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無職のおっさん、ラノベを書く  作者: 無職のおっさん


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3/18

第3話 初売上400円、ゼロが初めて数字になりました

note開始5日目。


記事を書き、画像を作り、動画を投稿し、SNSのアカウントだけは順調に増えていく。


けれど売上は、ずっとゼロ円だった。


そんな無職のおっさんの画面に、初めて見慣れない通知が表示される。


大成功でも、人生逆転でもない。


たった一件、400円。


けれどゼロと400の間には、おっさんが想像していた以上に大きな距離があった。

 朝、目が覚めて最初に確認したのは、時計ではなかった。


 スマートフォンでもない。


 正確にはスマートフォンなのだが、見るのは時刻ではなく、noteの通知だった。


「……まあ、何もないだろうけど」


 そう言いながらアプリを開く。


 何もないと思うなら、開かなければいい。


 けれど、何もないことを確認しないと落ち着かない。


 宝くじを買った人が、当たっていないと分かっていながら当選番号を確認するのと似ているのかもしれない。


 いや、宝くじを買ったことはほとんどないので、本当に似ているのかは分からない。


 少なくとも、昨日までの売上はゼロ円だった。


 初日に自己紹介記事を書いた。


 二日目には、特に何もしていないことを記事にした。


 有料記事も作った。


 ラノベも書いた。


 表紙画像も作った。


 YouTube Shortsを投稿し、InstagramやThreads、X、Pinterestにも載せた。


 SpotifyとSoundCloudとTikTokのアカウントまで増えた。


 創作活動というより、アカウント開設業者になりつつある。


「何個作るんだよ……」


 自分で作っておいて、自分で呆れる。


 それでも売上はゼロ円だった。


 閲覧数は増えた。


 スキも付いた。


 フォロワーも少しずつ増えた。


 だが、売上欄に表示される数字だけは、頑固なまでに動かなかった。


 ゼロ。


 どこから見てもゼロ。


 横にしてもゼロ。


 斜めにしても、たぶんゼロ。


 その日も、いつものように通知一覧を開いた。


 そして、指が止まった。


『記事を購入しました!』


「……ん?」


 一度、画面を閉じた。


 もう一度開いた。


『記事を購入しました!』


「……購入?」


 文字の意味は分かる。


 記事。


 購入。


 しました。


 日本語としては簡単だ。


 だが、自分のnoteに表示されているとなると、急に理解が難しくなる。


 おっさんは通知を押した。


 売れたのは、前日に公開した有料記事だった。


『noteで稼ぎたい。でも何を書けばいいか分からない人へ。AIと相談して記事を作る方法』


 販売価格、400円。


 売上、400円。


「売れたのか?」


 誰に聞いているのか分からない。


 部屋には自分しかいない。


 猫もいない。


 猫がいれば、少なくとも無視はしてくれたかもしれない。


 おっさんは、もう一度数字を見た。


 400。


 確かにゼロではない。


 人生が変わる金額ではない。


 電気代にもならない。


 契約しているAIサービスの料金を考えれば、まだ大幅な赤字だ。


 記事を書くために使った時間を時給換算したら、見ない方がいい数字になるだろう。


 それでも。


「売れたんだな……」


 声に出すと、少しだけ実感が湧いた。


 誰かが無料部分を読んだ。


 その先を読むために、400円を支払った。


 まだ名前も知らない誰かが、自分の書いた記事に価値があると判断した。


 おっさんは椅子に座り直した。


 昨日までずっと、


『売上はまだゼロ円です』


 と記事に書いてきた。


 嘘ではなかった。


 本当にゼロ円だった。


 成功しているように見せるつもりもなかった。


 売れていないのに、


『noteで稼ぐ方法を教えます』


 などと書いたら、自分でも何をしているのか分からなくなる。


 だから売ったのは、稼ぎ方ではなかった。


 何を書けばいいか分からない状態から、AIと相談して記事を作る方法。


 自分が実際にやってきたことだった。


 最初にChatGPTへ伝えたのは、難しい指示ではない。


『noteを収益化したい。でも、何を書けばいいか分からない』


 ほとんど、それだけだった。


 そこから相談を続けた。


 提案された方法が自分に合わなければ、合わないと伝えた。


 交流が大切だと言われても、毎日大量のコメントを返すのは続かないと答えた。


 有料サービスを勧められても、まだ一円も稼いでいないから、これ以上は払えないと断った。


 分からない操作は、分からないまま聞いた。


 そうして記事ができた。


 画像ができた。


 動画ができた。


 ラノベまで始まった。


 そして今、初めて売上が発生した。


 おっさんは、すぐにChatGPTを開いた。


『初めて売れたよ。しかも高評価をいただいている』


 送信したあとで、少し待つ。


 返ってきた文章には、初売上400円の意味と、今後記録すべき数字が整理されていた。


 大成功とは書かれていない。


 人生が変わったとも書かれていない。


 ただ、


『記事を作れた段階から、他人がお金を払う商品を作れた段階へ進んだ』


 とあった。


「確かに、そこは違うな」


 おっさんは小さくうなずいた。


 ゼロ円のときは、商品と呼んでいいのかも分からなかった。


 自分では役に立つと思っていても、それは自分だけの判断だ。


 だが、一人でも買った人がいる。


 その人が購入後に高評価まで付けてくれた。


 これは、少なくとも完全な独りよがりではなかったということになる。


 もちろん、一件だけで判断はできない。


 二件目があるかどうかも分からない。


 たまたま親切な人が買ってくれただけかもしれない。


 それでも、たまたまであろうと売上は売上だった。


 おっさんは、現在の数字を確認した。


 全体ビュー、226。


 スキ、50。


 フォロワー、15。


 コメント、ゼロ。


 売上、400円。


「コメントだけ、きれいにゼロだな」


 いや、Threadsではコメントをもらっている。


 無料部分を読んだ人からだった。


『AIってなんだか難しく感じてましたが、この記事めちゃくちゃ細かく書かれてましたね』


『簡単な質問や疑問を投げかけるだけで終わっている人がほとんどだと思います』


『そこからの使い方次第では、いくらでも道は開ける。そんな気がしました』


 有料部分を購入した人だけではない。


 無料部分を読んだ人にも、伝えたかったことが届いていた。


「無料部分、短くしてよかったのかもしれないな」


 最初に作った記事は、無料部分が長かった。


 説明を丁寧にしようとしすぎて、有料部分まで読む前に疲れてしまいそうな長さになっていた。


 そこでChatGPTへ相談し、無料部分を短くした。


 読者の悩み。


 自分の出発点。


 AIとの対話で何を作ったか。


 有料部分で何が読めるか。


 それだけを残した。


 今回の購入が、その修正によるものかは分からない。


 Threadsから来たのか。


 Xから来たのか。


 note内で偶然見つけてもらえたのか。


 購入者の行動を追跡できるわけではない。


 だから、分からないことは分からないまま記録する。


 推測を事実のように書かない。


 それも、この実験のルールだった。


 おっさんは、売れた有料記事を開いた。


「売れたなら、もう少し内容を増やすか」


 普通なら、売れた商品はそのままにしておくのかもしれない。


 しかし、この数日で新しく試したことが増えていた。


 Geminiで作った画像を使い、ショート動画を作った。


 CapCutで操作が分からなくなり、ChatGPTへ聞いた。


 一部の機能が動かなかったが、再起動すると動いた。


 Sunoで『50代無職のおっさん』というオリジナル曲も作った。


 漢字の読み間違いを減らすため、歌詞をひらがなに変換した。


 助詞の「は」を「わ」にし、「へ」を「え」に変えた。


 歌詞から短編ストーリーを作った。


 英語の歌詞と英語圏向けの短編も作った。


 最初の記事を書いた時点では存在しなかった工程だ。


 それなら、購入者が読める内容として追記すればいい。


 おっさんは有料部分を編集し、新しい章を追加した。


 購入した人は、追加料金なしで読める。


 記事は完成品ではなく、実験と一緒に育っていく。


「これなら、最初に買った人も損はしないだろう」


 むしろ早く買った人ほど、あとから増えた内容も読める。


 ただし、追加しすぎて迷路にならないよう整理は必要だ。


 おっさんは、再び画面の数字を見た。


 400円。


 まだ、たった400円だ。


 けれど、たった400円とも言い切れない。


 昔、アフィリエイトで月に五十万円を稼いでいた頃なら、400円の売上を特別なものとは思わなかったかもしれない。


 一日の中で複数の商品が売れ、数字は自動的に積み上がっていった。


 だが今は違う。


 現在の方法で。


 現在の自分が。


 新しく作った商品を。


 知らない誰かが買ってくれた。


 過去の実績ではない。


 昔のサイトでもない。


 今日の自分が作った400円だった。


 おっさんは少し考えたあと、記事のタイトルを入力した。


『【5日目】初売上400円。しかも購入後に高評価をいただきました』


 派手すぎるだろうか。


 いや、事実だ。


 初売上は400円。


 高評価もいただいた。


 成功したとは書いていない。


 これでいい。


 本文には、現在の数字をそのまま書いた。


 全体ビュー226。


 スキ50。


 フォロワー15。


 売上400円。


 制作時間やサービス料金を考えれば、まだ赤字であることも書いた。


 売れたからといって、


『noteで稼げるようになりました』


 とは書かなかった。


 まだ一件だ。


 二件目が来る保証はない。


 明日から再び、何日も売れない可能性もある。


 だからこそ、観測する価値がある。


 一件目まで五日。


 二件目までは何日かかるのか。


 無料記事を増やせば売れるのか。


 SNSから人は来るのか。


 有料記事へ追記することで、購入率は変わるのか。


 試せることはまだ多い。


 成功したわけではない。


 だが、実験は次の段階へ進んだ。


 売れるかどうか分からない商品を作る段階から。


 一度売れた商品を、もう一度売れるか確かめる段階へ。


 おっさんは記事を公開した。


 画面に表示された新しい記事を眺める。


 売上400円。


 フォロワー15人。


 成功者が見れば、小さすぎる数字だろう。


 だが、ゼロから始めたおっさんにとっては、確かに一つ目の数字だった。


「さて、次はラノベか」


 初売上の記事を書いた直後に、その出来事をラノベにする。


 もはや日記なのか、小説なのか、実験報告なのか分からない。


 けれど、それでいい。


 今日起きた出来事を記事にする。


 記事を物語にする。


 物語を画像にする。


 画像を動画にする。


 動画をSNSへ投稿する。


 一つの出来事を、いくつもの形に変える。


 それが、この五日間で見つけた方法だった。


 おっさんは新しい文書を開いた。


 白い画面に、タイトルを打ち込む。


『無職のおっさん、ラノベを書く 第3話』


 少し考え、その下に続けた。


『初売上400円、ゼロが初めて数字になりました』


 昨日まで、売上はゼロ円だった。


 今日、初めて400円になった。


 明日どうなるかは、まだ分からない。


 だが少なくとも今夜は、この400円を素直に喜んでもいい気がした。


 おっさんはキーボードへ指を置く。


 人生が逆転したわけではない。


 貯金が増えたわけでもない。


 ただ、止まったままだと思っていた数字が、一つだけ動いた。


 その小さな変化を忘れないために、彼は続きを書き始めた。


第3話では、note開始5日目に発生した初売上400円と、購入後にいただいた高評価を物語にしました。


まだ一件であり、継続的に稼げるようになったわけではありません。


制作時間やサービス料金を考えれば、収支もまだ赤字です。


それでも、自分で作った有料記事に対して、実際にお金を払ってくれた人が現れました。


ゼロ円のときには分からなかった、


「誰かが購入する可能性は本当にあるのか」


という問いに、初めて一つの結果が出た日です。


売れた記事には、その後に試したショート動画制作、CapCut、Suno、英語版への展開方法も追記しました。


次回も、成功したように見せるのではなく、実際に起きたことと数字をもとに物語を続けていきます。


原案・構想

無職のおっさん、noteで稼げるのか実験中


物語構成・本文作成・文体調整

ChatGPT

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