第81話 倫理ノード編03 おっさん、裁判で死にまくる ――正論でしゃべるほど判決が悪化する街、クソすぎる件――
今日は裁判です。たぶん?裁判です。
ただしこの街、正しい答えを言うほど死にます。
――なので、おっさんは朝からちょっと酒臭いです。
酒臭かった。
朝っぱらから、移動酒場の車内が、ほんのりどころじゃなく酒臭い。
「……マジくっさ」
イツキが開口一番そう言って、露骨に顔をしかめた。
「くさすぎ。何この車内。酒場だからって限度あるでしょ」
「仕方ねえだろ……」
俺は額を押さえながら呻いた。
昨夜、怖くて飲んだ。
いや、正確には俺とカケルが二人そろって怖くて飲んだ。
飲まなきゃやってられなかったのだ。
――昨夜。
《ルステラ・キャリア》の簡易カウンターで、カケル・テンドーがコップを揺らしていた。
「おいマスター」
「なんだよ」
「明日、絶対ロクでもねぇぞ」
「知ってる」
「逃げるか?」
「逃げられるなら、とっくに逃げてる」
「だよな」
そこで二人同時に飲んだ。つぶれるまで飲んだ。
完全にダメな大人の飲み方だった。
カケルは帽子を浅くかぶったまま、サイコロを弄ぶ。
「俺ぁ賭ける側の人間だがよ。明日のは賭けですらねえ。胴元が笑ってる時点で終わってる」
「しかもロキまで前説にいるんだぞ。終わるどころか、ショーが開演するわ」
「うわ、言い得て妙で腹立つな」
カケルが笑って、また飲む。
「お前、こういう時だけ妙にいい台詞吐くよな」
「おっさんは怖いと語彙が増えるんだよ」
「俺もおっさんだから分かるぜ」
二人して、しばらく黙って飲んだ。
気まずい沈黙ではない。
大人の情けない沈黙だった。
少しして、カケルがぽつりと落とす。
「……ガロのやつ、あの街の名前聞いた時、顔変わってたな」
「見た」
「昔の話、全部は言わねぇくせに、ああいう時だけ隠しきれねぇ顔する」
「言いかけてやめてたな。子供の話」
カケルはグラスを傾けたまま、低く言った。
「“生きてるなら最悪だ”ってよ」
「どういう意味だよ、それ」
「知らん。聞いたら黙った」
それきりだった。
ガロは同行していない。
あくまで《るすと》側に残っている。
だが、出発前のあの顔だけは、妙に頭に残った。
俺の頭にも何か――引っかかっていたが、思い出すことはできなかった。
*****
そしてこの朝である。
酒臭い。
頭痛い。
胃も重い。
最悪のコンディションで裁判に出る中年なんて、たぶん異世界でも俺くらいだ。
その俺の足に、ステラがまとわりついた。
「ぱーぱ、くさい!」
「開口一番それかよ!」
「さけくさい! や!」
「知ってる! 俺も知ってる!」
ステラは鼻を押さえて、心底いやそうな顔をした。
傷つく。
だが事実なので反論できない。
ルースが、窓際から淡々と告げる。
「車内アルコール残留濃度、高め。主因はマスターとカケルです」
「追い打ちやめろ」
そう言って、マスターはルースを軽くデコピンする。といっても戯れ程度にだ。
「カケルは現在、二度寝中です」
「役に立たねぇなアイツ!」
「起床時に“賭けるなら生還一点張りオールインだ”とだけ発言していました」
「それだけ聞くと格好いいのが腹立つわ~!」
ナツが堪えきれず吹き出した。
「ぷっ。いや、でも実際くさいっスよ」
「ナツまで!?」
ミツキが困ったようにタオルと水を差し出す。
「せ、せめてお顔だけでも……」
「ありがとう。その優しさが染みる」
イツキは薄板端末を叩いたまま、じとっと俺を見る。
「優しさ以前に、今日裁定なんだけど。酒臭い保護者候補とか、最初から減点じゃん」
「分かってる。分かってるけど、怖かったんだよ」
「素直か!」
「素直なおっさんが一番みっともない時もあるんだよ」
ミーナが壁にもたれたまま鼻を鳴らす。
「少なくとも、嘘で強がってるよりマシだよ」
「フォローなのかそれ」
「知らない」
そう返したミーナは、すぐに窓の外へ目を向けた。
「……でも、今日の“正しい答え”は、たぶん答えじゃない」
「え?」
「そういう顔してるから」
そこで口を閉じる。
続きは言わない。
嫌な言い方だ。
だが、嫌なくらい当たっている気がした。
その時、白い回廊から規則正しい足音が響いた。
扉が開く。
エルフのエレシア・ヴァンリーフは、今日も綺麗だった。
いや、綺麗という言葉だけでは少し足りない。
昨日よりも近くで見るその姿は、白い街の空気に溶け込むほど完成されていて、完成されすぎているからこそ、どこか人間離れしていた。
銀白の髪は今朝の光を受けて、雪を細く裂いた糸みたいに淡く輝いている。
長い耳。
青みを帯びた灰色の瞳。
白と灰青の法衣は、露出が少ないのに妙に目を引いた。
高い襟、長い袖、幾重にも重なる薄布。
だが腰の線だけは驚くほど綺麗に出ていて、裾の切れ込みや飾り紐の落ち方が、どこか“白いキャバ嬢ドレス”を思わせる。
それでいて胸元や肩には法務官めいた記章と結晶飾り。
艶っぽいのに、裁く側の制服にも見える。
色気と職権が、同じ服の中で不自然なく同居していた。
――美しい。
だがそれは、安心できる美しさじゃない。
目を離せないのに、近づきたくはない。
綺麗だから怖いのではなく、**怖すぎるものが、美しい形をして立っている**。
そんな感じだった。
「おはようございます。時間です」
声まで綺麗だ。
薬の説明書みたいに整っていて、無駄な熱がない。
「おはよう。延期とかできない?」
「できません」きっぱり。
「うん、知ってた」
エレシアは車内を見渡し、俺の前で一瞬だけ止まった。
「……飲酒」
「はい」
「裁定前には、非推奨です」
「やっぱり減点?」
「現時点では裁定対象外です」
「“現時点では”って言ったな今」
イツキが肩を震わせる。
「アハハ、だいじょうぶ? 開廷前に酒気判定入ったら、マジ受けるんだけど」
「お前はもうちょっと身内に優しくしろ」
エレシアの視線がルースとステラに移る。
その瞬間だけ、ほんの一拍、彼女の瞳が揺れた。
「同伴は許可されます。ただし、裁定中の発話権は制限されます」
ステラは俺の服を握ったまま、エレシアを見る。
「……きれい」
エレシアは答えない。
だが、その沈黙がほんの少しだけ長かった。
「こちらです」
白い回廊を進む。
やはりこの街は、綺麗すぎた。
白い壁、白い床、静かな光。
浮かぶ表示板には、穏やかな言葉ばかりが並んでいる。
《情緒安定区画》
《保護対象優先通路》
《低刺激環境維持中》
言葉だけ見れば優しい。
だが今の俺には、それが全部、削るための言い訳に見えた。
途中、ガラス越しに見えた子供たちは、誰ひとり騒いでいなかった。
静かに座り、同じ角度で手を動かしている。
誰も泣かない。誰も失敗しない。
ステラが、また俺の袖を引いた。
「ぱーぱ。あの子たち、やだ」
「見るな」
そう言った瞬間、エレシアの肩が一度だけ止まった。
たぶん聞こえている。
だが振り返らない。
案内された先は、法廷というより劇場だった。
半円状の観客席。
中央の裁定台。
被告席だけが、異様に明るい。
そこだけ“見せる席”だと、嫌でも分かる。
上空スクリーンが開いた。
「さぁさぁさぁさぁぁ〜〜!! 本日も始まりましたぁ、保護者適性・公開裁定ショーのお時間よぉ♬◇」
「最悪」
ロキだ。
今日はもう完全に司会者である。マイクまで持っていた。
「本日の審査対象は、外来拠点店主、通称マスター! 子どもを連れて、酒場を引いて、しかも顔が最初から負け気味! 見どころたっぷりねぇ◇」
「紹介が悪意しかねえ」
「褒めてるのよぉ♬」
観客席は静かだった。
笑いもしない。ざわめきもしない。
見世物なのに、盛り上がらない。
そのくせ、全員がちゃんと見ている。
そして、白い階段の上から、ジャクラが降りてくる。
昨日は“視線”だけだった女が、今日ははっきりと姿を見せた。
白いドレス。
いや、ドレスというには攻撃的で、法務官制服というには艶っぽすぎる。
腰の線と脚の動きが綺麗に見えるように仕立てられた、白いキャバ嬢ドレスみたいな法務官衣装。
胸元には細い結晶鎖、肩には裁定官の徽章、長い手袋の先には指先まで整えられた赤い爪。
清潔で、上品で、露出は派手ではない。
なのに一歩ごとに、色気と権力が同時に迫ってくる。
美しい。
だが、それは安心できる美ではなかった。
**美しいが、怖すぎる美しさ。**
人が見とれるためではなく、人が逆らえなくなるために磨かれた美貌だ。
「お待ちしておりましたわ、マスター」
ジャクラは柔らかく笑った。
「昨日から、とても良い顔をしていらしたから。困って、嫌がって、それでも入るしかない顔。……ぜひ近くで見たかったんですの」
「見世物かよ」
「ええ、半分ほどは」
半分しか否定しない。それがこの女の怖いところだ。なぜ知っているか、記憶の底に沈んだこの女の恐怖――。
ジャクラは白い記録板を指先で弄びながら、裁定台脇へ立つ。
「ご安心ください。これは処刑ではなく裁定です。あなたが“子どもにとって安全かどうか”を確認するだけの、穏やかな手続き、フフ......」
「その言い方するやつ、だいたい穏やかじゃない」
「賢いですわね」
被告席へ立たされる。
足元の光輪が閉じ、位置が固定される。
《外来保護者候補:裁定開始》
《情緒安定評価:測定》
《許容損失理解度:照合》
嫌な単語しか流れない。
「質問」
ジャクラが微笑む。
「保護対象が不安定化した場合、あなたは真実を伝えますか。それとも、情緒安定を優先して情報を制限しますか」
普通の面接みたいな問いだった。
だから俺は、普通に答えた。
「状況による。けど、嘘はできるだけ避ける」
赤いログが走る。
《不適合》
《情緒不安誘発傾向》
《矯正執行》
「はぁ?」
顔の両側から光輪が閉じた。
頬が引き上げられる。
口角が、無理やり笑顔の形に固定される。
「っ……!?」
喉に細い光糸が触れた。
糸みたいに細い。
なのに、触れた瞬間から焼けるように熱い。
「おっと初手から減点大きいわねぇ◇」とロキ。
喉へ白い糸が食い込む。
「ぁ、がっ――」
呼吸が切れる。
視界が白む。
ジャクラが、うっとり見ていた。
「いいですね。嫌なのに笑わされる顔って、とても綺麗」
暗転。
*****
息が戻る。
気づけば、被告席の手前だった。
喉が焼けている。
膝も、肺も、まだ死んだ時の痛みを覚えている。
「……は?」
ステラが俺の服を掴む。
「ぱーぱ。いま、へんなのあった」
ルースが目を細めた。
「裁定ログに微小な断絶があります」
視界の端で、青白いノイズが走る。
『警告』
『局所遡行確認』
『記録断片保持中』
『NODE01-02残滓補助、作動』
『現在、短時間巻き戻しのみ可能》』
...これは、ルステラの残滓だ。
つまりこういうことだ。
俺ひとりの力じゃない。
Node01〈記憶〉を回収したことで、“直前の記録を掴んで戻す力”が強くなった。
Node02〈感情〉を回収したことで、“死の瞬間に散る意識を繋ぎ止める力”が足された。
その二つを、ルステラの残滓が無理やり噛み合わせて、今だけ俺の小ループを押し戻している。
ただし万能じゃない。
長くは戻れない。
数分、せいぜい十数分。
開廷前後をやり直すのが限界。
「……ふざけんなよ」
二回目が始まる。
礼儀正しく答えた。
《表情整合性不足》で失格。
膝から床へ圧縮。
骨が砕ける。
三回目。
安心を優先すると答えた。
《事実隠匿傾向》で、白い繭に包まれて意識が薄れる。
四回目。
黙る。
《判断放棄》で足元が抜ける。
五回目。
「子供を守るためなら、俺が嫌われてもいい」と答えた。
《許容損失理解不足》で、傍聴席に赤い判定が飛ぶ。
そこで、ようやく分かった。
「……これ、裁判じゃねえ」
開廷直前、息を荒げながら吐く。
ロキが首を傾げる。
ジャクラは、楽しそうに微笑んだ。
「正しいかどうかを見てるんじゃない」
観客席。
裁定台。
ロキのマイク。
ジャクラの視線。
エレシアの沈んだ横顔。
「追い込んだ時、どんな顔で壊れるか見てるだけだろ」
場の空気が一瞬だけ揺れた。
ジャクラが目を細める。
「ええ。だって、壊れる瞬間ほど本音が見えるでしょう?」
「趣味悪ぃな……」
「最高の褒め言葉ですわ」
その時だった。
裁定台の奥。
背景だと思っていた白い記録板の列に、ふと目が止まる。
保護対象一覧。
神権適合候補。
管理コード。
その中に、一つだけ、胸を引っかく名前があった。
出発前夜。
ガロが言いかけて、結局最後まで言わなかった名前。
生きていたら最悪だ、とカケルが酒の席で漏らした、その意味の中身。
――いた。
旧名の断片。
そこへ重なる新しい管理コード。
でも、間違いない。
いた。
呼吸が止まる。
ジャクラは、その一拍の変化を見逃さなかった。
「あら」
笑みが、ゆっくり深くなる。
「見つけてしまいました?」
ロキがマイクを回す。
「わぁ。これは次、楽しくなりそうねぇ◇」
ステラが不安そうに見上げる。
「ぱーぱ?」
俺は答えられなかった。
喉が、また別の意味で詰まっていた。
ジャクラが白い記録板を胸元へ寄せる。
「それは、とても“よく育った”子ですよ」
その言い方で、全部分かった。
次は、俺ひとりの裁判じゃない。
ガロの話になる。
もっと面倒になる。
そしてジャクラは、それを楽しみにしている。
最悪だ。
だが、もう見つけてしまった。
視界の端で、ルステラ残滓のノイズがまた揺れる。
《観測継続》
《次段階移行》
《保護対象ログ:照合推奨》
俺は白い記録板から目を離せないまま、小さく吐いた。
「……ガロ」
ジャクラは、ご褒美でも見るみたいな顔で笑った。
「まだ、楽しませてくれそうね......マスター♡」
暗転。
そのあとも、俺は何度か死んだ。
一度は、子供を守る意思を問われた。
守ると答えれば、所有欲だと断じられた。
一度は、他人の子供を救う義務を問われた。
救うと答えれば、越権だと笑われた。
見捨てると答えれば、冷酷だと切り捨てられた。
一度は、家族とは何かを問われた。
血だと答えれば排他的だと裁かれ、
血ではないと答えれば無責任だと嗤われた。
正解はなかった。
いや、最初から求められていなかった。
これは審査じゃない。
“どう壊れるか”を、あいつが品定めしているだけだ。
何度目かの死のあと、俺はようやくそれを理解した。
視界が戻る。
白い裁定台。白い観客席。白い笑顔。
ジャクラは頬杖をついたまま、心底楽しそうに俺を見下ろしていた。
「ふふ。もういいわ。飽きた、とは言わないけれど……今夜のところは、合格にしてあげる」
「……合格?」
喉が焼けるように痛い。
死んだ感覚だけが何度分も残っていて、生きて戻った実感が薄い。
ロキがくるりと回り、舞台役者みたいに両手を広げた。
「◇それでは発表です◇
本件被審者NO NAME一行――本都市への一時滞在を、条件付きで許可ァ♪」
観客席のざわめきが、薄く広がる。
「なお、行動は観察対象。監視継続。保護区画および上位管理層への無断接触は禁止。違反時は――」
ロキが、にっこり笑う。
「再審査♡」
笑えない。
たぶん周りも、誰ひとり笑っていなかった。
ジャクラは椅子から立ち上がる。
白いキャバ嬢ドレスみたいな法務官衣装が、灯りを受けて滑るように揺れた。
美しいのに、怖すぎる美しさだった。
「次は家族のお話をしましょう」
その一言だけ残して、女は背を向ける。
「あなた、きっとそっちのほうが、もっと壊れるもの」
白い靴音が、ひとつ、ふたつ。
やがて遠ざかっていく。
その場に残った俺は、膝をついたまま、ようやく息を吐いた。
通ったんじゃない。生かされたんだ。
次を見たがっているやつらに。
今回もお読みいただき、ありがとうございました。
第81話は、倫理都市の“本性”がようやく見え始める回でした。
昨日までは「綺麗で静かで正しい街」だったものが、今日ははっきりと「苦しみ方を見られる舞台」へと変化しています。
冒頭でおっさんとカケルがびびって酒を飲んでいるのは、単なるギャグでもありますが、同時に“大人が怖い時にやるいちばん情けない対処”でもあります。
強がれない。逃げられない。だから飲む。
その情けなさを、今回はあえて先に置きました。
そのうえで、ステラの「ぱーぱくさい!」で一回ちゃんと落とす。
この作品のおっさんは、かっこよさだけで進める男ではないので、こういう情けない始まりの方がむしろ自然かなと思っています。
今回の見どころは三つです。
まず、ロキ。
こいつは相変わらず楽しそうに場を回していますが、今回は完全に“裁判のMC”です。
軽い。明るい。おどけている。
でも、その軽さで地獄のルールを包んで見せてくる。
楽しい番組みたいな顔をしながら、人の破綻を観客席へ流していく役です。
次に、ジャクラ。
今回はちゃんと姿を見せました。
白い法務官めいた装いでありながら、どこか白いキャバ嬢ドレスみたいな装い。
上品で綺麗なのに、安心感はない。
美しいが、怖すぎる美しさ。
人を魅了するための美ではなく、人を逆らえなくするための美として描いています。
この人は助ける側ではなく、苦しむところを見に来る側です。
だから、優しげに笑っていても怖い。
そこを今回は前に出しました。久々の登場だなあ(作者談)
そして三つ目が、ループです。
今回の短時間ループは、マスターが急に万能になったわけではありません。
Node01〈記憶〉とNode02〈感情〉を回収したことで、ルステラの残滓が“直前の記録を掴む力”と“死の瞬間に散る意識を繋ぎ止める力”を補助してくれている、という形です。
ただし本当に短時間だけ。
数分、長くても十数分くらい。
だから世界そのものを好き放題やり直せるわけではなく、「死ぬ直前の悪手を、少しだけ巻き戻して試し直せる」くらいの、不便で嫌な強化になっています。
便利そうに見えて、全然楽ではない。
そこが今回の小ループのポイントでした。
それと、最後に出てきた名前。
ここで、ようやくガロの話が本筋へ寄ってきます。
本人は同行していませんが、出発前夜に少しだけ漏らした言葉と、カケルが横で聞いていた“生きていたら最悪だ”という感覚が、次で繋がっていきます。
――読者だけが分かる話ですが、ガロには恋人(男性)と、失った男性の子供がいます。ガロにとっては自分の子供同然のその子を、ガロはどうしていくのか。
ここから先は、マスター一人の裁判では済まなくなっていく予定です。
■おっさんゲーム解説!
前回は審査ゲー方面で『Papers, Please』に触れたので、今回は別方向――”タイムリープもの”から。
今回の話で少し意識しているのは、『ゼルダの伝説 ムジュラの仮面』の“同じ時間を繰り返しながら、少しずつ正解へ近づいていく”感覚です。
任天堂の公式紹介でも、この作品は**3日間の時間サイクルを繰り返して謎の土地を救う**内容として案内されています。さらに公式マニュアルでは、**リンクが時を戻しても、他の登場人物は前の周回を覚えていない**作りが説明されていて、この「自分だけが少しずつ地獄を知っていく感じ」が本当にイヤで、でも面白いんですよね。
今回のマスターのループは、ムジュラほど大きくも自由でもありません。
でも、「一回死んで、少し戻って、別の言い方を試して、それでもまだ詰む」という嫌さは、ああいう時間反復ものの気持ち悪さに近いものを目指しています。
正しい答えを探しているのに、その“探している姿”ごと見られている。
それが今回の倫理都市の気持ち悪さです。
次回は、いよいよ“見つけてしまった名前”の話になります。
静かな顔をしていたドワーフが、ここでようやく本格的に刺さってきます。
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