第1章 2話 魔石を喰らうモノ
「魔石を摂取」と聞いて介人が狼狽えていると、沈黙していたプロトから音声が響いた。
『――エネルギー残量不足。省エネ形態に移行します』
「省エネ形態……? ん、うわっ!?」
突如、介人の身体を包んでいたプロトのパーツが『カシャン! カシャン!』と音を立てて自動解体され始めた。
解除されたパーツは一か所に集まり、光の粒子へと変わって介人の目の前でギュギュッと凝縮されていく。
光が収まったあと。
そこに浮いていたのは――
「……は?」
身長120センチほど、小学校低学年のサイズ感。
頭が大きくて身体が小さい、丸っこい2頭身の「ミニプロト」だった。
「おおおっ……!? すっげぇぇぇ!! 変形・小型化ギミック!? なんだこの緻密なパーツ連動は! まったく身に覚えのない超技術だけど、メカとして最高にかっこいい&可愛いじゃないか……!」
あまりの機構の美しさに、メカオタクの血が騒いで目を輝かせる介人。
つぶらなメインカメラを『パチクリ』と点滅させ、空中をプカプカと漂うミニプロトは、どこか首をかしげるような仕草を見せた。
『……マスター、本機の状況を説明します。この変容は、異世界転移の際に周囲の未知存在――いわゆる『微精霊』と呼ばれる存在が本機のコアへ混ざり込んだ結果、精霊的な擬似機械生命体化したためと推測されます』
「微精霊が混ざった……? さっきの機械らしいアナウンス音声から、知性体のような感情を感じたのはそういうことか」
『はい。微精霊との融合により、本機に擬似的な生命思考機能(意志)が発生しました。この【省エネ形態】は、限られた魔力エネルギーで稼働しつつ、マスターとスムーズなコミュニケーションを行うための最適化形態です。戦闘時には元のアシストロボへと再変形可能です』
「なるほど……転移事故のどさくさで、プロトに異世界の妖精さん的なやつが憑依して自立思考と変形機能がついたってことか。道理で自分で組んでないプログラムが動くわけだ」
(まあ、便利だし可愛いから結果オーライだな!)と納得した介人は、横に立つ子供サイズのミニプロトの頭を撫でる。プロトは『ピロリン♪』と心地よい音を響かせた。
『さてマスター。まずは倒したドラゴンの体内から『魔石』を取り出しましょう。その後、本機に『摂取』させてください。稼働エネルギーの獲得、およびさらなる機能拡張が可能です』
「あ、僕が食べるわけじゃないのか! 良かったぁ……魔石なんか直接食べたら死んでしまいそうだし」
胸を撫で下ろす介人。しかしすぐに言葉の意味を理解して目を丸くした。
「って、機能拡張だと!? よし、じゃあやってみよう! 魔石はどうやって取り出せばいい?」
ミニプロトは首を失って横たわるドラゴンの巨躯へと歩み寄り、精密な操作で胸の奥から夕焼けのように真っ赤に輝く大きな結晶――『魔石』を取り出し、介人に手渡した。
「これが魔石か……!」
介人は初めて見る魔石を色々な角度から眺めたり、指でコツコツと叩いたりと興味深く観察する。ひと通り見終わったところでミニプロトへ合図を送り、魔石を渡した。
するとミニプロトの口が大きく開き、魔石を丸ごと喰らっていく。
『――対象:『ファイヤードラゴン(竜種)』の魔石を吸収完了。以下の能力が解放されました』
【獲得スキル・機能】
火魔法(操作・耐性): 火を自在に操り、熱への耐性を得る。
アイテムボックス(無限): 時間経過ゼロで無制限に物体を格納できる亜空間倉庫。
周辺マップ機能: スキャナーと連動し、周囲の地形や生体反応を可視化する。
「うおっ! 一気に3つも!? 『火魔法』に『無限収納』、それに『マップ機能』まで付いたのか! 本やアニメで見るようなチートスキルを一気に手に入れた気分だぞ!」
介人は興奮気味に、プロトへ早速獲得した機能を試してみるよう促した。
『了解しました、マスター』
ミニプロトがドラゴンの巨躯に手を触れると――シュンッ!と音を立てて山のような巨体が消え去り、「アイテムボックス」へ格納された。さらにプロトの横に青いホログラムの「広域マップ」が展開され、自分を中心に周囲の地形がくっきりと映し出される。
「よし……! 食料(ドラゴン肉)も素材も確保、火も起こせる、道にも迷わない! サバイバルに必要な環境が一気に整ってきたぞ! 次は水が欲しいなー」
『肯定ですマスター。まずはマップを頼りに、水場を目指して移動を開始しましょう』
「おうっ! 頼むぞ、相棒!」
2頭身の相棒をお供に連れ、メカオタクな青年・介人の異世界サバイバルが、いよいよ本格的に幕を開けたのだった。
3話は10/24(土)に掲載予定です。




