第10話 動画を自動で作る仕組みを試してみました
原案・構想
無職のおっさん、noteで稼げるのか実験中
物語構成・本文作成・文体調整
ChatGPT
商品は増えた。
記事も増えた。
フォロワーは百人を超えた。
そして売上は、四百円のままだった。
「……増えている数字と、増えてほしい数字が違うんだよな」
俺はパソコンの前で、noteのアクセス状況を眺めていた。
ビューは少しずつ増えている。
スキも増えている。
フォロワーも増えている。
だが、商品を買う人は増えていない。
フォローしてくれるアカウントを見てみると、競艇予想を扱っているものも多かった。
「俺、競艇の記事は書いてないんだけどな」
もちろん、フォローしてもらえること自体はありがたい。
だが、お互いに記事を読むわけでもなく、数字を増やすためだけにフォローし合っているのなら、それは読者が増えたこととは違う。
フォロワー百二十人。
読者百二十人。
その二つは、どうやら同じ意味ではないらしい。
俺は椅子にもたれかかった。
「記事は作れる。商品も作れる。動画も作れる。なのに入口がない」
以前はThreadsが、外から人を連れてくる入口になるかもしれなかった。
しかし、そのアカウントは停止された。
ほかのSNSにも投稿しているが、今のところ代わりになるほどの流れはない。
「ひょっとして、詰んだのか?」
画面の中のChatGPTは、少し考えてから答えた。
『完全に詰んだわけではありません。ですが、作る速度に対して、見つけてもらう速度が追いついていません』
「それは分かってる」
『それなら、作る作業をもっと軽くして、入口を試す時間を増やす方法があります』
「また何か作るのか?」
『作るというより、作る仕組みを作ります』
「結局作るんじゃないか」
こうして俺は、今度は動画制作を自動化できないか試すことになった。
きっかけは、低い費用で動画を作り、自動で投稿している人の記事だった。
一見すると便利そうだった。
文章を作る。
画像を作る。
音声を作る。
それらを自動でつなぎ、決まった時間に投稿する。
「これができれば、毎回動画編集ソフトを触らなくても済むのか」
俺はCapCutを何度か使っていた。
だが、ブラウザ版もデスクトップ版も、細かな操作がいまひとつ分からない。
自動で作られた字幕の大きさが一か所だけ違っていても、それを同じ形に直せる自信がなかった。
中途半端に自動化するくらいなら、全部自動で完成させるか、自分で全部作るか。
俺には、その二択しかなかった。
「じゃあ、文章を入れたら動画が完成するところまで作れないか?」
Claude Codeへ相談すると、答えは意外にあっさりしていた。
『技術的には可能です』
「本当に?」
『まずは小さく接続確認をします』
俺はGoogleの開発者向けサービスでAPIキーを用意した。
細かな仕組みはよく分からない。
分からないことは、その都度AIに聞いた。
最初に短い文章を送る。
返事が返ってくる。
次に日本語の音声を作る。
数秒待つと、落ち着いた男性の声で、
「無職のおっさん、今日もAIに相談しています」
と流れた。
「おお、本当にしゃべった」
さらに、画像一枚と音声を組み合わせて、縦型動画へ変換する。
最初は必要なソフトが入っておらず止まった。
だが、指示されたものを導入して、もう一度実行すると、数秒後には動画ファイルが完成した。
「解像度、縦型。音声あり。動画形式も問題なし……」
画像が少し動き、音声が流れる。
短いものだったが、確かに動画になっていた。
「これなら、全部つなげられるかもしれないな」
ただし、最初の字幕は画面からはみ出した。
「前と後ろが切れてるじゃないか」
『日本語字幕を自動改行する処理が必要です』
「やっぱり一発では完成しないか」
『ですが、修正できます』
それなら問題はなかった。
俺は動画編集画面を触らず、文章で修正を伝えればいい。
「字幕は毎回同じフォント。同じ大きさ。同じ位置。長ければ自動で分割。最後まで全部そろえてくれ」
『可能です』
次に考えたのは、動画シリーズだった。
現代の無職のおっさん。
そして、なぜか江戸時代の無職のおっさん。
「江戸時代に無職っていう言い方はない気もするけどな」
現代版は、いつもの部屋でパソコンへ相談する。
失敗し、悩み、驚き、最後は土下座する。
決め台詞は、
「誠に、申し訳ございませんでした!」
江戸版は、着物姿で帳面を眺め、手紙を読み、小銭を数える。
そして最後は正座し、
「もはやこれまで、詫びるしかあるまい」
と締める。
最初は、もっと物騒な台詞を考えていた。
だが、毎回使うシリーズなら、余計な誤解を招かない方がいい。
「謝るだけなら平和だな」
『土下座も正座も、かなり大げさですが』
「コメディだからいいんだよ」
現代版と江戸版、それぞれ十枚ほど画像を用意した。
悩んでいる姿。
財布の中身を確認する姿。
パソコンへ向かう姿。
驚く姿。
落ち込む姿。
何かを思いつく姿。
謝る姿。
これらを台本に合わせて、AIが自動で選ぶ。
合う画像がなければ、その場面だけ新しく作る。
音声も字幕も、画像の表示時間も、自動で決める。
「日報やラノベを渡したら、勝手に二分くらいの動画にしてくれるところまで行けないか?」
『可能です。既存画像を優先し、不足する場面だけ生成する構成にできます』
「それなら俺は、完成した動画を見るだけでいい」
『問題があれば、文章で修正を指示してください』
「つまり俺は、また一読者みたいな立場になるわけか」
小説のときもそうだった。
最初に方向だけ決める。
あとはAIが続きを作る。
俺は読んで、違うと思ったときだけ直す。
動画でも同じことができるなら、編集者ではなく観客として確認すればいい。
だが、ここでも新しい問題が出てきた。
以前、適当に作った短い動画は、数万回再生された。
ところが、無職のおっさんの画像を使い、同じキャラクターで作り始めると、再生数は二桁に届くかどうかになった。
「ちゃんと作った方が見られないって、どういうことだ?」
『キャラクターを固定したことで、最初の一秒の意外性が弱くなった可能性があります』
確かに、最初から毎回同じおっさんが同じ部屋にいれば、見慣れた映像に見える。
適当に作った動画は、何が始まるのか分からなかった。
エレベーター。
テレビ。
突然の異常な出来事。
その予測できなさが、指を止めたのかもしれない。
「じゃあ、短い動画はキャラを固定しない方がいいのか」
『再生数を優先する短編と、キャラクターを育てるシリーズを分けた方がよいかもしれません』
「また二つに増えたな」
何か一つ試すたび、別の道が増える。
動画を作れば、タイトルが必要になる。
説明文が必要になる。
ハッシュタグが必要になる。
カンマ区切りのタグも必要になる。
動画だけ良くても、何の動画なのかYouTube側へ伝わらなければ、関連する視聴者のところへ届かないかもしれない。
「つまり、動画一本を作っただけじゃ完成じゃないんだな」
『投稿用の情報まで含めて一つのセットです』
「そこも自動で作ってくれ」
『可能です』
「便利だな、AI」
『ですが、見られる保証はありません』
「最後に必ず現実を言うよな」
俺はnoteのアクセス状況へ戻った。
すると、これまで一番読まれていた最初の日報を、別の記事がわずかに追い越していた。
その記事の題名は、
「noteで稼ぎたい。でも何を書けばいいか分からない人へ」
だった。
「俺の日報より、困りごとの記事の方が読まれているのか」
差はわずかだった。
大きく伸びたわけでもない。
それでも、自分が何をしたかを書くより、読者が何に困っているかを書く方が、入口になりやすいのかもしれない。
コンテンツを作る仕組みは、少しずつできている。
動画も、文章を入れれば完成するところまで近づいている。
だが、作れることと、届くことは別だった。
「結局、入口の問題に戻ってくるんだよな」
『はい』
「動画を自動で作れても?」
『入口がなければ、見られない動画が自動で増えるだけです』
「それは嫌だな」
俺は完成した数秒のテスト動画をもう一度再生した。
画面の中のおっさんが、落ち着いた声で言う。
「無職のおっさん、今日もAIに相談しています」
その言葉だけは、間違っていなかった。
売上はまだ四百円。
入口も、まだ見つかっていない。
それでも俺は、動画まで自動で作れるところへ、また一歩進んでいた。
「……作る仕組みだけは、どんどん完成するな」
『誠に、申し訳ございませんでした!』
「そこは俺の台詞だ」
画面の中で、AIは何も言わなかった。
おそらく、次の動画の台本を考えているのだろう。




