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第一部 第9話 甘え方を覚えた新凪
「真人さぁん」
ある日。
仕事中の真人の背中へ、新凪がぴとっとくっついた。
キーボードを打つ手が止まる。
「……どうしたんですか」
「疲れました」
「それはいけませんね」
「充電が必要です」
真顔で言う。
真人は吹き出しそうになる。
最近の新凪は、時々こんなふうに甘えてくる。
最初は恐る恐るだった。
でも。
真人が嫌がらないとわかってから、少しずつ距離が近くなっていった。
「……真人さん成分を充電しないと回復できません」
背中へ頬を押しつけながら、新凪がぽつりと言う。
その声が甘すぎて。
真人の心臓がうるさくなる。
「仕事できないんですけど」
「じゃあ終わるまでこうしてます」
「それ余計終わらないやつです」
新凪がくすくす笑う。
その笑い声を聞くたび、真人は思う。
この人、こんなふうに笑えるんだなって。
最初の頃は、いつもどこか緊張していた。
迷惑をかけないように。
嫌われないように。
そんな空気をまとっていた。
でも今は違う。
甘えてくる。
拗ねる。
照れる。
笑う。
その全部が、愛おしかった。




