人の生き様は・・・第8話
神官僧侶服の冒険者が、メイスを強く握り締めひびきに近寄っていく。
腰を抜かした状況のギルド職員一同が、『また人が殺される!!!』という危機感で立ち上がり、神官僧侶のアルに立ち塞がり
「私達がちゃんとお話ししますので、近寄らないで下さい。」
職員が数人で通せんぼの形を取りアルをひびきに近寄らせないようにする。
『でも!』何か言おうとしたが、アルの正面で通せんぼしている一人の職員が
「危ないから!」
目が血走っている職員の圧に抑れそれ以上は進めなかった。
「おい、何が『危ない』んだ?」
ギルド職員の後ろから声が聞こえる、ひびきだ。
ひびきの声に恐る恐るひびきを見る周囲の人々。
その視線に気づき、不思議そうに首を傾げるひびき。
本当に不思議そうにしているひびきに対し、周囲の人々は『コイツ…ここまでの事しといてマジで言ってんのか?』という心の声が一斉に漏れていた。
表情にも現れている。
もちろんガゼインや、四人の冒険者も含めて同じ感想を持っていた。
その中でギルド職員を押しのけようとしながらアルが言う。
「ドアを吹き飛ばしたのもアンタなんでしょ?建物破壊して、人を二人も殺してやってる事は相当危ないわよ!それでなんで自分は悪くない見たいな顔して!頭おかしいんじゃない??」
ヒステリックにキレ気味のアルに他の三人の冒険者がアルを羽交い締めにし、それ以上ひびきに近づかないように抑えた。
「馬鹿、止めろ!お前も殺されるぞ!!」
リーダーの男に大声で言われ唇を噛むが、それでもひびきを見据えて、
「この状況について、貴方がした事の大変さ、醜さをちゃんと顧みて!考えればわかるでしょ!!!」
涙を流しながらひびきに向かって訴えかけているアル。
惨状を目の当たりにした周囲の人々もアルの悲痛な叫びを聞いて、ある者は怒りの目を、またある者は憐れむ眼差しをひびきに向け、ギルド職員も同じようにひびきを見ている。
ところがである、
「…なんも知らん奴が、さも知ってる素振りで勝手に物語でっち上げて挙げ句の果てには、勝手に人を悪者みたいにしてるけど、神に仕えるとか抜かしてる職業の奴は元々頭がイカれてると思ってたけど、ここまで理解力と認識不足が酷いと思わんかったわ。」
そして指先をアルに向ける。
「御託を並べるって事は、俺の敵って事でいいんだよな?もうめんどくさいから更地にしてもいい?」驚愕の発言がひびきの口から飛び出していた。
それを聞いて益々怒りの表情になるアルは、ギルド職員と、自身の仲間を力尽くで突破しようと前のめりに動き、噛みつかんばかりの形相でひびきに向かっていこうとしている。
「貴方のようなね、力で解決!みたいな無法者を野放しに出来ない!」
そう叫ぶとアルの握っていたメイスが光り始めた。それを見たひびきは、唐突に笑い始めた。
しかもお腹を抱えて。
そのひびきを見て益々怒りの形相になるアル。
「何がおかしいのよ!」
尚もメイスに込める力、神官なので魔力というよりは神聖力を漲らせながら叫ぶアル。
笑い過ぎて瞼に涙が、にじんでいるひびき。
「あー、おかしいったらありゃせんわ!」
笑いながらアルを指差し
「今お前がやってる…というか、やろうとしてる事って、俺と何がちゃうん?教えてくれ。」
その指摘にハッとするアル。そのアルを見て首を横に振る弓士の女。
それで、ようやく自分のしようとした事に罪悪感が湧くと同時に、ほんの少しではあるがひびきのした事が分かってしまった。
ただ、そんな中でも自分は『神官僧侶』であるからと言い聞かせていた。
そのアルの表情を見て何か醒めた目で見つめるひびき、
「…結局自分の行動に責任と、覚悟すら『自分』で取ろうせず、まだ『神』とやらの教えかなんかに逃げて正当化しようとしてんのか?みえみえ過ぎて笑いも無くなるわ。」
ひびきの表情からは笑みが消え、反対に冷めきった冷酷な表情が浮かび上がっていた。
「神に聞こうが、何しようが、自分の判断から逃げてる奴らに何言うても無駄やと言うのがよう分かったわ。俺の時間と人生返して欲しいわほんま。」
心底軽蔑したトーンで言い放つ。
「で、親切に一分以上くだらん事に付き合ったにも関わらず、ギルド長出てけえへんし、呼びに行く素振りもなかったから、予告通り更地にするわ。俺も話の出来んやつと今後一生関わりたくないしな。」そう言うと、掌を上空に向け腕を掲げるひびき。「そこの姉ちゃんと、宿屋のオヤジとちょっとうっとおしいお前等四人は今回見逃したるわ。後は建物ごと消し炭にするわ。」
掌を上げている右手とは違う左手の指先で六人を指差して何か、魔力の塊を発射するひびき。
指先から放たれた魔力の光球はそれぞれ六人に当たると、シャボン玉のように六人を球状の透明な枠で覆い尽くした。
「それは魔力、物理の両方から一回だけある程度の衝撃を防いでくれる防御膜や。お前等の貧弱な力では一生壊せんから、その中から見とけ。」
ひびきによって覆われた六つの球体は次々と建物の外まで飛ばされて行く。
それを確認した後魔力を込めているであろう右手を建物のギルド長がいるであろう方向にかざされていた。
「じゃあな!」




