人の生き様は・・・第9話
「じゃあな!」
感情もこもってない普段そこら辺で聴き慣れた呆気ない言葉『じゃあな』のひと言後、ひびきの右手の平から、炎の玉が生成されており、その玉の直径は段々膨らんでいき、直径1m超えの火球となりまだまだ大きくなる様子が見て取れる。
ひびきを取り囲んでいた数十名の術師が一斉にひびきの方を向き、何やら呪文詠唱を始めた。
「今更何出来るんか知らんけど、対応遅すぎやわ。せめてお子ちゃまと喋ってる時に仕掛けんと。」
周囲の術師を観察し、自分に向けられた詠唱と魔力の収束具合を読取り、行使しようとしている術が何であるかを把握したひびきは、空いている左手を地面に向け掌を開けた。
それと同時にひびきに対して行使しようとしていた術式が完全に破棄された。
「火炎耐性の魔法を広範囲に展開する魔法と、俺を動けなくする拘束魔法みたいやけど、弱すぎやで。」
術を看過かれ驚く術師とギルド職員の面々。
その間にも火球は大きくなり今は直径1m50cmの大きさになり、
「焦りながら魔力を練っているから、収束力が足りん。乱れまくりやで。それに、魔法を選ぶ思考も悪すぎや。後出し防御なんか普通に考えたら間に合う訳ないし、詠唱短く尚かつ威力のある攻撃術式組み立てる方が効率的やで。何年術師やってるんや?」そんな指摘に理解が追いついてない術師と職員一同、それを聞いていた防御膜内の六人。
その周囲の反応見て明らかに落胆した表情のひびき。『俺、なんでこんな奴等に人生使ってるんやろ。』
そして
「やーめた。阿呆らし。同じ土俵にすらおらんヤツにいちいちムカついてたら、世界中の人間殺さなアカンくなるわな。平和ボケここに極まれりやな。お前等と建物は勘弁したるけど、まだ何か高みの見物決め込んでるアイツだけはいてもうたらなアカンわ。」
右手に収束された火球を見ながら、
「今からおもろいもん見せたるわ。頑張ったらこれ位の事は誰でもできるから、よう見とけ!」
大きな火球がひびきの手のひらから少しだけ浮いたかと思うと、掌ではなく人差し指で火球を差し、その火球が段々小さくなっているのが見える。
そして直径2cmていどの火球にまで小さくなって、その指先を、ギルド長がいるであろう方向に向けられた。
「ばーん!」
その声と同時に指先から眩い閃光と共に一直線にまるで現代でいう『レーザー』のようなものが放たれていた。
向けられた先の部屋に至るまでの壁は全て貫通して、円筒状の穴が覗いており、しばらくしてから、人が焼けた匂いが漂ってきた。
「よし、『成敗』完了!」
実に満足した表情でそう呟くひびき。
思いっきり背伸びをし、あくびをしながら指パッチンする。
その音と共に防御膜に包まれていた六人は膜から解放され、地面に伏っしている。
そして六人の中の女性職員に「もう一回言っとくで。
俺の『修行兼研究施設』に無断で入るな!次話が理解出来やんで、不特定多数の冒険者連中に探索とか、命じたら…滅ぼすで!」ここでギルド職員以外の人々はこのイカれた術師のひびきがキレてるのかを知った。
そう告げて去っていこうとしているひびきの前に初老のギルド職員が駆け寄ってきて、
「しかしながら、あの廃墟はこの国の監理下にあるものですじゃ。どちらかというと貴方が不法侵入しているのですぞ!」
それを聞き振り返るひびき。
「国の監理?なんの設備も管理も行き届いていないのに?雑草生えまくり、人種以外も色々徘徊してて、監理下だあ?頭めでたすぎんぞ!しかも、壁の向こうにあるもんまでそんなん主張してんのか?アタマ湧いてるなほんま。それに、国のもん言うんやったら、なんか証明出来るもんおいとかんかいって話やで。もし、ギルドが把握してるんやったら教えてくれよ。どこの『国』が、あの廃墟を所有してるんか。この国が近いからとか訳わからん理由ちゃうやろなあ?もしくは、ほんまは『知らん』のとちゃう?」
そのやりとりを聞いていた周囲の人々は
「あの廃墟は古えの神が祀られていて立ち入り禁止じゃなかったか?」
とか、
「勇者に滅ぼされた魔王の居城で、魔王の瘴気が引いていないから、近づけないとか」
はたまた、
「魔法の研究中に魔力が暴走して異界の者が召喚されて何もかも破壊されてから…」
話せば話す程全くと言っていいほど原因になる話にならず、その話を聞いていた職員も皆顔を見合わせてる始末である。
「じゃあ、そうゆうことで。」
ローブの袖を翻し出口に向かって歩き出すひびきだったか、おもむろに手をたたき、歩みを止めた。「あ、忘れてた。」
そういって、複数人のギルド職員に向き直る。
「誰でもええから、死んだギルド長の死体持ってきてくれへん?脳髄から記憶読み取らなあかんの忘れてたわ。」
職員は互いに顔を見合わせながら、首を横に振っている。
「ま、嫌やわなぁ。じゃあ自分でするよ。」
ギルド長が居たであろう部屋に手をかざし、手のを上に向け、クイッとこちらに呼び寄せる仕草をした。
その直後身嗜みがよく貴族の服装のような50代の男性がひびきの足元に出現した。
その男の胸には直径2cm程の円形の穴が空いており、その胸の位置は心臓を確実に捉えており、その臓器のあったらしいし跡は貫通して背中…床まで見えていた。
左手の指には様々な指輪が施されており、その指輪のどれもがヒビ割れ等の破損した状況であった。「なんやコイツ、反魔法の指輪一つやなかったんかい。えらいビビリやなあ。小心もんやったん?」
ひびきの問いに答える者はおらず、その倒れている男をみて職員は青ざめたり、項垂れたりと様々な反応であった。
初老のギルド職員がひびきに歩み寄り、
「アンタ何してくれたんだ!」
両手拳を握りしめひびきを睨みつけている。
そんな叫びにお構いなしにギルド長であった死体の頭上にしゃがみ込み、頭頂部に手を当てる。
「ちょっと静かにしてろ!」
ひびきの手が薄白く発行している。
時間にして10数秒であったが、その時間が永く感じ取られ、周囲の者は固唾を呑んで見守っていた。
その直後、頭頂部を鷲掴みにし、その死体を引きずり起こしたひびき、鬼のような形相になり
「っざけんな!!そんなしょーもない理由で、俺にけしかけてたんかい!!」
言い終わるとそのまま頭を握り潰した。
「クソが!!!」
ひびきの手は血塗れのまま染まっており、握り締めた拳からは、血がしたたり落ち、内容物の一部が拳の隙間から漏れていた。
ひびきによって首無し死体になった『元ギルド長』であった男は支えが無くなりその場に崩れ落ちた。首からはとめどなく血が流れており、ギルドの職員は口を抑え屈む者や、悲鳴を上げ頭を抱えるものと本日2度目の阿鼻叫喚絵図が繰り広げられた。
そんな事にも気を留めず、右手に炎を纏いその腕を水をきる動作のように手を振った後、ひびきの手は元の何もない状態の手に戻り、血の跡すらなくなっていた。
「取り敢えず用件は済んだから、研究施設に戻るわ。文句ある奴は外の廃墟に訪ねて来い。奥の部屋に俺はおるから。その代わり、配置してるトラップとか、俺の下僕は撤去せえへんから『国を滅ぼせる』位の力を備えてから来いよ。もし、奥まで来れたら話したるわ。面倒やけどな。」
そう言うと、今度こそギルドの建物を出ようと入口に向かって歩き出し、入口があったであろう場所で立ち止まる。
そして扉のあった位置を指差し
「これサービスな。」
何もない扉のあったであろう場所がぼんやりと景色が歪むと次の瞬間には破壊されたハズの扉が出現していた。
壊される前の姿のままで、そこに存在していた。
そしてひびきの左腰に差している二本の刀の内、短い方の刀を鞘ごと抜きとり、さっきまでひびきが囲まれていたであろう場所を刀の鞘先で指した。
その場所に二つの炎が巻き起こり、炎が消えた所には2体の人間が横たわっていた。 その人間にはここにいる誰もが見覚えがあり、横たわっている人間とひびきを何度も交互に見合わせていた。職員の一人が横たわる人間の胸元に顔を近づけると、驚きの声を上げた。「い、生きてるぞ!死んでない!生きてるぞ!!!」一人はガタイのいい黒い火球に焼き尽くされたハズの男、もう一人は刀で神速の動きで細切れにされたハズの男であった。ひびきは振り返ることも無く扉を開け…そして消えた。唐突に『消えた』のだ。




