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異世界転移したらアシストロボが自我持ち魔導アーマーに進化しました  作者: 街いのしし


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第1章 1話 異世界転移

この物語は、本作の主人公・伊勢介人(いせ かいと)19歳の、世界をまたぐ冒険譚である。


介人は茨城県T市に暮らす学者のタマゴであり、一見するとどこにでもいる平凡な青年だ。

だが、彼には一点だけ、極めて非凡な特徴があった。

重度のメカオタクということだ。


日夜研究室にこもり、彼が情熱のすべてを注ぎ込んで制作しているのが、自作のアシストロボ『プロト』である。

無骨な金属フレームに、自作の駆動アクチュエータ。

本人はあくまで「作業補助用」として作っているつもりだったが、オタク特有の「もっと出力を」「もっと頑丈に」というこだわりが爆発した結果、プロトの性能はとっくに軍事用パワードスーツの領域に足を踏み入れていた。

もっとも、作っている当の本人はその事実に一切気がついていないのだが。

今日も今日とて、徹夜でその魔改造に励んでいく。



『カタカタッ』『ピピピッ』


研究室に、キーボードを叩く音とモニターの電子音が心地よく響く。

画面に流れる膨大なログデータを確かめ、介人は満足気にニヤリと笑った。


「よし、これで筋力サポートと危険察知システムはバッチリだ……!」


達成感とともに、連日の徹夜による激しい眠気が押し寄せてくる。

ふっと意識が遠のきかけた、その時だった。


介人の足元の床に、見たこともない怪しい幾何学模様――魔法陣が、淡い光を放ちながら浮かび上がる。


「ん……? ブレーカー落ちたか? いや、なんだ!?この光は……」


戸惑いの声をあげる間もなく、溢れ出した眩い光によって、彼の視界は真っ白に染め上げられた。



◇


介人が目を覚ますと、そこは見知らぬ平原だった。

見上げる空には太陽が輝いている。心なしかいつもより大きい気もしたが、研究室に籠もりっきりの介人には判断がつかない。改めて周囲を確認するが、見渡す限り青々とした草原が続いていた。


「夢……か? いや、目に入る光も風の匂いもリアルすぎる……だとするなら、瞬間移動やワープ……か?」


介人はポケットにスマホが入っていることを思い出し、慌てて取り出してみるが電波は圏外。こんなことも有ろうかと衛星通信某社の◯ターリンクの契約もしていたはずだが、一切電波を拾えない。


「まさか……あの時の光は魔法陣!? だとしたら噂の異世界転移か!?」


思わず叫び、しばしパニックになる介人。

しかしひと通り思考を巡らせたことで、次第に落ち着きを取り戻してきた。

彼は異世界転移の定番である「チート能力」の確認を開始する。


「ステータスウィンドウ、オープン!」

「鑑定!」「錬金!」

「ファイヤーボール!」

「ウィンドカッター!」

「ウォーターボール!」

「アースクエイク!」

「ライト!」

「身体強化!」「フライ!」


思いつく限りの呪文やスキル名を叫んでみたものの、期待したような現象は何も起きない。


「……ですよねー」


甘くない現実を実感してガックリと肩を落としていると、傍らに転移に巻き込まれた愛機のアシストロボ『プロト』が沈黙して転がっているのを発見した。


「お前も来てたのか!」


慌てて駆け寄り、壊れていないか必死にチェックする。

バッテリーはフル充電だったはずで、さらにはこんなこともあろうかと連続48時間稼働の耐久テストもクリアしていたのだが……プロトは一切反応しない。


「ダメかっ」


絶望混じりに呟いた、その時だった。


遠くの空から、大きな翼を持った巨大な生物が不穏な唸り声を上げながらこちらへ飛んでくるのが目に入る。


「あれは……ドラゴン!?」


もちろん、生身の介人の戦闘力はゼロだ。


「マジかよ……! ムリムリ、こんなの勝てるわけない!」


腰を抜かして後ずさりするが、視界を遮るもののないこの平原では、隠れる場所も逃げる場所もどこにも存在しなかった。


プロトを引きずりながらその場から離れようとするが、スピード差は歴然。魔物はドンドン介人に近づいてくる。絶体絶命のピンチ!


接敵直前――沈黙していたプロトのメインカメラが、『キィン!』と神々しい光を放ち起動した。


『――マスターの危険を検知。危険度・極大。緊急着用を推奨します』


無機質だったはずのアナウンス音に、どこか知性と感情を感じる響きが混ざり合う。


「えっ? 自立起動!? そんなプログラム組んでないぞっ!?」


介人が困惑したのも束の間、プロトはさらに言葉を紡ぐ。


『マスター、考える時間はありません――『装着』と唱えてください!』


「えいっ、装着っ!」


叫んだ瞬間、プロトのパーツが自動分解され、介人の身体へ瞬時に展開・装着された。

無骨な金属外形が異世界の魔素を引き込み、ほんのりと発光しながら、幻想的なルーン文字や幾何学模様が浮かび上がっていく。


『ブオッ!』『ゴォォ!』


ドラゴンが放った挨拶代わりの火炎弾が直撃する。

だが、プロトを包む未知のバリアと衝撃吸収機構が作動し、痛くも痒くもない。


「えっ、全然痛くない!? どころか、体の動きがめちゃくちゃ軽い……!?」


ドラゴンは絶え間なく火炎弾を吐き続ける。

しかし今のプロトは、火炎弾の発射を一つひとつ目視してから回避行動が取れるほどに機動力が跳ね上がっていた。

思わず介人は、有名な仮面の男の台詞を呟く。


「当たらなければどうということはない……!」


……まあ、すでに『当たってもどうということはない』状態なのだが。


何らかの「異世界ブースト」の恩恵でスペックが爆上がりしたプロトと共にある今、ドラゴンへの恐怖心はすっかり消え失せていた。

恐怖が去ったことで、介人の脳に冷静な思考が戻ってくる。


こちらはほぼノーダメージだが、空中にいるドラゴンもノーダメージ。

この状況を打開するには遠距離兵器が欲しいところだが、作業補助用のアシストロボであるプロトに銃器などの武装は当然ない。

空中の敵に対する有効な攻撃手段がないまま持久戦に突入すればどうなるか?

プロトの異世界ブーストがいつまで持つか分からない以上、エネルギー切れを起こせば一気に不利になると介人は悟った。


(なら、遠距離攻撃を作ればいい!)


介人は走り始めた。時折、足元の何かを拾い上げながら。

こんなこともあろうかと、プロトには収納ボックスを作ってあったのだ。

彼がボックスへ次々と集めたのは――拳サイズの「石コロ」だった。


ある程度の数を確保したところで、介人は足を止める。


「よしっ、プロト! 反撃開始だっ!」

『マスター、了解しました。パワー出力、最大――』


介人は拾った石を握りしめ、全力全開でドラゴン目がけて投げつけた!


「いけぇぇぇっ!!」


出力最大となったプロトは想像以上のパワーを発揮。音速に達したかのような凄まじい速度で石が飛んでいく!

しかし、音速を超えた物体にかかる強烈な空気抵抗と圧力に、ただの石コロが耐えられるはずもなかった。


ドラゴンへの着弾直前、石は猛烈な負荷に耐えかねて『パァン!』と空中分解!

だが、砕け散りながらも超高速で飛んでいく破片は、まるで散弾銃(ショットガン)のような広範囲攻撃となってドラゴンを襲った!


ドラゴンへの着弾直前、石は猛烈な負荷に耐えかねて『パァン!』と空中分解!

だが、砕け散りながらも超高速で飛んでいく破片は、まるで散弾銃(ショットガン)のような広範囲攻撃となってドラゴンを襲った!


『グギャアッ!?』


ドラゴンも無抵抗ではいられず直撃こそ避けたものの、散弾となった石の破片が翼を大きく切り裂き、飛行能力が激減する。


「よし、手応えあり! 先ほどの仕返しだっ!」


手応えを得た介人は、次々と石を掴んではドラゴンに向けて連射する。


「オラオラオラァッ!」


音速で飛び、粉々になりながら降り注ぐ石の散弾の嵐。

広範囲を薙ぎ払う弾幕がドラゴンのボロボロの翼を完全に破壊し、巨大な巨躯を地上へと叩き落とした!


『ズドォォォンッ!』



「よしっ追撃だっ」


地上へ落下したドラゴンへ止めを刺すため、介人は地を蹴る。

流石はドラゴンというべきか、翼を破壊されて落下しても致命傷には至っていないようだ。迫り来る介人に向かって、執念深く口から火炎弾を撒き散らして牽制してくる。


距離が縮まるにつれて火炎弾の回避は難しくなっていくが、そもそも直撃してもノーダメージ。

介人は回避を完全に捨て、火炎を突き破って真っ直ぐに突き進む!


「ようやく会えたなっ、ドラゴンっ!」


間合いさえ詰めてしまえばこっちのものとばかりに、介人はパンチやキックなどの連続打撃を繰り出す!

介人自身に格闘技の経験など一切ない。だが、プロトの超高精度な運動アシストにより、その動作はまるで熟練の格闘家そのものだった。


ドカッ! バキッ! と重い打撃音が響き渡る。

しかし、様子見の打撃では決定打には至らない。どうやらこのドラゴンには強い再生能力があるらしく、一気にケリをつける超絶火力の一撃を叩き込まなければ倒しきるのは難しそうだ。


(大型生物に致命的なダメージを与えるなら……首の切断か、心臓の破壊か!?)


ドラゴンの正確な心臓の位置など知る由もないこの状況。介人は可能性が高そうな「首の切断」を選択し、すぐさま行動に移る。


「プロト、もう一度最大出力だっ! ドラゴンの首を手刀で叩き切る!」

『了解――出力、限界突破(オーバーロード)』


介人は踏み込み、渾身の手刀をドラゴンの首筋に向かって振り下ろした!

最大出力で放たれた手刀は、もはや刃物以上の爆発的な威力を生み出し――


『ズバァァァンッ!!』


硬質なドラゴンの鱗ごと、その巨大な首を一撃で切り飛ばした!


噴き出す血潮とともに、巨躯がどさりと草原に倒れ込む。

介人は「ふぅーっ」と深く息を吐きだし、額の汗を拭った。


「勝った……のか……?」


静まり返った平原。倒れたドラゴンの死骸にゆっくりと近づいたその時、プロトからクリアな音声が脳内に響く。


『――マスター、ドラゴンの体内から『魔石』を取り出し、『摂取』してください。本機の機能拡張が可能です』

「は……? 摂取って……えっ、僕に魔石を食べろって言ってるの!?」


戦いを終えたばかりの介人は、唐突すぎる相棒からの要求に、思わず目を丸くして素狂った声を上げた。

ファイヤードラゴン撃破っ!

メカオタクとアシストロボの冒険譚が始まる!

続きは10/21 22時に掲載予定です。

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