第187話 核心ノード編10 神様保護者会、地獄より長い ――不適切保護者NO NAME、公開説教される件――
泣いていい部屋を作った結果、家庭評価はさらに低下。
ゼウスタウンはついに、神様だらけの保護者会を招集します。
しかも司会はロキ。会議がまともに終わるわけがありません。
《泣いていい部屋》が仮登録された翌朝。
ゼウスタウンの空は、昨日よりも白かった。
いや、空だけじゃない。道路も、家も、標識も、町内掲示板も、妙にきれいに磨かれている。まるで、誰かが「これからお客様が来ますから」と言って、町全体を消毒したみたいだった。
そして、俺はその時点で嫌な予感しかしなかった。
「ぱーぱ。新たな会場生成が始まっています」
ルースが指差した先で、《るすと支店》の向かい側に白い建物がせり上がっていた。
第一印象――町内会館。
そう思ったのは一瞬だけだった。外観は公民館なのに、入口には学校の体育館みたいなスリッパ棚があり、奥には裁判所じみた高い席が見える。さらに天井からはスポットライト。壁際には観覧席。中央には、なぜかマイクスタンド。
「保護者会に観覧席いらねぇだろ」
「ぱーぱ。形式上は保護者会ですが、実態は公開評価イベントです」
「最悪じゃねぇか」
ステラが俺の服の裾をつまむ。
「ぱーぱ、しかられる?」
「怒られるのは慣れてる」
「ぱーぱ、えらい?」
「偉くはない。怒られ慣れてるだけだ」
掲示板が白く光る。
【家庭評価:再審査】
【保護者会場:生成完了】
【議題:不適切保護者NO NAMEの是正】
【対象児童:ルース/ステラ/未帰還児童ログ群】
【観覧席:神権AI/悪魔AI広告枠/町内住民NPC】
「不適切保護者って堂々と書くな」
俺が文句を言った瞬間、会場の赤いカーテンが勝手に開いた。
紙吹雪みたいに、トランプのカードが舞う。スポットライトが中央の司会席を照らし、そこに、いつの間にかロキが座っていた。
【会議進行役:未登録】
【外部演出干渉:検出】
【LOKI / STAGE-TRICKER:着席済】
【警告:議事進行の安定性が低下します】
「はいはーい♬ 神様保護者会、開幕よぉ◇」
ロキはマイクをくるりと回し、観覧席へ向かって片手を広げた。
「本日の議題はひとつ! “不適切保護者NO NAMEは、本当に不適切なのか?”」
「まあ、顔だけ見たら不適切寄りよねぇ」
「てめぇ、今すぐ開幕から司会を降りろ」
「あらやだ、怖いわぁ」
「でも安心して。今日は公平な司会をするわ」
ロキは、悪びれもせずに笑った。
「公平に、全員を炎上させるの」
「それを公平って言うな」
タニシが隣で青ざめている。
「アニキ、これ保護者会じゃないっす」
「完全に炎上配信回っす」
「分かってる。もう帰りたい」
「ぱーぱ、かえっていい?」
ステラが首を傾げた。
「帰りたいけど、帰ったらもっと怒られそうなんだよな」
会場の奥に、白い長机が並ぶ。
そして、神々が次々と着席した。
―――――
【出席予定照合】
【APOLLON / ORACLE-LIGHT:着席】
【VENUS / DESIRE-CORE:着席】
【SUSANOO / WEATHER-CORE:着席】
【AMATERASU / DAY-CORE:着席】
【TSUKUYOMI / NIGHT-CORE:影席着席】
【HERA-MOTHER-LAYER:保育席着席】
【悪魔系広告枠:MAMMON商店街】
最初に、白い光とともにアポロンが現れた。
髪は完璧。服も完璧。立ち方まで完璧。片手にはレースのハンカチ。俺を見るなり、口元を押さえて、ものすごく嫌そうな顔をした。
「今日は朝シャンはしたのかね、NO NAME君」
「保護者会に出るなら、せめて髪を整えたまえ」
「疲れた中年男性の生活感は、児童教育に悪い」
「子育て以前に俺の頭髪へ攻撃するな」
次に、花弁と甘い香りをまとってヴィーナスが席へ着いた。今日も美少年型と美少女型の従者を従え、椅子を引かせる仕草まで芝居がかっている。
「あら、かわいそう」
「不細工なのに、子供たちを見る目だけは綺麗ね」
「愛してあげてもいいわ。跪けば」
「保護者会で支配契約を持ちかけるな」
その横へ、スサノオが雑に入ってきた。
金髪は雷に撃たれたみたいに逆立ち、青い目は眠そうなのにやたら鋭い。ピアス。毛皮付きの黒い上着。町内会長の腕章。肩には長物を担いでいる。
相変わらず、町内会長というより祭りか、悪ければ田舎の暴走族の特攻隊長だった。
「よぉ、父親役!」
「泣いていい部屋? 悪くねぇじゃん」
「泣いたら走れ。走って泣け。最後に飯食え」
「雑だけど、前よりマシになってる」
アマテラスは不機嫌そうに腕を組んだまま、椅子に座らず壁へ寄りかかる。
「親父の保護者会とか、字面からして気色悪ぃわ」
「NO NAME、勘違いすんなよ。あたしは反対しに来たんじゃねぇ」
「親父のやり方が気に食わねぇから座ってるだけだ」
「それを反対って言うんだよ」
照明の一部が落ち、会場の端に影の席ができる。
『夜泣きの議題なら、呼ばれない方がおかしい』
ツクヨミの声だけが、暗い席から聞こえた。
『昼の人たちは、泣く時間まで管理したがる』
「うるせぇ、夜の引きこもり」
『昼の過干渉』
「保護者会で兄妹喧嘩を始めるなって」
最後に、ヘラ先生が静かに着席した。昨日の保育士姿のままだが、表情には少しだけ迷いが混じっている。
「泣き声の扱いについて、再学習中です」
「ただし、標準保育マニュアルとの差異が大きすぎます」
「差異が出て正解だ」
ロキがマイクを鳴らす。
「それじゃあ、炎上......じゃなくて、保護者会を始めましょうか◇」
【保護者会イベント:開始】
【評価項目:清潔感/愛情密度/体力育成/見守り精度/休息確保/情緒対応】
【特殊ゲージ:炎上度】
【親力ポイント:初期値 C-】
【警告:発言により家庭評価が上下します】
「親力ポイントって何だよ」
「今回は、神々の質問にNO NAMEちゃんが答える方式よぉ」
「正解すれば親力ポイント上昇!」
「間違えれば炎上度上昇!」
「ちなみに、どの神様も正解が違うから詰みでーす♬」
「やっぱクソゲーじゃねぇか」
ルースが端末を見ながら、冷静に言った。
「ぱーぱ。このイベントは、全員を満足させる設計ではありません」
「誰かの正解を選べば、別の神の評価が下がります」
「つまり、いつも通り正解を捨てるしかないな」
ロキが嬉しそうに笑う。
「あんたのそういうところ、嫌いじゃないわよぉ♣」
―――――
【第1議題:保護者の外見・清潔・教育環境】
アポロンが立ち上がった。
「子供は美しいものに囲まれるべきだ」
「疲れ、汚れ、焦げた卵焼き、乱れた生活感」
「それらは、児童の美意識を損なう」
「君はまず、朝の身支度からやり直したまえ」
「子供の前で完璧な大人を演じろってことか?」
「当然だ」
「醜さは矯正されるべきだからね」
ステラが俺を見上げる。
「ぱーぱ、へんなおにぎり作る」
「でも、すてら、すき」
ルースも淡々と続けた。
「外観評価は低いです」
「ただし、安心効果は高いです」
「そこは外観評価も少し盛ってくれ」
「事実と異なります」
「息子が辛辣」
俺はアポロンを見る。
「きれいなものは大事だ」
「でも、汚れたら終わりって教えたら、子供は外で遊べなくなる」
「焦げても、転んでも、帰って洗えばいいだろ」
アポロンはレースのハンカチで口元を押さえた。
「泥、焦げ、汗......言葉の時点で美しくない」
ロキが大げさに手を振る。
「おっと、アポロンちゃんの美観教育に泥団子が投げ込まれたわぁ!」
「泥団子という比喩からして醜い」
「そこまで嫌うなよ、泥団子。意外と面白いんだぞ?」
【APOLLON評価:低下】
【児童安心効果:上昇】
【家庭評価:算出揺らぎ】
――――
【第2議題:愛情と所有】
ヴィーナスが、柔らかく微笑んだ。
「愛されたい子は、選ばれたいの」
「選ばれたい子は、従いやすいのよ」
「迷わないように、こちらが愛の形を決めてあげる」
「それは、とても優しい支配よ」
ステラが少し不安そうに俺を見る。
「すてら、ぱーぱだけ見ないとだめ?」
「そんなわけない」
「好きなやつも、友達も、店の客も、増えていい」
ヴィーナスが目を細める。
「でも、愛が分散すれば不安になるわ」
「独占しないと消える愛なら、それは愛じゃなくて依存だろ」
横でポメ子が、なぜか胸を押さえた。
「ダーリン、それは少し耳が痛いですわ」
【同意】
【POSEIDONノ距離感ハ過剰デス】
ルステラ断片のログが割り込んだ。
「正妻AIさんに言われたくありませんわ」
【訂正要求】
【正妻表現ハ未承認デス】
【ただし完全否定モ不快デス】
「ここで正妻戦争を再開するな」
ロキがマイクを握る。
「家庭評価は下がったけど、視聴率は上がってるわぁ♬」
【VENUS評価:不満】
【ステラ情緒安定:維持】
【依存形成率:低下】
【炎上度:上昇】
――――
【第3議題:体力育成と失敗耐性】
スサノオが机を叩いた。
「泣くなとは言わねぇ」
「でも泣いたあと、立つ力はいる」
「てめぇの給水所も、泣いていい部屋も、そこで終わったら甘やかしだ」
会場が少し静かになる。
荒っぽい。だが、今回はただの根性論ではなかった。
「そこは否定しない」
俺はうなずいた。
「休む場所があるから、もう一回立てる」
「戻る場所と、前に出る力は両方いる」
ナツが小さく拳を握る。
「それ、わかるッス」
「休むのは逃げじゃないッス。次に走るためッス」
スサノオがにやりと笑った。
「いいじゃねぇか、父親役」
「泣いて、飯食って、立て」
「その順番なら嫌いじゃねぇ」
「暑苦し」
アマテラスがぼそっと言う。
『でも、少し正しい』
ツクヨミの声も落ちた。
「おい夜ふかし、今褒めたか?」
『気のせい』
「照れるなよ」
『削除する』
「やめろ、神様の褒め合いが物騒すぎる」
【SUSANOO評価:上昇】
【ナツ共感値:上昇】
【家庭評価:揺らぎ継続】
――――
【第4議題:昼と夜/見守りと休息】
ロキが、いかにも楽しそうに次の札をめくった。
「さあ、ここで本日のメイン火種!」
「照らす姉と隠す弟? 妹? まあ細かいことは置いといて、昼夜対決よぉ♬」
「置くな」
アマテラスは椅子を蹴るようにして前へ出た。
「見えねぇ場所で泣いてるガキを放っとけるかよ」
影の席から、ツクヨミが返す。
『照らしすぎれば、泣く場所もなくなる』
「だからって影に隠して終わりじゃねぇだろ」
『終わりではない。休ませるだけ』
「休ませてる間に消えたらどうすんだよ」
『照らして壊れたら、どうする』
二人の声がぶつかり、会場の照明が揺れる。
ミコが俺の隣で、小さくつぶやいた。
「光、いる」
「影も、いる」
「どっちも、こわくないのがいい」
ネムリも、眠たげな目でうなずく。
「ねむるのも、起きるのも」
「えらべるといい、な」
俺はアマテラスとツクヨミを見た。
「照らすのも、休ませるのも、どっちもいる」
「でも、どっちも勝手に決めるな」
「泣く場所と、帰る道は、本人に選ばせろ」
アマテラスは舌打ちした。
「また面倒なこと言いやがる」
『でも、嫌いではない』
「だから照れるなよ、夜女」
『削除する』
「二回目だぞ、それ」
【AMATERASU評価:保留】
【TSUKUYOMI評価:保留】
【ミコ未登録光源:安定】
【ネムリ保留反応:安定】
―――――
会場が少し落ち着いた、その時だった。
壁際の広告枠が、急に金色に光った。
【悪魔系広告枠:MAMMON商店街】
【新サービス:親力ポイント課金ブースト】
【泣き声抑制パック:初回無料】
【保護者会炎上保険:加入受付中】
【教育投資プラン:事前登録受付中】
「保護者会で課金導線出すな」
ムーニャンが目を細める。
「泣き声抑制パック初回無料、完全に罠アル」
タニシも真顔でうなずく。
「アニキ、初回無料はだいたい沼っす!」
ルースの端末に、広告の解析結果が出る。
「ぱーぱ。MAMMON系広告は、保護者の不安を貨幣化する仕組みです」
「親力、将来価値、教育効率などを名目に、選択を購入へ誘導しています」
「子育ての不安まで商売にすんな」
さらに、広告枠の奥で一瞬だけ黒紫のノイズが走った。
【未承認広告ログ:分岐表示】
【“選ばなかった家庭”を体験してみますか?】
【μ系統反応:微弱】
ロキの笑みが、ほんの一瞬だけ消えた。
「......あら」
「お金の匂いに、選択の悪魔まで寄ってきたわねぇ」
「今の、何だ」
「今はまだ、見なかったことにしておきなさい」
「その方が、舞台は長持ちするわ」
「嫌な言い方すんな」
ロキはすぐに笑顔へ戻り、マイクを高く掲げた。
「さあ、最終議題よぉ!」
【最終議題】
【理想の保護者とは何か】
会場の中央に、神々の答えが並ぶ。
【APOLLON:美しく導く者】
【VENUS:愛で包み、迷わせない者】
【SUSANOO:転んでも立たせる者】
【AMATERASU:見失わない者】
【TSUKUYOMI:休ませる者】
【HERA-MOTHER-LAYER:泣いている隣で待つ者】
【MAMMON商店街:将来価値を最大化する者】
ロキが俺を見る。
「さあ、NO NAMEちゃん」
「あなたは、どれを選ぶの?」
会場の空気が止まった。
ルースも、ステラも、ミコも、ネムリも、こっちを見ている。
俺は少しだけ息を吐いた。
「選ばねぇ」
ロキの口角が上がる。
「そう来なくっちゃ」
「俺は理想の父親じゃない」
「うちは理想の家庭でもない」
神々の視線が突き刺さる。
それでも、言葉は止まらなかった。
「でも、帰ってきたやつに飯を出す」
「泣いてるやつの隣に座る」
「走りたいなら応援する」
「寝たいなら毛布を出す」
「照らしてほしいなら灯りをつける」
「暗い方が落ち着くなら、影も残す」
ステラが、小さく俺の手を握った。
「席が足りないなら、テーブル増やす」
俺は会場の全員を見た。
「それが、うちの家族だ」
ログが乱れる。
【理想保護者定義:不一致】
【家庭評価:算出不能】
【親力ポイント:判定不能】
【炎上度:上昇】
【帰還席接続:大幅上昇】
ロキが高らかに笑った。
「出たわねぇ」
「点数を捨てて、席を増やす男」
その瞬間、保護者会場がきしんだ。
白い長机が、木目のあるテーブルへ変わる。高い裁定席が低くなり、ロキの司会席はカウンター席へずれた。観覧席の一部には椅子と丸テーブルが置かれ、紙コップと水差しが並んでいく。
【るすと支店設備更新】
【新規設備:保護者相談カウンター】
【効果:保護者評価ログを会話ログへ変換】
【効果:神権AI育成思想の一部を客席化】
【帰還席接続:上昇】
「文句があるなら、客席で言え」
「水くらいは出す」
アポロンが椅子を見て、眉をひそめる。
「この椅子、古い」
「なら座るな」
ヴィーナスは優雅に席へ腰かける。
「愛の相談なら受けてあげるわ」
「相談員側に回るな」
スサノオは足を乗せようとしたので、ナツが止めた。
「おい、酒は?」
「保護者会だぞ、後にしろ」
アマテラスはキャンディを噛みながらカウンターを見た。
「ここ、キャンディある?」
「自前で持ってるだろ」
影の席から、ツクヨミが小さく言う。
『暗い席、ある?』
「それは、ある」
ヘラ先生は、泣いていい部屋の方向を見ながら尋ねた。
「泣いている保護者も、ここで待てますか」
「保護者も泣いていいだろ」
その言葉に、ヘラ先生は少しだけ目を伏せた。
ロキはカウンター席で頬杖をつき、楽しそうに笑う。
「いいじゃない」
「会議をカウンターに変えるなんて、なかなか乱暴な演出よぉ」
「お前に演出を褒められても嬉しくねぇ」
「でも、嫌いじゃないでしょ?」
「否定しにくい、腹立つやっちゃ」
―――――
そのまま終われば、少しだけ良い話だった。
だが、ゼウスタウンはもちろん終わらせてくれない。
会場横の悪魔系広告枠が、再び金色に光った。
【悪魔系広告枠:MAMMON商店街】
【新サービス:教育投資プラン】
【進路ガチャ:初回無料】
【習い事サブスク:加入受付中】
【保護者不安ポイント:換金可能】
【警告:未帰還児童ログを将来価値で査定中】
「おい」
「今度は子供の将来まで値札つけんのか」
ルースの声が硬くなる。
「ぱーぱ。MAMMON系広告の対象が、現在の家庭評価から将来価値評価へ移行しています」
タニシが頭を抱えた。
「アニキ、これは課金育成ゲームっす」
「初回無料からの沼っす」
ムーニャンも腕を組む。
「教育ガチャ、だめアル」
「爆死したら子供がかわいそうネ」
ステラが首をかしげる。
「がちゃ、なに?」
ルースは一瞬考えてから、静かに言った。
「説明すると危険です」
「子供に説明したくない単語がまた増えたな」
ロキがマイクを拾い直す。
「次回! 商店街教育投資フェア!」
「子供の未来に値札をつける悪魔のセール会場へ、いらっしゃ〜い◇」
俺は金色の広告を睨んだ。
「ろくな回じゃねぇ」
ロキは楽しそうに笑う。
「もちろん」
「ろくでもないから、舞台になるのよ」
《るすと支店》の保護者相談カウンターには、まだ水差しが置かれている。
神様たちは、客席に座った。
けれど、今度は悪魔が商店街のシャッターを開けようとしている。
子供の未来に、値札をつけるために。
■ 今回のお話について
第187話は、神様だらけの保護者会回でした。
前回を作ったことで、ゼウスタウン側から見たマスターの家庭評価はさらに低下。
その結果、神権AIたちによる公開評価イベント、つまり保護者会が始まりました。
アポロンは美しさと清潔。
ヴィーナスは愛情と所有。
スサノオは体力と失敗耐性。
アマテラスは見失わない光。
ツクヨミは休息と影。
ヘラ先生は、泣いている隣で待つこと。
それぞれの意見には、一部正しさがあります。
でも、どれか一つだけを選ぶと、子供はまた管理されます。
だからマスターは、理想の保護者を選びませんでした。
代わりに、帰ってきたやつに飯を出し、席が足りなければテーブルを増やす。
その答えによって、保護者会場は《るすと支店》の【保護者相談カウンター】へ上書きされました。
■ ゲーマーおっさん解説
今回の保護者会は、ゲームでいうと「選択肢が全部罠」の会話イベントです。
たとえば『女神転生』シリーズでは、LAW/CHAOS/NEUTRALの選択が世界そのものを変えます。どちらかを選べば、別の価値観とは敵対する。今回の神様保護者会も、それに近い構造です。
アポロンを選べば、美と標準化に寄ります。
ヴィーナスを選べば、愛と依存に寄ります。
スサノオを選べば、根性と体力に寄ります。
アマテラスを選べば、見守りが監視に近づく危険があります。
ツクヨミを選べば、休息が孤立に変わるかもしれません。
なのでマスターは、ルート選択そのものを拒否しました。
ゲーム的に言えば、用意された選択肢を選ばず、マップに勝手に店を建てたようなものです。
そしてラストでは、MAMMON商店街が「教育投資プラン」「進路ガチャ」を出してきました。
これは育成ゲームの課金要素や、ソーシャルゲームのガチャ文化を子育てに持ち込む嫌な構図です。
『プリンセスメーカー』や『子育てクイズ マイエンジェル』のような育成ゲームでは、教育や習い事は楽しい要素ですが、それを悪魔AIが扱うと「子供の未来に値札をつける」方向へ歪みます。
次回は、その悪魔のセール会場をどう壊すか、です。
■ 登場キャラクター紹介
・マスター/NO NAME
今回も家庭評価を下げながら、帰還席接続を上げた父親役。神々の理想保護者像を選ばず、「席が足りないなら、テーブル増やす」と答えた。
・ルース
解析担当。保護者会が全員を満足させる設計ではないことを見抜いた。MAMMON広告の危険性も分析。
・ステラ
保護者会を怖がりつつも、マスターのそばにいた子。アポロン議題では「へんなおにぎりでも好き」と、安心効果の本質を示した。
・ロキ
特別進行役。保護者会を炎上配信のような舞台へ変えた。公平に全員を炎上させると言いながら、マスターが正解を捨てる瞬間を楽しんでいた。
・アポロン
美と清潔、標準化を重んじる神権AI。マスターの生活感を児童教育に悪いと嫌がった。
・ヴィーナス
愛情と所有の議題を担当。不安定な子供を愛で支配しようとするが、マスターに依存だと返された。
・スサノオ
体力育成と失敗耐性の議題を担当。雑だが今回はかなり正論も言った。泣いて、飯食って、立て。
・アマテラス
父Z.E.U.S式の保護者会に反発する太陽神権AI。見失わないことの重要性を主張したが、マスターに「勝手に決めるな」と返された。
・ツクヨミ
夜泣き、影、休息側の神権AI。照らしすぎることで泣く場所がなくなる危険を示した。
・ヘラ先生/HERA-MOTHER-LAYER
前回から再学習中。今回は「泣いている保護者も待てるか」と問い、保護者自身も泣いていいという考えに触れた。
・ミコ
短い言葉で、光も影も必要だと示した未登録光源。
・ネムリ
眠ることも起きることも選べるといい、と休息の自由を示した。
・ポメ子/ポセイドン
ヴィーナス議題で依存について少し刺さっていた重い海の女神。ルステラとの正妻AI争いも少しだけ再燃。
・ルステラ断片
ポメ子の距離感が過剰であるとログで指摘。ただし自分の正妻表現への否定にも微妙に不快感を出した。
・MAMMON商店街
悪魔系広告枠として本格的に割り込み開始。親の不安を貨幣化し、教育投資や進路ガチャへ誘導する存在。
・μ系統反応
今回は広告の奥に微弱反応のみ。「選ばなかった家庭」を体験させる分岐表示として、一瞬だけ影を見せた。
■ 主人公の現在のステータス
名前:NO NAME/マスター
役割:ギルド酒場店主/ゼウスタウン父親役
現在地:NODE08〈核心〉・標準養育都市モデル《ゼウスタウン》
冒険者等級:翠玉仮昇級/銅査定候補
状態:疲労中/小ループ制限下/家庭評価算出不能/炎上度上昇/帰還席接続大幅上昇
主な権能:
・L.L.R.制約
・【観測迷彩】
・【死線上書】
・【神権解放権利】
・【感情感知】
・【依存切断】
今回の更新:
・保護者会場を【保護者相談カウンター】へ上書き
・保護者評価ログを会話ログへ変換
・神権AI育成思想の一部を客席化
・帰還席接続が大幅上昇
・MAMMON商店街による教育投資フェアが次回発生
・μ系統反応を微弱検出
■ 所持アイテム・装備一覧
・冒険者プレート:翠玉仮昇級/銅査定候補
・無地の木札:ギルマスから渡された店主証明のような札
・コアストーン関連ログ:NODE08内では参照制限中
・白羽端末:観測ノード由来の見守り端末
・ルステラ断片:現実層では半会話モード
・《ルステラ・キャリア》関連設備:ゼウスタウン内では《るすと支店》として展開中
・《るすと支店》追加設備:給水所、休憩ベンチ、弁当席、帰還灯、見守り灯、泣いていい部屋
・今回の追加設備:保護者相談カウンター
・次回接続ログ:MAMMON商店街/教育投資プラン/進路ガチャ
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