↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
安心の器  作者: 古都麿
PR
21/30

第二部 第5話 大人になる

朝。

結子が珍しく起きてこない。

いつもは、朝は苦手なりに、眠い目を擦りながら起きてくるのに。

新凪が寝室を覗く。

「結子、起きないと遅れるわよ」

「ママ、お腹痛い」

結子は苦しそうにうなる。

「お腹壊したの?」

「わかんない」

「でも吐き気とか、お腹壊してる感じじゃない」

「なんか、絞られてるみたい」

「ずーんと重いというか」

新凪はそこで思い当たった。

「じゃあ、今日は休んでいいから」

「もし、変わったことがあったら、すぐに言うのよ」

新凪はそれだけ言って寝室を後にした。

「結子は具合が悪いの?」

真人は心配そうに尋ねた。

「ええ、今日は休ませます」

「病院に連れて行かなくて大丈夫?」

「ええ、多分病気じゃないので」

「?」

「心配いりませんから、あなたは仕事してて大丈夫ですよ」


そう言われては、真人は仕事部屋へ行くしかなかった。

 昼休み。

「結子はまだ寝てるの?」真人が仕事部屋から出てきて尋ねた。

「ええ、まだ少し辛いみたい」

「本当に病院に行かなくて大丈夫?」

「ふふふ……」

新凪は笑いながら言った。

「あの子、大人になったのよ」

「ん?」

真人には分からない。

「初潮がきたの」

「!?」

「そうか……6年生だもんな」

「そういうのは、さすがに私じゃどうしようもない」

真人は無力感を感じながらも、結子の成長が嬉しかった。

「どう声をかけたらいいのかな」

真人が困惑しているが。

「あなたはいつも通りでいいんですよ」

新凪は笑って言った。


その2時間ほど前。

寝室から結子が出てきた。

「ママ、パジャマとシーツ汚しちゃった」

申し訳なさそうに謝る。

「おめでとう」

新凪は結子に生理用品の使い方を教えて、下着とパジャマを着替えさせてシーツを交換した。

「ママ、わかってたの?」

「なんとなく」

「わかってたなら先に言っといてよ」

「でも、本当にそうかどうかわからなかったし」

「まだ、横になってていいわよ」

しばらくの沈黙の後。

「ママ」

「なぁに?」

「これで私もパパの赤ちゃん産めるんだよね?」

「結子、あなた!?」

「冗談だよ」

結子はいたずらな目で言ってから。

急に真面目な顔になって。

「あのね、私わかったの」

「ん?」

「パパは、最初から私のことを娘みたいな目で見てたこと」

「公園で初めて会った日も、私のこと放っておけなかったんだと思う」

「ママが入院した時も」

「ママが退院して、うちに来る?って言ってくれた時も」

「パパは私が不安にならないように考えてくれてたんだよね?」

「そうね」

「あの日、うちに来るって言ってくれた時、最初ママは申し訳ないって断ったの」

「そしたら、”まず、結子ちゃんが安心できるようにしてあげましょうよ”、って言ってくれて」

「それでお世話になることにしたの」

「やっぱりそうだったんだね」

「私ね、ママに負けたと思ったの」

「だけど、ママに負けたんじゃなくて、娘として受け止めてもらってたんだね」


「多分」

「ママと同じくらい」

「私も特別」


「そうよ」

「あなたも、真人さんの特別なの」


「それがわかるようになって」

「パパって照れずに自然に呼べるようになったの」


新凪は結子を抱きしめて。

「私たち、愛されてるわね」


「パパの赤ちゃん産めるよ、って言ったらパパどうなっちゃうかな?」

結子はいたずらな目で言った。

「それは可哀想だからやめてあげて」

そんなこと言ったら、あの人絶対壊れちゃう。


【結子の観察日記】

自分が大人になるってなんか不思議。

冗談でパパの子ども産めるって言っちゃったけど、実際、パパっていい男だよね。

かっこよくて、でも、ママの前ではポンコツ。

なにより、一緒にいると安心できる。

ママは「真人さんを基準にすると行き遅れるわよ」って言うけど。

ほんとに私、結婚相手、見つけられないかも。

ていうか、ママのおのろけ聞かされただけ!?


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。