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異世界ゲームバー転生おじさん(42)、世界のバグになる。  作者: 勇者ヨシ君
第2章 世界探索編―散ったコアを追う旅
76/91

幕間 おっさん、温泉に入っただけなのに全員集まった件 ――別れた仲間は、なぜか先に湯に浸かっていた――

荒野を抜けた先に、山あいの温泉があった。

別れたはずのムーニャンとコハクが、なぜか先に湯に浸かっていた。

タニシが二回ぶん殴られた。一回目は昼。二回目は夜だ。

 荒野が終わった。


 赤茶けたれきと砂の大地が、ある地点を境に唐突に消えた。

 代わりに、岩肌のふもとへ続く緩やかな山道が現れる。


 草がある。

 緑がある。

 乾いた景色しか見てこなかった目には、その色の濃さが少し痛いくらいだった。


「地熱反応がある」


 運転席で計器を睨んでいたカケルが言った。


「温泉だな。鉄分もありそうだ。湯を使えりゃ車両の洗浄と整備にも向いてる」


「お前、なんでも整備に繋げるな」


「それ以外に何がある」


 ステラがぱっと身を乗り出した。


「おんせん! おんせんあるの!?」


 ルースが小さく(つぶや)く。


「……はいりたい」


 ナツは両手を握って、露骨ろこつに目を輝かせた。


「いいっすね! 絶対入るっすよ!!」


 ノエルも、少しだけ顔を明るくした。


「さすがに今日は、湯に浸かりたいっす……」


 タニシが「拙者も……」と言いかけたところで、全員の視線が集まった。


「……入って、()()ですよね?」


 誰もすぐには答えなかった。


 その沈黙だけで、なぜかタニシの姿勢が正された。


*****


 山あいの温泉は、岩場を挟んで上下二段に分かれていた。


 上の湯。

 下の湯。


 十数メートルほど離れていて、間には斜面と岩壁がある。

 湯気が濃く立ちのぼり、互いの様子はほとんど見えない。


 その上の湯の方から、聞き覚えのある声がした。


「あちいネ……でも気持ちいいアル」


「はぁぁ……極楽でござる……!」


 マスターが足を止めた。


 ナツが「え」と言い、ステラが「あっ!」と叫ぶ。


 湯気の向こう、白く霞んだ岩場の中に二つの影が見えた。


 ムーニャンとコハクが、先にかっていた。


「なんでいるんだよ」


「たまたまネ」


「たまたまで先に入るな」


「いい湯は、見つけた者勝ちアル」


 ムーニャンは当然のように肩をすくめる。

 隣のコハクは胸元まで湯に沈みながら、きらきらした顔でうなずいた。


「これもえんでござるな!」


 反論できるやつがいなかった。


挿絵(By みてみん)


*****


 そこで、自然と男女の湯分けが決まった。


 上の湯が女湯。

 下の湯が男湯だ。


 上の湯には、ムーニャン、コハク、ナツ、シズク、ステラ、ルース、ミコ。

 下の湯には、マスター、カケル、ノエル、タニシが入ることになった。


 レイは湯気の向こうを一瞥いちべつしたあと、短く言った。


「……俺はいい」


 ナツが「え、入らないんすか?」と聞く。


「先に入れ」


 それだけ言って、レイは岩場の外れへ歩いていった。

 いつも通りの素っそっけない態度だった。


 ステラがむっと頬を膨らませる。


「ぱーぱといっしょがいい!」


「駄目だ。上に行け」


「えー!」


 ルースが静かにステラの手を取った。


「……ステラ、こっち」


「えー!!」


 そのまま引きずられるように、双子は上の湯へ向かっていく。


 タニシが二つの湯を交互に見ていた。


 その視線が、ほんの少しだけ上へ流れかけた瞬間。


「おい、タニシ」


 マスターが呼ぶ。


「……はい。下に入ります」


 返事だけは異様いように素直だった。


*****


 上の湯は、白い湯気に包まれていた。


 岩肌を流れる湯が柔らかな音を立て、濡れた石肌が夕暮れの淡い光を受けてにぶく光っている。

 女湯側の空気は、男湯よりもいくらか柔らかく、湿り気を含んで甘かった。


 ムーニャンはバスタオルを体に巻き、岩に背を預けて足先だけを湯に遊ばせていた。

 小柄な体つきなのに、肩から腰、そこからももへ落ちる線は驚くほどしなやかで、無駄がない。

 荒野を生き抜いてきた引き締まった腹と細い脇腹、その上に落ちる濡れた髪が、妙につやっぽい。出るところは出ていて、引っ込むところは見事に引っ込んでいる。

 タオルの合わせ目を押さえる仕草ひとつまで女らしいのに、本人はまるで気にしていない顔で湯気の向こうを眺めていた。


「いい湯ネ」


 ナツは首まで沈みながら、だらしなく顔をほころばせた。


「最高っすねぇ……生き返るぅ……」


 ナツの健康的に焼けた肌が湯気の中でもよく映える。

 鍛えられた肩と二の腕はすっきり締まっているのに、湯に浮く胸元や濡れた鎖骨さこつには年頃の女らしい柔らかさがあって、その明るい笑顔と妙に噛み合っていた。

 ざぶりと動くたび、湯面が揺れて、張りのある体の線をちらりと見せては隠す。


 コハクは耳と尻尾をぴくぴくさせながら、胸元を押さえて湯に沈んでいる。


「はぁ……極楽でござる……。これは駄目でござる……骨まで溶けるでござる……」


 犬獣人らしい健康的な肉付きは、湯の中にいても隠しきれなかった。

 ほんのり赤くなった頬、濡れた髪が貼りつくうなじ、湯に浮かぶ丸みのある肩。

 普段は賑やかで抜けたところばかり目立つのに、こうして静かに湯に浸かっていると、年頃の娘らしい柔らかな色気がふっとのぞく。

 耳まで少し赤くなっているのが、また妙に可愛く、妙に艶っぽかった。


 シズクは眼鏡めがねを外して岩の上に置き、静かに肩まで湯に浸かっていた。


 普段の白衣と眼鏡がないだけで、印象がまるで違う。

 濡れた黒髪が頬から首筋へ流れ、白い肌に細く貼りついている。

 細いあごから喉元のどもと、そこから湯面へ沈んでいく線はひどく端整たんせいで、無機質むきしつな医療担当ではなく、完成された大人の女そのものだった。

 湯に温められた頬がわずかに赤く染まり、伏せた睫毛まつげの影まで柔らかく見える。

 胸元を隠すように腕を添えている仕草が、かえって慎みのある色気を際立たせていた。


「シズクさん、眼鏡ないと雰囲気だいぶ違うっすね」


 ナツが素直に言う。


「補助レンズがなくても視認しにんに問題はありません」


「そういう話じゃなくて、美人って話っす」


「……見た目は、業務に関係ありません」


 いつもの調子で返したが、湯のせいだけではなさそうな赤みが頬に差していた。


 ステラは湯の中で両手をぱたぱたさせていた。


「ふわぁ〜……あったかい〜!」


 湯気の中で頬を上気させ、濡れた髪をほっぺたに貼りつけたまま笑っている。

 色気というより、湯にとろけている小動物みたいな可愛さだった。


 ルースは岩のふちに頭を預け、小さく息を吐く。


「……のぼせそう」


 白い頬がほんのり赤くなっていて、伏せた目元も少しだけとろんとしている。

 静かな子が湯にあてられてぼんやりしている、その無防備むぼうびさが妙に愛らしい。


 ミコは湯の端の岩に腰掛け、翼をたたんだまま足だけ湯に浸けている。


 夜空を見上げる横顔はまだ幼さを残しているのに、濡れた髪先と白い首筋にはどこか神秘的な気配があった。

 肌に触れた湯気が薄く光をまとっているように見えて、ただ座っているだけなのに目を引く。


「ミコちゃん、翼って濡れても平気なんすか?」


 ナツが聞く。


「……平気。でも、広げると乾くのおそい」


「じゃあ今日はそれで正解っすね」


「……そう」


 ムーニャンがミコを横目で見た。


「あんた、空が好きアルか」


 ミコは少し考えてから答えた。


「……わからない。でも、見たくなる」


「それは好きってやつネ」


 ミコが小さく頷く。


「……そうかも」


 湯気がふわりと揺れ、女たちの肌を隠しては、また輪郭だけを見せる。

 温泉独特の弛緩しかんした空気の中で、それぞれの体温と息遣いだけが柔らかく混ざっていた。


挿絵(By みてみん)


*****


 一方、下の湯。


 こちらは色気より疲労回復と雑談だった。


 カケルは湯に胸まで浸かりながらも、岩の上に広げた設計図を睨んでいる。


「入っても仕事するのか」


「湯の温度と地熱の流れで部品寿命を考えてる。遊びじゃねぇんだ」


「温泉でまで言う台詞かそれ」


 ノエルは肩まで沈み、素直に息を吐いた。


「はぁ……男湯は男湯で落ち着くっすね。変に緊張しなくて助かるっす」


「お前はそれでいい」


「なんか今、保護者みたいな返しされたっす」


 タニシは隅の方で妙に静かにしていた。

 静かすぎて、逆に怪しい。


 マスターが言う。


「タニシ」


「は、はい」


()()()


「……はい」


 返事が速い。

 怪しさだけが加速した。


*****


 十分ほどして、岩を踏む小さな音がした。


 全員が気づく。


 タニシがいない。


 カケルが設計図から目を上げた。


「逃げたな」


 マスターがゆっくり立ち上がる。


「だろうな」


 ノエルもため息交じりに顔をおおった。


「うわぁ……マジで行ったっすか……」


*****


 女湯へ続く斜面の岩陰。


 タニシがいながら登っていた。


「ちょ、ちょっとだけ……! 一目だけ……! 湯気で見えないから、合法の範囲で……!」


 何ひとつ合法じゃなかった。


 額に汗を浮かべながら岩陰から頭を出した、その瞬間。


 白い湯気の中から、バスタオル姿のムーニャンがぬっと現れた。


 目が合う。


「……」


「……」


 ムーニャンの目が、すうっと細くなる。


「覗こうとしたネ」


「ち、違います! 景色を! 山の景観を確認しようと!」


「嘘つくなアル――」


 次の瞬間。


 タニシの体が綺麗に斜面を転がり落ちた。

 ムーニャンの華麗な回し蹴りがさく裂していた。


 ごろん、ごろん、と岩にぶつかる音。

 最後に、遠くで「ぐぇっ」と情けない声がした。


 ムーニャンは何事もなかったようにタオルを整え、湯に戻る。


「邪魔されたネ」


 ナツが遠い目をした。


「タニシさん……」


 ミコがぼそりと呟く。


「……自業自得」


 ステラが湯の中で跳ねた。


「ぶったの!?」


 ルースが静かに言い切る。


「……当然。悪いことしたやつにはお仕置きヨ」


挿絵(By みてみん)


*****


 下の湯に戻ってきたタニシの頬は、見事に腫れていた。


「岩に……ぶつかりました」


「斜面を転がり落ちた音がしたが」


 マスターが言う。


「ほんと……岩が多くて」


 ノエルがもうかばう気すらなく、半眼になる。


「いや、さすがに今のは無理あるっすタニシさん...」


 カケルも鼻で笑った。


「岩の方が被害者だな」


 マスターは湯に浸かり直しながら、低く言う。


「次やったら俺が()()


 タニシは神妙しんみょうな顔で頷いた。


「……はい」


 その顔だけは反省しているように見えた。


*****


 夕飯は、レイとミコがった荒野岩兎こうやいわうさぎだった。


 カケルが無言で火加減を見て、表面をこんがりと焼き上げる。

 温泉の熱と焚火たきびの匂いが混ざり、山の夜気の中に肉の香りが広がった。


 焚火を囲んで、全員で食べる。


「久しぶりアル」


 ムーニャンが呟く。


「拙者も……皆で食べる飯は格別でござる」


 コハクは目をうるませながら肉を頬張ほおばっていた。


 ステラが身を乗り出す。


「ずっといてよ!」


 ムーニャンは小さく笑う。


「そうもいかないネ」


 ルースが静かに続けた。


「……また来て」


 ムーニャンは少しだけ間を置いたあと、短く答える。


「……来るアル。必ずネ」


 焚火がぱち、と爆ぜた。


 その赤い火の粉が夜空へ浮かぶのを、誰も少しの間、黙って見ていた。


*****


 夜が更けた。


 一行が寝静まった頃、マスターはひとり外に出て、星を見上げていた。


 荒野より空が近い。

 山の風は冷たく、火照った頬をゆっくりでていく。


 その時、上の女湯の方からかすかな水音がした。


 誰かが、夜の湯に入り直している。


 気にせず空を見ていた。

 ――はずだった。


 別の物音がする。


 岩を踏む、慎重な足音。


 マスターが目を細める。


 タニシだった。


 今度は夜の闇にまぎれて、女湯の方へ這っていく。


「タニシ」


 低い声で呼ぶ。


 タニシの背中がこおった。


「……マスター、これは」


「動くな」


 その時だ。


 女湯の方から、静かな声がひびいた。


「……のぞくな」


 レイの声だった。


 マスターが振り返る。


 湯の縁に、レイが立っていた。


 夜の薄い月明かりと白い湯気が、その輪郭りんかくをぼんやり浮かび上がらせる。

 濡れた長い黒髪が背に張りつき、むき出しの肩から鎖骨、胸元、そして細い腰へ落ちる線が、冷えた夜気の中でやけに鮮明せんめいだった。

 昼間、《るすと》の一行が湯に浸かっているあいだ、ひとり距離を取っていた理由が、そこでようやくはっきりした。


 普段の無愛想ぶあいそで男装めいた空気はどこにもない。

 湯気の向こうにあるのは、静かで、するどくて、そしてひどく綺麗な女の立ち姿だった。


 月光を受けた肌は白く、濡れた睫毛まつげの影が伏せた目元を濃くする。

 荒野の剣みたいな生き方をしてきたくせに、その姿だけはぞっとするほど女らしい。

 派手に誘う色気ではない。だが、見た側の呼吸を一瞬止める種類のつやがあった。


 マスターの脳裏のうりを、何かがかすめた。


 リープの残滓ざんし

 消えた周回の薄い記憶。

 この声を、こういう夜気の中で聞いたことがある――そんな感覚だけが、曖昧あいまいに残る。


「……悪かった」


 謝ったのは、覗きに来たタニシの管理責任も込みだ。


 レイはすぐには答えない。

 ただ、測るような目でマスターを一度だけ見た。


 その視線を受けたまま、マスターはタニシの襟首えりくびつかむ。


「ち、違っ、マスター、これは夜風に――」


「黙れ」


 鈍い音がした。


 タニシが「ふぐっ」と情けない声を漏らす。


 マスターはそのまま引きずって戻りながら、女湯へ向けて言った。


「黙っとく。心配するな」


 少し間を置いて、レイが答える。


「……悪くない男だな」


「買いかぶりだ」


「そうかもしれない」


 レイはそれだけ言って、再び湯の中へ沈んだ。

 白い湯気がふわりと立ち、月明かりの中のその姿をゆっくり隠していく。


挿絵(By みてみん)


*****


 翌朝。


 タニシの顔には、新しい青痣あおあざが増えていた。


「岩に……ぶつかりました」


「また岩っスか?」


 ナツが遠い目で言う。


「山なので、岩が多くて……」


「そうだな」


 マスターが即答した。


 レイは何も言わない。

 ミコだけがぽつりと呟く。


「……二回目」


 全員の空気が微妙になった。


 シズクは眼鏡を押し上げ、淡々と言う。


打撲だぼくの処置をします。今度は本当に岩ではなさそうですが、処置内容に差はありません」


 タニシが泣きそうな顔になった。


「やさしいのか厳しいのか分かんないっす……」


 ムーニャンが鼻で笑う。


「自業自得アル」


 全員が頷いた。


*****


 出発の朝。


 山の風は冷たく、温泉の湯気だけが静かに空へ昇っていた。


 ムーニャンがマスターの前に立つ。


「次に会う時は、もっと強くなってるアル。期待して待つネ」


「こっちも強くなってる」


「どうアルかねえ……」


 目を細めて、それから少しだけ真面目な声になる。


「マスターもみんなも、無事でいるネ。必ずアル」


 マスターは頷いた。


「お前もな」


 コハクはルースとステラの前で、深々《ふかぶか》と頭を下げた。


「ルース殿、ステラ殿。また会う日まで、お元気で」


「またね!」


 ステラがぶんぶん手を振る。


 ルースが静かに続けた。


「……必ず帰ってきて」


 コハクの目が揺れた。


「……はいでござる」


 ムーニャンがわざとぶっきらぼうに言う。


「こら、泣くなネ。みっともないアル」


「泣いておらぬでござる!」


 そう言い返しながら、コハクは明らかに目元を赤くしていた。


 二人は山道の向こうへ歩いていく。


 その背中が小さくなり、やがて見えなくなる。

 湯気だけが、何も言わずに空へ昇っていった。


 今度こそ、束の間ではない別れだった。


 続く。



◆登場キャラクター


・マスター

タニシを二回目に見つけた。一発殴って引きずって帰った。「黙っとく」の一言で、レイとの間に小さな信頼が生まれた。リープの残滓で、レイのことを「そういえば知っていた」と思い出しかけている。


・ルース

湯あたりしかけながらも静かに周囲を見ていた。「……必ず帰ってきて」とコハクに言える子。寡黙だが、大事な言葉だけは外さない。


・ステラ

温泉に大はしゃぎ。タニシが吹っ飛ばされるのを見て「ぶったの!?」と全力で反応した。元気の根源は好奇心。


・カケル

温泉でも設計図を見ていた駄目な職人。だが晩飯はしっかり焼く。


・ナツ

女湯の空気を明るくした盛り上げ役。「また岩か」と言った時の遠い目がすべてを物語っている。


・ノエル

今回はちゃんと男湯。男側の空気を少しだけまともにしてくれる常識人ポジション。


・シズク

眼鏡を外すと印象が大きく変わる。淡々としているが、温泉では少しだけ柔らかい表情も見せた。打撲処置は今回も担当。


・タニシ

昼に一回。夜に一回。計二回ぶん殴られた。「岩にぶつかりました」を二回言った。学習しない。


・レイ

昼はひとり距離を置き、夜の湯で本来の女性としての姿が静かに明かされた。「悪くない男だな」の一言で、マスターに信頼を返した。


・ミコ

翼をたたんで足だけ温泉へ。「……自業自得」「……二回目」の二言でだいたい全部言った。


・ムーニャン

バスタオルで仁王立ちし、昼のタニシを一撃で斜面の下まで送り返した。別れ際の「無事でいるネ」がやさしい。


・コハク

「極楽でござる」「泣いておらぬでござる!」。感情が全部大きい。ルースの言葉にしっかり揺れていた。


◆今回の解説


今回は、荒野の旅の途中で訪れた温泉での束の間の休息回でした。


戦いと移動が続く旅の中で、一行がようやく肩の力を抜ける場所に辿たどり着き、そこで別れたはずのムーニャンとコハクに再会する――という、少し不思議で、でもどこか「るすと」らしい回になっています。


温泉では、それぞれの素の顔が少しずつ見えました。

はしゃぐステラ、静かにのぼせるルース、温泉でも賑やかなナツとコハク、眼鏡を外すと雰囲気が変わるシズク。

そして、昼には入らなかったレイが、夜の湯でひっそりと本来の姿を見せる場面は、この幕間のもうひとつの芯です。

マスターの中に残るリープの記憶の欠片と、レイに対する曖昧な既視感が、ほんの少しだけ表ににじみました。


一方で、タニシは昼も夜もきっちりやらかし、きっちり報いを受けました。

笑える場面の多い回ですが、その奥には「再会できたからこそ、別れが少し寂しい」という感覚があります。


ムーニャンとコハクとの再会は嬉しい。

でも、ずっと一緒にはいられない。

だからこそ最後の「また来て」と「必ず来る」が、温泉の湯気みたいにやわらかく、少し切ないものになっていれば嬉しいです。


次回、旅はまた動き出します。


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