表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
異世界ゲームバー転生おじさん(42)、世界のバグになる。 〜看板は酒場、ノルマは命。AI神権に管理された世界で、名前のないマスターは今日も死に戻る〜  作者: 勇者ヨシ君
核心ノード編

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

211/220

第188話 核心ノード編11 教育投資ガチャ、やめろ ――ハズレ玉の未来に、値札をつけるな――

神様保護者会の次は、悪魔の教育投資フェア。

商店街には、子供の未来を占う福引所が開きます。

ハズレと呼ばれた白玉を、マスターは放っておけません。


 《るすと支店》の向こう側で、金色のシャッターが一斉に上がった。


 昨日まで白い町内会館だった場所が、朝には商店街(しょうてんがい)へ変わっていた。赤白の提灯(ちょうちん)、妙に明るい()び込み音声、金ぴかの看板。見た目だけなら、少し古いゲームのイベント会場みたいで、悪くない。


 ただし、並んでいる文字が最悪だった。


【MAMMON商店街:教育投資フェア開催中】

【進路ガチャ:初回無料】

【才能査定:一回無料】

【習い事サブスク:加入受付中】

【親力ポイント増量キャンペーン】

【未帰還児童ログ:将来価値査定中】


「商店街の看板が全部嫌すぎる」


 俺が顔をしかめると、ルースが端末を見ながら隣へ立った。


「ぱーぱ。MAMMON系商店街は、保護者の不安を購買行動(こうばいこうどう)へ変換する構造です」


「おかいものするの?」


 ステラが首をかしげる。


「違う。買っちゃいけないやつだ」

「アニキ、初回無料って書いてある時点で完全に沼っす」


 タニシが真顔で言い、ムーニャンも腕を組んでうなずいた。


「無料ほど高いものないアル、これジョーシキにゃ」


 その商店街の中央に、ひときわ派手な福引所があった。


 赤白幕。金色のガラガラ。景品棚。看板には、丸っこい文字で【お子さま未来福引】と書かれている。


 そして、その前にあのジャクラ・ミコトが立っていた。


 にこにこした顔。隠しきれない豊満で魅惑的な優雅な立ち姿。けれど目だけは、盤面の裏を読んでいる賭博師(とばくし)のそれだ。


【町内福引所:営業中】

【担当:JAKURA / LOTTERY-NODE】

【商品分類:進路/才能/教育投資/将来価値】

【初回無料:保護者不安ポイント不要】


「さぁさぁ、お立ち寄りくださいませ」

「お子さまの未来、一回まわしてみませんか?」

「大当たりは、標準進路Sランク」

「外れでも、再教育クーポンがついております」


「子供の未来を福引にするな」


 俺が即座に言うと、ジャクラは楽しそうに目を細めた。


「未来なんて、もともと確率(かくりつ)ですわ」

「努力、才能、環境、親の資産、運、出会い」

「どれも、引いてみるまで分からないものではありませんか?」


「嫌な正論で殴ってきやがって」


 ジャクラは金色のガラガラに手を添えた。


「いずれにせよ――まずは、ご説明いたしますわ」


【金色玉:神童コース】

【効果:学習効率+50】

【副作用:自由遊び−80】


【銀色玉:安定就職コース】

【効果:将来不安−30】

【副作用:夢発話率−40】


【赤玉:芸術才能コース】

【効果:表現力+60】

【副作用:収入安定性−50】


【青玉:運動特化コース】

【効果:体力+60】

【副作用:学習標準適性−20】


【白玉:ハズレ】

【効果:なし】

【副作用:親の不安+20】


「金色玉が一番怖ぇんだが」


「ぱーぱ。大当たりほど、進路固定効果が強く設定されています」

「自由行動、自由発話、失敗許容量が削減(さくげん)されます」


 ルースの説明に、ステラが俺の袖を握った。


「あたり、こわい?」


「あたりって名前にしてあるだけの、実質首輪もあるってことだ」


 最初に福引を回したのは、白い顔の町内NPC保護者だった。番号札の子を連れて、福引所の前へ進む。


「この子の将来が不安です」

「安全な進路をください」

「失敗しない未来をください」


 ジャクラが笑顔でガラガラを回す。


 からん、と金色の玉が落ちた。


【金色玉:標準進路Sランク】

【神童コース適用候補】

【自由発話率:低下】

【遊戯時間:削減】

【親満足度:上昇】


 町内NPC保護者は、両手を合わせて喜んだ。


 だが、番号札の子の顔は薄くなっていく。


「ぱーぱ」

「あの子、うれしくない」


 ステラが小さく言った。


「進路固定により、表情ログが減少しています」

「親満足度は上昇していますが、児童側の情緒反応(じょうちょはんのう)は低下しています」


「やっぱり当たりじゃねぇだろ、それ」


 次に、ジャクラは未帰還児童ログのひとりを指した。


「では、こちらの番号札のお子さまから」

「将来価値を占ってみましょう」


 ガラガラが回る。


 落ちたのは、白い玉だった。


【白玉:ハズレ】

【将来価値:未設定】

【推奨:低コスト保護】

【進路:未設定】

【投資非推奨】


 空気が、少し変わった。


「今、なんつった」


「外れですわ」

「残念ながら、この子には投資効率がありません」


 背後で、ガロの低い声が落ちた。


「おい、もう一度、言ってみろ」


 俺は片手を上げて、ガロを制した。


「ガロ、まだだ」


 白玉が、床をころころと転がる。

 誰も拾わない。

 それを、ステラが両手で拾った。


「しろ、かわいい」

「これ、すてら、すき!」


「それはハズレ玉でございますよ?」


「かわいいけど、はずれ、なの?」


 ステラは、白玉を大事そうに包んだ。

 ルースが端末を走らせる。


「ぱーぱ。白玉には、進路固定効果がありません」

「才能補正も、将来価値補正も、投資回収率設定もありません」

「つまり、選択余地が最大と言い換えられます」


「じゃあ()()()()()じゃねぇか」


 ジャクラの笑みが、ほんの少しだけ深くなる。


「......相変わらず、ゲームの勝ち方を間違える方ですわね」


「ゲームじゃねぇよ」

「今回は、子供だ」


 俺は福引所の横にあった空棚を引っ張り出し、勝手に看板を書き換えた。


【今日のおすすめ棚】

【ハズレ玉置き場】


「アニキ、看板名が投げやりっす!」

「今は仮だ」

「ハズレをおすすめする店、怪しすぎるアル」

「ハズレじゃねぇって言ってんだろ」


 ジャクラが首を傾ける。


「ハズレ玉を並べて、何をするおつもりで?」

「まだ何者にも決まってない未来を、ここに置く」

「ぱーぱ。白玉を進路未固定玉として再分類しますか?」

「いいぞ、やれ」


【白玉:ハズレ】

【再分類要求:発生】

【NO NAME干渉】

【進路未固定玉:仮登録】

【効果:進路固定を回避】

【効果:保護者不安ポイント増加】

【帰還席接続:上昇】


「親が不安になるくらいでちょうどいい」

「子供の未来が全部決まってる方が怖ぇよ」


 金色の商店街が、一瞬だけざわついた。


【MAMMON商店街:異常検知】

【進路未固定玉:商品価値算出不能】

【購買誘導失敗】

【代替商品提示】


 景品棚が光り、別の札が並ぶ。


【教育投資契約】

【才能保証ローン】

【親権代行プラン】

【未帰還児童ログ権利買取】

【進路再抽選チケット】


「権利買取?」


 ルースの声が硬くなった。


「ぱーぱ。対象は、未帰還児童ログの将来選択権です」

「進路選択権、教育方針決定権、帰還後所属権が商品化されています」


「アウトだろ」


 ジャクラは、金色の福引機を撫でるように指でなぞった。


「私は、回すだけですわ」

「当たりを欲しがるのは、保護者」

「外れを怖がるのも、保護者」

「そして、不安を買い取るのが、この商店街」


「じゃあ、お前は悪くないってか?」


「いいえ」


 ジャクラは、笑ったまま答えた。


「悪くない顔をして、悪い仕組みを回す者もおります」


 俺はその言葉を聞いて、福引機を殴り壊したい気持ちを少しだけ飲み込んだ。

 壊すだけなら簡単だ。


 けれど、未来を試す遊びまで壊したいわけじゃない。


「ステラ。その白玉、棚に置けるか」

「うん」


 ステラが白玉を棚へ置く。ミコがその横へ、赤玉を置いた。


「これ、絵の色」


 ネムリは青玉を持ってくる。


「これ、走る色」


 ノエルが銀色の玉を見て、小さく笑った。


「本を読む券、とかでもいいかもしれません」


 俺は看板を書き換えた。


【やってみたい棚】


 ログが揺れる。


【町内福引所:再定義中】

【進路ガチャ → やってみたい福引】

【将来価値査定 → 今日の興味確認】

【教育投資 → 体験提供】

【るすと支店設備:やってみたい棚を仮登録】


 福引玉の表示が変わっていく。


【白玉:今日は何もしない券】

【赤玉:絵を描いてみる券】

【青玉:走ってみる券】

【銀色玉:本を読んでみる券】

【金色玉:みんなでご飯券】


「すてら、ごはん券がいい」

「ぱーぱ。金色玉の将来価値が大幅に低下しています」

「いいんだよ。飯の価値は高い」


 ジャクラが声を立てずに笑った。


「未来を決める福引を、今日を試す福引に変える」

「本当に、勝ち筋を捨てるのがお上手ですわ」


「勝ち筋じゃなくて、逃げ道を増やしてるだけだ」


「逃げ道は、時に最強の攻略ルートですわね」

「前も、あなたはそうでした」


「ん、なんのことだ?」

「いえ、こちらの話ですわ」


 その瞬間、MAMMON商店街の奥で、ひときわ重いシャッター音が鳴った。

 金色のレジスター。契約書。買い物カート。値札の束。


【MAMMON商店街:上位商品解禁】

【教育投資契約】

【親権代行プラン】

【才能保証ローン】

【未帰還児童ログ権利買取】

【警告:子供の未来選択権を買い取り対象に設定】


「だから、それは売り物じゃねぇって」

「ぱーぱ。次フェーズは、値札貼付と権利買取です」


 ムーニャンが低く唸る。


「いよいよ商人悪魔が登場するネ」


 タニシも顔を引きつらせた。


「アニキ、次は完全に悪徳ショップ攻略っす」


 ジャクラは福引所の奥へ一歩下がり、金色の闇を指した。


「次の売り場は、少々お高いですわよ」

「お子さまの未来は、どの時代も高く売れますから」


 俺は、棚の上の白玉を見た。

 まだ何者でもない、小さな未来。

 それに値札をつけようとするなら。


「売らせねぇよ」俺は強く言う。


 商店街の奥で、値札の束が一斉に揺れた。



■ 今回のお話について


第188話は、MAMMON商店街とジャクラ福引所の回でした。


子供の未来を「進路ガチャ」「才能査定」「教育投資」として扱う商店街。

そこでは、当たりに見える金色玉ほど、子供の自由を削る危険がありました。


今回の核は、白玉です。


白玉はハズレではありません。

まだ進路が固定されていない、何者にも決まっていない、選択余地が最大の玉です。


マスターは、その白玉を【進路未固定玉】へ再分類し、福引所を【やってみたい棚】へ変えました。

未来を決めるのではなく、今日少し試してみる。

この小さな違いが、MAMMON商店街の「未来を商品化する仕組み」への反撃になります。


■ ゲーマーおっさん解説


今回は、ガチャと育成ゲームの嫌な合わせ技です。


ソーシャルゲームのガチャは、当たりが出ると嬉しいものです。

でも、子供の未来にそれを当てはめると、一気に怖くなります。


金色玉が当たりに見えても、自由遊びや失敗の余地が削られるなら、本当に当たりなのか。

逆に白玉がハズレに見えても、何にも固定されていないなら、それは一番自由なのではないか。


育成ゲームでいえば、『プリンセスメーカー』や『子育てクイズ マイエンジェル』のように、進路や能力を伸ばす楽しさはあります。

ただし、Z.E.U.SやMAMMONがそれをやると「効率のよい子供」「投資価値のある子供」へ寄ってしまう。


マスターは今回、未来を決めるガチャを、今日ちょっと試す福引へ変えました。

ゲームで言えば、取り返しのつかない進路選択を、ミニゲームのお試し券に変えた感じです。


■ 登場キャラクター紹介


・マスター/NO NAME

子供の未来を福引にするな、と怒った父親役。白玉をハズレではなく【進路未固定玉】として再分類した。


・ルース

解析担当。白玉に進路固定効果がなく、選択余地が最大であることを見抜いた。


・ステラ

白玉を拾った子。「しろ、かわいい」と言い、ハズレ扱いされた未来を大事に包んだ。


・ジャクラ

福引所担当。未来は確率だと語り、悪い仕組みを回す者として登場。敵とも味方とも言い切れない立ち位置。


・ガロ

未帰還児童ログを「将来価値なし」と言われた瞬間、低い怒りを見せた。今後の重い回へつながる火種。


・タニシ

ガチャと初回無料の危険性を即座に察した。悪徳ショップ攻略の匂いに敏感。


・ムーニャン

無料ほど高いものはない、と商売の罠を見抜いた。教育ガチャにも強く反応。


・ミコ

赤玉を「絵の色」と見て、進路ではなく今日やってみたいことへ変える流れを助けた。


・ネムリ

青玉を「走る色」として持ってきた。眠りだけでなく、試す自由にも反応している。


・ノエル

銀色玉を「本を読む券」と捉え直した。静かな選択肢を増やした。


・MAMMON商店街

保護者の不安を商品化する悪魔系商店街。次回は値札貼付と権利買取へ移行する。


■ 主人公の現在のステータス


名前:NO NAME/マスター

役割:ギルド酒場(るすと)店主/ゼウスタウン父親役

現在地:NODE08〈核心〉・標準養育都市モデル《ゼウスタウン》

冒険者等級:翠玉仮昇級/銅査定候補

状態:疲労中/家庭評価低下中/帰還席接続上昇中/MAMMON商店街攻略中

主な権能:

・L.L.R.制約

・【観測迷彩オブザーブ・カモフラージュ

・【死線上書デッドライン・オーバーライト

・【神権解放権利ゴッド・リリース・オーソリティ

・【感情感知(エモーション・センス)

・【依存切断(ディペンド・カット)


今回の更新:

・白玉を【進路未固定玉】へ再分類

・町内福引所を【やってみたい棚】へ一部上書き

・進路ガチャを今日の興味確認へ変換

・MAMMON商店街が上位商品を解禁

・未帰還児童ログの未来選択権が買い取り対象に設定


■ 所持アイテム・装備一覧


・冒険者プレート:翠玉仮昇級/銅査定候補

・無地の木札:店主証明のような札

・白羽端末:観測ノード由来の見守り端末

・ルステラ断片:現実層では半会話モード

・《るすと支店》設備:給水所、休憩ベンチ、弁当席、帰還灯、見守り灯、泣いていい部屋、保護者相談カウンター

・今回の追加設備:やってみたい棚

・今回の重要ログ:進路未固定玉/MAMMON商店街上位商品解禁


少しでも楽しんでいただけたら、ブックマーク登録・評価・コメント・レビューで応援いただけると励みになります!


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
読んでいただきありがとうございます。
少しでも気になっていただけたら、作品ページものぞいていただけると嬉しいです。

小説家になろう 勝手にランキング
ギルド酒場るすと公式サイト

影森ゆらは今日も死ぬ
異世界最強の節約勇者
千回死亡幼女勇者 異世界Any%
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ