人の生き様は・・・第7話
一晩明けた翌日の事…四人の冒険者とガゼインは早朝の食事も済ませ、冒険者ギルドの前まで来ていたのだが、ギルドの建物の周囲が騒がしい。
周囲は野次馬で溢れており、建物の中も何やら騒々しい様子で、しかも殺気だっているのがわかる。
中で何か問題があったようだ。
「久々にギルドに来てみたものの…なんだこりゃ?」
宿屋のエプロン姿のガゼインがギルドの入口を見ながら周囲も見渡している。
四人の冒険者も入口より周囲の野次馬に圧倒されながらも状況を把握しようと、各々観察している様子が伺える。
その様子を見て少しは口角を上げて満足そうな笑みを浮かべて四人を見るガゼイン。
『昨日の今日でまだ寝ぼけてたら頭引っ叩いてやろうかと思ってたが、中々に切り替えが早ぇじゃねーか。』
数分位では騒がしさも収まる気配もなく中に入るかどうかを躊躇していたところ、ギルド入口から魔力の集積が感じられた気配があり、「危ねえ!!!」両手を横に広げ四人の冒険者をまとめて入口から横へと押しのけた。
ガゼインの咄嗟の行動に驚きを隠せない四人であったが、コンマ数秒後に全員が青ざめる事となる。
入口が吹き飛んだのだ、それも跡形もなく。
跡形も無く吹き飛んでしまったギルドの入口はまだ煙が充満していたが、入口が無くなった事で外界との空気循環がよくなり、煙が晴れたその先には数十名の屈強な鎧姿の男達と、数十人の術師風の男女、その中央にはどこかで見た事のあるような優男がいた。
そう、ひびきである。
その表情は険しく不機嫌極まりない人相をしており、恐らくひびきを囲ってるであろう多数の人に指先を向けている。
「テメエ等いい加減にしやがれ!散々俺の邪魔しくさって、挙句に話すら訳わからん!なんなんだおめえ等は?俺が納得できなくて、会話すら成立しねえっつーんだったら…まとめて『死なす』ぞ!コラっ!更地にすんぞボケ!!!」
なんともかなり物騒な発言が聞こえており、ギルドの外にいて、会話が聴こえた者は身震いしていた。外にいたガゼインも最初は腰を抜かしそうになるかもの驚きがあったが、そこは過去の歴戦の戦士、すぐに持ち直しドスドスとした足取りでギルドの中へと踏み入れた。
ガゼインに連れられてきた冒険者四人は腰を抜かしていてそれどころではないようだ。
「おいひびき!夕べ帰って来やしねえと思ったら、朝から何の騒ぎだこれは!」
どこぞで聞いた声だなぁとおもい見ると世話になってる宿屋の主人のガゼインが、こめかみに怒りマークを浮かばせて近寄ってきた。
だがそちらにあらためて向き直る事はしないで、ギルドカウンターの方へ向き直り奥へと目線をきかせていた。
「最後にもう一回だけ言うぞ!責任者出せ!舐めた態度とるようなら、今から一分経つ毎に、今俺を取り囲んでるこのひ弱な奴らを一人ずつ…文字通り『消して』いくからな。」
そうして右手の指先を一番ガタイのいい鎧男に向けた。
「冗談と思われても後々面倒やし、見せしめに最初に俺に絡んできたお前、消えとけや!」
それを聞いた周りの人達はもちろんの事、指さされた鎧男も冗談と思っており、乾いた笑いをしている。
それを見ていたガゼインも、こんな人通りの多く、大量の目があるとこでそんな猟奇的な事はしないだろうと、ガゼインではなくても皆がそうおもっていたが、このひびきは違った。
指先に火が灯され、その火が赤から、黄色、緑、青に紫と変わっていき、黒色の火となり、ひびきの指先からゆっくりと離れて行き、一番ガタイのいい鎧男に向かって行った。
火の大きさとしては、本当に指先に灯された直径1cm程の火球で、初級魔法使いがダンジョンで使用する周囲を照らす『トーチ』と似ていたが、その威力は鎧男に当たった時に判明する。
鎧の胸あたりに着弾した後、黒い火は黒い炎となり、一瞬にして鎧男の全身に発火し、時間にして3、4秒程でそこにいた鎧男を『消し炭』にしてしまった。
「じゃあ俺の本気度がわかったやろうから、始めようか!」
ひびきを囲んでいた全ての者は腰を抜かしてしまい、その場から動けなくなった。
もちろんガゼインもである。
『冗談は通じない奴だと話は聞いてたが、これはそう言う次元じゃねえ!』
ひびきは掌を周囲に見せたかとおもうと、
「今から数えるからな。一分経ったら知らねえからな。いーち!にーい!さーん!…」
ひびきが指折り数え始めてすぐにカウンター奥から、女性のギルド職員が駆け寄ってくるのが見える。
「先程も申しましたように、ギルド長は不在でいないんです!信じて下さい、お願いします!」
必死で頭を下げる女性職員の横に後からきた他の職員も一緒になって頭を下げている。
しかし、ひびきのカウントダウンは止まらない。「ごじゅうはーち!ごじゅうきゅー!ろーくじゅーう!」
一分間を数えおわり、周囲を見渡し何かを見つけるひびき。
その視線の先には、フルプレートに身を包んだ重装甲の戦士姿があり、そちらに向かって歩き始めた。その重装甲の男は持っていた大型の両手斧を構え足を震わせながら、ひびきが近づいてくるのを身動きがとれないでいた。
完全フルプレートで頭も全て覆い被さっているから、中の表情は分からないものの、足が震えているのは明らかに誰の目からも分かっていて、恐怖が伝わっていた。
カチャカチャ、カチャカチャと脚の金属部分が震えで当たって音だけが響いていた。
おもむろに近づいていたひびきが左の腰の刀に手を掛けたと思った刹那、金属の金切り音が響き渡り、その音の激しさに耳を抑えるものもいたが、音は直ぐなくなり、刀を納めた納刀の音が次に聴こえたと同時に、フルプレートの男が細切れになって斬殺されていた。
5センチの碁目状にほんとに細切れでしかも鎧ごと。
建物内にいいようのない戦慄と恐怖が走った。
建物の外で見ていた大衆のほとんどは、その場で胃の中の内容物をすべて吐き出すいきおいの惨状が広がり、建物の中の人々は精神が壊れた者、失禁して座り込んでいるもの、泣き叫ぶが動けない者等、阿鼻叫喚な絵図となっていた。
流石のガゼインも腰が完全に抜け座り込んでしまっている。
「何なんだこれ、何なんだこれ…」
斬殺した張本人のひびきは何事もなかったように囲まれていた中央に戻ってきて、先程駆け寄ってきたギルド職員に向き直っていた。
「お嬢ちゃん達はさ、上の指示で『留守』を言ってんのか知らんけど、人にルールを押し付ける仕事してる奴が『嘘』の説明したら、話にならへんよ。『嘘』つくのが仕事言うんやったら、単なる詐欺師やで。こんな仕事の受付したらあかんわ。」
そしてある方向を指さし
「あそこの部屋におるやん、怪しいやつ。アレがギルド長ちゃうの?」
それを聞き、最初にきた女性職員以外の職員が慌てだす。
「な、なんで…」
ハァッとため息をつきギルド職員に
「アンタもな、言われたままで自分で確認してない事をさも自信満々に言うたらあかんわ。怠慢やでそんなん。俺が最初に訪ねた時にどうせ『イカれた奴』呼ばわりくらいの説明して、追い返せくらいの事いわれたんちゃうんか?」
ヤレヤレといったポーズをし
「結果、嘘の報告をすることを『選択』したのはアンタ達や、そのツケがこれやで。」
細切れ死体を指さし告げるひびき。
「あ、見栄え悪いな、気つかんかったわ、すまんな。」
右手で指パッチンすると、細切れ死体に炎のつむじが巻き起こり、わずか2秒足らずで死体を焼却してしまった。
そして当然ながら、そこには『何も』残らなかった。
「俺にとっては大したことない力やけど、お前等程度にはかなり脅威やろ?そんな力を最初のドア吹き飛ばした時に判断出来てたら、誰も消えなくて済んだのにな。あくまで『穏便』にしてたんやけどね。そんな集団で殺意ぶつけられたり、言葉とはいえ傷つけられたらなあ、反撃されてもしゃーないやろ?勘違いしたらあかんから言うとくけど、『言葉』やったらいいとか、変な道徳いらんからな。勝手に被害者ぶるな!最初に被害受けてるの俺やからな!」ひびきの話を聞いていた周囲の人々は思う。
『コイツ頭可怪しいんと違うか?同じ人間か?』
何かを感じとったひびきは、破壊された入口に向かって
「お前等の勝手な常識を俺に押し付けるな!当てはめるな!お前等に理解を求めてもいない!おとなしゅう、黙って見とけ!」
そして先程探知魔法で判明しているギルド長と思われる区間に向けて掌を向けた。
「反魔法の装飾品付けてるみたいやけどな、俺には関係無いからなそれ!出てくる気ないんやったら、そこで死んどけ。後で死んだお前の脳髄から記憶読ませてもらうから別にかまへんし、どうする?」
ギルド長の部屋に向けた掌に魔力を込め始めたその時に、アルの声が響き渡る。
「アンタ一体何なのよ!こんなことして、頭おかしいよ!!!」
声に方を見ると先日訳のわからん理屈を淡々と述べていたと思われる神官服の女がそこにはいた。




