「違うわよ! あなたが今乗せようとしたそこ! その霜降りの肉塊一塊で、平民の数年分の給金が吹っ飛ぶような超希少部位なのよ!? なにを気安くドカドカと焼こうとしてるのよーっ!?」


「むむぅっ……。カイト殿、ドラゴンの肉は確かに美味ですが、特にそこは魔力の濃縮された部位でして……ギルドの高官や大貴族でも滅多に口にできない代物です。もっと希少性を考慮された方が……」


「なるほど、希少性か」


介人は手元の肉を見つめ、あっけらかんと笑った。


「だが、今ここで俺たちは腹が減っている。そして目の前に肉がある。どんなに高価でも、食わなきゃただのタンパク質の塊だ。それに食事の価値は、一緒に食べる仲間がいることによっても上がるんだぜ?」(キラーン)


「仲間……って、まあ、そう言ってもらえるのは嬉しいけど……」


リナは頬を少し赤くしながら言葉を詰まらせた。


「はは……豪快を通り越して、もはや世俗を超越されていますな。分かりました、ではありがたくご馳走になりましょう」


ギルが苦笑しつつ腹をくくると、介人は肉をジュウジュウと豪快に焼き始めた。香ばしい脂の匂いと肉汁の弾ける音が湖畔に広がり、三人の胃袋を激しく刺激する。


「ふふっ、カイトがそこまで太っ腹なら、私達も冒険者としての自慢の一品を見せてあげるわ!」


リナが不敵に笑うと、リュックの奥から小さな陶器の小瓶を取り出した。


「どうよこれ! 我が故郷に伝わる秘伝のタレよ! 肉の臭みを消し、旨味を何倍にも引き出す幻の調味料……食べて驚きなさいっ!」


「ほお、調味料か。いただくよ」


介人は差し出された小瓶の蓋を開け、匂いを嗅いだ。


(……ん? この芳香は……まさか)


どこか甘く、そして深みのある香ばしい発酵臭。介人は小指の先に少しだけ液体を付け、舐めてみた。


「……これ、醤油か?」


「「ええええええええっ!!????」」


静かな湖畔に、リナとギルの絶叫が響き渡った。本日何度目かわからない驚愕で、二人ともひっくり返りそうになっている。


「な、なんで知ってるのよぉぉぉ!? これは我が故郷アラハガマカの旧家に伝わる、門外不出の幻の発酵調味料よ!? なんで一口で名前まで当てられるの!?」


「え、いや……俺の故郷じゃごく普通の、日常的に使う基本的な調味料だからな。大豆と小麦と塩で作るだろ?」


「作り方まで知ってる……!? カイト、あなた何者なのよ……」


リナは頭を抱え、ギルも衝撃のあまり開いた口が塞がらない。

介人は胸の奥に、ほんのりと温かい郷愁を感じていた。異世界の国「アラハガマカ」と、自身の故郷である地球。遠く離れた世界でありながら、食文化の根本で繋がっているかもしれないという事実は、彼に強い親近感を抱かせた。


石板の上でカリッと香ばしく焼けたドラゴン肉に醤油を垂らすと、香ばしい焦がし醤油の香りが周囲を満たした。


「さあ、焼けただろ。食べよう」


介人が声をかけると、リナとギルは自分の腰ポーチから慣れた手つきで二本の細い棒――「マイ箸」を取り出した。


「ん……? それは箸か?」


「え? ええ、そうだけど……アラハガマカではごく一般的な食事の道具よ」


介人は感心しながら近くの木から手頃な枝を拾うと、自分のナイフを使って素早く皮を剥ぎ、角を落として二本の即席の箸を作り上げた。


「なっ……カイト、あなた今何を作ったの!?」


「箸だが? 俺の故郷でも、食べ物はこうやって二本の棒でつまんで食べるんだ」


「は、箸まで扱えるの……!? 醤油だけじゃなくて、食事の作法までうちの国と同じなんて……!」


「カイト殿の故郷とアラハガマカの文化体系……類似性を感じずにはいられませんな……」


「確かに……何かつながりがあるのか?」


(ギルの指摘を聞き、介人の頭に色々な可能性がよぎり始める。ここは異世界ではなく、遥か未来や遥か過去の可能性もあり得るのか……? 自分のいた科学文明が滅んだ後に魔法文明が発生したのか、それとも魔法文明の後に科学文明ができるのか……?)


(まあ、腹ペコだし今は目の前の大馳走を食べるか)


お互いに「箸」を使って肉を食せることに驚き合いながらも、どこか運命的な親近感が深まっていく。焦がし醤油の染み込んだ肉を一口口に運ぶと――。


「――っ美味い!! なにこれ、信じられないくらい柔らかくてジューシー!!」


「おお……!! 肉の旨味が口いっぱいに広がり、後味がさっぱりと……これは極上です……!」


二人は目を輝かせ、夢中で肉を頬張り始めた。介人もまた、実時間は数時間だが久しぶりに感じる故郷の味覚と極上の肉の組み合わせに大満足で舌鼓を打った。


食事が一段落したところで、介人はプロトの空間投影機能を使い、空中へ簡易的なホログラムの地図を映し出した。


「ところで、二人にお願いがあるんだ。さっきも言った通り俺はここらの地理がさっぱり判らない。今俺たちがどこにいて、どういう位置関係なのか教えてくれないか?」


「えっ、空中に光の地図が……!? あ、コホン。ええとね……」


リナは驚きを噛み殺しながら、地図の一点(今いる湖)を指さした。


「私たちがいるこの巨大な湖は『フフスクル湖』よ。そして、この広大な大陸全体が『ウーラシア大陸』と呼ばれているわ。カイトがいた場所から北北西に進んできたなら、ちょうど大陸の真ん中から北上してきた感じかしらね」


「ウーラシア大陸のフフスクル湖か。なるほど……で、一番近い人里はどこだ?」


「ここから街道を北に数日進んだところにある『ヒルクーツク』という街よ。大きめの交易都市でね、私達も元々そこを目指していたの」


「ヒルクーツクか……」


「カイト殿」


ギルが真剣な表情で介人に向き直った。


「カイト殿はこのあたりの地理や常識にも疎く、現地で流通している通貨もお持ちでないはず。そのまま街に入ろうとすれば、怪しまれて不法侵入者として捕まりかねません」


「あっ、そうか!? 確かにそれは困るな」


「だからね!」と、リナが身を乗り出してきた。


「ヒルクーツクに着いたら、まず『冒険者ギルド』に行って冒険者登録をするのをお勧めするわ! 冒険者証が発行されれば、それがそのままギルドがある国で通用する一番確実な身分証明書にもなるからね!」


「冒険者ギルドで冒険者証の発行か。生活基盤を作る上でも、情報を集める上でも理にかなっているな」


介人は頷き、二人の顔を見つめた。


「よし、目的地は決まりだ。二人とも、ヒルクーツクまで案内を頼めるか?」


「もちろんよ! これだけ美味いお肉をご馳走になったんだもの、しっかり案内してあげるわ!」


「お任せください、カイト殿。道中の魔物や案内は我々にお任せを。今日は日も暮れてきたのでここで野営をして、明日の朝に出立しましょう」


ドラゴンの肉を平らげ、焚き火の火が暖かく三人(と一機)を照らす。


常識外れのメカオタクのカイトと、冒険者リナ、ギル。


交易都市ヒルクーツクへ向けて、彼らの新しい旅路がいよいよ動き出そうとしていた。


読んでいただきありがとうございます。続きは明日11/2に上げる予定です。ストックに余裕が出たら連日掲載などの前倒しも随時行いますのでよろしくお願いします。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。