五話 決意
手紙を読み終えた後、
しばらく誰も声を出さなかった。
いや、出せなかった。
ハクは何も語らず
俯いていた。
透子もまた
鈴を握りしめたまま
動けなかった。
手紙は机の上に置かれている。
胸の奥が、痛かった。
悲しいのか、怒りなのか、
それともその両方なのか。
複雑な想いが
胸を締め付けた。
「はあ……」
ハクが小さく息を吐いた。
その音で、
ようやく現実が戻ってきた気がした。
ハクはゆっくりと顔を上げた。
その顔にいつもの穏やかさはなかった。
「これで、
次にすることは決まったね。」
透子は鈴を見つめた。
シャラン……
強く鳴ったそれを
ぎゅっと握りしめる。
透子も覚悟を決めたように、
顔を上げた。
「行きましょう。
心が呼ぶ場所へ。」
「ああ。」
ハクは短く返した。
透子は鈴を握りしめ
ハクと目を合わせて
頷き合った。
シャラン!
鈴が強く鳴った。
まるで
早く行けと
急かすように。
二人は顔を見合せて、
目を丸くした。
「ははっ。
待ちきれないみたいだね。」
「……ずっと、
待っていたんですね。」
シャラン……
今度は優しく
鈴が鳴る。
透子は軽く
鈴を撫でた。
もう大丈夫。
今行くから。
怖くないわけではなかった。
それでも、
あの手紙を読んで
雅の想いも、
その悲しみも、
知ったからには
もう見て見ぬふりはできなかった。
「行きましょう。」
透子は覚悟を決めた。
その瞳に迷いはない。
ハクは強く頷き、
扉へと進む。
透子もそれに続いた。
この先
どんなことが待ち受けているのか。
まだ分からない。
それでも。
あの人を取り戻す。
その強い意志だけが、
透子を着き動かしていた。
蔵から出た瞬間、
風が吹き抜ける。
どこか懐かしい
花の香りがした気がした。
五話 決意 [完]




