六話 極楽浄土
天界を出た黄泉守は、
迷うことなく
黄泉へ向かっていた。
ある場所を目指して歩く。
そこは、
善良な魂が行き着く場所。
極楽浄土。
黄泉の中にありながら、
その場所は
穏やかな光に包まれていた。
黄泉守は、
その光の中へ
足を踏み入れた。
道の両脇には
無数の花が咲いている。
空気が澄んでいて、
心地良い。
ここにいる魂たちは、
皆穏やかな顔をして
静かに時を過ごしている。
「黄泉守様だ。」
「こんにちは。
黄泉守様。」
皆が、
黄泉守に頭を下げる。
「ああ。」
ここにいる魂たちは、
穏やかに過ごしながら、
転生の時を待っている。
「すまぬが、
天邪鬼を探している。
知っている者はいないか?」
「天邪鬼?」
一人の女が
足を止めた。
「知っているのか?」
「ええ。
私、仲が良かったので。」
黄泉守はすぐに探し人が見つかったと、
安堵した。
しかし、
その女の顔がわずかに曇る。
「どうかしたか?」
「いえ。
知ってはいるのですが、
あの子はもう
ここにはいません。」
「すでに、
転生しているので……」
「……転生か。」
黄泉守はその可能性を
考えなかったわけではなかったが、
わずかに落胆した。
ここに来て、
手がかり無しでは帰れない。
「それはいつのことだ?」
「さあ……
ずいぶん前のことだから……」
女は困ったように首を傾げた。
「天邪鬼は、
どんな女だった。」
「……少し変わっていました。」
「変わっていた?」
「ええ。
天邪鬼なのに、
とても優しくて……」
「人を愛しすぎるというか……
よく、旦那の話をしていました……」
「……旦那。」
黄泉守は
わずかに眉をひそめた。
「ええ。
でも、話を聞く限り、
あれは捨てられたんだと思います。」
「いつか会いに来てくれるって。
ずっと言っていました。」
「……来なかったのだな。」
「ええ……」
女は寂しそうに笑った。
「それで、
天邪鬼は子供の話は
していなかったか?」
「ああ。
男の子が一人。」
「男か。
その子供の名は?」
「名前……
確か、花の名前だったと思いますけど。」
「……ごめんなさい。
思い出せなくて。
でも、あの子
子供の話をする時は
すごく嬉しそうでした。」
「旦那に良く似た子だったって。
それはそれは
嬉しそうに……」
「そうか……。
時間をとらせたな。」
「いえ。」
これ以上の情報は
もうないだろうと、
黄泉守は
極楽浄土を後にした。
帰る道すがら、
黄泉守は考える。
遊天神と天邪鬼の子供。
男。
花の名前。
情報が少なすぎるが、
無いよりはマシか……
黄泉守はため息をついた。
半妖の男のことも片付いていない。
「早く戻るか……」
屋敷で透子が待っている。
黄泉守は現世へと
足を急いだ。
六話 極楽浄土 [完]




