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安心の器  作者: 古都麿
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第二部 第6話 家を買おうプロジェクト ご希望は?

梅雨空。

街の音が遠い。

「パパ!」

静寂を破るのはいつもこの声。


「新しいお家の希望調査です」

ノートを持ってインタビューのように。

「パパの部屋の希望は?」

「早速始めてくれてるんだ」

「うん」

「仕事部屋は洋室で」

「デスクと機材が置ければいいからそんなに広くなくていいかな」

「寝室は?」

真人は少し考えてから。

「広めの和室がいいかな」

「え?和室」

「うん、八畳くらいの」

乾燥機から洗濯物を取り出して新凪がリビングに来た。

「あっ、新凪」

「それは私がやるから」

ソファーから勢いよく立ち上がって駆け寄る。

「それより、和室なんですか?」

新凪は洗濯籠を真人に渡しながら不思議そうに聞く。

「ごめん、勝手に」

「いえ、それはいいんですが、ちょっと意外で」

「ベッドじゃないとお姫様だっこは似合わないよ?」

結子が茶化す。

「そんなこと……」

新凪が慌てて否定しようとするが。

「あっ、それはそうかも」

結子の軽口に真人まで乗っかって。

「ちょっと、あなたまで……」

新凪は少し拗ねてみせた。

「で、なんで和室?」

結子も理由が気になる。

真人はちょっと言いにくそうに。

「結子が」

私?

「一緒に寝たいって言った時に」

「八畳なら三人並んで寝られるかなって」

結子が焦ったように。

「ちょっ、パパ」

「私もう大人だよ?そんなこと言わないよ」

頬を染めながらモジモジして。

新凪は真人の手に自分の手を重ねた。


「ママの部屋は?」

「私は真人さんと同じ寝室があればいいかな」

「ママ、それはダメ」

「えっ?」

「パパと喧嘩した時」

「引きこもる部屋がいるでしょ」

「なんで喧嘩するのが前提なのよ」

「引きこもったママの部屋の前で」

「にぃなぁ、にぃなぁ……って狼狽えてるパパ、尊い」

「ちょっと勘弁してよ」 

結子はなんか、最近、変なことを覚えたらしい。


「で、結子はどんな部屋がいいの?」

「普通の洋室かなぁ」

「勉強机とベッドが置ければいいから広くなくていいし」

「友達を呼んで女子会とかしないの?」

真人は当たり前みたいに聞く。

「えっ?」

結子は一瞬意味がわからなかったが。

「友達、呼んでいいの?」

「うん」

当たり前のように真人は答えたが。

「あっ」

「今まで遠慮してた?」

「……」

「ごめん、気づかなくて」

真人は結子をそっと抱きしめて、頭を撫でた」

「パパ……」

この人がパパでよかった。


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