第14話 似た記事は無数にあった。でも、オリジナルは自動では作れません
noteを続けていると、自分の記事にスキを付けてくれる人や、記事の下に表示される関連記事を見る機会が増えます。
そこで見えてきたのは、「副業」「note収益化」「AIで稼ぐ」という題材が、すでに珍しいものではないという現実でした。
第14話では、似た記事が無数にある場所で何を作るのか、そして、自動化できる作業と人間が決めなければならない部分について書きます。
「あなたをフォローする読者が増えています」
noteから届いたメールには、そんなことが書かれていた。
続いて、読者との関係を深める方法として、メンバーシップを始めてみませんか、と勧められている。
「読者が増えている、か……」
俺はメールを閉じて、noteの数字を開いた。
全体ビュー、1,236。
スキ、334。
コメント、0。
フォロワー、138人。
売上、四百円。
数字だけを見れば、開始直後よりは増えている。
しかし、フォロワー138人が、そのまま毎回記事を読む138人ではない。
コメントは1件もない。
有料記事が売れたのも、今のところ最初の一件だけだった。(note)
「この状態で、月額制の部屋を作ってもなあ……」
広い入口に人が集まっていないのに、その奥へ会員専用の部屋だけを増築しても仕方がない。
参加者がいなくても、告知や管理は必要になる。
参加者がいれば、限定記事や返信について考えなければならない。
俺が今やろうとしているのは、一人でも続けられる制作の仕組みだ。
交流の負担を増やすために、自動化を始めたわけではない。
「今は、やめておくか」
俺はメンバーシップの案内を閉じた。
そして、今日投稿した記事を開いた。
記事には、いくつかのスキが付いている。
通知欄を見ると、以前にもスキを付けてくれた人の名前があった。
「また付けてくれたのか。ありがたいけど……」
その人が本文を最後まで読んだのかは分からない。
タイトルだけを見て押したのかもしれない。
あとで読むつもりなのかもしれない。
自分の記事にもスキを返してほしくて、先に押しているのかもしれない。
もちろん、きちんと読んでくれた可能性もある。
画面の外にいる相手の行動は、俺には確認できない。
スキが付いた。
それは事実だ。
しかし、
内容が伝わった。
次も読みたいと思われた。
商品を買いたいと思われた。
そこまでは、スキの数字だけでは分からない。
「スキと読者は、やっぱり別なんだろうな」
記事の下へ画面を動かす。
そこには、内容が近いと思われる他の投稿が並んでいた。
noteで稼ぐ方法。
副業を始めた記録。
AIで記事を作る方法。
初心者が収益化するまで。
会社を辞めて挑戦した話。
月に何万円稼いだという報告。
「……同じようなものが、いくらでもあるな」
一つや二つではない。
少し探すだけで、似た題材の記事が次々に出てくる。
俺が今書いている、
「無職のおっさんがnoteで収益化できるのか」
という題材も、表現が少し違うだけで、広い意味では副業実験の一つだった。
五十代。
無職。
AIとの対話。
数字と失敗を公開。
そこまで組み合わせれば多少は違って見える。
だが、「noteで稼ぎたい」という入口そのものは、すでに大勢が使っている。
「後から同じことを始めて、同じ方法をまねして、それで読まれるのか?」
答えは、かなり怪しかった。
先に始めた人。
文章や交流が上手い人。
すでに別のSNSで読者を持っている人。
売れている人のやり方を、早い段階で取り入れた人。
同じ題材でも、そういう人には積み重ねがある。
だが、成功例が広く知られた頃には、それをまねる人も増えている。
似たタイトル。
似た無料記事。
似た有料記事。
似た特典。
似た成功報告。
方法が広がるほど、その方法自体は珍しくなくなっていく。
「もう、飽和しているんじゃないか?」
画面には、収益実績を紹介する画像もあった。
大きな金額が表示されている。
ただし、販売アカウントや商品名など、本人と結び付く部分は隠されている。
本当にその人の数字かもしれない。
別の売上を合わせたものかもしれない。
どの期間の数字なのかも、画像だけでは分からない。
嘘だと決めつけることはできない。
しかし、外から確認することもできない。
「結局、自己申告なんだよな」
俺には、派手な売上画像はない。
あるのは四百円という数字だけだ。
一件売れたあと、動いていない数字。
見栄えはしない。
だが、実際に起きたことだった。
俺はChatGPTに、今考えていることをそのまま入力した。
「他人と同じことをしても、もう飽和しているんじゃないか?」
少しして、返事が表示された。
『その可能性は高いと思います』
「じゃあ、オリジナルなもので勝負するしかないのか」
『ただし、オリジナルであるだけでは読まれません』
「そこは厳しいな」
『他と違うことと、読者に違いが伝わることは別です』
俺は椅子にもたれた。
確かにその通りだった。
自分の中で独自だと思っていても、タイトルや最初の数行で違いが伝わらなければ、他の記事と一緒に流される。
しかも、読者が求めていない独自性なら、誰にも必要とされない。
「じゃあ、俺のオリジナルって何だ?」
『AIを使ってnoteを書くことではありません』
「それは、もう大勢がやっているな」
『あなたの場合は、AIとの対話が、記事、ラノベ、画像、音楽、教材、商品、動画、自動生成システムへ枝分かれしていることです』
俺は、現在開いているフォルダを見た。
noteの記事。
『無職のおっさん、ラノベを書く』。
現代版のショート動画。
江戸版のショート動画。
絵本。
教材。
音楽。
商品ページ。
確かに、最初から全部を計画していたわけではない。
「noteを収益化したい。でも、何を書けばいい?」
最初は、それだけだった。
AIが案を出す。
俺が違和感を伝える。
試してみる。
失敗する。
結果を報告する。
別の案が出る。
そのやり取りが記事になる。
記事がラノベになる。
ラノベや記事が画像と動画になる。
制作過程が、また次の記事になる。
「副業ノウハウじゃなくて、制作が増殖していく過程そのものか」
『その方が、現在行っていることに近いです』
俺は、動画自動生成のフォルダを開いた。
現在、noteの記事から二種類のショート動画を作っている。
『無職のおっさん、今日も謝る』。
現代の無職のおっさんが、失敗や勘違いをして、最後に謝る。
『無職浪人、今日も腹を切る』。
同じような出来事を、江戸時代の浪人風コメディへ変換する。
記事をClaude Codeが読み、短い物語へ再構成する。
静止画像を選ぶ。
AI音声と字幕を付ける。
タイトル、説明文、ハッシュタグ、検索用タグまで生成する。
ただし、投稿ボタンだけは俺が押している。(note)
現代版と江戸版は、基本画像もそれぞれ二十枚ほどまで増やした。
悩む。
驚く。
落ち込む。
考える。
何かを思いつく。
財布を見る。
書類を確認する。
頭を下げる。
使える画像があれば、既存のものを再利用する。
記事に合う画像がなければ、新しく生成する。
「こっちは、かなり自動で進むようになったな」
『形式が決まっているためです』
主人公が決まっている。
現代版と江戸版の世界観も決まっている。
動画の長さも、おおよそ決まっている。
最後に謝るという型もある。
文章をどう短くするか。
どんな表情を使うか。
どの順番で画像を並べるか。
それらは、ある程度ルールにできる。
だから、自動化しやすい。
俺は、もう一つのフォルダを開いた。
『無職のおっさんの異世界AI生活』。
こちらも、ライトノベルの文章から静止画像、音声、字幕を組み合わせて動画にしている。
すでに公開した話も増えていた。(note)
しかし、現代版や江戸版と同じようにはいかない。
「こっちは、全部自動というわけにはいかないんだよな」
物語の大きな方向はある。
主人公もいる。
少女もいる。
異世界で使えるスマートフォンとAIという設定もある。
だが、その先で何が起きるのか、すべてが決まっているわけではない。
次にどこへ行くのか。
誰と出会うのか。
危険をどこまで出すのか。
主人公と少女の距離を、どの速さで変えるのか。
前の話と矛盾していないか。
物語として退屈ではないか。
先の展開へ何を残すのか。
それは、完成した記事を短く変換する作業とは違う。
まだ存在していない出来事を決めなければならない。
画像も同じだった。
以前の画像を再利用できる場面はある。
似た森。
同じ主人公。
同じ少女。
だが、物語が進めば、新しい場所や新しい行動が必要になる。
ChatGPTに画像を作らせるとしても、
「どんな場面が必要なのか」
を決めるのは、まだ人間側の仕事だった。
「オリジナルで勝負したい。でも、オリジナルな部分ほど自動化しにくい」
『矛盾ではありません』
「そうなのか?」
『繰り返し可能な作業を自動化して、人間は判断が必要な部分へ時間を使うということです』
俺は、しばらくその文章を見た。
自動化とは、人間が何もしなくなることではない。
全部をAIへ投げることでもない。
同じ形式への変換。
音声生成。
字幕生成。
画像の配置。
投稿用文章の作成。
そういう繰り返しを減らす。
その分、物語の方向や、何を伝えるかを考える。
「つまり、俺が自動化したかったのは、オリジナルを考える部分じゃなかったのか」
『そうだと思います』
そこを自動化してしまえば、また他人と似たものへ戻る可能性がある。
流行している題材を選ぶ。
売れている構成をまねる。
似たタイトルを付ける。
似た文章を大量に作る。
それなら効率はいいかもしれない。
だが、すでに無数にあるものを、さらに増やすことになる。
俺が作るべきなのは、
「AIで稼ぐ方法を教える記事」
だけではなかった。
「AIとの対話から、実際に何ができたのか」
を見せることだった。
売れたなら、売れたと書く。
売れなければ、売れなかったと書く。
動画ができたなら公開する。
再生されなければ、その数字も見る。
ラノベを作ったなら、実際に連載する。
画像を自動生成したなら、その動画を出す。
仕組みを説明する前に、仕組みから生まれたものを見せる。
「実物がなければ、また自己申告と同じになるからな」
俺は、似た副業記事が並んでいたタブを閉じた。
他人の記事を見ることが悪いわけではない。
成功例から学べることもある。
タイトルや構成を参考にできることもある。
こまめなスキや交流が、信頼につながる人もいるだろう。
ただ、それを毎日続けることが、俺に向いているとは限らない。
交流が得意な人と、交流の量で競争しても勝てない。
すでに成功している人と、成功実績で競争しても勝てない。
大きな売上画像もない。
華やかな生活もない。
あるのは、五十代の無職のおっさんが、AIへ相談しながら、少しずつ制作物を増やしている記録だけだ。
「だったら、それをやるしかないか」
オリジナルだから必ず読まれるわけではない。
自分にしか作れないから、必ず売れるわけでもない。
結局、読まれる入口は必要だ。
見つけてもらう工夫も必要だ。
だが、他人と同じものを作り続けた先に、急に自分だけが見つかるとも思えない。
俺は『無職のおっさんの異世界AI生活』の原稿を開いた。
次の話は、まだ完成していない。
画面の中央で、カーソルが点滅していた。
ここから先に何が起きるかは、自動生成システムも知らない。
ChatGPTも、俺が何を選ぶかまでは決められない。
だから、相談する。
案を出してもらう。
違うと思えば戻す。
続きを考える。
完成したあとで、画像と動画へ変換する。
「全部を自動で作るんじゃない」
俺はキーボードへ手を置いた。
「自分にしか決められない部分を残すために、それ以外を自動化するんだ」
売上は、まだ四百円。
コメントは、まだゼロ。
オリジナルなものを作ったからといって、明日から数字が変わる保証はない。
それでも、無数にある副業記事と同じ場所で、同じことだけを繰り返すよりはいい。
俺は、点滅しているカーソルの前へ、次の一文を入力した。
自動では決められない物語が、そこからまた始まった。
第14話では、note内に似た副業・収益化記事が数多く存在することと、そこで何を作るのかについて書きました。
スキやフォロワーは反応の一つですが、それだけで実際の読者数や購入意欲を判断することはできません。
他人の成功例を参考にすることはできますが、すでに広まった方法を同じように繰り返すだけでは、無数の記事の中へ埋もれる可能性があります。
現在の自動生成動画では、現代版と江戸版のように形式が決まっているものは、かなり自動化できるようになりました。
一方、『無職のおっさんの異世界AI生活』は、物語の構想や設定がすべて確定しているわけではありません。
そのため、物語の方向、場面、登場人物の関係、必要な画像などは、AIと相談しながら手作業で決める必要があります。
自動化の目的は、オリジナルな部分まで機械へ任せることではありません。
繰り返し作業を減らし、人間が判断しなければならない部分へ時間を使うことです。
オリジナルであれば必ず読まれるわけではありません。
それでも、他人と同じ成功法をなぞるだけではなく、実際に作ったものと、そこへ至る過程を今後も記録していきます。
著者
無職のおっさん
協力AI
ChatGPT:企画判断・物語構成・本文作成・文体調整
Claude Code:動画自動生成コード・記事からの動画変換処理




