表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
死神様は生贄の娘を離さない 第二巻  作者: 武村


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
39/53

五話 雪女と恋の話

 男たちが出て行ってから、

 客間は静かになった。


「……急に静かになっちゃったわね。」


 雪女はふっと笑った。


「そうですね……」


 透子は男の出て行った先を見るように、

 襖を見つめた。


「少し、寂しいです。」


「まあ。

 そんなにあの人が好きなの?」


 透子は照れながらも、

 素直に答えた。


「はい。」


「大好きです。」


「ふふっ。

 あなた、本当に素直ね。」


 雪女は優しげに

 微笑んだ。


「黄泉守は幸せ者ね。

 こんな素敵なお嬢さんに

 好いてもらえるなんて。」


 透子は慌てて首を振る。


「それは違います。」


「幸せなのは、

 私の方です。」


「私は黄泉守様に

 命を救ってもらいました。」


 透子は思い出すように、

 瞳を閉じる。


「あの人に出会えて、

 毎日が楽しくて……。」


「とても、

 幸せです。」


 そう語る透子に、

 雪女は頬を緩めた。


「そう。」


「黄泉守は

 あなたに出会えたから

 あんなにも変わったのね。」


 雪女は嬉しそうに笑った。


「私は何もしていません。」


 透子の言葉に

 雪女はゆっくり首を振った。


「いいえ。

 あなたは黄泉守を救ったの。」


「あんな優しい顔、

 初めて見たわ。」


 少しだけ懐かしむように、

 雪女は小さく笑った。


「昔のあの人は、

 本当に取っ付きにくくてね。」


「いつも独りだったわ。」


「それにね。」


 雪女はふっと笑う。


「女妖に全く目もくれないの。」


 透子は目を瞬いた。


「全くですか?」


「ええ。

 あの見目でしょ?

 それはそれはモテていたんだけど。」


 雪女は小さく肩をすくめた。


「あの人に心を寄せる女妖は

 たくさんいたの。

だけど

 全く相手にしてくれなくて。」


「今もそんなに変わりませんよ?」


「ふふっ。

 そうね。

 今は、あなたしか見ていないわ。」


 透子の反応にくすりと笑った。


「ふふっ。

 嬉しいです。」


 透子は照れながら

 小さく微笑んだ。


 本当に、

 お似合いの二人だわ。


 雪女は目を細めて

 穏やかに微笑んだ。


「あの。

 雪女さんの心を寄せている人って、

 聞いてもいいですか?」


 雪女は目を細めた。


「あら。

 覚えていてくれたのね。」


 雪女はお茶を一口飲むと、

 ゆっくりと瞳を閉じた。


「はい。

 私、気になってしまって。

 聞いてもいいですか?」


 雪女は

 湯呑みから上がる湯気をみつめた。


「ええ。」


「どんな方なのですか?」


 雪女はその相手を思い浮かべるように、

 また瞳を閉じる。


「とても大切な人。」


「分け隔てなく、

 どんな者にも優しくて。」


「飄々としているようで、

 心は真っ直ぐなの。」


「昔から、

 変わらない。」


 雪女はそっと瞳を開く。


「そんな人よ……。」


 そう言った雪女は、

 照れたように微笑んでいた。


 雪女のそんな笑顔に、

 透子も自然と笑みがこぼれた。


(雪女さん。

 本当にその人のことが好きなんだ。)


「だけど、

 片想いなの。」


「そうなのですか?」


「ええ。

 ずっとね。」


 少し寂しそうに微笑む雪女に、

 透子はわずかに心が痛んだ。


「あの……。」


「その方は、

 雪女さんの気持ちを

 知っているのですか?」


「気づいてもいないでしょうね。」


 雪女は遠くを見るように、

 窓を見つめた。


「あの人、

 そういうことには鈍感だから。」


 そしてふっと小さく笑った。


「……いつか、

 気づいてくれると良いですね。」


「ふふっ。

 そうね。」


 雪女は透子に優しく微笑んだ。


「そうなってくれたら、

 嬉しいわ。」


 その笑顔は儚くも見えたが、

 どこか幸せそうにも見えた。


 五話 雪女と恋の話 [完]




評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ