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安心の器  作者: 古都麿
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第二部 第8話 家を買おうプロジェクト ない!?

雲の隙間から日がさす梅雨の晴れ間。

「パパ、間取りは決まったよ」

真人の仕事部屋: 洋室6畳

真人と新凪の寝室: 和室8畳

新凪の部屋: 喧嘩で逃げ込むスペースと生まれてくる赤ちゃんを考慮して洋室6畳と和室6畳

結子の部屋: 洋室6畳

LDK: ダイニングテーブルとソファーが置けるよう18畳程度

「こんな感じでどう?」

「いや、その喧嘩前提というのが納得できないけど、間取り自体には異論はないよ」

立地は結子が転校しなくていい範囲が前提だ。通勤がない真人だから、駅からの距離はあまり意識しなくていいし、何なら私鉄とJRが複数駅ある地域なので、不便ということはない。

「スーパーは近くに欲しいかな」

新凪が口を挟む。

「でも、私が車を出すから必須じゃなくていいよ」

真人が言うが。

「でも、いつもというわけにはいかないし」

「私が新凪と一緒に買い物したいんだ」

見つめ合う新凪と真人。

「はいはい、わかったわかった」

裕子がパチンと手を叩いた。


「じゃあ、不動産屋さんのサイトで探してみようか」

真人が検索をかけるが、ヒットする物件が2軒しかない。

希望の間取りは5LDKだから、割と一般的だと思っていた。

「何で?」

結子は不思議そうに。

「4LDKはそこそこあるみたいだけど」

「5LDKは少ないね」

「やっぱり私の部屋まで、いいですよ」

「それはダメ」

「ママ、またそんなこと言ってる」

二人に同時にダメ出しされる

「数は少なくても、要はいい物件ならいいんだから」

「とりあえず連絡して、見に行ってみようか?」

当該物件を扱っている不動産屋は幸い自宅の近くにあった。

物件の立地も比較的近く、これまで通っていたスーパーからもそれほど離れていない。


「これ?」

結子が渋い顔をする。

パイパス道路の高架が近く、少しうるさそうなのと高架の陰で日当たりがあまり良くなさそう。

「赤ちゃんのこと考えたら静かな方がいいよね」

結子が家だけじゃなくて、環境も考えてそう言う。

真人は目を細めた。

「あなたも家でお仕事だから静かじゃないと」

新凪が真人を気遣って言う。


もう一軒は立地は悪くなかったが、築40年以上経っており、こちらもイマイチ。

「やっぱり、4LDKにして……」

「それはだめ」

「みんなの家だから誰かが我慢するのは違うと思う」

「新凪にも落ち着ける場所が必要だと思うし」

「私はリビングでも寝室でも、真人さんの顔が見れる場所が一番落ち着くんですよ?」

そう言って微笑む新凪に真人がデレた。

「ちょっと、今は冷静になろうね」


不動産屋さんに戻って、担当者に話を聞いた。

「そもそも、このエリアは中古戸建は少ないんですよ」

「それに、主流は4LDKなので、5LDKがそもそも少ないですし」

「なるほど、一度帰って検討してみます」


「やっぱり、希望の間取りと立地を考えたら」

「注文住宅の方が良くない?」

「それはいや!予算が厳しくなって真人さんが無理するのだけはイヤ」

自分が一度過労で倒れたことがあるから、真人に同じ目にあって欲しくない。

新凪は頑なだ。

そう言われると真人も強くは言えない。

「夕食の用意しようか」

この話は一旦棚上げになった。


「ただいま!」

結子は相変わらず元気だ。

「新しい家のことだけど」

「ママ、引っ越しはいつまで大丈夫?」

「いつまで?」

「引っ越しの最中に出産なんか、無理でしょう?」

あぁ、そういう意味か。

「予定日は10月だから、9月までには済ませたいかな」

「あんま時間ないじゃん」


「パパー!」

「注文住宅なんか、ママの出産に間に合わないじゃん」

「いや、そこは出産後落ち着いてからの引越しでも」

「あなた、赤ちゃんを抱えての引っ越しとか、赤ちゃんを舐めてます?」

新凪がちらりと真人を睨む。

「でも、せっかく買うんだから、後悔してほしくないんだ」

「こうするのはどう?」

真人の仕事部屋: 洋室6畳

真人と新凪の寝室: 和室8畳

新凪の部屋: 新凪と赤ちゃんの共用で和室6畳

結子の部屋: 洋室6畳

LDK: ダイニングテーブルとソファーが置けるよう18畳程度

「でも、赤ちゃんが大きくなったら、どうせもう一部屋いるでしょ」

真人はずいぶん先の話を気にしている。

「パパ、それ何年後の話?」

「小学校に上がる頃だから、6年後ぐらい?」

「でも、小学校の間はママと共用でもいいんじゃない?」

結子は落ち着いたように。

「赤ちゃんが中学に上がる頃には、私、大学卒業してるよ?」

「うぅ、それはそうだけど」

「だったら、4LDKで考えようよ」

結子が一気に捲し立てた。

「でも、結子の部屋がなくなったら、帰りにくくなるんじゃ……」

真人の言葉に結子は一瞬うるうるする。

でも。

「そのための和室八畳でしょ?」

「うぅ……」

真人はぐうの音も出ない。

「いろいろ調べてみたら、4LDKでも和室が八畳ある家ってちょっと贅沢な造りだから、きっといい家が見つかりますよ」

新凪も加勢する。

「でも……」

真人はまだ何か言いたそうだった。

けれど。

新凪も。

結子も。

ちゃんと未来を考えていた。

自分だけが先回りし過ぎていたのかもしれない。


「わかった」

真人も納得したように頷いた。


「じゃあ、次の休みにもう一度不動産屋さん周りだね」

結子、逞しくなったなぁ。

真人も新凪も娘の成長を実感した。


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