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安心の器  作者: 古都麿
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第二部 第11話 お引っ越し③

昼食を済ませて新居に到着したら、引っ越し屋さんはすでに到着していた。

「すいません、遅くなって」

「いえ、時間通りなので大丈夫ですよ」

真人は真新しい鍵で玄関を開ける。

「すいません、大物を入れやすいように庭の方の掃き出し窓も開けてもらえますか」

家の中に入ると少し空気が澱んでいる。

その空気を追い出すように、庭に面したリビングの掃き出し窓を開けた。

新鮮な空気が流れ込み、玄関から風が抜けていく。

8月の風は決して爽やかではないが、新鮮な空気が入り込むのは気持ちいい。

「暑いねー!」

結子が汗を拭きながら入ってきた。

後ろに新凪も続いている。

「すいません、とりあえずダイニングチェアを一脚だけ先に入れてもらえますか?」

真人が新凪のための椅子を頼んだ。

搬入は2階の大物から進んでいく。

結子のものになったベッド。

あらかじめ搬入場所は指示されているがちゃんとその通りになっているか確認する。

「はい、置き場所はそれでOKでーす」

結子は自分の部屋の現場監督になっていた。

衣類の軽い段ボールは女性スタッフが玄関から運び込む。

こちらも箱に番号が振られており、その通りの部屋に運び込まれる。

結子の洋室にはクローゼットがあるので、洋服はクローゼットに、下着類はクローゼットの中に衣装ケースを置いて移していく。

1階和室のタンスは二竿。新凪と結子が共用していたものと真人が使っていたもの。

家電類が運び込まれ、ダイニングテーブルと椅子。

そして。

最後にソファが設置された。

「うちの部屋、終わったよー!」

早々に荷解きを終えて結子がリビングに戻ってきた。

新凪は女性スタッフが食器棚に食器を納めるのを見守っている。

新しい家に見慣れた家具。

もちろん不慣れではあるけど、見慣れた家具のおかげで、よその家的な居心地の悪さはない。

「これで全部です」

引っ越し屋さんの書類にサイン。

引っ越し屋さんを見送ったところで電力会社、ガス会社と水道局が開通確認に来た。

エアコンのスイッチを入れると涼しい風がリビングに流れる。

「汗かいちゃったね」

真人が首にかけたタオルで顔を拭きながら言った。

「新凪、先にシャワー浴びてきたら?」

真人が新凪を促すと。

「パパもそんなに汗かいてるんだったら、一緒に入ってきたら?」

結子が小悪魔な表情でいじる。

「もう、結子はそんなことばっかり」

新凪は困ったような顔でいうが。

「新凪、一緒に行く?」

真人までそんなことを言い出して新凪は顔を赤らめてプイッとそっぽを向いてしまった。

結局、結子が二人一緒に浴室に押し込んでしまったが。


「そうだ、今のうちに美穂に新しい住所送っとこう」

「でもあれ?ここの番地、なんだっけ?」


シャワーを終えた新凪はソファに腰を下ろして、そっと目を閉じる。

その横に真人も腰を下ろす。

「ねぇ、パパ」

「ん?」

「ここの番地、何番だっけ」

「16番地4号だよ」

「ありがとう」

結子はスマホで美穂に新しい住所を送った。

それだけ済ますと。

「私もシャワー浴びてくる」

結子がリビングから出ていった。

新凪が真人にもたれかかる。

「前の部屋と同じですね」

新凪がしんみりと言う。

「ん?何が?」

真人は不思議そうに尋ねる。

「こうしてあなたの隣にいるのが」

真人は新凪の肩に手を回し。

チラリと横目で結子がいないことを確認して。

新凪の肩を少しだけ引き寄せた。

お腹に手を置いて。

「お疲れ様」

「はい」


甘い空気がエアコンの風に乗って流れていった。


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