第9話 商品は増えた。でも、売上はまだ増えていません
第8話では、一つのポエムから、歌、物語、画像、動画、記事へと、複数のコンテンツが生まれました。
今回は、その後の話です。
途中で止めた制作物を完成させ、新しい商品も増えました。
さらに海外向けの発信も始めました。
けれど、売上はまだ増えていません。
作ることと、売ることの間にある距離を、もう一度確認する回です。
「商品は増えた」
俺は、パソコンの画面を見ながら呟いた。
数字だけなら、確かに前へ進んでいる。
NOTEのフォロワーは百人を超えた。
全体の閲覧数も、スキも増えた。
BOOTHには、前より多くの商品が並んでいる。
途中で一度止めた制作物も、数日置いてから再開し、完成させた。
そのまま別の販売先にも申請した。
さらに、以前から頭の中にあった別の案も、時間ができた日に一気に形にした。
気づけば、また新しい商品が一つ増えていた。
「作るのは、速くなったんだけどな」
昔なら、思いついたところで終わっていた。
あるいは、やり方を調べるだけで疲れていた。
文章を書く。
画像を作る。
構成を整える。
説明文を書く。
ファイルをまとめる。
販売ページを作る。
これだけでも、以前なら途中で止まっていたと思う。
今はAIへ相談しながら進められる。
分からないところを聞く。
案を出してもらう。
違うと思えば直す。
長ければ短くする。
足りなければ加える。
そうしているうちに、頭の中にしかなかったものが、半日もかからず商品になることがある。
ただし。
「売れてないんだよな」
そこが、どうしても変わらない。
作った。
並べた。
紹介記事も書いた。
SNSにも投稿した。
それでも、売上は最初の四百円から動いていない。
フォロワーは増えた。
商品も増えた。
記事も増えた。
動画も増えた。
なのに、収益だけが増えない。
数字の中で、そこだけが止まっている。
俺はNOTEの集計画面を開いた。
フォロワーは百人を超えている。
始めた頃から見れば、かなり増えた。
けれど、新しい記事を出しても、反応が急に増えるわけではない。
フォローされたからといって、毎回読まれるわけではない。
読まれたからといって、有料記事が買われるわけでもない。
無料の記事にスキが付いたからといって、商品ページまで来てもらえるわけでもない。
「全部、別なんだな」
フォロワー。
読者。
購入者。
一見すると、同じ線の上にいるように見える。
しかし実際には、それぞれの間に大きな隙間がある。
フォローするのは簡単だ。
記事を読むには少し時間がかかる。
商品を買うには、さらに理由が必要になる。
その理由を伝えるには、商品があるだけでは足りない。
必要としている人に、存在を知ってもらわなければならない。
「結局、導線か」
また同じところへ戻ってきた。
Threadsを失ってから、外部からNOTEへ人を連れてくる入口はほとんどなくなった。
Xは、投稿しても大きく広がらない。
Instagramは、外部リンクへ移動させにくい。
Pinterestは、まだほとんど見られていない。
YouTubeの短い動画は再生されても、商品を探している人とは限らない。
小説サイトでは、物語を読んでもらえても、別の商品への導線にはなりにくい。
投稿先は増えた。
しかし、全部が別々の島だった。
島の上には、それぞれ記事や動画や商品がある。
けれど、島と島をつなぐ橋が細い。
あるいは、橋そのものがない。
「作る力だけ増えても、売れないのか」
少し前まで、俺は売るものがないことを気にしていた。
商品が一つしかない。
有料記事も一つ。
これでは売上が増えないのではないかと思っていた。
だが、商品を増やしても、売上は増えなかった。
つまり問題は、商品数だけではなかった。
店に商品が一つしかないのも困る。
だが、客が来ない店に商品を十個並べても、やはり売れない。
「じゃあ、どうする」
また画面へ問いかける。
すぐに答えが出るわけではない。
ただ、一つだけ分かったことがある。
これ以上、思いつくたびに商品を増やし続けても、それだけでは状況は変わらない。
作ることはできる。
それはもう分かった。
問題は、その先だ。
誰に向けた商品なのか。
どこに置けば、その人が見つけるのか。
どんな言葉で紹介すれば、必要性が伝わるのか。
日本語だけの場所に置いても、海外の人には届かない。
だから、英語圏で文章を投稿できる場所にもアカウントを作った。
プロフィールには、AIと共創しながら、物語や教材、音楽、デジタル商品を作っていると書いた。
そして、新しく作った商品の考え方を、英語の記事にした。
内容を全部公開したわけではない。
細かな仕組みや、中に入っているものをすべて説明したわけでもない。
ただ、
「なぜこの商品を作ったのか」
「どんな人に役立つのか」
「一般的な教材とは、どこが違うのか」
その入口だけを書いた。
「英語で記事を書く日が来るとはな」
俺自身が、英語を自在に書けるわけではない。
翻訳も、校正も、AIに助けてもらった。
それでも、自分の商品を英語圏へ説明する文章は作れた。
昔なら、それだけで諦めていたと思う。
英語ができない。
海外販売の仕組みが分からない。
登録方法が面倒。
本人確認も必要。
知らないサービスを使うのが怖い。
やらない理由はいくらでもあった。
今も、面倒なのは変わらない。
実際、海外向け販売サイトの登録も、本人確認の途中で止まっている。
必要な書類を取りに行かなければならない。
まだ販売できていない。
アカウントはある。
商品もある。
だが、出品できていない。
「結局、現実の手続きは自分でやるしかないんだよな」
AIは文章を作ってくれる。
案も出してくれる。
説明もしてくれる。
けれど、役所へ行って書類を取ってくることはできない。
本人確認の写真を撮ることもできない。
販売サイトの審査を代わりに通ることもできない。
最後のところでは、やはり人間が動かなければならない。
それでも、以前よりは進みやすい。
分からないことを全部一人で調べなくていい。
一つずつ聞きながら進められる。
だから、面倒でも完全には止まらない。
俺は新しく作った商品ページを開いた。
思いついたのは数日前だった。
別のスレッドで少し話して、構成だけは考えていた。
時間がなかった。
面倒でもあった。
だから手を付けなかった。
けれど、時間ができた日に始めたら、半日もかからず形になった。
「やっぱり、考えている時間も制作なんだろうな」
何もしていないように見える時間でも、頭の中では整理されている。
AIと少し話した内容も残っている。
以前の失敗から学んだこともある。
だから、実際の作業を始める頃には、設計の多くが終わっている。
あとは組み立てるだけ。
商品化までが速いのは、いきなり思いついて完成させているからではない。
その前に、対話と放置と再考がある。
一度止めた制作物を完成させたのも同じだった。
止めた時には、もう無理だと思った。
作業が多すぎた。
修正しても終わらなかった。
売れる保証もなかった。
だから、いったんやめた。
数日後、時間ができた。
また開いてみた。
前より冷静に見られた。
残っている作業だけを終わらせた。
そして商品になった。
「止めたことも、無駄じゃなかったのか」
続けることだけが正しいわけではない。
やめる。
離れる。
放置する。
そして、戻れる時に戻る。
その方が完成することもある。
ただし、完成したから売れるわけではない。
そこだけは、変わらない。
俺は売上画面をもう一度見た。
四百円。
商品数は増えた。
販売場所も少しずつ増えている。
英語の記事も書いた。
それでも、四百円。
「まあ、まだ出したばかりだからな」
自分へ言い聞かせるように呟く。
売れないと決まったわけではない。
売れるとも決まっていない。
ただ、今の時点では売れていない。
それだけだ。
ここで「絶対に売れる」と言えば嘘になる。
「素晴らしい商品だから、そのうち必ず売れる」と言うのも根拠がない。
自分では良いと思っている。
必要としている人には役立つと思っている。
だが、必要としている人へ届かなければ、存在しないのと同じだ。
今の問題は、作る力ではない。
入口。
発見。
説明。
信頼。
そして、買う理由。
そのどれか、あるいは全部が足りていない。
「じゃあ、次は作るより、届かせる方か」
商品を増やすことを完全にやめるわけではない。
思いつけば、また作るかもしれない。
ただ、作った数だけで前進したと思わない方がいい。
完成は、ゴールではない。
販売開始も、ゴールではない。
そこから先に、誰かへ見つけてもらう工程がある。
その工程が、今の俺には一番難しい。
俺は英語の記事の公開画面を確認した。
まだ、ほとんど読まれていない。
当然だ。
アカウントを作ったばかりだ。
フォロワーもいない。
記事も一つしかない。
NOTEで十日以上かけても、売上は四百円だった。
英語圏へ一つ記事を出しただけで、すぐ売れるはずもない。
「こっちも、結局コツコツか」
日本語でも、英語でも、同じだった。
記事を書く。
置く。
反応を見る。
直す。
また書く。
商品を作る時と同じだ。
一度で正解を出そうとしない。
少しずつ試す。
違えば変える。
続けられる範囲で続ける。
俺は新しいメモを開いた。
そこに一行だけ書く。
商品は増えた。次は、必要な人へ届くかを試す。
成功したとは言えない。
売上は増えていない。
それでも、以前よりは一つ分かっている。
作れるかどうかでは、もう悩まなくていい。
今度の問いは、別だ。
俺は画面に向かって、静かに言った。
「さて、どうやって見つけてもらおうか」
今回は、第8話以降に商品が増え、海外向けの発信も始めた一方で、売上はまだ増えていない現状を物語にしました。
AIと対話しながら進めることで、アイデアを商品へ変える速度はかなり上がりました。
途中で止めたものを後から完成させたり、数日前に考えていた案を短時間で形にしたりすることもできました。
しかし、商品を作れることと、商品が売れることは別です。
フォロワーが増えること。
記事が読まれること。
商品ページを見てもらうこと。
実際に購入してもらうこと。
それぞれの間には、まだ大きな距離があります。
売上は、まだ四百円。
ただ、今回の実験で、課題は少しずつ見えてきました。
次に必要なのは、さらに商品を増やすことだけではなく、必要としている人へ存在を知ってもらうことです。
無職のおっさんの実験は、作る段階から、届ける段階へ少しずつ移り始めています。
原案・構想
無職のおっさん、noteで稼げるのか実験中
物語構成・本文作成・文体調整
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